2015 JDC Round 8 Report

【全日本ダートトライアル選手権 第8戦/門前】

SA2クラスの荒井信介選手が2年連続となるチャンピオンを獲得、
Dクラスチャンピオンの谷田川敏幸選手は有終の美を飾る勝利!!

JDC Round 8

開催日 2015年10月4日
開催場所 輪島市門前モータースポーツ公園
(石川県)
天候 晴れ
路面 ウェット ~ ドライ
参加台数 131台
(ヨコハマタイヤ装着車 34台)
2015 全日本ダートトライアル選手権 第8戦

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全日本ダートトライアル選手権は、最終ラウンドとなる第8戦を迎えた。舞台となった輪島市門前モータースポーツ公園は、地方自治体が管理する全国でも珍しいコースだ。

フラットな2本のストレートと森林の斜面を利用した林道風のセクションで構成されたレイアウトは、豪快なアップダウンやブラインドコーナーなど変化に富み、テクニカル&ハイスピードコースとしてこれまで数々の名勝負を生み出している。また、コースレイアウトだけではなく路面も超硬質路面から轍が掘れやすい路面、浮き砂利路面まで多種多様。超硬質、硬質、軟質すべての路面がコース内に存在するという、タイヤ選択が難しいコースでもある。

特に今回のコースレイアウトは、走行ラインが交差する区間がいくつかあり、深い轍やギャップが路面に刻まれやすい状況となった。超硬質路面の外周区間で勝負するか、それとも軟質路面の内周区間で勝負するか、ドライバーがどちらを選択するかによって、タイヤ選択が大きく分かれる大会ともなった。

今年は、この最終戦までチャンピオンの行方がもつれるクラスが多いシーズンとなったが、そのなかでも劇的な勝利を収めてタイトルが確定したのが、SA2クラスの荒井信介選手だ。ポイントランキング2位のポジションで最終戦を迎えた荒井選手は、有効ポイントでライバルを5点以上、上回ることができなければ逆転チャンピオンの可能性はない。

路面を覆う砂利が掃け切らず、浮き砂利路面となった第1ヒート、路面の対応幅が広いADVAN A053を選択した荒井選手は、軟質路面が多い前半区間のタイムは5番手だったものの、硬質路面が多い後半区間ではトップタイムをたたき出し、第1ヒートのトップタイムからわずか0.074秒差の3番手タイムでゴールする。

この第1ヒートのトライで荒井選手は、今回のコースコンディションをしっかりと掴みとった。路面の砂利が履け、硬質路面の割合が増えながらも、轍やギャップなどで路面が荒れ出した第2ヒートも、第1ヒートと同様にADVAN A053を選択してスタート。路面コンディションが悪化した前半区間はミスを犯さない守りの走りに徹し3番手タイムで折り返し、今回の勝負どころである見据えた後半区間で一気に勝負をかけ、見事にベストタイムを塗り替え逆転優勝を果たした。この優勝により、シリーズポイントも逆転トップとなり、昨年に続き2年連続となるSA2クラスチャンピオンの座を獲得した。

すでに前戦で3年連続となるDクラスチャンピオンを獲得した谷田川敏幸選手も、この最終戦で圧巻の走りを見せた。超硬質路面用のADVAN A036で挑んだ第1ヒートは、ギャラリーコーナーで観客から大きな歓声が上がるほどのドリフト走行を披露し、2位を2秒引き離すスーパーラップをマーク。

路面コンディションが悪化した第2ヒートは、大幅なタイムアップが見込めない状況となり、結果的に谷田川選手がたたき出した第1ヒートのタイムを更新する選手が現れなかったが、その状況のなかで谷田川選手自身が自己ベストタイムを塗り替えるという圧倒的強さで、有効ポイント上で満点となる今季6勝目を奪い、タイトルに華を添えた。また、ベテランの河内渉選手も第2ヒートに自己ベストタイムを2秒縮め、今季2度目となる2位入賞を果たした。

そのほか、PN2クラスでは今シーズンから参戦している竹本幸広選手が3位に入賞。見事に来年のシードゼッケンを獲得した。また、SC2クラスでは前戦の今庄ラウンドで2位に入賞した上村智也選手が2戦連続2位に入賞。第6戦から3戦連続表彰台を奪う活躍を見せて今シーズンを締めくくった。さらに、SA1クラスでは今回が全日本デビュー戦となる地元の佐藤靖朗選手が、第2ヒートにADVAN A035を装着して3位に入賞する大金星を挙げるなど、最終戦も各クラスでヨコハマタイヤユーザーが活躍する結果となった。

DRIVER VOICE

荒井信介 選手 [ADVAN クスコ itzz ランサー]

【今回の成績 :SA2クラス 優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
今回は、ポイントでライバルを上まわるというよりも、絶対優勝するんだ!という意気込みで挑みました。コースレイアウトが例年よりも変則的でしたが、第1ヒートで路面の良いところ、悪いところの見極めがしっかりできたことが勝因だと思います。路面の悪い部分では無理をせず、路面の良いところで勝負するという作戦を立て、そのプランどおりにきっちりと走り切れました。気持ちと走りのコンビネーションがうまくいきましたね。そういった意味でも、ADVAN A053が持つあらゆる路面に対応するオールラウンド的な性能は、強い味方になりました。自分にとって連覇は久しぶり、しかも優勝でチャンピオンを決めることができたことを、大変嬉しく光栄に思います。

谷田川敏幸 選手 [ADVAN トラスト クスコ WRX]

【今回の成績 :Dクラス 優勝】
門前は、気持ちがひるんでしまうとタイムが出ないコースなので、とにかく最後までしっかりと攻める気持ちで挑みました。第2ヒートのタイヤ選択は、ADVAN 053とADVAN A036のどちらでも行けるコンディションだったのですが、SA2クラスの林軍市選手がADVAN A036での攻めの走りで好タイムをマークしていたので、参考にしました。彼も気持ちでひるまずに頑張って走ったと思います。もちろんギャップや深い轍で路面が荒れている部分もあったのですが、そこはラインの外にはみ出ないように注意して走りました。その分、硬質路面はかなり攻めて走りました。来シーズンに繋がる走りで今シーズンを締めくくることができたことが、なによりも嬉しいですね。来年も連覇に向けて頑張ります。

上村智也 選手 [ADVAN itzz 磊石 ランサー]

【今回の成績 :SC2クラス 3位】
第2ヒートは轍から外れるとかなり厳しいコンディションでした。でも、ストレート区間を中心に路面の砂利が掃けた部分もあったので、そこを狙って攻めたことが好成績に繋がったと思います。そういった意味でも、ADVAN A036を選択したのは正解だったと思います。何カ所かラインを外してしまいましたが、全体的にはうまくまとめることができました。来年こそは、優勝を狙いたいですね。

河内 渉 選手 [ADVAN KYB ATS ランサー]

【今回の成績 :Dクラス 2位】
第2ヒートはけっこう失敗したのですが、結果的にはタイヤに助けられたのかなと思います。第2ヒートはADVAN A036で走ったのですが、路面的にはかなり厳しい状況でした。特に深い轍は、タイヤを入れて走った方がいいのか、それとも外した方がいいのか悩んだのですが、結果的には外す方を選びました。そういった場合はADVAN A053の方が路面に合っているのかもしれませんが、逆に轍のない硬質路面でタイムを稼ぐことができたと思います。

竹本幸広 選手 [ADVAN KYB オクヤマ 86]

【今回の成績 :PN2クラス 3位】
軟質路面用のタイヤを装着する選手が多かったのですが、僕は第1ヒートからADVAN A053を選択しました。路面とのマッチングもそうなのですが、ADVAN A053はトヨタ86に合っているタイヤだと思うんです。小さなミスも多かったのですが、最後まで攻め切って走ることができ、うまくまとめることができたと思います。FFからFRに乗り換えた初年度に、最初の目標だったシード権を獲得できたので、来年はさらに上に行けるように頑張ります。

佐藤靖朗 選手 [あま美や 4ドア インテグラ]

【今回の成績 :SA1クラス 3位】
全日本には初めて出場したのですが、今回のコースレイアウトが以前走った地区戦に似ていたので、自分にとってラッキーでしたね。路面が良くなった第2ヒートに、いつも慣れているADVAN A035で走ったのも、好成績に繋がったと思います。3位入賞は地区戦よりも成績が良くて、自分自身でも驚いているのですが、逆に僕のようなドライバーでもチャンスがあると思うので、たくさんの地元ドライバーが全日本に挑戦するきっかけになればと思います。

FEATURED DRIVER

■Dクラス :栗本利也 選手

改造範囲が最も広いDクラスのなかでも、ひときわ異彩を放ち注目を集めているのが、栗本利也選手が駆る4WD仕様のBRZだ。GC8インプレッサのモノコックに前後サスペンションをパイプフレームで組んだマシンは、市販車のBRZが発売された2012年の開幕戦に初登場、今シーズンはボディカウルが変更され、総重量が1000kg前後という軽量化が施された。

「改造クラスはお金がかかると言われていますが、一度作ってしまうとかなり長い間走ることができるので、実は経済的にも優しいクラスなんです」という栗本選手はダートトライアルにデビューした25年前から現在に至るまで、一貫してD車両一筋という筋金入りのベテラン選手だ。

「Dクラスのもうひとつの魅力は、安全基準をしっかりとクリアすれば自由な発想でマシンを製作できるというところですね。自分で手がけたマシンで、名だたるドライバーにチャレンジできるところに最も魅力を感じています」という栗本選手。過去には、当時のトップドライバーを上まわるタイムを刻み注目を集めたこともあるという。

その栗本選手が最も好きなタイヤが、ADVAN A036だ。「もともと、GT300のシャシー製作に携わっていることもあって、舗装を走る機会もあるのですが、ADVAN A036はダートの上でもまるで舗装の上を走っているような手応えがあり、コントロール性も高い。ADVAN A036でタイムが出る時が、一番気持ちが良いですね(笑)」と、装着する機会が多いという。また、「ADVAN A053も好きなタイヤですね。路面コンディションが一定ではない条件の時でも、安心して攻めることができる。特に今回のようなコース上にギャップがある場合でも、ダンパーの動きを助けてくれるようなしなやかさを持っている。路面を捉える能力が高いタイヤだと思います」と、5位入賞を果たした。

「コンスタントに6位以内に入賞することが目標です」という栗本選手、「来年は、もっと上位の名だたる選手と勝負できるようになりたいですね」と、さらなる上位入賞を目指す。

TECHNICAL INFORMATION

今回の輪島市門前モータースポーツ公園は、例年よりも砂利や土の量が多かったこと、例年とは異なるコースレイアウトとなったことが重なり、決勝当日の早朝に降った雨の影響などにより、コースのなかに軟質路面、硬質路面、超硬質路面の3種類が点在する路面コンディションとなった。そのため、クラスや走行順、ドライバーのフィーリングによりADVAN A031、ADVAN A053、ADVAN A036のそれぞれを装着する選手が混在したが、結果的にどの路面の割合が多いかという見極め、さらに路面コンディションに合わせたドライビングが、勝敗に大きく影響した

そのなかで、コース全体を捉えADVAN A053が持つオールラウンダー的な性能を引き出した荒井信介選手がタイトルを獲得、さらにADVAN A036が持つ超硬質路面での性能をドライビングに生かした谷田川敏幸選手が今季6勝目という結果を挙げた。