FORMULA DRIFT® JAPAN
常識を、横へ流せ!
SUV×ドリフトに込めた
“KAZAMA”魂と心意気。
2026.4.23
2026年4月25日(土)に開幕する『FORMULA DRIFT® JAPAN 2026』に向けて、風間オートサービスのレーシングチーム『Team KAZAMA with Moty’s』は、栃木県那須塩原にあるつくるまサーキットでの合同練習会を実施した。それは、世界初だというSUVベースのFDJマシン『レクサスLBX MORIZO RR』のシェイクダウンテストの場となった。ステアリングを握るのはエースドライバーのケングシだ。その模様を切り取りながら、風間オートサービスのFDJに懸ける想いを紐解きたい。
Words:中三川大地 / Daichi Nakamigawa
Photography:望月勇輝 / Yuki Mochizuki(Weekend.)
「SUVのFDJマシン」という
世界初の挑戦に込めた想い。
「2年間、レクサスIS500をじっくりと育ててきて、本当にマシンの状態が良くなっていたんです。パワフルなのに本当に乗りやすくて、乗るたびにその完成度の高さを実感しました。実際、2025年は富士スピードウェイで優勝できたし、シリーズランキングでも4位に入りました。もちろん、4位は決して満足できる結果ではありません。だけど、マシンに対してネガティヴはない、完璧なマシンへと昇華していたのは事実です」
『Team KAZAMA(風間オートサービス)』のエースドライバーであるケングシは、そういいながら2025年シーズンのFORMULA DRIFT® JAPAN(FDJ)を終えた。

カリフォルニア州に在住し、日米のFORMULA DRIFT®シリーズにダブルエントリーを続けるのがケングシだ。FDJでは長らく風間オートサービス(Team KAZAMA)のエースドライバーを務めてきた。2025年シーズンはLEXUS IS500 F SPORT Performance DRIFTを駆って開幕戦富士スピードウェイで優勝、シリーズランキング4位につけた。
あれから5ヶ月あまりが経った2026年3月。今シーズンの開幕に向けて、栃木県那須塩原にあるつくるまサーキットで『Team KAZAMA(風間オートサービス)』の合同練習会が実施された。例年同様、彼らはそれがライフワークのごとくFDJへと挑戦する。今年の正式なチーム名称は『Team KAZAMA with Moty’s』だ。
ケングシに、2025年の余韻に浸る暇はなかった。アメリカから駆けつけた彼を待っていたのは、熟成極まるIS500(LEXUS IS500 F SPORT Performance DRIFT)ではない。同じレクサスではあるものの、姿カタチがまるで違うLBX MORIZO RR(以下、LBX)である。2026年シーズン、ケングシはこのマシンを駆って、FDJのチャンピオンを目指すという。今回の合同練習会は、その旗揚げというべきシェイクダウンテストとなった。


風間オートサービスを母体としたチームとして2026年シーズンもFDJへと参戦する。チーム名は『Team KAZAMA with Moty’s』。名前が示す通り、極限下で使用されるレーシングオイルの開発・生産に定評があるMoty’sとタッグを組んでの参戦となる。そのほかにも多数のパーツメーカー、サプライヤーが彼らの挑戦を支える。
『Team KAZAMA with Moty’s』の代表を務める風間俊治はいう。
「我々のチームは、チャンピオンを狙うのは当然のこと。そのうえでFDJという競技や、ドリフトカルチャーを賑やかしたいという気持ちがあります。勝つためのことだけを考えたら、よりディメンジョンに優れていて、ノウハウをたくさん持っているスポーツカーがたくさんある。だけどね、新車販売を終えたモデルなら未来を見出せないし、まわりと同じクルマばかりになってしまう。そう思うからこそ、昨年までのIS500にはひと区切りをつけたんです。誰もやっていないところを切り拓いていかなければ、参戦する意味はない――」

風間オートサービスおよび『Team KAZAMA with Moty’s』の代表を務める風間俊治。「チームの勝利を目指すのは大前提。さらにFDJを含むドリフト競技やカルチャー自体を発展させたい」と願う。毎年、常に複数台でFDJに参戦するほか、彼のもとでFDJ3を闘う選手もいる。
彼はチューナー(ビルダー)としてのマシン製作から、チームの運営、監督業までをこなし、ドリフトの世界を牽引する第一人者である。今年、IS500からLBXへとマシンをスイッチするという大英断を下したが、それもドリフト競技やカルチャーの未来を見据えてのことだった。
「誰もやっていないところ」というのは紛れもない事実だ。レクサスはLBXに対して「レーシングドライバーと共に鍛え上げたハイパフォーマンスモデル」と表現する。しかし、それがいかにハイパフォーマンスモデルでも、一般的にはSUVと括られるはずだ。そしてアメリカで開催されるFORMULA DRIFT®では、安全性の観点からSUVを使用するのは禁止されている。
それでも風間は諦めなかった。LBXはアメリカで一般化するフルサイズ級ではなく、GRカローラと近似するようなコンパクトSUVだ。GRカローラはすでに数多くの参戦実績があるため、彼は事務局に掛け合い、特例措置として参戦を認めてもらった。結果的にこのLBXは「4WDのコンパクトSUVをFRに改め、FDJ参戦マシンとして成立させた」世界で初めての事例となった。
“軽量コンパクト”ボディを
1200psオーバーで振り回す。
一般的な立ち位置がSUVであっても、またレクサスのなかではコンパクトクラスでも、LBXは可能性を秘めている。なにより、IS500に比べて軽量性能に秀でていることが大きい。IS500はカタログスペックにおける車両重量は1720kgもあった。チームは精魂込めてマシンを仕上げるなかで軽量化を突き詰めてきたが、それでも1400kg弱に止まったという。しかしLBXは純正時点で1440kg(MORIZO RR/6MTモデル)しかない。ここから徹底的に軽量化を施すことで、1300kg切りを目指している最中だという。
それに対してIS500と同じパワーユニットを積む。東名パワードの3.6ℓストローカーキットを軸にフルチューニングした2JZ-GTEで、タービンはHKS製GT75100BBを組み合わせ、NOSも併用する。轟音とともに、1200psを軽く超えるパワーが解き放たれ、サムソナス製5速シーケンシャルドグミッション、ブルドック製クイックチェンジデフを介して、ADVAN NEOVA AD09へと伝達される。まさに風間オートサービスの真骨頂というべきパワートレインが、先に述べたLBXの軽量ボディに収まる。と、聞くと、期待は否応なく高まる。
「軽く流しただけで、クルマが軽いってことはすぐに伝わりました。それに、重量云々を抜きにしても、エンジン自体がIS500よりもずっと速い。微細に至るまで妥協なく組んでいただいたエンジニアやメカニックには感謝しかありません。相当に期待ができます。あと、LBXってIS500よりホイールベースが短いんです。このほうが素早くドリフトの切り返しができるので、キマれば高得点を狙えるし、オーディエンスを沸かすこともできると思います。しかし、ホイールベースが長いと逆にマシンが安定するので走りやすく、実際にそれはIS500の良さでもありました。そのあたりは一長一短ですね。とにかく、できるだけ早くLBXのセッティングを詰めていかなければなりません」
と、ケングシは徐々にペースアップをしながら、LBXの感触を、その一挙手一投足を確かめていく。マシンと身体を一体化させ、自分の手足のように華麗に扱いこなす、道のりは始まったばかりだ。LBXはケングシにとって久々の右ハンドルでもあった。「走り始めたら違和感がなくなるので、問題ありません!」と彼は笑っていたものの、その陰ではシミュレーターで相当に時間をかけて右ハンドルの感覚を取り戻そうとしたという。普段乗りの移動車も敢えて右ハンドルに変えてまで、慣れようともしていた。水面を華麗に泳ぐ白鳥のごとく、やはりトップドライバーたるもの陰の努力を忘れないことを知った。


世界で初めてSUVがFORMULA DRIFT®の場に姿を現す。その名も「LEXUS LBX MORIZO RR/Drift」。アーティシャンスピリッツのボディパーツによりワイド化され、パワーユニットは東名パワードの3.6ℓストローカーキットを軸にフルチューニングした2JZ-GTE。HKS製GT75100BBを組み合わせ、NOSも併用することで最高出力1200psオーバーへ。1300kg切りを目指す軽量ボディや、GRカローラよりも短い2580mmのホイールベースも武器となる。
課題を武器に変える
チームの結束力。
LBXのシェイクダウンテストは、課題だって数多く発見された。サスペンションレイアウトの関係か、トラクションをかけるとアライメントが必要以上に変化してトラクションが抜けてしまうこと。SUVパッケージのためか、フルバケットシートへと置き換えるとポジション(座面)が低すぎて視認性に問題が出ること。特にアームの再構築に向ける道筋や、サスペンションセッティングは、幾度となく走り、その感触を確かめ合いながら、開幕戦までにアンサーを見つける計画となった。
問題は少なくなかったが、誰もが栄えある未来に期待して、常に前を見ていたのが印象的だった。チームメンバーの誰もが、己の役割を忠実にこなしながら、現場で出来うる改善策を見出していく。いや、チームメンバーだけではない。この日、テクニカルパートナーとしてパーツを供給する数多くのパーツメーカーがシェイクダウンテストに駆けつけ、課題を共有した。レーシングオイルメーカーにして、風間オートサービスが全幅の信頼を寄せるMoty’s、ドライバーとマシンとの接点であるシートを担当するBRIDE、ワイドボディへと見違えさせたアーティシャンスピリッツもいた。
アーティシャンスピリッツが製作したフロント75mm、リヤ85mmワイドとなるブリスターフェンダーに収まるのは、F:255/35R19 96W、R:275/40R19 105WのADVAN NEOVA AD09だ。サスペンションセッティングと同時に、適正空気圧などを含めたタイヤの使いかただって、これから研究していかなければならない。


フロント75mm、リヤ85mm拡がるワイドフェンダーに、F:255/35R19 96W、R:275/40R19 105WのADVAN NEOVA AD09がピタリと一致する。Team KAZAMAはFDJで常にYOKOHAMA / ADVANを装着してきただけに、空気圧設定などのノウハウ、ケングシの走らせかたなどを含めて、LBXへのベストアンサーも早々に見つけ出すだろう。
さらにこの合同練習会には、テクニカルパートナーばかりか、複数のメディアと、さらに他チームまでを呼んでいたのが印象的だ。シェイクダウンテストともなれば、他人に知られたくない事柄も出てくるだろう。なのに秘密裏で実施せず、あえて公にアピールする。これもまた、風間俊治の流儀かもしれない。それはLBXを投入した理由と同じ。「FDJという競技や、ドリフトカルチャーを盛り上げ、深く根付かせたい」という想いである。
大湯都史樹、2年目の挑戦は
どんな走りで魅せてくれるのか。
『Team KAZAMA with Moty’s』にはもうひとり。昨年から加入した注目の新人選手がいる。SUPER GT(GT500)やスーパーフォーミュラで活躍するトップドライバーの大湯都史樹だ。2025年シーズンはデビューイヤーながらも、闘いを重ねるたびに目覚ましい成長を遂げた。ドリフト初心者にとっては特に難しい峠コースの様相を呈するグランスノー奥伊吹でFINALへと進出し、総合2位を獲得したのだから、もはや凄腕のドリフトドライバーだ。
大湯は今年もフルカーボンのGR86を相棒にFDJを闘う。昨年はカーボン地を露出したままの黒いマシンだったが、2026年シーズンは装い新たにTeam KAZAMAカラーリングとなった。

SUPER GT(GT500)やスーパーフォーミュラで活躍するドライバーの大湯都史樹は、フルカーボンのGR86で2025年シーズンからFDJへと参戦している。昨年はシーズン後半になるにつれて頭角を表した。トップドライバーならではの速いドリフトは、ルーキーイヤーとは思えないほどの鮮やかさと迫力を持っていた。参戦2年目はどんな活躍を見せてくれるのだろうか。
「去年はルールさえもわからない状態から始めたのですが、ドリフトの基礎的な走らせかたから、戦略など、皆さまに教えていただきながら、もちろん自分でも可能な限り練習を重ねてここまできました。去年とは比べものにならないくらい、乗れていると思います。とはいえ、まだ“自由自在”と断言できるほどに扱い切れていないので、今日は足のセットをアレコレと試しながら走りたいと思っています」
と、いいながらコースへ出て、いきなり真横へ向けていく様子には、すっかり熟練ドライバーの凄みをたたえている。開幕戦の富士スピードウェイは、他のレーススケジュールの関係で悔しくも欠場するが、2026年、彼はいったいどのような走りで我々を魅了させてくれるのか。
シンガポール出身のベテランドライバーにして、風間オートサービスとともにFDJを闘ってきたシアム・ベンジャミンの仕上がりも上々のようだ。マシンは昨年に引き続きS15シルビアだ。ここ数年、思うような結果が残せてはいないものの、シンガポールでは名実ともにトップドライバーであり、FDJでも勝利を手にする実力を充分に秘めている。今年の闘いに期待したい。

来るべき開幕戦はすぐそこに迫っている。4月25日(土)、26(日)に富士スピードウェイでは、いったいどんなバトルが、その果てにあるドラマが待っているのか――。少なくともSUVドリフトという新章はすでに動き出した。『Team KAZAMA with Moty’s』は、メンバーたち全員の心技体を結集させて、ドリフトの未来を書き換えていく――。
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