2015 JDC Round 3 Report

【全日本ダートトライアル選手権 第3戦/スナガワ】

路面状況を的確に捉えた谷田川敏幸選手が盤石の勝利、
PN1クラスは若武者・宝田ケンシロー選手が2連勝!!

JDC Round 3

開催日 2015年5月23日-24日
開催場所 オートスポーツランドスナガワ
(北海道)
天候 晴れ
路面 ハーフウェット(散水) ~ ドライ
参加台数 107台
(ヨコハマタイヤ装着車 32台)
2015 全日本ダートトライアル選手権 第3戦

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

全日本ダートトライアル選手権は、前戦の九州から一気に北上し、北海道砂川市のオートスポーツランドスナガワを舞台に第3戦が開催された。

コースを区切る土手がなく、それぞれフラットな上下2段の河川敷を利用して作られたダートコースは、全国屈指のハイスピードコースとして知られているが、今年も4速全開のストレートや高速S字コーナーが連続するダイナミックなレイアウトとなった。だが、今年は公開練習が行われる土曜日の前日まで長雨が降り続いたため、水分を含んで柔らかくなった表土を保護する目的で例年よりもかなり多くの砂利が路面に敷き詰められていた。例年であれば第2ヒートにはこの砂利が掃き飛ばされて超硬質路面が現れるのだが、路面の一部に砂利が多く残り、各クラスともタイヤ選択に頭を悩ませるドライバーが多かった。

また、コースの一部にはスナガワ名物ともいえる大きなギャップが出現し、このギャップをどう攻めるのかによって、タイヤ選択をさらに難しくさせた。SA2クラス3位の荒井信介選手もタイヤ選択に悩んだひとりで、「今年は例年よりも第2ヒートの路面が悪かったため、浮き砂利に強いADVAN A031を装着しましたが、実際には予想以上に砂利が掃けていたため、硬質路面用のADVAN A053の方が路面に合っていたのかもしれません。ただ、第2ヒートを走行する直前までは浮き砂利状態だったことも確かで、出走直前までタイヤ選択に悩んだことが結果的にはタイムにも影響したと思います。最後まで攻め切れませんでした」と、タイヤ選択の難しさを語った。

この難解な路面を見事に読み切ったのが、Dクラスの谷田川敏幸選手だ。第1ヒートは、「前日の公開練習でフィーリングが良かった」というADVAN A031を選択した谷田川選手だが、「実際には公開練習の時よりも硬い路面が多く、公開練習の時とフィーリングが違った」と、トップと0.7秒差の4番手でトライを終える。だが、ADVAN A053を装着して挑んだ第2ヒートは、ライバルを1秒以上引き離す走りで逆転。「見た目と実際の路面状態が違う難しいコンディションだったが、第1ヒートにADVAN A031を選択したからこそ、第2ヒートは自信を持ってADVAN A053を選択することができた」と勝因を語る谷田川選手。全クラスのなかで唯一となる開幕3連勝を決めた。

PN1クラスの宝田ケンシロー選手も、難解な路面コンディションを読み切った。第1ヒートをトップから約1秒差の2番手で折り返した宝田選手は、「第2ヒートも路面の砂利は掃けない」と判断し、第1ヒートと同様にADVAN A031で第2ヒートをトライ。浮き砂利や大きな穴のようなギャップが多い前半区間タイム、硬質路面が多い後半区間タイムともライバルを圧倒し0.5秒逆転。「第2ヒートは、ADVAN A053かADVAN A031のどちらを選択するか悩んだのですが、PN1クラスは走行順が早いということもあり、砂利の影響を考えてADVAN A031で勝負したのが結果に繋がったと思います」という宝田選手。第2戦に続き2連勝を飾り、シリーズランキングもトップに浮上した。

また、PN2クラスでは第2ヒートにADVAN A031を装着した竹本幸広選手が2位に入賞。SA1クラスでは第2ヒートにADVAN A053を装着した中島孝恭選手が2位、SC2クラスでは田口勝彦選手が、第2ヒートでドライブシャフトを折損しリタイアとなるものの、ADVAN A053を装着して挑んだ第1ヒートのタイムで2位に入賞と、時間経過とともに刻々と変化する路面に対し、しっかりとその路面コンディションに対応した選手が上位に入賞する活躍をみせる結果となった。

DRIVER VOICE

宝田ケンシロー 選手 [ADVANKYBオクヤマSWT]

【今回の成績 : PN1クラス 優勝】
前日の公開練習で、第2ヒートをADVAN A053で走ってみたのですが、思うようにタイムが上がらなかったんです。その時に、「今年の路面はいつもの路面とは違うな」と気付きました。それもあって決勝の第2ヒートはADVAN A031で勝負したのですが、タイヤ選択は大正解だったと思います。第2戦はヘビーウェット路面で優勝でき、今回は浮き砂利路面で勝つことができました。違う路面で勝てたということは自信にも繋がりますね。第4戦のタカタは超硬質路面だと思うので、その路面も克服してすべての路面で勝てるドライバーになりたいですね。

谷田川敏幸 選手 [ADVAN トラスト クスコ WRX]

【今回の成績 :Dクラス 優勝】
今回のスナガワは、ADVAN A031、ADVAN A053、ADVAN A036すべての路面がコースの中にあるという、タイヤ選択が非常に難しい状況でした。そのなかでADVAN A053を選んだ理由は、タイヤに合う路面の割合が一番多かったということはもちろんのこと、軟質な浮き砂利路面や超硬質路面に対し、適応する路面の幅が広いADVAN A053が持っているオールマイティな性格が一番適していると判断したからです。タイヤが持っている特性のおかげで、様々な路面に対しドライビングに集中できたことが勝因だと思います。今年は開幕戦からマシンの調子も良いので、第4戦もこのまま連勝街道を突き進みたいですね。

竹本幸広 選手 [ADVAN KYB オクヤマ 86]

【今回の成績 :PN2クラス 2位】
第2ヒートの路面は、柔らかい路面の下段がADVAN A031、硬い路面の上段がADVAN A053が適していると判断しましたが、上段で勝負しようとADVAN A053を選択しました。結果的には下段のS字コーナーで失敗してしまいましたが、そのほかはうまくまとめることができたと思います。今年からPN2クラスでFRの86に乗っていますが、今回2位に入賞することができ、このクラスで勝負できる自信がつきました。第4戦以降も表彰台を獲得できるように頑張ります。

中島孝恭 選手 [ADVAN ルブロス インテグラR]

【今回の成績 :SA2クラス 2位】
第2ヒートは路面の砂利が掃けている部分が多かったので、ADVAN A053を装着しました。このタイヤはアクセルを踏んでラインを狙えるタイヤなので、路面状況に対してタイヤ選択は間違いなかったと思います。ただ、下段に大きな穴のようなギャップがあり、そこで一瞬気持ちがひるんでしまって大きく失敗してしまったのが悔やまれます。ギャップに対してアクセルとブレーキのリズムが合わなくなってしまい、攻め切ることができませんでした。今年はまだ1勝もできていないので、次戦は最後までしっかりと走り、今季初優勝を狙いたいですね。

田口勝彦 選手 [HKS F マッドクロック ランサー]

【今回の成績 :SC2クラス 2位】
勝負どころの第2ヒートでマシントラブルが起きてしまい、残念です。第1ヒート、第2ヒートともタイヤはADVAN A053です。特に第2ヒートはADVAN A053でタイムが上がる要素が強かったので、最後まで走り切りたかったですね。第1ヒートはトップでしたが、修正するポイントもあったので、あと1秒くらいはタイムアップできるかなと思っていました。第2ヒートはクラスの後半ゼッケンまでベストタイムを更新するドライバーがいなかったので、結構ドキドキしました。でも、やっぱり甘くはなかったですね。第4戦のタカタはホームコースでもあるので、ぜひリベンジしたいと思います。

FEATURED DRIVER

■N2クラス : 冨田正美 選手

かつて全日本ダートトライアルのスナガワラウンドは、この大会にスポット参戦する地元北海道勢が各クラスで上位に入賞する活躍を見せることが多かった。ここ数年は全日本レギュラー陣が地元勢を抑えているが、今年はN2クラスで久々に地元ドライバーが表彰台を獲得した。

今年でダートトライアル歴7年という冨田正美選手は、2013年と2014年に2年連続北海道チャンピオンを獲得。全日本には2010年からスナガワラウンドにスポット参戦し、2012年には2位入賞を果たしている。今年は新たに三菱ランサーエボリューションXを投入してN2クラス優勝を目指したが、第2ヒートはコースアウトのためリタイアとなり、結果は3位。本人にとっては不完全燃焼で終わる結果となった。しかも、コースアウトが原因で、愛車を大きく破損させてしまった。

「公開練習では3番手でしたが、決勝の第1ヒートは2番手タイム。トップの選手ともそれほどタイム差がなかったので、今年こそ優勝のチャンスだと思い、気合が入りすぎてしまいました。1コーナーの先にシケインのようなコーナーがあって、第1ヒートはアクセル全開で抜けることができなかったのですが、第2ヒートは全開で抜けることができたんです。でも、そのコーナーを抜けたとたん、目の前に大きなギャップが現れ、そのまま全開で……」という冨田選手。2012年の2位入賞以降、2013年はギャップでホイールを痛めて入賞圏外、2014年は第1ヒート3番手に付けながらも第2ヒートで失敗して8位で終わったことも重なり、「今年こそは!」という気持ちも強かったのだろう。

「今年はヨコハマ・モータースポーツ・スカラシップに登録して、地区戦と全日本数戦に出場して頑張ろうと思っていましたが、まずはクルマをしっかりと直すことが先決です」と、3位入賞のうれしさよりも悔しさが残る結果となったが、またいつか北海道ラウンドで活躍を見せることに期待したい。

TECHNICAL INFORMATION

今年のオートスポーツランドスナガワは、大会前の天候不順が原因で例年よりも路面の転圧が弱く、さらに砂利の量が多いというコンディションだった。そのため路面の表土を覆う砂利が掃けるのが遅く、例年であれば硬質路面となる第2ヒートも、浮き砂利に強いADVAN A031を選択する選手が多かった。特にSA2クラスの後半ゼッケンあたりから急速に砂利が掃け始めたが、それと同時にコース上にできたギャップの大きさも拡大し始め、タイヤ選択は難しいものとなった。

そういった状況のなかで、砂利が多く残っている路面コンディションに対しADVAN A031を選択したPN1クラスの宝田ケンシロー選手、さらに不安定な路面コンディションに対し路面対応幅が広いADVAN A053を選択したDクラスの谷田川敏幸選手は、刻々と変化する路面状況をしっかりと判断し、最良の結果を残すことができた。