2014 WTCC Round 15&16 Report

【FIA世界ツーリングカー選手権 第15戦&第16戦/テルマス・デ・リオ・オンド (アルゼンチン)】

アルゼンチン戦はホセ・マリア・ロペス選手が地元凱旋レースで連勝、
第2レースではラーダがWTCC初表彰台の獲得に成功した!!

WTCC Round 15&16

開催日 2014年8月2日-3日
開催場所 テルマス・デ・リオ・オンド
(アルゼンチン)
天候 第1レース:晴れ
第2レース:晴れ
路面 第1レース:ドライ
第2レース:ドライ
決勝周回数 第1レース:13周
第2レース:13周
(1周=4,806m)
2014 WTCC 第15&16戦

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前戦のベルギーでヨーロッパラウンドを消化したWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は、5週のインターバルをはさんで南米大陸へと移動。昨年に続いてアルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンドを舞台に、第15&16戦が開催された。

首都・ブエノスアイレスから北西におよそ1000kmというロケーションのテルマス・デ・リオ・オンド市は、温泉リゾート地としてアルゼンチンでは有名な町だ。そこに造られたサーキットは4月に二輪のモトGPが開催されているが、それにあわせて施設の充実が図られている。例えば昨年はすべてのチームが仮設の大型テントをピットガレージとしてあてがわれていたが、今年はWTCCでは参加チームの半分ほどを収容できるピットビルが建設されていた。

この一戦でもっとも注目を集める存在となったのが、シトロエンのホセ・マリア・ロペス選手だ。昨年のアルゼンチン戦でWTCCデビューを飾った地元のヒーローは、BMWを駆ってマニュファクチャラー勢と対峙し、第2レースでは優勝を飾っている。この実績も認められて今年のシトロエンチーム加入につながっただけに、アルゼンチンのファンにとって凱旋レースとなる一戦において、ランキングリーダーがどんな戦いを見せてくれるのか期待を膨らませたファンの熱気にサーキットは包まれたレースウィークとなった。

そんな期待と声援も味方につけて、ロペス選手はテスト走行と1回目のフリープラクティスでトップタイムをマーク。予選もQ3へと順当に駒を進め、最後はイヴァン・ミューラー選手(シトロエン)を0.428秒下して第1レース(第15戦)のポールポジションを獲得した。
また、リバースグリッド配置となる第2レース(第16戦)については、ロブ・ハフ選手(ラーダ)がポールポジションを獲得し、こちらもレース展開が面白くなるフォーメーションとなった。

好天に恵まれた日曜日、第1レースは現地時間の14時25分にフォーメーションラップがスタート。気温30℃/路面温度は43℃というコンディション、だが湿度がやや高いうえに、日射しは肌を刺すようにきつく、数字以上に暑さを感じる一日となった。

全車がグリッドオンしてレッドシグナルが消灯。ここで好スタートを見せたのはホンダ勢、4番手グリッドのノルベルト・ミケリス選手がイン側から2番手に躍進すると、5番手グリッドのティアゴ・モンテイロ選手もそれに続いて3番手にポジションアップ、ミューラー選手とセバスチャン・ローブ選手をかわしてターン1を制していく。

しかし、ターン3までにミューラー選手が逆襲してモンテイロ選手をかわすと、ターン4ではローブ選手がモンテイロ選手に襲いかかってサイド・バイ・サイドに。そのままターン5まで横並びで競り合った後、ターン6ではインからモンテイロ選手が先行。ところが次のターン7ではラインを入れ替えて軽い接触を伴いながらローブ選手が前に出るという、激しいバトルが演じられた。

こうしてオープニングラップから激しいポジション争いが演じられた中、独り悠々とポジションを守っていたのがロペス選手。後方でのつば競り合いを尻目に、1周目で1.383秒のマージンを築くと、そのまま主導権を握っていく。

レースが折り返しを過ぎて白熱したのは10番手争い。前を行くトム・コロネル選手(シボレーRML)に対して、じわじわと背後に迫って行ったのはジェームス・トンプソン選手(ラーダ)だった。7周を終えて両者の差は0.215秒、テール・トゥ・ノーズ状態持ち込んだトンプソン選手は徐々にプレッシャーをかけていく。
11周目には両者ともに最終ターンセクションで激しく白煙をあげるブレーキング競争を展開。12周を終えて差は0.247秒、巧みにブロックしてポジションを守っていたコロネル選手だったが、最終コーナーひとつ手前のターン11でラインが膨らんでしまい万事休す。この隙にインから先行したトンプソン選手がポジションを上げて10位でフィニッシュ、ポイントを獲得した。

一方、終始安定したペースで周回を重ねたロペス選手は、コースサイド各所のスタンド席から大歓声が沸き起こる中、堂々のポール・トゥ・ウィン。表彰台にはアルゼンチン国旗をマントのように身にまとって登壇、勝利を讃える国歌を観客も一緒に斉唱して興奮と熱気は最高潮に達した。
TC2規定車両で競われるYOKOHAMAトロフィーは、今回もフランツ・エングストラー選手(BMW)が強さを見せてウィナーに。表彰台では横浜ゴムの三上修 執行役員タイヤ海外営業本部長からトロフィーを授与された。

短いインターバルをはさんで迎えた第2レース。このスタートでも見せ場を作ったのはホンダ勢、4番手スタートのガブリエレ・タルクィーニ選手がインからポジションをひとつ上げて1コーナーに入り、3番手スタートのメルディ・ベナニ選手もヒューゴ・ヴァレンテ選手(シボレーRML)をかわして2番手で1コーナーへとマシンを進めた。

トップで1コーナーを制したのは、ポールポジションからスタートしたハフ選手。後方ではホンダ勢が躍進したほか、ローブ選手とミューラー選手が互いに一歩も引かないチームメイト同士のサイド・バイ・サイドを展開、その過程ではミケリス選手のシビックを両者がはさむかたちで左右からパスしてサイド・バイ・サイドを継続するというWTCCならではのシーンも見られた。

激しいポジション争いは2周目に入っても随所で繰り広げられた。ポジションを下げたヴァレンテ選手はトム・チルトン選手(シボレーRML)とポジション争い、こちらもサイド・バイ・サイドを演じる。その両者に対してスリーワイド状態に持ち込んだのがロペス選手だったが、こちらは次のターンで行き場を失ってポジションアップには至らず。しかし再びチャージしてこの周のうちに両者をパスして10番手スタートから6番手になった。

こうした激しいバトルは、ポールポジションからスタートしたハフ選手にとっては望ましい展開だった。ライバル達がバトルでなかなかペースを上げられない中、3周を終えて2番手に対して1.098秒だったマージンを、6周終了時点では2.510秒に拡大できたのだから。

しかし、5周目に6番手だったロペス選手が猛追を披露。ターン3から4にかけてのストレートで一気に先行する2台をパスして4番手にアップ。続く6周目にもやはりこのストレートで速さを見せてモンテイロ選手をかわして3番手、最終ターンではタルクィーニ選手もパスして遂に2番手にまで躍進してきた。

6周目を終えてハフ選手とロペス選手の差は2.510秒、しかし7周終了時点では1.184秒に差が詰まる。そしてターン4の先で射程圏内にとらえてロペス選手がハフ選手の背後につけるが、チャンピオン経験者であるハフ選手も簡単にはポジションを譲らない。8周を終えて両者の差は0.369秒、テール・トゥ・ノーズでターン1からターン3をクリアすると、やはりストレートの加速で勝るシトロエンが一気に先行、ターン4の入口までにトップをロペス選手が奪った。

再び大歓声が後押しする中、トップでウィニングチェッカーを受けたのはロペス選手。レースがフィニッシュして表彰台下が開放されると多くのファンが我先にと押し寄せて再び興奮した熱気がサーキットを包んだ。その盛り上がりは表彰式が終わっても冷めることなく、ロペス選手が降壇したあともファンの声援がテルマス・デ・リオ・オンドの空にこだましていた。

また、惜しくも優勝は逃したものの、ハフ選手は2位でフィニッシュ。ラーダにとってWTCC初表彰台獲得となり、こちらも赤いウェアに身を包んだチームスタッフが全身で喜びを表しており、表彰台やピットガレージは大歓声に包まれていた。

DRIVER VOICE

ホセ・マリア・ロペス 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第15戦 優勝 / 第16戦 優勝】
私にとって、とても思い出深い週末となりました。ここ(アルゼンチン)は、私の家族や友人、ファンたちの前でのレースということで、特別なものがあります。そんな中で2レースともに優勝できたことは、本当に素晴らしい結果でした!!
私は、家族やメカニック、チームメイトなど、すべての支えてくれたみなさんに感謝しています。彼ら無しで、私がこの場にいることは出来ないのですから。
レースは一見すると簡単な展開に見えたかもしれませんが、決してそうではありませんでした。ただ、2レースともにスタートを成功させたのは勝因のひとつです。素晴らしい週末になりましたが、チャンピオン争いでは次戦以降のアジアラウンドのコースは良く知らないので、決して楽観的ではないと思っています。

TECHNICAL INFORMATION

昨年初開催されたテルマス・デ・リオ・オンド。この一年間で路面には変化が見られ、昨年はほかにあまり見られないようなフラットなものだったが、今年は全体的に覆っていたアスファルトが抜けた感じで、一般的なサーキット路面と変わらないコンディションとなった。これは風化が急速に進んだことによるものと思われる。
この変化はタイヤにとって摩耗面で若干厳しさが強まる結果になったが、それでも他のサーキットよりはタイヤへの攻撃性が低く、摩耗やタレについて全く問題は見られなかった。