Event

JDMカルチャーを凝縮して
皆で創りあげた特別な夜。
Red Bull TOKYO DRIFT 2026

2026.4.7

『Red Bull TOKYO DRIFT』は概念的だ。もちろん空想ではないし、夢物語でもない。紛れもない現実でありながら、カテゴライズして説明しようとすると、途端に迷宮に入り込む。人は「JDMカルチャーっぽいし、いかにもRed Bullっぽいよね」と概念的に印象を述べる。だが、その“っぽさ”の正体こそが、イベントの核心そのものなのかもしれない。2025年の初開催に続き、2026年3月21日(土)に開催された『Red Bull TOKYO DRIFT 2026』。そのリアルな姿と、大黒柱として存在するJDMカーカルチャーに想いを馳せる。

Words:中三川大地 / Daichi Nakamigawa

Photography:真壁敦史 / Atsushi Makabe

「開かれているのに、閉じている」という魅力。

普段はトラックが行き交う巨大な物流倉庫が、あらゆるカルチャーが集結する特別なステージへと豹変した。『Red Bull TOKYO DRIFT 2025』と銘打たれ、2025年10月に開催されたイベントは、いまや世界から注目を集めるJDMカーカルチャーを凝縮した一夜となった。

ストリートカーカルチャーを軸足に据えながら、ミュージックやファッション、エクストリームスポーツなど異なるカルチャーが交差し、ひとつの空間に溶け合っていく。いかにもRed Bullらしい世界観が広がっていた。それは単なるイベントではなく、カルチャーがカルチャーを増幅させるステージとして機能していた。

あれから半年も経たないうちに、ふたたびあの熱狂と興奮が返ってきた。前回は「開催は10月某日」と、ある程度言葉を濁さなければならなかった。秘密裏に開催されたシークレットイベントだったからだ。しかし今回は、日時が2026年3月21日(土)、場所はESR横浜幸浦ディストリビューションセンターと明言できる。イベント自体は招待制ながらも、限定コラボレーションアイテム(Tokyo Drive Car Club)の購入によってチケットの入手が可能となるなど、一般にも門戸が開かれたのだ。

2026年3月21日(土)に神奈川県横浜市にある物流倉庫『ESR横浜幸浦ディストリビューションセンター3』で開催された『Red Bull TOKYO DRIFT 2026』。約500台にもわたる車両展示のほか、倉庫内に設営した特設コースおよびランプウェイで15台ものマシンがドリフトパフォーマンスを披露し、会場を熱狂と興奮に包んだ。ドリフトのほかにも、WRC、F1など世界で活躍するレッドブル・アスリートが集結した。

結果として来場者は約5000人を数えることになった。それは『Red Bull TOKYO DRIFT』が、真の意味で初めて幕を開けた瞬間だ。それでも事前情報は来場者のみに知らされ、秘密めいた雰囲気は健在だった。情報は最小限。噂と熱量だけが人を動かす。それは、誰が告知するわけでもなく自然発生的に集まり、クルマ遊びに興じ、やがてムーブメントとなり、カルチャーとして確立されていった――往年のチューニングカーシーンの空気感を彷彿とさせる。

解釈と創造によって発展するJDMカルチャー。

規模や来場者を含めて、前回より大幅にスケールアップしていた。4階建ての巨大な物流倉庫には、老舗メーカーやレジェンドカービルダー、そしてRed Bullが選び抜いた個人オーナーたちのクルマが集結した。チューニングカーやカスタムカー、レーシングカーは約500台を数える。そのほとんどは日本のカーカルチャーが育んだJDMである。

JDMとはジャパン・ドメスティック・マーケットの略であり、もともとはアメリカにある日本仕様車、または彼の地で日本仕様にカスタムしたクルマのことを指す言葉だった。日本車全般をそう括ることもある。しかし、輸入車であろうとも、ここに集ったすべてをJDMだと括りたい。たとえ欧州のスーパースポーツカーであっても、日本の技術をもってさらに魅力を高められたものはメイド・イン・ジャパンのJDMカーであり、カルチャーだといえる。

つまりJDMとは単なる出自ではなく、解釈と創造によって定義されるものだ。そんなJDMカルチャーと、Red Bullが創りだす世界に共感し、共鳴し――支えたのがYOKOHAMA / ADVANだった。

実際、ここに集った約500台のうち、YOKOHAMA / ADVANを選んだクルマはとても多かった。数十年来にわたって信頼を置く老舗チューナーやビルダーはもちろん、カリスマオーナーたちのなかにもYOKOHAMA / ADVANユーザーが大勢いた。さりげなく足もとを委ねているもの、ステッカーやホワイトレターをあしらって誇らしげにアピールしている人たちも多い。それは特別に選ばれているというより、自然とここにあるような存在――この場に集う多様な表現と性能、その根底を支える前提としてそこにあった。

日本のチューニングカーシーンを支えて世界で認められるトップチューナーから、気鋭のパーツブランド、ホイールメーカーなど、YOKOHAMA / ADVANを率先して取り入れるJDMが数多く存在する。ここに集ったクルマの国籍や年代、カスタムの方向性は多種多様ながら、そのどれも日本が育み、世界へと羽ばたいた立派なJDMカルチャーだと括りたい。

「Red Bullだからこその独創的な視点と、相手が超巨大企業だろうがチューナーの親父だろうが、“おもしろい”と思ったらどんどん巻き込んでいって、思い描いたことを実行してみせる行動力には驚くよね。俺はこういうイベントをもっと盛り上げたいし、何よりも自分が楽しみたい。だから、いままでもこれからも協力は惜しまない」

と、リバティーウォーク(LBWK)の代表を務める加藤 渉は述べる。彼もまたYOKOHAMA / ADVANに恋焦がれて育ち、いまも率先して愛車に組み合わせるユーザーである。この日、会場にはフェラーリF40のほか何台ものLBワークスマシンが、その意志を体現するかのように来場者を魅了していた。その存在自体が、このカルチャーに説得力を与えていた。

「固定概念を崩したい。他人とは違うことにこそ、価値がある。その違いを面白がって、そこに生まれる価値を追い求める」というのがリバティーウォークのカスタム精神だと、加藤は過去に話していた。これは、『Red Bull TOKYO DRIFT』の根幹とも寸分違わず重なる。ニッポンのカスタム魂で世界に挑み、結果を残してきた男は、だからこそこの場に共感していた。

加藤 渉率いるリバティーウォークが創りあげたLBワークスという名の“改造車”は、日本を飛び越え世界に羽ばたくJDMの象徴的存在だ。会場にはフェラーリF40にR35GT-R、そしてGRスープラ、マスタング、ハコスカなど多種多様なLBワークスがあった。そのバラエティ豊かな顔ぶれこそ、リバティーウォークらしさであり、『Red Bull TOKYO DRIFT』らしさだ。

カリスマの共演に沸くドリフトパフォーマンス。

JDMカルチャーを軸にしたRed BullとYOKOHAMA / ADVANとの繋がり。その象徴こそ、イベントのハイライトともいえるドリフト・パフォーマンスだろう。この日、15台におよぶドリフトマシンやラリーカーが集結し、3回にわたってパフォーマンスが実施された。

日米のFDJで数年にわたって活躍した箕輪大也は、現在、セカンドステージとしての挑戦を開始した。TGR WRCチャレンジプログラムの5期生として、WRCの頂点を目指すためにフィンランドで修行中だ。そんな箕輪もこの日は、古巣であるクスコレーシングのRed Bull GRカローラで華麗なドリフトを披露。さらにRed Bull Drift MINIのドライバーという大役を務めた。

YOKOHAMA / ADVAN勢は4名だ。まずは日米のFORMULA DRIFTで結果を残してきた弱冠16歳の箕輪大也である。2026年は、WRCでの頂点を見据えたラリーへの挑戦のため、TGR WRCチャレンジプログラムの5期生としてフィンランドで修行中だ。箕輪はこの日、彼のことを待っていたかのようなクスコレーシングのRed Bull GRカローラを操った。しかもADVANカラーを纏うGR86を駆るレジェンドドライバー、織戸 学とのツインドリフトまで披露してくれた。世代を越え、互いに立場も違うドライバー同士の、ドリフトカルチャーでの刹那な交わり。それは単なる共演ではなく、魂を継承するかのような瞬間だった。

ADVANカラーを纏うGR86でドリフトを披露したのはレジェンドドライバーの代表格となった織戸 学だ。『Red Bull TOKYO DRIFT 2026』が醸し出す空気感に対して、若かりし頃、夜な夜なクルマと向き合った時代を重ねていた。また、会場には織戸 学の娘にして、新世代のインフルエンサーおよびレーシングドライバーとして活動する織戸茉彩も駆けつけた。

さらにYOKOHAMA / ADVANアスリートとして、2026年のFORMULA DRIFT JAPAN(FDJ)に挑戦する山中真生(Team KAZAMA)や、杏仁さん(Team academic with watanabe)も、先に述べた15台のドリフト走行に加わった。

「ドリフトっていうと、アウトローだとか、マニアックなイメージを持たれる方もまだ大勢いらっしゃると思うんです。だけど、こんなイベントをきっかけにモータースポーツとしてのドリフト競技をもっと知っていただけたら嬉しい。ここに集った選手たちは日本を代表する、いや、世界を代表するトップドライバーばかり。そんななかに加わることができたことは光栄に思います。だからこそ、今日は全力、全開でオーディエンスを沸かせたいと思う」

と、山中と杏仁さんは、FDJでしのぎを削る者同士として、似たような言葉を発していた。競技とは違うデモンストレーションながら、ドリフトカルチャーの担い手として、課せられた役目を果たそうとして、鮮烈な走りを披露した。

もっともJDMを体現する『Red Bull Drift MINI』

さらにはRed Bullにとっても異例の事柄にして、今回の目玉となったのが『Red Bull Drift MINI』だ。大きなRed Bull Energy Drinkの缶を背負い込んで、日本全国のオフィス街や繁華街、またはイベント会場にサンプリングに繰り出すRed Bull MINIが、ドリフトマシンと化したのである。

世界初となるRed Bull MINIのドリフトマシンが、この日、初めて公の面で全開ドリフトを披露した。名門クスコレーシングが製作したもので、パワートレインや足まわりなどメカニズムの多くは慣れ親しんだシルビアを使う。エンジンもSRで、2.2ℓ化にタービン交換などで、最高出力450~500ps。昨今のドリフトマシンの前では決して高出力ではないものの、抜群にコントローラブルなマシンへと仕上がっているという。

製作を担ったのはクスコレーシングだ。慣れ親しんだシルビアのSRエンジンを2.2ℓ化して搭載。駆動系や足まわりなどもシルビアにまつわるパーツやノウハウを活かした。なお、エス・アンド・カンパニーの手によりガルウイングドアとなり、名実ともに翼を授けられている。

そのうえで、先に述べた箕輪が、ADVAN NEOVA AD09を使って迫力のドリフトパフォーマンスを披露した。ラリーの世界で揉まれている最中だからか、走りの精度がさらに増している。渡欧という経験をしていることで、さらに凛々しくたくましく、大人びてみえた。そんな箕輪が、いまここにいる意味と、これから向かうべき未来を、圧巻の走りで代弁してくれているようだった。言葉で美辞麗句を並べ立てるのではなく、パフォーマンスで示そうとする。その姿勢が、オーディエンスにも自然と伝わっていく。

この色鮮やかな『Red Bull Drift MINI』こそが、先に述べたJDMの概念をもっとも純粋なかたちで体現していた。MINIはヨーロピアンカーだし、Red Bullにしても海外からやってきたもの。しかし、大勢の脳裏に忘れられないほどの迫力を植え付けたこのマシンは、歴史と伝統に裏打ちされた100%メイド・イン・ジャパンの、つまりはJDMのドリフトマシンだ。ドライバーもまた日本のドリフトシーンで生まれ育ち、世界に羽ばたき始めた新世代である。

JDMカルチャーの進化と深化を願って――。

そんな『Red Bull TOKYO DRIFT 2026』を体験したうえで、誰もが最大限のリスペクトをもって、こう口を揃えた。「Red Bullはいったい、この次は何をしでかしてくれるのか――」と。それがイベントの成功を物語っている証左であり、そんなRed Bullに最大の賛辞を贈りたい。

だが、それがどんなに巨大なイベントへと成長しても、その根底を支えている最大の功労者を忘れてはならない。それはひたすら手を汚し汗をかいてJDMカーをつくる職人たちであり、全身全霊をかけて乗りこなそうとするオーナーたちであり、そうした刺激的なクルマを見て触って写真を撮って、願わくば自分だけの1台を手にしたいと願うファンたちということだ。

1台1台にかけがえのない思い出が詰まったクルマをまえに、JDMカルチャーのより一層の進化と深化を心より願う。それは誰かが与えるものではなく、関わるすべての人たちによって更新され続けていくものなのだろう。つまり『Red Bull TOKYO DRIFT 2026』とは、完成されたイベントではなく、更新され続ける概念そのものだ。そしてYOKOHAMA / ADVANは、これからどのように変化しようとも、そのすぐ隣に、当たりまえのように在り続ける――。

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