【全日本ダートトライアル選手権 第4戦/タカタ】
JDC Round 4
開催日 | 2015年6月13日-14日 |
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開催場所 | テクニックステージタカタ (広島県) |
天候 | 晴れ |
路面 | ハーフウェット(散水) ~ ドライ |
参加台数 | 145台 (ヨコハマタイヤ装着車 37台) |
全日本ダートトライアル選手権第4戦は、広島県のテクニックステージタカタを舞台に開催された。ここ数年はシリーズの最終戦として開催されていた同コースだが、今年は全日本選手権が終了した11月にJAFカップオールジャパンダートトライアルも行われるため、スケジュールが2戦連続にならないようにとの配慮もあり、シリーズの前半戦を締めくくる第4戦として開催された。
しっかりと整備された硬質路面を有し、2台同時に走行するツイントライアルも開催できるという多彩なコースレイアウトが可能なタカタだが、今回の決勝コースは約10年ぶりに立体交差を取り入れ、外周セクションを例年の逆走で走行するなど、新たな試みが採用されたレイアウトとなった。全体的に高速コーナーやS字区間を多用したハイスピード設定となり、豪快にコーナーを攻める選手の走りに、会場に足を運んだギャラリーから歓声が上がるほど、各クラスで熱い戦いが繰り広げられた。
その選手たちを悩ませたのが、タイヤ選択だ。通常、ホコリ防止のために各ヒート前に散水が行われるが、今回は天候に恵まれたこともあり、N2クラスとSC1クラスの前にも散水が行われた。そのため、路面コンディションは硬く引き締まってはいるものの、散水後には湿った路面の砂利が掘り起こされ、コーナーによって砂利が多かったり少なかったりという状況となった。この硬質路面と超硬質路面が混在した路面コンディションに対し、超硬質路面用のADVAN A036が合うのか、それとも硬質路面用のADVAN A053が合うのか、出走寸前までタイヤ選択に悩む選手が続出した。
その難しい路面コンディションのなか、PN1クラスの宝田ケンシロー選手が第2ヒートで逆転優勝を奪い、第2戦での全日本初優勝から見事な3連勝を飾った。第1ヒートはミスコースしかけてしまったことから6番手で終えた宝田選手は、第2ヒートも第1ヒートと同じADVAN A053を選択。第2ヒートはタイヤの縦方向のトラクションを生かした冷静な走りで、第1ヒートの自己タイムを6秒以上短縮し、ライバルを振り切った。この3連勝で、シリーズポイントも2位以下に大差を付けることに成功した宝田選手。今年の第2戦が全日本初優勝とは思えない強さを発揮した戦いでもあった。
SA1クラスは、第1ヒートでトップに立った中島孝恭選手が、第2ヒートもベストタイムを更新し、今季初優勝を飾った。第1ヒートはADVAN A053でベストタイムをマークした中島選手は、路面の砂利が掃けた第2ヒートをADVAN A036で行くか、それともADVAN A053で行くか悩んだ末、第1ヒートと同じA053を選択。前半の砂利が少ない高速セクションではライバルに0.6秒遅れながらも、後半の砂利が多いテクニカルセクションで一気に挽回。路面状況と勝負どころをしっかりと見据えたタイヤ選択が、優勝の原動力となった。
SC1クラスでは、ヨコハマタイヤユーザー同士の熱い戦いが繰り広げられた。第1ヒートは、ADVAN A053を装着した田口都一選手がトップに立つが、第2ヒートは第1ヒートと同じADVAN A053を装着した田口選手に対し、フロントタイヤのみをADVAN A036に変更した山崎迅人選手が、砂利が掃けた前半の高速セクションで田口選手を約0.5秒引き離し、砂利が多い後半セクションはその田口選手に0.03秒差という僅差まで迫られるものの逆転に成功。山崎選手が、2011年以来となる全日本2勝目を獲得した。
そのほか、SC2クラスでは田口勝彦選手が2位に入賞。4連勝が期待されたDクラスの谷田川敏幸選手と、今季初優勝が期待されたSA2クラスの荒井信介選手は、前走車のアクシデントにより再出走となったライバルに逆転を許してしまったが、ともに2位入賞を果たした。谷田川選手はシリーズポイントトップの座をしっかりと守り、荒井選手も今回の2位入賞によりランキングトップに浮上。両選手とも2年連続チャンピオンに向け、開幕戦から第4戦まで着々とポイントを加算し、シリーズ前半戦を折り返した。
【今回の成績 : PN1クラス 優勝】
第1ヒートは前半区間でミスコースしかけてしまい、そこで大きくタイムロスしてしまいました。でも、逆にタイムが出なかった理由がはっきりしていたので、第2ヒートに対しての不安はありませんでした。タイヤは両ヒートともADVAN A053を装着しました。とにかく前方向にトラクションがかかることを意識して走ったことが、タイムアップに繋がったと思います。3連勝することができて、本当に嬉しいです。実は、過去2戦は僕自身が最も得意としているADVAN A031で勝っていたのですが、今回はADVAN A053で初めて勝つことができました。自分にとって自信に繋がる優勝ですね。後半戦もこの勢いで頑張ります。
【今回の成績 :SA2クラス 優勝】
第2ヒートは、ADVAN A053で行くか、それともADVAN A036で行くか、走行する寸前まで悩んでいました。結果的に、ADVAN A036とADVAN A053の路面が半々くらいに混在していると判断して、自分が好きなA053を選びました。実際には予想以上にグリップ感が高く、立ち上がり重視でしっかりと走り切ることができました。今回は、ここで優勝できなければもう今シーズンはないという覚悟で挑んだので、狙い通りに勝つことができてホッとしています。この優勝を後半戦に繋げたいですね。
【今回の成績 :SC1クラス 優勝】
第1ヒートは前後ともADVAN A053を装着したのですが、第2ヒートはフロントをADVAN A036、リヤをADVAN A053という変則的な組み合わせで走りました。路面的には第1ヒートよりも砂利が掃けたのでA036に合う路面だと思うのですが、FFの改造車の場合はリヤが軽いので、リヤをグリップさせるというよりも、あまり粘らずにフロントについてくるだけで良いという判断で、リヤをA053にしたんです。自分のなかではけっこう良かったと思っています。今まで、第2ヒートで失敗することが多かったのですが、今回全日本で2勝目を獲得することができて、嬉しいとともにホッとしています。
【今回の成績 :SA2クラス 2位】
第2ヒートは、ADVAN A036で正解だったと思います。第1ヒートもA036で走ったのですが、第2ヒートの方がマッチしていましたね。路面コンディションとも合っていて、第1ヒートよりもストレート区間でスピードが伸びるなか、逆にストレートエンドのブレーキングが難しくなってしまいました。なるべくスピードを落とさないようにと思ったのですが、少し攻めすぎてしまったようで、優勝を逃してしまいました。でも、今シーズンのSA2クラスは、開幕戦から第4戦まで毎回ウィナーが違う混戦状態なので、後半戦はしっかりと優勝できるように頑張ります。
【今回の成績 :SC1クラス 2位】
第1ヒートの散水後のイメージで第2ヒートを走ったのですが、第2ヒートの方が乾きが早かったですね。自分自身が慎重すぎて、抑えてすぎてしまいました。もう少し攻めていけるコーナーが何カ所かあったので、逆転されたのは悔しいですね。路面的にはADVAN A036とA053のどちらでも行けると思ったのですが、僕の乗り方がA053に合っているので、第1ヒートと同じA053を選択しました。次回は優勝できるように頑張ります。
【今回の成績 :SC2クラス 2位】
第2ヒートはかなりリズム良く走ることができたのですが、最後の最後、ゴール前で土手にヒットしてしまいました。攻めすぎてブレーキが遅れてしまったことが原因です。優勝するチャンスだったのですが、ワンミスで逃しただけに痛いですね。タイヤは第1ヒートがADVAN A053、第2ヒートがADVAN A036を装着しました。第2ヒートの路面は第1ヒートとほぼ変わらない状況だったのですが、大幅なタイムアップを望むのならA036が良いと思いました。判断は間違っていなかっただけに、悔しい2位ですね。
【今回の成績 :Dクラス 2位】
第2ヒートは、タイヤはしっかりとグリップしているのですが、それがクルマの剛性とうまく合わないというフィーリングでした。ほんの少しマシンの動きが遅れ、走行ラインがずれてしまうことがトップとのタイム差に繋がったと思います。路面が予想以上に硬く、タカタの超硬質路面に対してサスペンションのセッティングやタイヤの内圧などのバランスが崩れてしまいました。次回までにはしっかりと対策し、また優勝を重ねていきたいですね。
今シーズンからDクラスに出場している亀田幸弘選手は、関東を拠点としているドライバーだ。2005年から2008年にかけてはGDBインプレッサで年に2〜3戦ほど全日本にスポット参戦しているが、これまでの最上位は8位。その亀田選手が、今シーズンは強豪ひしめくDクラスにチャレンジし、開幕戦でいきなり3位表彰台を獲得、第2戦6位、第3戦5位と、コンスタントに入賞を果たしている。
「最近は、1500ccのインプレッサワゴンで関東のN1500&PN1クラスに出場していたんです。インプレッサワゴンはパワーが少なく重いクルマでしたが、逆に無駄のない走らせ方を覚えることができました」という亀田選手は、群馬県太田市で栗原オート企画を経営する栗原善宏代表の誘いにより、同社のD車両のインプレッサに乗る機会を得た。
亀田選手は、「1500ccのインプレッサで、いわゆる針の穴を通すようなライン取りと、ミリ単位のアクセルワークやブレーキコントロールを覚えたのですが、これがすべてD車両に生きたんです。D車両はパワーも車重も1500ccのインプレッサとは真逆のクルマですが、逆にパワーと軽さに頼らないドライビングができ、うまくかみ合ったんだと思います」と、初めてのD車両をしっかりと乗りこなし、周囲を驚かせた。
第4戦は、公開練習でサスペンションを曲げてしまうというトラブルに見舞われたが、栗原代表の懸命な修理により決勝に出走。順位は惜しくも入賞を逃す7位となったが、存在をしっかりとアピールすることはできた。
ダートトライアルを始めた頃から「ずっとヨコハマタイヤユーザーです」という亀田選手は、「Dクラスを走るようになって初めてADVAN A036を装着するようになりましたが、しっかりと前に出てくれるタイヤなので、自分のドライビングと合っていると思います。このクラスは甘くないので優勝はかなり難しいとは思いますが、これからもコンスタントに入賞できるように頑張ります」と抱負を語る。
百戦錬磨のベテラン勢を相手に健闘する亀田選手の飛躍に期待したい。
今回のテクニックステージタカタの路面は、全体的には超硬質路面ではあったものの、路面を覆う砂利の量や散水の影響により、部分的に硬質路面も混在するというコンディションだった。
特に散水直後のPN1/N2/SC1クラスは砂利が多い路面の割合が多く、路面コンディションに適合するタイヤもADVAN A053→ADVAN A036を散水間で繰り返すという状況だった。だが、SA2クラス以降は、散水後もA036が適合する路面の割合が多く、その見極めをしっかりできた選手が上位に入賞することができた。特に第2ヒートは、さらなるタイムアップを図るといった面でも、A036が有利という状況だった。