2015 J-F3 Round 1&2 Report

【全日本F3選手権 第1戦&第2戦/鈴鹿】

2015年の全日本F3選手権が鈴鹿を舞台に開幕、
ニック・キャシディ選手が速さを見せて第2戦を制した!!

Japanese F3 Round 1&2

開催日 2015年4月18日-19日
開催場所 鈴鹿サーキット (三重県)
天候 第1戦:晴れ
第2戦:曇り
路面 第1戦:ウェット~ドライ
第2戦:ドライ
決勝周回数 第1戦:12周
第2戦:17周
(1周=5,807m)
参加台数 16台
2015 全日本F3選手権 第1&2戦

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今年は全8大会17戦で争われる、全日本F3選手権が鈴鹿サーキットで幕を開けた。最初のレースにはF3-Nクラスの6台を含み、16台がエントリー。オフのテストではセッションごとトップが入れ替わり、しかも僅差だったこともあって、大激戦のシーズンとなることが大いに予想されていた。

開幕戦ということもあって、木曜日から金曜日にかけて専有走行が3セッション行われ、最速タイムを記したのは、TOM’Sから全日本F3選手権に初めて挑む、ニック・キャシディ選手だった。日本ではまだ無名のドライバーながら、昨年のマカオGPで3位に入った気鋭は、僅差ながらも継続参戦の高星明誠選手、山下健太選手を従えた。一方、F3-Nクラスでは13年のスポット参戦以来、初のフル参戦となる小河諒選手がトップながら、オフのテストで見せていた圧倒的なタイム差はなく、2年目の三浦愛選手が僅差で続いていた。

土曜日の予選は、10分間ずつ10分のインターバルを挟んで2回行われた。1回目、第1戦のポールポジションは、1分53秒049をマークしたキャシディ選手が獲得。これにコンマ1秒差で山下選手が続き、3番手は高星選手、4番手はルーキーの石川京侍選手が獲得した。F3-Nクラスでは小河選手がトップながら、2番手の三浦愛選手とはコンマ3秒差。2回目、第2戦の予選では立場が入れ替わり、三浦愛選手がコンマ05秒という超僅差ながらもトップに立ち、小河選手を従えることとなった。第2戦もポールポジションはキャシディ選手で、ただひとり53秒を切る、52秒646をマーク。山下選手、高星選手が引き続き2番手、3番手につけるが、コンマ5秒以上の差をつけられてしまう。

予選の興奮醒めやらぬうちに、第1戦の決勝レースが行われた。好スタートを山下選手が切るも、キャシディ選手のけん制を受けて、横には並ぶが逆転はならず。その後方では、F3-Nクラスの小河選手がエンジンをストールさせ、最後尾まで後退。代わって三浦愛選手がトップに浮上する。また、フォーメイションラップでエンジンがかからなかった、予選5番手の福住仁嶺選手がピットスタートを強いられていた。

1周目を終えて1秒2、2周目にはファステストラップを出して、2秒の差を山下選手につけたキャシディ選手は、そこから先はペースを合わせる余裕さえ見せる。一方、3番手には高星選手が。スタートで石川選手に抜かれていたが、早めに仕掛けて逆転を果たす。また、同じ2周目には小河選手がF3-Nクラスの2番手に浮上。だが、間にクラスの異なる車両を挟んでいるため、なかなか差を詰めることは許されない。ようやく小河選手が直接視界に捕らえた時には、すでに5秒の差が。ペースでは上回った小河選手ながら、最後は差を3秒にまで詰めるに留まり、逃げ切った三浦愛選手が昨年の第2戦以来となる優勝を飾った。

逆に終盤に激しくなったのが、キャシディ選手と山下選手のトップ争いだ。キャシディ選手の思惑を超えて、山下選手が急接近。差が1秒を切った直後の11周目のスプーンで、キャシディ選手が姿勢を乱したことで、山下選手が真後ろにつけたのだ。シケインでアウトから逆転を試みるが、その直後に2台は接触し、スポンジバリアに激突した山下選手はリタイアを喫してしまう。これで難なく逃げ切ってトップチェッカーを受けたキャシディ選手だったが、その接触が危険行為と判定されて40秒加算のペナルティが。10位に降着となり、繰り上がって高星選手の優勝となった。2位は石川選手が、そして自己最上位となる3位を高橋翼選手が獲得した。

明けて日曜日の午前中に行われた第2戦の決勝レースは、早朝まで降り続いた雨が残って路面を黒く染めていた。しかしながら、スタートを間近に控えた段階で雨はやんでおり、いったんはウェットタイヤを選んだチームもドライタイヤに交換し、最終的に全車が装着することとなった。絶妙のスタートを切ったポールシッターのキャシディ選手に対し、山下選手はより水の残ったイン側のグリッドに並んだこともあって加速が鈍り、高星選手の先行を許す。

スタートからの数周のペースが他を圧していることは、第1戦で実証済のキャシディ選手は、まるで再現シーンのように早い段階から後続に差をつけ、早々と逃げの構えに。3周目からはペースをコントロールしたばかりか、直後に高星選手にファステストラップを塗り替えられると、再度プッシュして6周目に更新。その後に近づかれようとも動じることなく、ペースをキープして逃げ切りを果たし、第1戦の雪辱を難なく果たすこととなった。最後に盛り上がりを見せたのが2位争い。山下選手がバックマーカーをうまく利用して急接近、最終ラップのシケインで背後まで迫ったものの、あと一歩のところで逆転ならず。このふたりに高橋選手が続き、4位でのフィニッシュとなった。

F3-Nクラスでは、今度こそ小河選手がスタートを決めて、まずはポジションキープでレースを開始。1周目こそ間にクラス違いの車両を1台挟んだものの、2周目にはぴたりと三浦愛選手の背後に。一気にかわそうとせず、三浦愛選手のミスを待ち続け、チャンスの訪れた6周目に1コーナーで小河選手は逆転に成功。その後も安定したペースを刻む小河選手に、三浦愛選手はついていくことはできず、ポジションキープを果たすのが精いっぱいだった。小河選手は、これがフォーミュラカーレースでの初優勝。昨年まで結果を残してきたツーリングカーレースでも鈴鹿だけは優勝はなく、その意味でも初優勝となった。

DRIVER VOICE

高星明誠 選手 [B-MAX NDDP F3]

【今回の成績 : 第1戦 優勝 / 第2戦 2位】
2戦とも決勝ではトムス勢についていけず、自分との戦いというようなところはありました。第1戦では課題のスタートがうまくいかず、1台に抜かれてしまいましたが、レース中に逆転できて良かったです。結果として優勝できた、ポイントを獲得できたのは素直に喜びたいと思います。第2戦はスタートが逆にうまくいって、ひとつポジションを上げることができたので、序盤プッシュしてみたんですが、追いつくことはできませんでした。近づくことはあったんですが、まるで僕との間隔を確認して走っているみたいで。ただ、そう離れることなく走ったことで自分の速いところ、遅いところも分かったので、そのあたりを次回以降に活かしたいです。

ニック・キャシディ 選手 [PETRONAS TOM’S F314]

【今回の成績 : 第1戦 10位 / 第2戦 優勝】
まず、土曜日は終盤の接触とペナルティを受けて順位が落ちたのを知るまでは、最高の一日だった。ビデオも見たけれど、納得はしていないけど、仕方ない。それでも最高のクルマを用意してもらったから、日曜日もスタートを決めて序盤にプッシュすることを心掛けて。うまくトップに立てたから、狙いどおりの展開にできた上に途中からタイヤをいたわって走ることができた。マネージメントもしっかりできたから、最後の5周ぐらいまたプッシュしたけど、タイヤは大丈夫だったよ。次のもてぎは走った経験がないけど、初めて走るコースで苦しんだ経験はないので、問題はないだろう。昨年のマカオがそうだったようにね!

三浦 愛 選手 [EXEDY RACING F307]

【今回の成績 : 第1戦 8位(F3-Nクラス 優勝) / 第2戦 11位(F3-Nクラス 2位)】
クルマの調子はとても良くて、あとは自分自身が頑張るだけという状況の中、第1戦のスタートはあまり良かったわけではないのですが、小河選手のミスがあって、前に出られました。レースペースもあまり良くなかったので、ラッキーな優勝だと思います。小河選手にはテストの時、1秒以上はなされましたが、『これだけのタイムを小河選手が出しているということは、私も頑張れば出せるんだ』と目標にさせてもらいました。第2戦はスタートこそ決まったんですが、すぐ後ろに小河選手がいて、余裕を持ってついて来られたという感じで。自分のミスで前に出られてからは、ついていくことができませんでした。ちょっと悔しい2位でした。

小河 諒 選手 [KeePer TOM’S F306]

【今回の成績 : 第1戦 9位(F3-Nクラス 2位) / 第2戦 10位(F3-Nクラス 優勝)】
オフのテストで自分自身のスキルアップは実感していましたが、第1戦で唯一言えることは、僕の油断、慢心です。レースはスタートがすべてで、ストールして最後尾に落ちてしまいました。そこからのペースはすごく良かったと思いますが、結果は2位です。でも、TOM’Sはすごく厳しいチームですが、何がどうなって勝てなかったのか、すごくミーティングして明確にしてくれたので、第2戦にはリフレッシュして臨むことができました。その結果、すごく楽しい17周になりました! 序盤、無理に仕掛けることをせず、チャンスが訪れた時にしっかり抜いて、そこから先はペースを安定させることを心掛けました。これからのレースも1周ごと、大事に走り続けたいと思います。

FEATURED DRIVER

■ニック・キャシディ 選手

開幕ラウンドの鈴鹿で連続ポールを奪い、第1戦こそペナルティで順位を落としたが、第2戦で屈辱を晴らし、一度もライバルの逆転を許さなかった、ニック・キャシディ選手。PETRONAS TEAM TOM’Sに招聘された、ニュージーランド出身の20歳は、昨年のマカオGPで3位入賞を果たした強者でもある。

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ただし、F3のフル参戦は今年が初めて。2014年にユーロF3チャンピオンシップに、スポットで参戦した経験しかないからだ。それまでは母国のトヨタ・レーシングシリーズで活躍し、そこで培った実力がスポット参戦であっても評価され、マカオGP参戦の機会を得ることに。さらに光る走りがTOM’S首脳の目に留まり、新たなチャンスをつかんだ、まるでシンデレラストーリーを地でいくドライバーということもできる。

自らの特徴を「初めて走るサーキットを苦にしない」というのは、マカオGPの結果でも明らかだし、日本での初レースでも証明することとなった。次回のもてぎではオフにテストできなかったが、その言葉がまた証明されれば、ライバルにとって、とてつもない存在になりそうだ。「すごくいい週末を過ごせたことに満足している。日本のレースがすごく好きになったよ。これからたくさんのレースを経験するけど、絶対にこうなるとは言えない。でも、いいシーズンにできれば最高だね」とキャシディ選手。その快進撃がどこまで続くのか、注目される。