NEOVA AD09

沢すみれ、NEOVA AD09で
サーキットデビュー。
タイヤを履きこなす──
その先にあった、走るよろこび。

2026.9.11

愛車EG6シビックとともに、少しずつスポーツドライビングの世界へ踏み込んでいる沢すみれ。昨年末のFSWパークトレーニングに続く今回の舞台は、茂原ツインサーキット。普段から履いているADVAN NEOVA AD09を新品に交換し、片岡龍也選手のレッスンを受けながら、本格的なサーキット走行に挑んだ。走り始めのタイムは1分12秒台。そして最後は59秒台へ。でも、この日の収穫は12秒という数字だけではない。タイヤを使うこと、クルマをちゃんと走らせること、そして自分自身が少しずつ上手くなっていくこと。沢にとって、クルマ遊びの新しい扉が開いた一日を追う。

Words:髙田興平 / Ko-hey Takada

Photography:真壁敦史 / Atsushi Makabe

沢すみれが本気で開く
クルマ遊びの新たな扉。

「今までの走行企画で、いちばん楽しかった!」

一日のプログラムを終えた沢すみれが、子供みたいに目を輝かせながらそう言った。

モータースポーツの現場で長く活躍し、サーキットには何度となく足を運んできた沢。現在はひとりのクルマ好きとして、あらためてカーカルチャーの深みへと足を踏み入れている。その相棒が、“すみれ色”にオールペンした最愛のEG6シビック。

これまでに富士スピードウェイのショートコースをショップの走行会で走った経験はある。ただし、そのときは前走車について走る、いわば“カルガモ走行”に近いものだった。自分でラインを考え、ブレーキングポイントを決め、自分のペースで一周を組み立てていく。そんな本格的なサーキット走行は、今回がほぼ初めてとなる。

昨年末にはADVAN FLEVA V701を履いたEG6で、織戸学選手主催の「FSWパークトレーニング」に参加。ブレーキングやコーナリングなど、スポーツドライビングの基礎を学んでいる。そして今回は、その次のステップとしてADVAN NEOVA AD09でサーキットを走る。

今回のサーキット走行に備え、沢のEG6には新品のADVAN NEOVA AD09を装着。サイズはフロント/リアともに205/50R15 86V。AD09は普段から愛用しているが、これまでの使用は街乗りが中心。今回はサーキットというクローズドコースで、その性能の“もう少し先”を初めて体感することになった。そして、サーキット走行の必需品であるヘルメットも、今回は特別なものが横浜ゴムよりレンタルされた。BELL RS7 PRO STAMINA GREY(ベル・アールエスセブン・プロ・スタミナグレー)は、BELL Racingのハイエンドモデル「HP7」の設計をベースに開発されたPROシリーズの四輪モータースポーツ向けフルフェイスヘルメット「RS7」に、マットブラックを基調としてホワイトとグレーの幾何学模様やゴールド系のラインを組み合わせたグラフィック「STAMINA GREY」を施したモデル。カーボンとファイバーグラスを組み合わせた複合素材のシェルを採用するなど、トップカテゴリーのプロドライバーも愛用する逸品である。

沢は普段からEG6にAD09を履いているが、今回はサーキット走行に備えて新品を装着。舞台となったのは千葉県の茂原ツインサーキット。「片岡龍也ドライビングレッスン」のビギナークラスに参加し、いよいよ自分のペースでサーキットを走ることになった。

インストラクターを務める片岡龍也選手は、長年にわたりYOKOHAMA/ADVANとともにSUPER GT・GT300クラスを戦ってきたトップドライバーのひとり。また、横浜ゴムのタイヤ開発にもドライバーとして深く携わっている。レースを通してサーキット走行の極意を知り尽くし、タイヤの使い方も熟知した片岡選手から、愛車の走らせ方を教えてもらう。沢にとって、そんな特別な一日が始まった。

まずは、速さよりも基本から。

午前中は片岡選手による座学からスタートした。

「サーキットは、一か八かを試すところではありません」

いきなり限界まで行くのではなく、自分のできるところから始めて、少しずつ“ドキドキするポイント”を上げていく。まず確認したのはドライビングポジション。ステアリングを握った手が視界を邪魔しない高さに調整し、ステアリングを切っても肘に余裕があり、肩がシートから離れない距離へとシートを合わせていく。

片岡龍也選手は長年にわたりYOKOHAMA/ADVANとともにSUPER GT・GT300クラス(#4 GOODSMILE RACING & TeamUKYO)を戦ってきたレーシングドライバー。横浜ゴムのタイヤ開発にも携わり、レースとタイヤの両方を知る豊富な経験を持つ。現在はプロドライバーとしての活動やSUPER FORMULAなどでの監督業に加え、茂原ツインサーキットで定期開催されている「片岡龍也ドライビングレッスン」を主宰。今回、沢が参加したビギナークラスでは、座学やドライビングポジションの確認から始まり、フルブレーキング、パイロンスラローム、そしてコース走行へと段階的に進んでいく。いきなり速さを求めるのではなく、まずクルマをきちんと動かすことからスポーツドライビングを学んでいくプログラムとなり、その先には、より高度な走りが学べるステップアップクラスも用意されている。

さらに片岡選手が繰り返したのが、力を抜いてリラックスすること、そして遠くを見ること。どれもスポーツドライビングに慣れた人にとっては当たり前の話なのかもしれないが、これからサーキットを走ろうという沢にとっては大切な基本となる。速く走るためのレッスンは、まずそんなところから始まった。

座学を終えると、続いて実技へ。最初のメニューはフルブレーキング。沢のEG6にはABSが装着されていない。そこで、あえてタイヤがロックするところまでブレーキを踏んでみる。どこまで踏めるのか、どこから先でロックするのか、そしてロックした瞬間にクルマはどういう動きをするのか。普段の街乗りではなかなか試すことのできない領域を、安全なサーキットという環境で実際に体験していく。

続いてはコース内側のスペースを使ったパイロンスラローム。右へ、左へとパイロンをかわしながら、ステアリング操作に対してEG6がどう動くのかを身体で覚えていく。

止める、曲げる、そしてアクセルを踏む。

言葉にしてしまえば簡単なことだけれど、そのひとつひとつを正確に行うことは意外なほど難しい。速く走る前に、まずクルマをきちんと動かす。スポーツドライビングの基本を、ここでもう一度身体に叩き込んでいく

片岡龍也流、
コース攻略の考え方。

基礎練習を終えたところで、続いて茂原ツインサーキット東コースの攻略法を学んでいく。1〜2コーナーでは、2コーナーへ向けてクルマを真っ直ぐにした状態でブレーキング。比較的緩やかな3コーナーでは早めに減速を終わらせて、そのぶん早くアクセルを踏む。片岡選手曰く「早寝早起き」。こういう例えが片岡選手らしくて面白い。

複合コーナーでは目の前のひとつだけを見るのではなく、その先にある出口から逆算してラインを作る。角度のきついコーナーではしっかりと速度を落とし、高速コーナーではオーバースピードに注意する。

「自分でコースを思い描いて、その中でアウト・イン・アウトを組んでいく」

止める、曲げる、アクセルを踏むという基本動作に、今度はライン取りという要素が加わっていく。そして一通りの説明を終えた片岡選手が、さらりと言った。

「これができれば、GT300くらいは出られます(笑)」

もちろん片岡選手特有のジョークではあるけれど、突き詰めればプロドライバーがやっていることも基本は同じ。そのひとつひとつを、とんでもない速度と精度でつないでいるということなのだ。

基礎練習を終え、
いよいよコースへ。

茂原ツインサーキット東コースは、短いストレートと大小さまざまなコーナーが次々に現れるテクニカルなコース。4輪のコースレコードは43秒台という世界に対して、沢が最初に記録したタイムは1分12秒台だった。

「めちゃめちゃ難しい!」

そりゃそうだ。座学で聞いたことも、さっきまで練習していたことも、実際にコースへ出れば一度に全部できるわけではない。まだクルマがアクセルを踏める状態になっていないのに踏んでしまえば、当然クルマは外へ膨らんでいく。目線が近ければコーナーの出口を捉えるのも遅れ、その先への準備も後手に回ってしまう。

頭ではわかっている。でも実際にはできない。まずはそこからのスタートとなった。周回するたび、走りが変わっていく。それでも周回を重ねるにつれて、沢の走りには少しずつ余裕が生まれてきた。

目線が先へ行き、ブレーキで速度を落とし、ステアリングでクルマの向きを変えてからアクセルを踏む。最初はバラバラだった操作が少しずつつながり始め、あるセッションからは明らかにアクセルを踏める量も増えていった。

もちろん、AD09のグリップが突然増えたわけではない。沢自身が、AD09のグリップを少しずつ使えるようになってきたのだ。どこまで止まれるのか。どれくらいの速度なら曲がれるのか。そして、どのタイミングからアクセルを踏んでいけるのか。周回を重ねながら、タイヤから伝わってくる情報と自分の操作が少しずつつながっていく。タイヤのことが、少しずつわかり始めてきた。

街では見えなかった、
NEOVA AD09の奥行き。

先にも述べたとおり、ADVAN NEOVA AD09は沢にとって初めて履くタイヤではない。普段からEG6に履いているから、街中でのフィーリングはすでに知っている。ただし当然ながら、公道で試せる領域には限界がある。沢自身、これまで100km/hを超えるような速度域でAD09の性能を試す機会はほとんどなかったという。つまり今回のサーキット走行は、いつも履いているAD09の“その先”を初めて体感する機会でもあった。

千葉県茂原市にある茂原ツインサーキット。今回走行した東コースは全長約1.1km。短いストレートに大小さまざまなコーナーが連続するテクニカルなレイアウトで、ブレーキング、ライン取り、荷重移動、アクセルワークなど、スポーツドライビングの基本を学ぶには格好のステージとなる。

強くブレーキを踏み、タイヤに荷重をかけながらクルマの向きを変え、姿勢が整ったところからアクセルを踏み込んでいく。そんな走りを繰り返す中で、沢自身にもタイヤに対する印象の変化が生まれていた。

「自分では突っ込みすぎた感覚のコーナーでも、しっかり食いついてくれていた」

NEOVA AD09は、ストリートを基本としながら高いサーキット性能も持ち合わせたADVANのハイグリップ・スポーツタイヤ。アウト側では接地面積とトレッド剛性を確保することでドライ性能を追求し、イン側では排水性もしっかりと確保するなど、ストリートからサーキットまで幅広いスポーツドライビングに対応する性能が与えられている。

もちろん、そんなスペックも大切。でも、この日の沢を見ていると、それ以上にわかりやすい変化があった。朝より午後の方が、明らかにAD09を使えていたのである。

タイヤを履くのと、タイヤを履きこなすのは違う。今回のテーマは、たぶんそこにある。

走り終えたトレッドが
物語るもの。

走行を終えた沢がAD09のトレッド面を見て、「タイヤ、こうなったの初めて!」と声を上げた。FFのEG6で茂原東コースを走れば、コースの特性上、右フロントにはかなりの負荷がかかる。それでも新品から使い始めたAD09のトレッド面は大きく荒れることなく、きれいに使えていた。同行した横浜ゴムのスタッフから「綺麗に使えてます」と言われると、「ほんとにー!」と嬉しそうな沢。

新品から一日サーキットを走り、そのタイヤがどう変化したのか。走っている最中にグリップを感じることはもちろん、走り終えたトレッド面の表情を見ることもまた、タイヤを知るひとつの方法であり、サーキットを走る面白さでもある。

そして、この日の沢の変化をいちばん象徴していたのは、タイムではなくこの言葉だった気がする。

「今回、初めて景色が見れた!」

走り始めた頃は、目の前のコーナーを処理するだけで精一杯だった。それが周回を重ねるうちに視線が遠くなり、それまで見えていなかったコースサイドの景色まで自然と目に入るようになった。

朝、片岡選手から教えられた「遠くを見る」という基本が、ここでつながったのである。先が見えれば次の動作を早く考えられるし、ラインにも余裕が生まれる。クルマの動きに対しても、慌てることなく対応できるようになる。

速くなったから景色が見えたのか、それとも景色が見えるようになったから速くなったのか。きっと、その両方なのだと思う。

12秒短縮。その理由。

最後のセッションでは、沢が苦戦していた6〜7コーナーでも走りが変わっていった。それまで7コーナーへ向けてもう一度減速していたところを、6から7へスピードをつないでいく。最終コーナーでも、それまでよりアクセルを踏み込んだ。そしてラストラップ。

「狙い通り、59秒です!」

最初は1分12秒台だったタイムが、最後は59秒台。わずか一日で12秒以上縮まったことになる。それを伝えるスタッフの声もまた、かなり弾んだものになる。

「最後のラップでタイムが出て、あーよかったって思いました(笑)」

「はじめてのサーキット走行とは思えないほど、秘めたセンスを感じさせる走りでしたよ。GT300目指して頑張ってください!」と片岡選手からも太鼓判をいただけた沢すみれ。レッスン終了後のこの笑顔が、サーキットドライングがもたらす奥深い楽しさのすべてを物語っている。

でも面白いのは、タイムそのものじゃない。止め方が変わり、曲げ方が変わり、目線が変わった。アクセルを踏む場所も変わった。そして何より、AD09のグリップを朝より少し多く使えるようになった。そのひとつひとつの積み重ねが、結果として59秒というタイムにつながったのである。

ADVANと一緒に、
次のステージへ。

振り返ってみれば、沢のスポーツドライビングはYOKOHAMA/ADVANのタイヤと一緒に少しずつ進んできた。昨年末のFSWパークトレーニングではFLEVA V701を履き、まずはスポーツドライビングの基本を学んだ。そして今回はNEOVA AD09で、本格的なサーキット走行へと一歩踏み込んだ。

YOKOHAMA/ADVANには、日常でスポーツドライビングを楽しめるFLEVA V701があり、スタイルも重視したAPEX V601もある。そしてストリートとサーキットを高い次元でつなぐNEOVA AD09。その先にはサーキットでさらなる速さを狙うA052があり、本気の競技フィールドへ踏み込めばA050も待っている。

もちろん、これは上に行けばエラいという単純なタイヤのヒエラルキーではない。街で楽しむのか、ワインディングを走るのか、サーキットへ行くのか、それともコンマ1秒を争うのか。ドライバーのスキルや走るシチュエーション、そしてクルマのキャラクターによって選ぶタイヤも変わってくる。

自分が上手くなれば、タイヤとの付き合い方も変わる。そして、その先へ行きたくなれば、さらに深い世界が待っている。沢の場合は今、AD09でもっと走ってみたい。そんな気持ちが芽生え始めたところなのだと思う。

サーキットの先に
見えたもの。

これまで仕事を通じて、サーキットの景色をずっとコースの外側から見てきた沢。それが今、自分のEG6のステアリングを握って、その世界の内側へと入っている。

アクセルを踏めばクルマは速くなる。でも、本当に上手く走ろうと思えば、それだけでは足りない。タイヤがいま何をしているのかを脳と体で敏感に感じ取りながら、自分の操作でクルマをきちんと動かしていく。昨日できなかったことが、今日は少しできるようになる。それだけでクルマはもっと楽しくなるし、上手くなってくると、それまで見えなかったものまで見えるようになる。

「もっと上手くなりたい」

走り終えた沢から、自然にそんな言葉が出てきた。速さを知ることも、タイヤを知ることも、クルマを知ることも、結局はもっと走りたくなるための入口なのかもしれない。

「今までの走行企画で、いちばん楽しかった!」

そう言って笑った沢の目は、本当に子供みたいに輝いていた。どうやら彼女は、またひとつクルマ遊びの深みにハマってしまったらしい。

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