FORMULA DRIFT® JAPAN

FDJ2026開幕戦・富士で
課題と希望が交錯した
YOKOHAMA / ADVAN勢。

2026.5.1

2026年のFORMULA DRIFT® JAPAN(FDJ)が開幕した。初戦の舞台は富士スピードウェイ(静岡県)。2026 FUJI EXTREME DAYSのメインコンテンツとして開催された。4月25日(土)の予選・単走、翌26日(日)の決勝・追走トーナメントともに好天に恵まれ、誰もが極限まで攻めながら白煙をもうもうと巻き上げ、オーディエンスを魅了した。その晴れ舞台で、果敢に攻めて頂点を目指したYOKOHAMA / ADVANアスリートたちの姿を追う。

Words:中三川大地 / Daichi Nakamigawa

Photography:真壁敦史 / Atsushi Makabe

「熱い走り」の裏側に宿る
入念なマシンセットアップ。

「今年、思い切ってエンジンを3.1ℓから3.6ℓにまでアップデートしました。これにNOSを噴いて得られるパワーは1250psほど。最高出力こそ100psアップ程度ながら、トルクは36.0kg-m近くも上がって、怒涛の130kg-m台に。レベルの高いこの闘いの場ではすごくアドバンテージになります。去年、1年かけてタイヤ(ADVAN NEOVA AD09)のことも勉強できたし、今年は総合優勝を狙います!」

2025年からYOKOHAMA / ADVANアスリートとなってFORMULA DRIFT® JAPAN(FDJ)を闘うユキオ・ファウスト(#555 / FAUSTO DRIFT SCHOOL WITH MINI GT AND ISAAC / S15シルビア)は、その強大なチカラを真正面から受け止めるADVAN NEOVA AD09を見ながら、あらためて気持ちを引き締めた。何しろ2025年の開幕戦・富士スピードウェイでは、いきなり予選・単走優勝を手にしている。今年は、さらにその先へ――総合優勝に狙いを定めた。彼の言葉にあるように、ユキオ・ファウストのトレードマークともなったS15シルビアのパワーユニットは、東名パワードの3.6ℓキットを軸に構築した2JZとなった。この仕様に全幅の信頼をおき、パワーがモノをいう富士スピードウェイで勝ちにいく。

ユキオ・ファウスト(#555 / FAUSTO DRIFT SCHOOL WITH MINI GT AND ISAAC / S15シルビア)

4月25日(土)の予選・単走では、肌寒い曇天を吹き飛ばすほどに、ユキオ・ファウストの熱い走りが際立った。攻める姿勢が裏目に出て些細なミスこそあったものの、81ptを獲得して予選・単走を6位で通過している。

26日(日)に開催された決勝・追走トーナメントでは、初戦を軽やかに勝ち抜いたが、しかしその先にあるGREAT8をかけてのバトルが壁となった。強豪である草場佑介(#77 / Team Cusco Racing / GR86)との闘いで、あと一歩及ばず敗北を喫してしまう。悔しい結果であることには間違いないが、それでもユキオ・ファウストは結果を冷静に受け止めた。

「ゾーン1、2を超えてインクリップゾーンにいくまでは、いい走りができていたと思います。だけど、その先にあるゾーン3でマシンコントロールにミスが出てしまった。その影響で草場さんとの位置関係に狂いが出たことから、煙にまかれて視界が奪われてしまいました。マシンのせいじゃない、完全に自分のミス――。でも、調子はいいし、次戦に向けてまたセットアップを模索するので、落ち込んでいるヒマなんてないです」

あくまで前向きなコメントを残す。ユキオ・ファウストは、大きなマシンをものともしない素早い切り返しに、物理学を無視したかのような深いアングル、それに伴って膨大に噴出するタイヤスモークなど、解説者陣が「熱い走り」と評する過激さが持ち味だ。それもまた、緻密なセットアップがもたらす必然だといってもいい。

「予選・単走は、2回挑戦できるし、他者との関係性を考えなくていいので、一発いい得点を狙うためのアグレッシヴなセットアップで挑みます。だけど、決勝・追走トーナメントのチャンスは一度きりだし、追走となれば前の選手に合わせていかなければならない。よりマシンのコントロール性に重きを置くように仕様を変えています。今日、決勝・追走トーナメントの直前にある追走練習走行で、たまたまケングシさんの後ろについたんです。絶対にミスしない安定感を持つ選手ってことを知っているので、練習走行ながらに、けっこう攻めました。ケングシさんとは同じADVAN NEOVA AD09を履くこともあって、とても勉強になりました」

こうしてユキオ・ファウストは、毎戦ごと、いや1本、1ゾーンの走行ごとに、身体で学び、一歩ずつ階段を登る過程にある。未曾有の可能性を感じさせる彼の今シーズンに期待したい。

課題こそが最大のエネルギー。
Team KAZAMAの新章。

前段で取り上げたように、ユキオ・ファウストが信頼を寄せるケングシ(#21 / Team KAZAMA with Moty’s / LEXUS LBX MORIZO RR)は、Team KAZAMA(風間オートサービス)のエースドライバーだ。2026年シーズンは、これまで2年間つくり上げて完成の域に達したレクサスIS500から、LBX MORIZO RR(以下、LBX)へとマシンを改めている。3月に実施された合同練習会のレポートでお伝えしたとおり、FDJを含めたドリフトカルチャーの未来を見据え「現行モデルにして、誰もやったことのないマシンでの挑戦をする」という、チーム代表を務める風間俊治の想いによるものだ。それは、SUVを参戦車両とする世界初の試みともなった。

ケングシ(#21 / Team KAZAMA with Moty’s / LEXUS LBX MORIZO RR)

「いま車両重量は1320kgくらい。ルーフやドアはまだ純正のスチールだったり、軽量化の余地は残されています。それでも、IS500はやれることをすべてやって1390kgだったから、“軽さ”はこれから確かな武器となる。あとはLBXの特性を、僕がどこまで引き出せるか――」

そう語り、闘いに挑んだケングシの予選・単走は、少し様子を確かめるそぶりを見せつつ、いかにも彼らしい流麗なマシン捌きは健在だった。結果は78ptで13位。続く決勝・追走トーナメントでは、初戦での勝利を手にしたあとのTOP16で、中村直樹(#999 / TEAM VALINO × N-STYLE / ZN8 GR86)との対戦となる。

勝負の決め手は追走側にあった。ケングシの追走では、中村のスピーディーかつキレのあるドリフトに対して、充分にシンクロできたとは言い難かった。逆に中村はケングシの走りに対して、同じライン、アングルで張り付いて離れないほどに、ピタリと一致したまま走りきった。そのため、勝利は中村の手に渡った。その後、中村はトントン拍子で勝ち進み、決勝・追走トーナメントで総合優勝を手にしている。マシンもドライバーも完成の域に達していて、かつノリにノッて勝ち進んだ相手を前に、LBXの熟成不足が露呈したのかもしれない。

「マシンはとても調子がいい。だけど、このLBXの強みを自分がうまく引き出せていないと実感しました。たとえば切り返しのとき。IS500はホイールベースが長くて、操作に対して時間差があり、流される動きもあったんです。だから、それを見越してワンテンポ早く切り返して、詰めていきました。しかし、LBXは軽くてショートホイールベースなので、動きが速く、瞬時に止まる。この挙動に慣れて、もっと自分がLBXと同化していかなければならない。今後、タイヤの使いかたを含めて足まわりにも時間をかけて、ベストアンサーを見出したい」

ケングシは正直に現状を吐露する。シェイクダウンを含めて、まだ本格的な走行が2回目なのだから当然だろう。そうした意味では、ケングシとLBXとのストーリーはまだ始まったばかりだといえる。IS500のように「完璧に仕上がった」と自信を持って発言できる日を、ケングシのみならず、チームメンバーの誰もが一刻も早く手繰り寄せようとしていた。

「シェイクダウンで、予選・単走13位。決勝・追走トーナメントではベスト16へ。まだ完成とはいえない状態のLBXを、ケングシがうまく操ってくれたことには感謝したい。我々は第2戦(鈴鹿ツインサーキット)までに、ケングシがアレコレと悩まないくらいの状態にまで仕上げていかなければならない。そのうえでパワー、軽量性能、トラクションなど、マシン性能に起因するアドバンテージを、ケングシに与えなければならない」

と、チーム代表、風間はあらためて決意表明する。チーム代表としてのプレッシャーが重くのしかかっているはずなのに、ケングシとLBXとでこれから始まるストーリーを、彼自身、どこか楽しみにしているようでもあった。

「ケングシ×LBX」の挑戦に代表されるよう、チーム一丸となって勝利を目指すTeam KAZAMAと、長らく歩みをともにして闘ってきたシアム・ベンジャミン(#83 / Team KAZAMA with Moty’s / S15 シルビア)もいる。今回、予選・単走では75ptを獲得して15位で通過したが、決勝・追走トーナメントではあえなく初戦で敗退を喫した。しかし、ベテランらしい安定した走りをもって、今後、飛躍する可能性は充分にある。

「実は練習走行のときにエンジンブローしてしまったので、一晩で載せ替えてもらって闘いに挑みました。そんな突貫工事をしてくれたチームの皆さんには感謝しています。結果は負けてしまいましたが、もっとマシンを煮詰めて勝利を目指したい」

シアム・ベンジャミン(#83 / Team KAZAMA with Moty’s / S15 シルビア)

そう語るシアム・ベンジャミンは、勢いに乗ればどこまでも勝ち進んでくれそうな底力を秘めている。突然のトラブルに対しても冷静沈着に対応し、何がなんでも出走にまでこぎ着けるTeam KAZAMAとともに、彼もまた勝利を目指し続けている。

NASCAR V8の雄叫びが
会場を熱狂と興奮に包む。

2026年シーズンは昨年と同じく、A90スープラで挑むのは齋藤太吾(#87 / Fat Five Racing / A90 スープラ)だ。大勢のファンから最大の賛辞をこめて「凶暴なマシン」と称される理由はパワーユニットにある。NASCARのTRD製5.8ℓV8自然吸気エンジンを搭載。NOSを併用しながら10000rpmで回し、1000ps近くを引き出すのだから雄叫びをあげるのも当然だ。

すっかりFDJの風物詩となったこのA90スープラの雄叫びは、予選・単走から健在だった。結果は78ptで14位にとどまるも、記録より記憶を植え付ける齋藤節は健在だ。それでも記録(結果)を残すためのクレバーな走りも見逃せない。イチかバチかの闘いでは決して勝てないことは、齋藤本人が一番よくわかっている。「とにかく予選・単走を通過すること。決勝・追走トーナメントで順調に駒を進めること」を己に課した。

齋藤太吾(#87 / Fat Five Racing / A90 スープラ)

「2年前、A90スープラが壊れてアルテッツァで参戦したり。去年もまたトラブルで思うように走れないときがあった。だけど、今回、トラブルはまったくないし、マシンはいい状態に仕上がっている。今年こそは――の気持ちで挑みたい」

FDJを含めたドリフト界隈で数多くのノウハウがあり、部品調達もしやすいエンジン――たとえば2JZやRBに比べて、このV8エンジンは一筋縄ではいかない。アメリカで組み立てられて手元に届く特殊なエンジンゆえに、エンジントラブルに対して即座の対応が難しい。故障してもすぐに交換できる部品がないのは日常茶飯事だ。NASCARで想定される使いかたを逸脱しているがゆえ、トラブルの可能性は加速度的に増すだろう。だからこそ齋藤は、スペアエンジンを丸ごと1基用意している。

果たして2026年は、そうした齋藤の努力は実を結ぶのか。今回、残念ながら決勝・追走トーナメントでは、TOP16で敗退してしまった。しかし、誰よりも個性的で凶暴で、そしてオーディエンスを魅了させるA90スープラを操って、勝ちを狙う姿勢は変わらない。Team KAZAMAが世界初の「SUV×ドリフト」という挑戦を己に課しているのと同じく、齋藤はNASCARのエンジンを使って「唯一無二の存在感」という個性を極めようとしている。

YouTuberだからこその挑戦。
共感と共有を力に変えて――。

昨年からYOKOHAMA / ADVANアスリートとして挑戦を開始した杏仁さん(#20 / Teamアカデミック / S15 シルビア)は、予選・単走を28位(71pt)で通過して決勝・追走トーナメントへ。悔しくもその初戦で敗退してしまったが、未来へ向けて確かな手応えを感じ取っていたようだ。

「結果は残念ですが、ミスした部分の認識と、これから改善すべき部分が明確となった、意義のある負けでした。それらを含めて次の課題があっという間に見つかるので迷いはない。次の闘いへ向けて、シミュレーターで練習したくてウズウズしています。僕自身に加えて、チーム力があがったことも大きい。皆、自分の役割をちゃんとこなしてくれるからこそ、僕は運転に集中できる。YouTuberだからといって話題づくりに終始せず、結果を残したいですね」

杏仁さん(#20 / Teamアカデミック / S15 シルビア)

3年目の挑戦にして杏仁さんと同じくYouTuberの側面を持つサム・ルーカス(#11 / Team SAMMIT / S15 シルビア)もまた予選・単走を32位(69pt)でギリギリ通過してみせた。昨年、予選・単走での32位通過にさえ苦しんだ経験を持つ彼にとっては、大いなる一歩だといえる。

「予選・単走のクリアは、ひとまず喜んでいます。富士の本コースで追走バトルできることに、本当にワクワクしました。結果は負けてしまいましたが、今年はマシンも大幅にアップデートしたので、目標は常に上位を狙うこと。そして、もちろん頂点に立つことです」

と、両選手とも未来へ向けての意気込みを述べた。ふたりともYouTuberとして活躍しているだけに、FDJに新風を巻き起こしてくれるキーパーソンだといえる。事実、杏仁さんのもとには大勢のファン(視聴者)が駆けつけ、常にスマホのカメラを向ける光景と、サインを求める行列が絶えなかった。サム・ルーカスもまた然り。彼のまわりには国際色豊かな仲間たちが集い、FDJの魅力を発信しながら、勝ちを目指している。

サム・ルーカス(#11 / Team SAMMIT / S15 シルビア)

FDJ2026の開幕戦・富士スピードウェイ。結果のみを俯瞰してみると、YOKOHAMA / ADVANアスリートたちは、誰もが伸び悩み、上位進出ができなかった。しかし、それを悲観的に捉える必要はないだろう。誰もがその敗北の悔しさを真摯に受け止め、冷静に理由を分析し、未来へ向けての糧としていたのが印象に残る。そして、今回エントリーした6名全員が、決勝・追走トーナメントへと駒を進めたことも特筆に値する。

富士スピードウェイで露呈した課題は、すべて未来への布石となる。来るべき第2ラウンドは、5月16日(土)~17日(日)、鈴鹿ツインサーキットだ。富士スピードウェイとはまた表情の異なるテクニカルコースで、YOKOHAMA / ADVANアスリート勢はいかなる闘いを、ドラマを見せてくれるのか。

波乱万丈のドラマの先にあるのはただひとつ――総合優勝だ。
その瞬間を、この目で見届けたい。

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