2014 WTCC Round 11&12 Report

【FIA世界ツーリングカー選手権 第11戦&第12戦/モスクワ (ロシア)】

今年も随所で白熱した超接近戦が演じられたロシアラウンド、
第2レースではWTCC初参戦のマー・チンホワ選手がデビューウィン!!

WTCC Round 11&12

開催日 2014年6月7日-8日
開催場所 モスクワレースウェイ
(ロシア)
天候 第1レース:晴れ
第2レース:晴れ
路面 第1レース:ドライ
第2レース:ドライ
決勝周回数 第1レース:16周
第2レース:16周
(1周=3,931m)
2014 WTCC 第11&12戦

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モロッコで4月中旬に開幕した2014年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は、前半戦の締めくくりとなる第6大会(第11&12戦)がロシアで開催された。
舞台となったのは首都・モスクワの郊外に立地するモスクワレースウェイ。昨年からWTCCのカレンダーに加えられたコースだが、昨年の大会では参戦する5車種が事実上のファイブワイドを繰り広げられるなど、随所でWTCCらしい白熱した超接近戦が繰り広げられた。そして、今年もまたそんな熱い戦いがロシアに帰って来たのである。

木曜日にはモスクワ中心部の「赤の広場」にマシンが運ばれて、プロモーションイベントが催された。もちろん、ここで地元メディアからもっとも注目を集めていたのは、ラーダを駆るミハイル・コズロフスキー選手などの地元勢だ。
このイベントには主力選手も参加、なごやかに記念写真を獲りあったりして時間を過ごしたが、土曜日の公式予選は世界トップレベルのツーリングカー使いである彼らをしても容易ではないコンディションが待ち受けていた。

実はレースウィークに入った段階で、週末の金曜から日曜にかけては「一時 雨」の天気予報が出されていた。そして公式予選が行われる土曜日は予選を前にして雨がコースを濡らしたのである。幸いにコースオープンまでには雨はあがったが、ライン以外はまだ濡れているという状況の下でQ1がスタートする。
ここから急速に路面はオールドライへと転じていくのだが、気温25℃/路面温度35℃と低めに推移したことから滑りやすいコンディションに。各車はテールスライドを頻発させながら懸命のアタックを行ったが、上位5台に絞り込むQ2ではシトロエンのイヴァン・ミューラー選手がまさかスピンを喫したこともあって敗退。
Q3ではティアゴ・モンテイロ選手(ホンダ)、トム・チルトン選手(シボレーRML)、セバスチャン・ローブ選手(シトロエン)が1分39秒台に留まったのに対して、ガブリエレ・タルクィーニ選手(ホンダ)が1分38秒877をマーク。しかし、ホセ・マリア・ロペス選手(シトロエン)が1分38秒651と僅差ながらこれを上回り第1レース(第11戦)のポールポジションを獲得した。

日曜日は幸いに雨に祟られることも無かったモスクワレースウェイ。
まずは第1レース(第11戦)、ロペス選手を先頭に16周の戦いがスタートした。ここでトップを奪いにいこうとスタートに賭けていたのが2番手グリッドのタルクィーニ選手、しかしなんと同じ考えだったであろう3番手からスタートしたチームメイトのモンテイロ選手と接触、この間にロペス選手が悠々とターン1を制してレースの主導権を握っていく。
そして、逆にこのホンダ同士の接触の間にポジションをひとつ上げたのがローブ選手。このあと、タルクィーニ選手はロペス選手を追うことよりも、ローブ選手の追撃をかわすことに集中せざるを得ない展開となってしまった。

さらに後方では随所で激しいポジション争いが演じられる。モンテイロ選手とミューラー選手がターン15でサイド・バイ・サイドを繰り広げたり、ノルベルト・ミケリス選手(ホンダ)、トム・コロネル選手(シボレーRML)、ロブ・ハフ選手(ラーダ)、メルディ・ベナニ選手(ホンダ)の4人による8番手争いなどが白熱して観客を大いに沸かせた。

こうした争いを尻目に快走を続けたのが、トップを行くロペス選手。じわじわとタルクィーニ選手との差を拡大、終盤には3秒ほどのマージンを構築してそのままマシンをウィニングチェッカーまで運び、今季4勝目を飾った。2位は激しいローブ選手の追撃を振り切ってタルクィーニ選手が前戦オーストリアに続いてフィニッシュ。そして3位はローブ選手という表彰台の顔ぶれとなった。
また、YOKOHAMAトロフィーは今回もベテランのフランツ・エングストラー選手が貫祿のレース運びで接戦を制した。

続いて行われた第2レース(第12戦)。リバースグリッドによりポールポジションはヒューゴ・ヴァレンテ選手(シボレーRML)、2番グリッドはWTCC初参戦のマー・チンホワ選手(シトロエン)というフロントローである。
まずは両者の序盤でのトップ争いに期待が高まるところだったが、ヴァレンテ選手のマシンはスタート5分前ボードが提示された段階でホイールが装着されていなかった。この行為はペナルティ対象となり、結果的にヴァレンテ選手にはドライブスルーペナルティがスタート後に科せられてしまう。

ところがこれを知ってか知らずか、マー選手がスタートをミス。ミケリス選手の先行を許して3番手に順位を下げてしまった。一方、第1レースを制しているロペス選手はグリッドでミッショントラブルが発生、スタートすることなくまさかのリタイアを喫してしまう。
このように波乱のスタートとなったが、マー選手はミケリス選手を追って見事なドッグファイトを演じていく。時にサイド・バイ・サイド、コーナーへのアプローチではブレーキング競争で、隙あらばインにマシンをねじ込んでいこうという攻めの走りが続く。

さらに後方でもホンダ勢を中心に5台がトレイン状態での走行、こちらも見応えある接近戦だ。ただ、7周目にそのうちの1台、タルクィーニ選手がステアリングトラブルからマシンをコースサイドにストップさせてしまう。さらに12周目にはモンテイロ選手もトラブルに襲われてしまい、ホンダにとっては残念な結果に。

トップ争いは7周目にマー選手がトップを奪い、そこからは後方から追い上げてきたチームメイトのミューラー選手の追撃から逃げる走りに。ミューラー選手は2番手に上がった時にマー選手との差が3秒ほどあったが、終盤には1秒にまで詰めてきた。
猛追するミューラー選手の逆転なるか注目のファイナルラップ、しかしここをマー選手も的確なドライビングでミスなく周回して、嬉しいWTCC初参戦で初優勝を獲得。FIA世界選手権において初めての中国人ウィナーということで、モータースポーツ史にその名を刻むこととなった。

DRIVER VOICE

ホセ・マリア・ロペス 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第11戦 優勝 / 第12戦 リタイア】
今回はスタートがとても重要だと思っていました。そして、タルクィーニ選手が接触で遅れたこともあって、私はリードを広げながらラップすることができました。この週末に勝利できて、とても嬉しいですね。
第2レースはグリッド上で1速にギアを入れられなくなりました。いろいろ試したのですが、リンケージが壊れてしまったようでスタートすることなくリタイアとなってしまいました。

マー・チンホワ 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第11戦 6位 / 第12戦 優勝】
昨日のフリープラクティスや予選は決してやさしいものではありませんでしたが、徐々に良い方向に転じて決勝を迎えることができました。マシンも完璧な状態でしたし。
第2レースではポールポジションだったヴァレンテ選手がペナルティでピットに入ったので、比較的早い段階でトップに立つことができました。何周かはトップ争いのバトルになりましたが、とてもクリーンなレースを楽しむことができました。

TECHNICAL INFORMATION

予選は天候の影響で波乱含みの展開となったが、決勝は気温が27℃~28℃、路面温度は44℃~46℃で、タイヤにとってもちょうど良いコンディションとなった。
前回のザルツブルグリンクでも激しい接近戦を支えたヨコハマタイヤだが、ここモスクワレースウェイでも随所で激しいバトルが演じられて観客を沸かせた。そんなレースでもタイヤのトラブルは皆無で、耐久性や摩耗性の面でもまだまだ余裕がある状態だ。
今年からのTC1車両規定導入にあわせて投入された18インチのWTCCワンメイクタイヤだが、前半戦を終えてタイムも想定以上に速めで推移しており、タレや摩耗も全く問題がない。こうした完成度の高いタイヤを供給できているのも、2006年から長くWTCCを支えてきた経験、そして蓄積されていた知識と技術によるものだ。