2014 WTCC Round 9&10 Report

【FIA世界ツーリングカー選手権 第9&第10戦/ザルツブルグリンク (オーストリア)】

第2レースは波乱の展開となった高速型コースのザルツブルグリンク、
ミューラー選手とロペス選手がそれぞれ3勝目をマーク!!

WTCC Round 9&10

開催日 2014年5月24日-25日
開催場所 ザルツブルグリンク
(オーストリア)
天候 第1レース:晴れ
第1レース:晴れ
路面 第1レース:ドライ
第1レース:ドライ
決勝周回数 第1レース:15周
第2レース:17周
2014 WTCC 第9&10戦

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全12大会/24戦のカレンダーとなっている2014年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。中盤戦のスタートとなる第5大会(第9&10戦)が、オーストリアのザルツブルグリンクを舞台に開催された。
前戦のスロバキアリンクは悪天候に祟られ、発足10年目のシーズンにして初の決勝レース中止という事態になったWTCC。ゆえに、何よりもまず天候が気になるところだったが、幸いにザルツブルグリンクのレースウィークは穏やかな空模様で推移し、オールドライコンディションでの戦いとなった。

ザルツブルグは細長いレイアウトが特徴的なコースで、WTCC開催地では屈指のハイスピードコース。タイヤにとっても厳しいコースだが、TC1車両が装着する新しい専用タイヤのパフォーマンスも試されるところだ。


そんなコースで金曜のテストセッションでは、激しいクラッシュが発生してしまう。Campos RacingからシボレーRML・クルーズTC1で参戦するヒューゴ・ヴァレンテ選手がセクター3の高速右コーナーであるターン9でコースオフ、マシンは大きなダメージを受けてしまう。2番手タイムを残す好調な走りを見せていたヴァレンテ選手が無傷だったのは幸いだが、多くの見方としてここでレースウィークを終えてしまうと思われるほどであった。


土曜日のフリープラクティスは、2本ともにシトロエン勢がトップ3を独占。1本目をホセ・マリア・ロペス選手、2本目はセバスチャン・ローブ選手がトップタイムを叩き出した。ただし1本目では12台、2本目では10台がトップから1秒以内にひしめき合う大接戦。TC1車両ではラーダ勢が少し遅れをとっていたものの、シボレーRMLやホンダはシトロエンに大きく離されることもなく、予選結果が注目を集める流れとなる。

迎えた予選、5台が勝ち残るQ3まで進出したのはシトロエンの3台に加えてシボレーRMLが2台。そしてQ3でトップを奪ったのはジャンニ・モルビデリ選手、ついに今季初めてポールポジションからシトロエンを引きずり下ろすことに成功したかと思われた。ところが予選終了後、Q1での黄旗追い越し違反によるペナルティが下され、第1レース(第9戦)のポールポジションは幻となり6番手スタートに。これにより繰り上がりでイヴァン・ミューラー選手がポールポジションを獲得した。
また、トム・コロネル選手が3番手グリッドを獲得し、こちらも開幕戦のクラッシュから復活して以降、好調さをアピールする結果を残した。


日曜日の午前中に行われる第1レース(第9戦)。ここでなんとギリギリのタイミングでヴァレンテ選手が最後尾グリッドについた。チームが徹夜でマシンの修復を完成させたわけだが、この素晴らしい仕事には他のチームや観客から惜しみない喝采が寄せられた。

スタートはポールポジションのミューラー選手が鮮やかに決めて1コーナーを奪う。ロペス選手もこれに食らいついていき、2周目から3周目にかけて仕掛けていくも、ここはミューラー選手がしっかり抑えてトップの座を明け渡すことは無かった。

上位陣がハイペースなラップを刻んでいくが、折り返しを過ぎた8周目にロペス選手が勢い余って第1シケインでミス、この隙にコロネル選手が2番手を奪う。
しかしミューラー選手との差は4秒以上と開いており、ペースコントロールしながらトップを快走する余裕も見せたミューラー選手がポール・トゥ・ウィンを飾って今季3勝目を飾ることに成功した。

TC2規定車両によるYOKOHAMAトロフィーは、このレースでもベテランのフランツ・エングストラー選手(BMW)が強さを見せて快走。ほかの2台を周回遅れにして貫祿の連勝を飾った。


第2レース(第10戦)はリバースグリッドにより、ガブリエレ・タルクィーニ選手がポールポジション、以下ノルベルト・ミケリス選手、メルディ・ベナニ選手、ティアゴ・モンテイロ選手と、シビックが4台並ぶスターティンググリッド。
フォーメーションを終えてレッドシグナルが消灯、タルクィーニ選手は見事なスタートでトップのまま1コーナーに向かい、ほかのホンダ勢はスリーワイド状態で軽い接触を伴いながらこれに続く。

しかし、その後方でアクシデントが発生。
10番手スタートのミューラー選手がポジションを上げてきたが、ロペス選手をかわそうとした時にストレート左側にマシンを外してしまう。ここからコースに戻したが、そのときにロブ・ハフ選手のラーダに接触。バランスを崩したハフ選手は、チームメイトのジェームス・トンプソン選手に接触、2台のラーダはストレート上でスピンしてガードレールに激突してしまった。 この事態にセーフティカーが導入されたが、ストレート上の車両や部品排除が広範囲に及ぶこともあり、レースは赤旗が提示されてしまった。

およそ30分という長い中断をはさんで、仕切り直された第2レース。そこにはミューラー選手のマシンもダメージを受けていたため姿を見せず、リ・スタートはホンダ勢が先行するかたちで切られることに。

しかし、じわじわと追い上げてきたのが目下ランキングリーダーのロペス選手。5周目にベナニ選手、6周目にミケリス選手、8周目にはモンテイロ選手をかわして2番手に浮上、ついに前をいくのはタルクィーニ選手ただ一人という状況になった。

11周目、コースオフ車両回収のため、このレース2回目のセーフティカー。13周目にリ・スタート、すでにテール・トゥ・ノーズ状態だったトップ争いも仕切り直しとなったが、バックストレートで巧くスリップストリームを使ったロペス選手がタルクィーニ選手をかわしてトップに躍り出ると、そのままチェッカーまでマシンを運んで今季3勝目を手中におさめた。

DRIVER VOICE

イヴァン・ミューラー 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第9戦 優勝 / 第10戦 リタイア】
繰り上がりではありましたが、ポールポジションから決勝をスタートできたことは優勝の大きな要因のひとつであったのも確かです。スタートそのものは決して完璧ではなかったのですが、スロバキアよりは良かったですね。
オープニングラップはタイヤ空気圧のマネージメントが重要だと思っていたので、ここに集中して走りました。その効果もあって2周目からはプッシュを続けて、マージンを稼いでいけました。

ホセ・マリア・ロペス 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第9戦 3位 / 第10戦 優勝】
3台のシトロエンにおいて、決して私のマシンは最高の状態とは言えなかったのですが、それだけにこの優勝は少し予想外な結果でもあります。しかし、選手権争いでリードをしっかり守ることができました。
しかし選手権はまだまだ先が長いですし、今日のレースを見てもわかるように各マシンの進化も早いのです。
第2レースではダウンフォースを小さくするセットアップにしたのですが、それも功を奏してバックストレートではとても速さを得られ、ホンダ勢をパスする大きな要因にもなりました。2回目のセーフティカーに少し助けられた部分もありましたが、勝つためには幸運も味方につけなければなりませんしね!!

TECHNICAL INFORMATION

本サイトの事前プレビューでも“何が起こるかわからないザルツブルグ”と書いているが、今回も特に第2レースはスタートからアクシデントが発生する混沌とした展開になった。

大きなクラッシュを別にしても、随所で激しいハイスピードな接近戦が展開されたが、コースレコードで見ると従来の1分25秒726(平均車速178.08kph)から1分22秒085(平均車速 185.99kph)へと向上、TC1車両の優れたパフォーマンスをタイムでも実証している。

そんなハイスピードバトルを、しっかり支えたのがヨコハマタイヤ。スタートからフィニッシュまでタイヤトラブルは無く、多彩なマシン同士が繰り広げる接近戦を通じてポテンシャルの高さを見せた一戦となった。