2014 JRC Round 4 Report

【全日本ラリー選手権 第4戦/北海道洞爺湖町】

今季初のオールドライで競われた北海道・洞爺、
新井敏弘選手組が独走で待望の今季初優勝を飾った!!

JRC Round 4

開催日 2014年7月4日-6日
開催場所 北海道・洞爺湖町 近郊
天候/路面晴れ/ドライ
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 369.55km
SS総距離 71.62km (17SS)
得点係数 1.2 (非舗装路SS 50km~100km)
参加台数 48台 (Openクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 24台)
全日本ラリー選手権 第4戦

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2014年も第2戦からグラベル(非舗装路)ラリーが3連戦というカレンダーの全日本ラリー選手権、その締めくくりとなる第4戦が北海道を代表する温泉地である洞爺湖町をホストタウンに開催された。2008年のサミット(主要国首脳会議)開催で世界にもその名を発信された洞爺を舞台に、全日本ラリーが開催されるのも4回目。開幕から雨に祟られてきた今シーズン、初めてラリーウィークを通じてドライコンディションで競われる一戦となった。

例年通り、洞爺湖温泉街の一角に大会本部とサービスパークが設けられ、洞爺湖町、豊浦町、ニセコ町、留寿都村、真狩村という5つの町村にSS(スペシャルステージ)を設定。今年は6本の林道SSに加え、サービスパークの至近に0.7kmというショートのSSS(スーパースペシャルステージ)も新たに加わり、手軽に観戦出来る環境が整えられた。

ラリーは4日(金)の夕方以降に、このSSS「Volcano」からスタート。リバースオーダーでスタートしたこのステージ、JN6クラスの上位陣がスタートするころにはすっかり日も暮れていたが、ここでトップタイムを叩き出したのは新井敏弘選手/竹下紀子選手組。これに炭山裕矢選手/保井隆宏選手組、奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組と続き、前戦の福島と同様に、ADVAN A053を装着するヨコハマタイヤ勢がトップ3を独占して大会は幕を開けた。

一夜明けた5日(土)は朝方こそ薄い雲があったが、日中は青空が広がった。この日のオープニングとなるSS2「LAVENDER LONG 1」は8.91kmと本大会最長のステージだ。北海道らしいハイスピードなグラベルステージだが、路面には大量の砂利が敷かれていたため、ゼッケン1をつける奴田原選手組は砂利かき役を強いられて3番手タイム。一方、新井選手組は唯一の7分切りとなる6分59秒7で前夜に続いてステージベストを奪取した。
この後、SS4「AZALEA 1 (4.01km)でも新井選手がベストをマークすると、奴田原選手組もギャラリーが見守るSS5「Volcano 2」で大会初のベスト。SS3でエンジントラブルから遅れてしまった炭山選手組が2番手タイムで続いて、この両者だけが41秒台に入れてヨコハマタイヤ勢が速さを見せる。そして、セクション2も新井選手組が好走を続け、Day1の満点デイポイントを獲得した。

日曜日はやや雲が多かったものの雨が路面を濡らすことはなかった。この日の林道SSは豊浦方面、洞爺湖の西側に用意された3本である。そのオープニングは6.72kmの「SEA TANGLE」、ここには明渠という地上水路が道を横切る箇所もあり、“川渡り”として選手からはお馴染みのポイントである。
このステージでベストをマークしたのは新井選手組、しかし1秒差のセカンドベストで炭山選手組が追撃する。続くSS11「PLUM 1 (3.21km)」も新井選手組と炭山選手組のワン・ツー、そして3.06kmの「PORK 1」では炭山選手組がベストを奪うと、そのままサービスパーク隣接の「Volcano」でもSS13/14とトップタイムで3連続ステージベストの快走。

二日目の満点デイポイントを賭けた戦いもヨコハマタイヤ装着車が主役となったが、林道SSの2ループ目を新井選手が3連続ベスト、2日目のトータルでも炭山選手組を0.5秒おさえてトップであがり、2011年にスポット参戦した福島以来となる全日本選手権での優勝を飾ることに成功した。
また、奴田原選手組は我慢の戦いとなったが3位でフィニッシュ、差は縮まったもののランキングトップの座を守り抜いた。

JN5クラスはDay1で4つのステージベストを奪った、スバルBRZの鎌田卓麻選手/市野諮選手組が快走。初日を終えて2番手に43.4秒の大差をつけると、2日目はペース配分をコントロールしながら着実にマシンをフィニッシュまで運んで、待望のスバルBRZでの初優勝を獲得した。

JN2クラスはスズキ・スイフトを駆るベテランの田中伸幸選手/藤田めぐみ選手組が序盤から主導権を握る展開に。金曜夜のSS1こそ2番手だったが、土曜日になって林道SSでは1ループ目のSS2から4まで連続ベストを刻むと、2走目となる「Volcano」もトップであがって折り返す。後半もSS7と8でベストをマーク、Day1を2番手に26.1秒差のトップであがった。
Day2に入っても勢いは衰えることなく、SS11/12で連続ステージベスト。しかしSS13、4走目となる「Volcano」のフィニッシュ手前でドライブシャフトが折れてしまい、オフィシャルの手でコースから排除されてしまう。この時点で特別規則書によりSS13は3分のタイムが与えられたが、ここからサービスパークまでは数百メートルと近い。そこで両クルーはマシンを自ら押してタイムコントロールまで運び、執念のサービスインに成功。20分のサービスで交換作業を終えて最終セクションを走りきり、惜しくもポジションは2位に後退したもののしっかり完走を果たしてポイントを積み重ねた。

JN1クラスは第2戦の久万高原を制している、1,300ccエンジンのマツダ・デミオを駆る宇田圭佑選手/石川恭啓選手組が今回も速さを披露。同じヨコハマタイヤを装着勢で第3戦・福島の勝者であるダイハツ・ストーリアの中西昌人選手/美野友紀選手組とステージベストを奪い合うシーソーゲームを繰り広げたが、距離のある林道SSで一歩抜きんでた速さを見せた宇田選手組が優位に立ってDay1を終えておよそ40秒の大量マージンを獲得。
室蘭工業大学自動車部出身の宇田選手にとってはホームグラウンドとも言える大会、しかしなかなかこれまで相性に恵まれてこなかっただけに、優勝への思いは人一倍と言えるところ。そんな思いも胸に今年はしっかりフィニッシュまでマシンをトップで運び、今年2回目となる歓喜のシャンパンファイトに酔いしれた。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [アライモータースポーツWRX-STI]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
ここまでの3戦、走り負けているわけではないのでその点での焦りはなかったのですが、トラブルや小さなミスが続いたので運の悪いところがあったな、と思っていました。そういうことの無いように、と思って臨んだ洞爺ですが、WRC(FIA世界ラリー選手権)では全く出なかったトラブルもあったので、その点も見直して体制を整えて来ました。
オープニングからベストを奪い、後続を離せるだけ離してやろうと思って最初のうちからプッシュしていきました。Day1でマージンを稼げたのでDay2は攻めまくったということではないのですが、デイポイントは獲りたいと思っていました。ただ、炭山選手がプッシュしてきたので、そこはこちらもうかうかしていられないので、改めてプッシュをかけた場面もありました。
今季初優勝ということで、まずは一安心。次のモントレーはターマック(舗装路)ですが、比較的ハイスピードなのでセットアップなども含めて自分のほうに“三日くらいの長”があるかな、と思っています(笑)

鎌田卓麻 選手 [TEIN ADVAN スバル BRZ]

【今回の成績 :JN5クラス 優勝】
去年のモントレーから全日本戦に出場して今回で7戦目ですが、車のウィークポイントや難しい部分が自分でもわかってきて、チームもデータを蓄積してきたので、今回は優勝できるという自信がありました。今のところ僕たちの車とパッケージがスピードを有しているのは分かっているので、あとは車を壊さない“大人の走り”で行けば勝てるだろう、と(笑)
JN5クラスは車種も選手層もバラエティに富んでいて、誰が勝つのかわからないという面白さがあります。毎回ウィナーが変わるので走っていても楽しいですし、次のモントレーはターマックということで速い車も増えますから楽ではないと思いますが、それもJN5の楽しさということで競り合いを楽しんで連勝したいと思います。

田中伸幸 選手 [加勢eレーシング YH クスコ WM スイフト]

【今回の成績 :JN2クラス 2位】
ドライブシャフトは、音がはっきり聞こえてポッキリと折れてしまいました。ただ、3分のタイムにはなったものの、そのままサービスインして修復して戦いを続けられたのは不幸中の幸いでしたね。自分たちで押してリグループまで運びましたが、途中で曲がるべき箇所を少し行き過ぎて押し戻すはめに。これが登り坂だったのですが、そこでの最大の功労者は全力で押してくれたコ・ドライバーの藤田選手ですね(笑)
タイヤは前回に続いてADVAN A053ですが、コーナーリング中にアクセルを踏んでもグングン引っ張ってくれるんです。セッティングや乗り方は極端に変えていないのですが、本当に美味しいところを使えるタイヤですね。

宇田圭佑 選手 [BRIG ヨコハマ WAKO’S デミオ]

【今回の成績 :JN1クラス 優勝】
今回初めてADVAN A053を装着しましたが、使って良かったなというのが正直な実感です。とにかくアクセルを踏んだ分だけ進んでくれるので、外径の大きさを感じないんです。シフトも逆に忙しくならないし、止まる・曲がるという点も基本に忠実に走らせれば抜群ですね。
最初は不安もあったのですが、僕はどちらかというとエッジを効かせて曲がるタイプだったので、若干乗り方を変えた部分もあります。でも、それも積極的に変えたというよりは、タイヤを信頼して走っていたら自然に慣れてきた、という感じですね。
なかなか完走できないラリーだったので、最後の最後まで自信がなかったんです。きちんとフィニッシュして優勝という結果も残せて、本当にいまはホッとしています。

TOPICS

北の大地で速さを見せたADVAN A053

昨年の第3戦・福島でデビューして以来、国内のラリーステージでも遺憾なく卓越のポテンシャルを見せているのが、ヨコハマタイヤのグラベル用タイヤであるADVAN A053。
P-WRC(FIAプロダクションカー・ラリー選手権)やAPRC(FIAアジア・パシフィック・ラリー選手権)、そして近年ではIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)といった世界でその性能を磨き上げられたタイヤである。

【LINK >> 特集企画「世界の道で鍛え上げられたADVAN A053】

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JN6やJN5クラスでは既に定評あるタイヤだが、今年からは国内向けにサイズ追加された185/65R15が活躍を見せている。前戦・福島では田中伸幸選手組が装着して優勝を飾り、今回は惜しくもマシントラブルで2位に後退を喫したものの、それまではライバルを大きく引き離す速さを見せていた。さらにJN1クラスでも宇田圭佑選手が初めて装着、第2戦に続く今季2勝目を飾ることに成功している。

4輪駆動勢などが使っている215サイズと同様に、海外ラリーで作り上げられた185サイズ。代表車種はプロトン・サトリアネオであり、APRCでジュニアカップを制するなど活躍を見せたことも記憶に新しいところだ。

215サイズは海外参戦で培った内容をベースに、構造面を中心に大きく変更を加えて日本仕様が仕立てられている。185サイズも基本的には同様の流れを汲んでいるが、元々がFF(前輪駆動)用ということでよりフレキシブルな特性を持っており、国内仕様との海外仕様の差は比較的小さめだ。ただし、従来品であるADVAN A035よりは剛性は大幅に高い領域にあるので、最新のやや重量があるハイパワーなコンパクトカーへの適合度は非常に高い。

田中選手が優勝した福島は、典型的な本州の林道が舞台。そして宇田選手が優勝した今回の洞爺はハイスピードな北海道らしい舞台。キャラクターの異なるそれぞれの大会において、道を選ばない速さを見せたことで、185サイズのADVAN A053のポテンシャルが実証されたことになる。

AREA GUIDE

海の幸、山の幸が豊富な洞爺地方!!

北海道といえば美味しい食は外せないポイント。大会が開催された洞爺湖周辺は、海の幸と山の幸それぞれに恵まれたエリアだ。
海の幸で言えば、内浦湾(噴火湾)でまず有名なのがホタテ。刺身、焼き、天ぷらと、さまざまな美味しさを楽しめる。また、内浦湾ではウニも水揚げされ、洞爺湖町にある道の駅でも、うに丼が人気メニューのひとつに数えられている。

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山の幸では初夏の訪れを告げるアスパラの生産が当地では盛ん。そして、アスパラと入れ替わるように旬を迎えるのがジャガイモで、リエゾン区間のジャガイモ畑では収穫を前に花を咲かせた様子が見られた。ジャガイモもいろいろな調理法があるが、塩茹でしたものにバター、さらにイカの塩辛を載せて食べるのが北海道スタイルのひとつだ。

TECHNICAL INFORMATION

第4戦にして、今季初めて雨に見舞われることなくオールドライで戦われた洞爺。序盤から各クラスでヨコハマタイヤ勢がトップに立ち、ハイスピードな北海道らしいステージで好走を見せた。
JN2クラスの田中選手組は惜しくもマシントラブルからトップの座を譲ることになったが、ハイパワーな4輪駆動、FR(後輪駆動)、FFと車種を選ばないADVAN A053の優れたポテンシャルが光る一戦となった。