2014 SUPER GT Round 8 Report

【SUPER GT 第8戦/もてぎ】

ヨコハマタイヤを装着するGT300の「グッドスマイル初音ミクZ4」、
谷口信輝選手と片岡龍也選手がドライバーズチャンピオンを獲得!!

SUPER GT Round 8

開催日 2014年11月15日-16日
開催場所 ツインリンクもてぎ (栃木県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 53周
(1周=4,801km)
参加台数 38台
(ヨコハマタイヤ装着車 20台)
2014 SUPER GT 第8戦

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全8戦で争われるスーパーGTシリーズも、早いものでもう最終戦。今年も最後の戦いの舞台を栃木県のツインリンクもてぎに、「MOTEGI GT 250km RACE」が11月15〜16日に開催された。通常より50km短い250kmで争われ、またウエイトハンデがすべて下ろされるレースにおいて、GT300で「グッドスマイル初音ミクZ4」を駆る、谷口信輝選手と片岡龍也選手が3位入賞を果たし、ドライバーズチャンピオンを獲得。ヨコハマタイヤユーザーとして、2年ぶりに王座奪還を果たすこととなった。

とびっきりの青空が広がっていた土曜日の午後、GT300の予選Q1でヨコハマタイヤ勢は9台がQ1を突破。続けて行われたQ2では「OGT Panasonic PRIUS」の新田守男選手が1分47秒977で2番手につけ、ヨコハマタイヤユーザーの最上位に。3番手にはランキング2位に9ポイント差をつける「グッドスマイル初音ミクZ4」の谷口選手がつけて、悲願の王座獲得に大きく前進を果たすこととなった。

一方、GT500ではQ1で「WedsSport ADVAN RC F」の関口雄飛選手が1分39秒351で3番手につけ、続くQ2では脇阪寿一選手が39秒771で7番手に。今シーズンのベストグリッドを獲得することになった。

「D’station ADVAN GT-R」はQ1でミハエル・クルム選手が誰より早くアタックを開始、完璧なクリアラップで好位置を狙うも、5分経過時点でコース上に止めた車両があり、赤旗中断で1周をふいに。再開後にミッショントラブルが発生する不運があり、アタックするどころか、満足に走ることさえできず、Q2担当の佐々木大樹選手にバトンを託せなかったばかりか、決勝には14番手スタートを強いられる。

日曜日は引き続き好天に恵まれ、気温16℃、路面温度23℃と、この時期ならではの絶好のレースコンディションとなっていた。午後1時に53周の決勝レースの幕が開け、7番手スタートとなった「WedsSports ADVAN RC F」は、スタートドライバーを務めた関口選手の若さ溢れる走りでポジションを上げ、一時は2番手を走行する健闘を見せた。

32周目からバトンを引き継いだ脇阪選手も、トップ集団の中でライバル勢と接近戦を繰り広げ、満員の観客を沸かせた。「WedsSports ADVAN RC F」が7番手スタートから上位進出を果たしたのは、タイヤ無交換作戦を敢行していたことが大きな理由。ピットストップの時間を大幅に短縮して、ポジションを大きく上げることとなり、最終的には6位でチェッカーを受けることに。これをコンビのベストリザルトとし、今シーズンを締めくくった。

一方、後方からの追い上げとなった「D’station ADVAN GT-R」はスタートドライバーを務めた佐々木選手が路面にマッチしたタイヤでプッシュを続け、ポジションを大きくアップ。一時は3番手となる中、27周目から引き継いだクルム選手も好ペースで周回を重ね、4位フィニッシュを果たした。前戦の第6戦タイでも2位表彰台獲得を果たしていただけに、終盤2戦で有終の美を飾ることとなった。ドライバーズランキングでも10位キープに成功。

GT300では、予選3番手からスタートした「グッドスマイル初音ミクZ4」の片岡選手が、オープニングラップの4コーナーで早々と「OGT Panasonic PRIUS」の新田選手をかわし、ひとつポジションを上げる。しかし、新田選手も少しも遅れを取ることなく続き、激しいバトルを繰り広げた。このこう着状態に終止符を打ったのは、新田選手の方だった。17周目にピットに戻って、タイヤ無交換で嵯峨宏紀選手に「OGT Panasonic PRIUS」のシートを託す。これに対して、「グッドスマイル初音ミクZ4」のピットストップは27周目。タイヤを4本交換したこともあって、「OGT Panasonic PRIUS」の再逆転を許してしまう。

それでも「グッドスマイル初音ミクZ4」は、全車ドライバー交代を終えた時には3番手に留まっており、このポジションを保てばドライバーズチャンピオンが獲得できる。しかし、その片岡選手には、タイヤ交換をリアの2本のみとし、ロスを抑えた「Audi R8 LMS ultra」の藤井誠暢選手が急接近。もし順位を落としてしまえば、悲願成就はかなわなくなる。まさに息詰まる戦いが繰り広げられるが、谷口選手もミスを冒さず。辛くも逃げ切りを果たし、3位を獲得した結果、「グッドスマイル初音ミクZ4」を駆る谷口選手と片岡選手が、それぞれ2回目となるドライバーズチャンピオンを掌中におさめることとなった。

2位でフィニッシュの「OGT Panasonic PRIUS」は今季2回目の表彰台を獲得し、新田選手と嵯峨選手はランキングをひとつ上げて7位に。そして、6位を獲得した「LEON SLS」の黒澤治樹選手が続くランキング8位。また、「Studie BMW Z4」は予選14番手から7位にジャンプアップしてヨルグ・ミューラー選手と荒聖治選手がランキング3位、そして8位の「B-MAX NDDP GT-R」は星野一樹選手とルーカス・オルドネス選手がランキング4位に。その結果、ドライバーランキングのトップ10のうち、ヨコハマタイヤユーザーは6台までを占めることとなった。

DRIVER VOICE

佐々木大樹 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 4位】
もてぎは抜きにくいコースですが、今回も抜いていくのに苦労し、難しいレースになりました。今回はライバル勢と比べてタイヤが長持ちしてくれるものだったので、今日の作戦が実行でき、表彰台に上がれる可能性もあったと思いますが、最終的に4位という結果を残すことができました。自分自身も含め、チームのポテンシャルは上がってきていると実感しました。来シーズンに向けて、いい形で最終戦を終えることができました。

脇阪寿一 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
この最終戦では今シーズンのベストリザルトを目指して戦いました。前半の関口選手の走りも良かったですし、タイヤ無交換作戦に賭けて、戦ったのですが、それが功を奏し、バトルも出来ました。これまで出し切れなかった「ハラハラドキドキ」を演出することができたと思います。結果は6位でした が、来年につながるレースで今シーズンを締めくくれたという点では満足しています。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
タイ戦からペースが良くなってきて、それが結果にも表れてきていたのですが、タイヤの状況もとても良かったですし、今回もいい流れで戦うことができました。ポテンシャルが上がっているという実感もありますし、それが今シーズンの収穫です。上り調子で今シーズンを終えることができたので、良かったと思います。レースについては、チャンピオン争いもあるので、自分にとっては我慢のレースになりました。来年はチャンピオン争いに絡みたいです。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル初音ミクZ4]

【今回の成績 : GT300クラス 3位 (シリーズチャンピオン確定)】
チャンピオンは獲れましたけど、レースは厳しかった、ものすごく。片岡が前半すごく頑張ってくれていたけど、ベンツとかに飲み込まれて、その感じを見ていたら無交換は無理だなと、タイヤを交換することにしました。僕が出て行ったところはライバルも多くいたところで、アウトラップから頑張って何とか抑えましたが、僕もまた苦しくて前を追いかけるどころか、後ろから逃げるのが精いっぱい。でも、チームも僕らもちゃんと仕事して、なんとか3位で表彰台に立てて良かったです。その結果、またチャンピオンが獲れて。1年間、いろいろありましたけど、今は本当に嬉しいです。

片岡龍也 選手 [グッドスマイル 初音ミク Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 3位 (シリーズチャンピオン確定)】
スタート直後からプリウスに仕掛けるのは狙っていて、うまくポジションアップに成功したんですけど、スタート直後から懸念していた暑さ……。レースウィークでいちばん温度が高くて、これは暑過ぎやしないかという中で、実際にタイムは落ちたんですけど、タイヤが踏ん張ってくれてギリギリなんとかなる範囲でレースが進められました。少しレンジを外した中でもタイヤが頑張ってくれたので、今日の結果につなげることができたんじゃないかと思います。僕自身、タイトルは09年以来ですから、5年ぶりですね! 谷口さんとふたりでプッシュし続けて、なんとかギリギリ、チャンピオンを獲得できました。

新田守男 選手 [OGT Panasonic PRIUS]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
勝てなかったのは残念ですけど、今回のパフォーマンスだと2位がめいっぱいだったですね。この結果はしょうがないでしょう。僕のスティントで言えば、4号車に抑えられてしまい、もう少し向こうのペースが安定しているかと思ったんですが、予想よりペースが悪かったから、その分11号車に離されちゃったけど、だからと言って11号車の前に出られたかというと、それも難しかったでしょう。無交換ができたという意味において、タイヤのパフォーマンスは悪くありませんでした。今後のためにも、いいデータ取りになったんじゃないでしょうか。

嵯峨宏紀 選手 [OGT Panasonic PRIUS]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
やれる作戦は全部やった中での2位でしたから、勝てなかったのは悔しいですけど、しょうがないかな、と思います。11号車があまりにも速かったので、タイヤ無交換と言う作戦も採ったのですが、力及ばずという感じでした。今年は取りこぼしが多くて、逆に4号車は確実にポイントを獲れる位置に常にいるという戦い方をしたから、チャンピオンを獲れたと思うので、そういうところは素直に見習って、来季につなげたいと思います。

藤井誠暢 選手 [Audi R8 LMS ultra]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
アウディはブレーキが得意なのと、旋回性能がいいので、それとヨコハマさんが用意してくれたタイヤがすごくマッチしたので、今回は調子が良かったですね。ストレートはまだ苦しいところがあるんですけど、それ以外のところで稼げたのが大きくて。今回は走り出しからバランスが良く、選んだタイヤも非常に良かったです。レースに関してもタイヤの保ちが良かったので、基本的に無交換を考えていたんですが、うまくいけば4位も獲れるかもしれないポジションだったので、安全パイでリヤ2本換えました。リヤが温まってきてからのペースも良く、結果的に4位になれて良かった。今年は雨のSUGOで3位しか、いいリザルトがなかったので。

TURNING POINT

コンビ結成3年目にして、ドライバーズチャンピオンを獲得した谷口信輝選手と片岡龍也選手

2011年にチャンピオンを獲得したグッドスマイルレーシング、そして谷口信輝選手が連覇を目指して、新たなパートナーとして起用したのは片岡龍也選手だった。コンビを組むのは初めてではあったものの、スーパー耐久ではチームメイトとして、また異なる車両を操るライバルとして、谷口選手と片岡選手は互いを認め合う中だった。それも、チームから谷口選手が「誰にすべきか?」とたずねられ、「片岡しかいない!」と即答したほどに。09年に片岡選手もチャンピオンを獲得しており、結成当初から「GT300の最強コンビ」と称されたほどだった。

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しかし、タイトル獲得までの道のりは、決して平坦ではなかった。その最大の理由は、彼らがドライブするBMW Z4 GT3に対するBoPが大幅に変更され、「直線番長」とまで呼ばれた、圧倒的なエンジンパフォーマンスを奪われたからだ。それでもパワーを絞られた分、燃費を稼いで奇襲的なピットタイミング、あるいはタイヤを2輪交換や無交換といった戦術を駆使。12年は1勝を挙げて、ランキングは5位。13年は2勝を挙げて、最終戦までチャンピオン候補として残り、敗れたとはいえランキングは3位と徐々に成績を上げていった。

そして、コンビを組んで3年目の今年は、まだ記憶にも新しい岡山、富士での開幕2連勝を達成。その後の2戦で足踏みはあったものの、後半戦は確実に結果に残していく。そして、前回のタイラウンドで3位入賞。ポイントリーダーとして、まだ権利を残す2チームに9ポイントの差をつけて、この最終戦に臨むことになった。

だが、過去の結果からも明らかなとおり、もてぎとZ4の相性は今ひとつ。その上、練習走行では苦戦を強いられ、予選までは「かなり暗かった」(片岡選手)、「セットが決まらず、チームとケンカしそうになった」(谷口選手)とムードは最悪。ところが、「今までになかったセットを、エンジニアが引き出しの奥の奥から、引っ張り出してくれた」と片岡選手。ともに3番手という、たとえライバルに優勝を許そうとも、ドライバーズタイトルがポジションをキープすれば獲得できる結果を得ることとなる。

決勝レースで唯一の障壁となったのは、予想以上に高まった路面温度。このレースウィークで最高だった路面温度は、「当初は無交換も考えていた」(河野高男エンジニア)タイヤを否応なく痛めつけた。その結果、4輪交換を強いられたわけだが、この采配も的中し、本文中にもあるとおり終盤に後続の激しいチャージを受けるも、辛くもポジションキープを果たすこととなった。

簡単に獲れたわけではないタイトルだけに、ポディウムでは「チャンピオン、獲ったど〜!」と明るく観客の声援に応えていた谷口選手が、記者会見では「本当に、片岡のおかげでチャンピオン獲れて、最高です」と言葉を詰まらせた。片岡選手もまた、「チャンピオン獲るために呼んでもらったのに、3年もかかってしまって。だからこそ、よけいに嬉しいですけどね」と、しっかり感動を噛み締めていた。王座奪還なっただけに、次に狙うはもちろん連覇だ!!

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

GT500に関しては、前回のタイからのいい流れを持ってこられた感じです。予選で「D’station ADVAN GT-R」にトラブルが出て走れませんでしたが、走れていればいいポジションが得られていたでしょうし、決勝の結果も違ってきたでしょう。ただ、14番手というスタート位置からタイヤ無交換策を採って、表彰台こそ逃しましたが4位となれて、今シーズンの前半にかなり苦戦したことを思えば、いい形で終われたと思います。佐々木大樹選手は「ポールタイムは見えていた」と言っていましたし、実際不可能な タイムとは思えなかったといった部分では、彼のマキシマムアタックを見てみたかったですね。

「WedsSport ADVAN RC F」に関しては予選、決勝ともベストリザルト。レースラップは終盤きつかったんですけど、なんとか頑張って結果を残してくれたので、来シーズンにつながる内容で終われたかなと思います。

GT500は、今いい感じで上り調子なので、これをシーズンオフに引き継ぎたいですね。昨年のオフは車両開発等の問題であまりテストができなかったんですが、今年はより多くのテストが各社平等にできるので、少しでも差を詰めたいと思います。

GT300に関しては、各車きついレースではありましたが、「グッドスマイル初音ミクZ4」はチーム力とドライバーの力で3位という結果を得て、ドライバーズチャンピオンを獲ってくれたのは非常に良かった。昨年はタイトルを逃しましたので、再び獲れたからには連覇を目指していきます。

GT500はちょっと惜しかった、GT300は本当にドキドキという、楽しいレースをお見せできたかと思っています。常にこのようにファンの皆様に楽しんで頂けるようなレースをお見せできるよう、さらに頑張っていきます。

一年間ご声援頂きありがとうございました。