2014 JDC Round 5 Report

【全日本ダートトライアル選手権 第5戦/切谷内】

小雨降る切谷内で地元勢を中心にヨコハマタイヤ装着選手が活躍、
4つのクラスを制するとともにSA2クラスではトップ3を独占!!

JDC Round 5

開催日 2014年7月13日
開催場所 サーキットパーク切谷内
(青森県)
天候 曇り のち 雨
路面 ハーフウェット(散水) ~ ウェット
参加台数 114台
(ヨコハマタイヤ装着車 32台)
2014 全日本ダートトライアル選手権 第5戦

 PN2クラス優勝・鎌田卓麻選手

PN2クラス 2位・佐藤秀昭選手

N2クラス優勝・星盛政選手

SA2クラス優勝・大西康弘選手

SA2クラスはトップ3をヨコハマタイヤ勢が独占

SC1クラス 3位・田口都一選手

Dクラス 優勝・谷田川敏幸選手

全日本ダートトライアル選手権は、後半戦突入となる第5戦を迎えた。シリーズは、この大会を含めて残り4戦。今年はシリーズタイトル争いが混沌としているクラスが多く、今後の展開を占う上でも重要な1戦となる。各クラスとも、コンマ1秒を争う戦いが繰り広げられた。

第5戦の舞台となる青森県のサーキットパーク切谷内は、丘陵の斜面を切り開いた高低差のあるコースレイアウトと、全国でも屈指の超硬質路面が特徴だ。ドライ路面の場合は「舗装路面に近い感覚で走れる」と言われ、ウェット路面でも時には超硬質路面用のタイヤを使えるほど、グリップ力が高い。ただし、雨の降り方によっては路面を覆う土や泥が洗い流されず、「まるで雪の上を走っているような感覚」と言われるほど、グリップ力が極端に落ちる。
台風一過の週末に開催された今大会は、公開練習の土曜日は好天に恵まれたものの、決勝が行われた日曜日は、第2ヒート開始とともに小雨が降り出し、路面を濡らすという状況。時間経過とともに刻々と変化する路面状況にどう対応するかが、勝敗の鍵を握った。

散水の影響が残る第1ヒートにADVAN A053を装着してトップタイムをマークしたPN2クラスの鎌田卓麻選手は、小雨が降る第2ヒートもADVAN A053を選択。ドリフト状態でコーナーを駆け抜ける果敢な走りを披露し、第2ヒートのベストタイムを更新。第2戦から続く4連勝を決めるとともに、ポイントリーダーの座を堅守した。
また、シリーズ2位に付けている佐藤秀昭選手は、昨年の雨の切谷内で超硬質路面用のADVAN A036でPN1クラスを制した経験を生かし、第2ヒートにADVAN A036を選択。だが、今回はPN2クラスが走行する時間帯は雨の量が少なく、まだ路面に泥が残っているという状態。それでも佐藤選手は、トラクションを生かしたグリップ走行に徹した走りで3位に入賞。シリーズ2位の座をしっかりと守り切り、タイトル奪取に向け後半戦に望みを繋いだ。

N2クラスは、東北のベテランドライバー星盛政選手が大活躍を見せた。
小雨が降り続く状況だったが、路面コンディションはそれほど悪化していないと判断した星選手は、ADVAN A036を装着。この選択が見事に的中し、星選手よりも前の選手が出した第2ヒートのベストタイムを1.626秒更新。結局このタイムはシードゼッケン組に入っても破られることなく、全日本16年目の星選手が、自身初となる全日本優勝を獲得した。

SA2クラスは、第4戦の門前を制した大西康弘選手が、この切谷内でも第2ヒートで逆転を果たし2連勝を飾った。これによりシリーズランキングも2位に浮上。シリーズチャンピオン獲得に向け、大きな足掛かりを掴む1戦となった。
また、第2戦の恋の浦で3位に入賞した鈴木信地郎選手が、2006年に獲得したベストリザルトと並ぶ2位に入賞。荒井信介選手も3位に入賞し、ADVAN A036を装着した3台が表彰台上位を独占した。
シリーズランキングは、シリーズ3位の荒井選手とシリーズ2位の大西選手との差がわずかに1ポイント。残り3戦もさらに激戦が展開されることとなりそうだ。

SC1クラスが出走する頃には、路面状況が一変した。雨量は多くなるものの、アスファルト路面に堆積した泥を洗い流すには至らず、第2ヒートは全車ともタイムダウンという状況に。
そのなかで、第1ヒートで3番手に付けていた田口都一選手が、今年3度目となる3位入賞を果たした。

各クラスでヨコハマタイヤ装着車が活躍を見せるなか、トリを務めたのがDクラスの谷田川敏幸選手だ。ハーフウェット状態の第1ヒートをADVAN A036で全開アタックし、トップに立った谷田川選手のタイムは、第2ヒートに入っても誰も破ることができず、そのまま逃げ切り今季2勝目をマーク。
今季はこれまでの5戦中2戦でポイントを獲得できなかったため、残り3戦で獲得するポイントがすべて有効ポイントとなる谷田川選手は、「この優勝は大きい。これで優勝回数はシリーズトップの選手と同じ。残り3戦を全力で戦い、最後まで諦めずにシリーズ連覇を狙って行く」と、後半戦に向けてターニングポイントとなる勝利となった。

DRIVER VOICE

鎌田卓麻 選手 [栗原オート企画 YH テイン BRZ]

【今回の成績 : PN2クラス 優勝】
切谷内を走るのは初めてなことはもちろん、こういう路面を走るのも初めての経験だったので、タイヤの特性をうまく引き出すことができずに苦労しました。雨が降った決勝の第2ヒートは、ADVAN A036とA053のどちらを装着するか悩んだのですが、前日の公開練習でADVAN A053が自分のフィーリングに合っていると感じたので、路面というよりは自分のドライビングスタイルに合わせてA053を選択しました。
結果的には優勝することができてホッとしていますが、残り3戦も走ったことがないコースばかりなので、もっとしっかりとタイヤのおいしいところを使えるように、気を引き締めていきます。

星 盛政 選手 [モウル アドバン ワコーズ ランサー]

【今回の成績 :N2クラス 優勝】
第2ヒートは手応えのある走りができたのですが、まさか自分が勝てるなんて思ってもいませんでした。本当にうれしいです。第2ヒートは、N2クラスが走る頃には完全にADVAN A036の路面になっていましたね。ただし、路面が濡れていたので極力無駄な動きはせず、A036の特性を生かすためにグリップ走行に徹して走ったのが勝因だったと思います。
僕は東北の選手なんですが、切谷内は家から600km離れているんです。ホームコースと呼ぶのには距離が遠いのですが、相性が良いのは確かです。自分が好きなコースで、自分が好きなタイヤで勝つというのは、本当に気持ちがいい(笑)。残り3戦も上位を目指して頑張ります。

大西康弘 選手 [アドバン テイン F-1 ランサー]

【今回の成績 :SA2クラス 優勝】
門前で勝てたセッティングを、メカニックが切谷内に合わせて微調整してくれたことが一番の勝因です。僕自身、練習不足の部分があったんですけれど、メカニックの頑張りと経験がカバーしてくれました。チーム力の勝利でしたね。
第2ヒートは雨で路面が濡れている状況でしたが、ADVAN A036を装着しました。前日の公開練習で、ハーフウェット路面をA036で走ったのですが、その時のフィーリングが良く、タイムも出ていました。今年のコースは去年よりも砂利や土が多いような感じがしましたが、逆にA036は少々の砂利や泥はものともしないと思っているので、第2ヒートにA036を選択することに迷いはなかったですね。2連勝することができたので、せっかくだから3連勝を狙います(笑)。

谷田川敏幸 選手 [ADVAN トラスト インプレッサ]

【今回の成績 :Dクラス 優勝】
第2ヒートの路面はタイムアップを狙うことが無理な状況で、結果的には第1ヒートのタイムで逃げ切ることができましたが、いつも「第1ヒートからしっかりとタイムが出るような走りをする」と心掛けているので、今回はそれが結果に繋がったと思います。
第1ヒートは、散水量が多かったせいかDクラスでも路面が少し湿っているハーフウェット状態でしたが、ADVAN A036で挑みました。このコースは舗装的な部分が多く、タイヤのブロックがよれない剛性感が必要というのも、A036を選択した理由のひとつです。
路面が湿っているからといって、基本的な走らせ方はなにも変えないです。みなさんが「凄い!」と喜んでくれるような走りで、なおかつ速いというのがダートトライアルの醍醐味だと思っていますから。そういう部分でも第1ヒートはしっかり攻め切れたと思います。

佐藤秀昭 選手 [KYB ADVAN オクヤマ 86]

【今回の成績 :PN2クラス 2位】
昨年の経験があったので、今年も雨が降ってきてもADVAN A036で行けると思っていたのですが、PN2クラスが走る時間帯はまだA053の方が路面状況に適していたのかもしれません。昨年よりも路面に土が残っているような感じでしたね。
鎌田(卓麻)選手が連勝を重ねていますが、届かないタイムではないと思うので、残り3戦もしっかりと戦っていきたいですね。

鈴木信地郎 選手 [SPYOC ワコーズ YH ランサー]

【今回の成績 :SA2クラス 2位】
第2ヒートの路面はADVAN A036が合っていると思いましたが、タイヤの特性を意識しすぎて、少し抑えすぎた分だけトップに届きませんでした。タイヤを前に転がすことだけを考えて走ったのですが、もっとタイヤのグリップ力を信じて攻めないとダメですね。走りが地味すぎました。僕自身、グリップさせて走るというよりは振り回して走るタイプなので、馴れないことをいきなりやってもうまくいかないなと痛感しました。

荒井信介 選手 [クスコ アドバン itzz ランサー]

【今回の成績 :SA2クラス 3位】
切谷内は雨でもADVAN A036が使える路面なので、第1ヒート、第2ヒートともタイヤ選択に関しては迷いはありませんでした。実際に路面の砂利も少なかったですしね。
今日はできれば1位を獲りたかったんですが、ドライバー自身が天候とかいろいろな要素で迷いが出てしまいました。雨が降ったことにより、少し抑えすぎてしまったのが一番の敗因ですね。

田口都一 選手 [ADVAN☆SPヤマダ ランサー]

【今回の成績 :SC1クラス 3位】
前日の公開練習の時にADVAN A036の感触が良かったので、決勝日の第1ヒート、第2ヒートともADVAN A036を装着しました。第1ヒートは、ベストラインの砂利が掃けている状況だったので、そこを丁寧にトレースするイメージで走ったのが良かったと思います。逆に第2ヒートは、SC1クラスが走る頃には路面がヌルヌルしているような感触で、A036は合っていないという状況だったと思います。タイムアップには厳しい路面状況でしたね。
これで今年3回目の3位ですが、次はもうひとつ上に行けるように頑張ります。

FEATURED DRIVER

■PN1クラス :宝田ケンシロー 選手

かつて全日本を席巻した宝田芳浩選手を父に持ち、二世ドライバーとして活躍する宝田ケンシロー選手。昨年までは全日本にスポット参戦し、表彰台を奪う活躍を見せていたが、今年は昨年のPN1クラスのチャンピオンを獲得したオクヤマカラーのスイフトスポーツを駆り、PN1クラスでは優勝を狙えるドライバーにまで成長してきている。

今シーズンは、開幕戦の丸和と第3戦の北海道に出場。その開幕戦では、第1ヒートに3番手の好ポジションに付けながらも、第2ヒートは「ベストラインをしっかりトレースしようという気持ちが強く、結果的には抑えすぎてしまいました」と4位。第1ヒートでトップに立った第3戦は、表彰台の一角を奪うものの3位という結果に。
「この時は、親父に『第2ヒートでああいう走りをしていては、いつまでたっても勝てない』と叱られました。自分のなかでは攻めていたつもりだったんですけど、客観的にはまだ攻める気持ちが足りないということだと思います」と、当時の状況を振り返る。

その宝田選手が、この大会でも第1ヒートのトップを奪う活躍をみせた。だが、無情にも第1ヒートをゴールした瞬間に駆動系が壊れてしまい、第2ヒートは不出走。順位は10位まで落ちた。
「今度こそ、という思いが強かっただけに、言葉にできないくらい悔しかったですね。第2ヒートはADVAN A036で勝負するつもりでした。A036は縦方向だけじゃなく横方向にも効くタイヤなので、自分でも一番好きなタイヤです。そのタイヤで勝負することができず、なにもできずに終わったことは残念でしかたありません。逆に、絶対勝つ!という気持ちが強くなりましたね」と宝田選手。

「今年はシードゼッケンの3番手以内に入るというのが目標だったのですが、予定を変更して残り3戦を全部勝つつもりで戦います」という宝田選手は、PN1クラスのなかでは最年少のドライバーだ。
チャンピオン経験者が集まるPN1クラスのなかで、27歳の若武者がどう戦っていくか、残り3戦の健闘に期待したい。

TECHNICAL INFORMATION

本来、ウェット路面でもADVAN A036が使えるほど超硬質路面のサーキットパーク切谷内だが、今回は決勝日前日に第1ヒート後の散水の必要がないほど多めの散水が行われたこと、第2ヒート開始早々に想定外の雨が降ったことなどが重なり、路面コンディションに合わせたタイヤ選択が難しい状況となった。
特に第2ヒートはPN1クラスからADVAN A036を投入できる状況だったが、PN2クラスの時点で路面が一時的に悪化。N2クラス以降は路面状況が好転したが、SC1クラスからはタイムアップが望めない状況となった。

そのなかでも、SA2クラスではADVAN A036を装着した3台が表彰台の1位から3位まで独占し、幅広い路面に対応するタイヤの特性を存分に発揮することができた。