Get Back ADVAN

“魂”を掴みとるタイヤが
“魅せるドリフト”を支える。/後編

2022.5.6

新時代のNEOVAである「ADVAN NEOVA AD09」が、今年から「FORMULA DRIFT®️ JAPAN(FDJ)」に投入された。並大抵のタイヤではすぐに音を上げてしまうほど過酷な走行環境下にさらされるドリフト競技は、世界中のタイヤメーカーが注目し、タイヤ戦争の様相を呈するようになった。そうしたなかでNEOVA AD09のストロングポイントはどこにあるのか。後編ではNEOVA AD09で闘うYOKOHAMAドライバーたちが、その感触を語る。

Words:中三川大地 / Daichi Nakamigawa
Photography:真壁敦史 / Atsushi Makabe

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FORMULA DRIFT® JAPAN

慣れないマシンとコースでこそ
NEOVA AD09の特性が際立つ。

「予選まではドライだったから、路面にはたっぷりとタイヤのラバーがへばりついている状態です。本選はそのうえに大雨が降りました。もはや人が歩いても気をつけなければ滑って転んでしまうくらい、滑りやすい路面だと思います」

鈴鹿ツインサーキットで開催された「FORMULA DRIFT®️ JAPAN(FDJ)」Rd.1、生憎の雨に見舞われた日曜本選日のトップ32を前に、実況解説を務めた谷口信輝(たにぐち・のぶてる)は、解説者としてコンディションの過酷さを訴えていた。ましてや鈴鹿ツインサーキットのコースには起伏があって、水が溜まりやすいエリアも点在する。雨の強弱だって刻一刻と変わっていくような状況下だ。つまり、ドライバーにとっては難しいコンディションだと言える。審査基準において重要な要素となる「後輪を空転させて撒き上げるタイヤスモーク」だって雨では期待はできない。

FDJ2022 Rd.1の本選日は朝から生憎の雨模様となった。ドリフトの“華”である盛大なタイヤスモークは望めないが、その分だけテクニカルな走りが求められる闘いでもあった。自身も長らくドリフト競技に参戦してきた谷口信輝(写真中央)も、「開幕から難しいコンディション、だからこそドライバーの腕の見せ甲斐があって面白い」と解説に熱が入る。

過酷なその環境に対して、事前の想定では慣れていないと思われたのがケングシ(#21 Team Kazama with powervehicles)だった。彼が闘い、そして育ってきた「FORMULA DRIFT®️(FD)」の本場アメリカでは、開催地のほとんどが雨など降らないエリアだからだ。しかし、彼は本選前、そこに不安を抱く気持ちはまったくないようだった。日米を股にかけて経験を積んできたトップドライバーなだけに、雨になど翻弄されない相当な腕前とメンタルを持つことは間違いない。彼はそのうえで、ドリフト競技におけるキーデバイスとなるADVAN NEOVA AD09に全幅の信頼を置いていた。

はじめての鈴鹿ツイン、ほぼ慣れていないマシン、しかも本選は雨というかなりビハインドなコンディションだったからこそ、「NEOVA AD09というタイヤのバランス性能の高さが実感できた」と言うケングシ。マシンはタイムアタックマシンからドリフトマシンへとコンバージョンされたレクサスRC-F。エンジンはR35GT-R用のVR38を搭載する。

「このマシン(R35 GT-R用のVR38を搭載するレクサスRC F)は、実は今回が初めて乗るような状態で、満足なテストができていなかったんです。鈴鹿ツインを走るのだって僕にとっては初めてのこと。そんななかにあって、マシンの動きがわかりやすく、とても乗りやすいことに助けられました。これなら安心して踏んでいける。特にウェットでの安心感は、マシンと路面とをつなげるタイヤのパフォーマンスが効いていたのだと思います」

タイヤ戦争を勝ち抜くために
NEOVA AD09が求めたもの。

NEOVA AD09が持つ、“扱いやすさ”というユーザーフレンドリーな側面を、より子細にわたって分析したのが金田 義健(かねだ・よしたつ/#770 Team Cusco Racing)だった。前編で取り上げた箕輪大也(みのわ・ひろや)と同じクスコレーシングから、GR86を駆って参戦する選手で、彼もFDJ2からステップアップを果たした“YOKOHAMAドライバー”だ。

FDJ2から今年ステップアップを果たした金田 義健(#770 Team Cusco Racing)。GR86を駆り、箕輪大也のチームメイトとして2022年のFDJを闘う。

「なによりもコントロール性の良さに驚いています。FDJに限らずドリフト競技は、今や多種多様のタイヤメーカーが挑戦しています。特にアジア系の新興勢力をみると、クルマが壊れるんじゃないかってくらいのドライグリップ性能を持つ銘柄だってあります。でも、それらはコースコンディションが悪かったり、磨耗していく過程での“性能差”が大きくて、時に扱いにくいさを感じることがあるんです。だけど、NEOVA AD09にはまったくそれがない。どんなシチュエーションでも抜群に乗りやすく、信頼が置けるタイヤでした」

今年のテクニカルレギュレーションを紐解くと、競技に使用できると認められたタイヤは、NEOVA AD09を含めて11ものブランドがある。いずれのタイヤメーカーも己の威信をかけたかのようなフラッグシップを持ち込んでいる。ここはドライバーやマシン、チームの闘いだけではなく、タイヤ戦争の様相も呈しているのだった。各社のロゴが大きく記されたトレーラー群を見ながら、金田はこう続ける。

「曲げのきっかけを作るときのシャープさが頭抜けている」とNEOVA AD09を評する金田。YOKOHAMA / ADVANらしいケース剛性の高さが、極限領域におけるコントロール時の絶大な安定感につながっているという。

「乗りやすく信頼が置けるというのは歴代NEOVAから一貫して感じていたこと。そのうえでAD09へと進化して、より剛性感の高さを感じるようになりました。剛性が高いと無駄なヨレを抑えられるので、結果としてマシンのシャープな動きに直結します。この挙動は、ドリフトではとても使いやすい。どんな状況でも瞬時に自分の意のままにマシンをコントロールできます。逆に今日のような雨の場合、NEOVA AD09は予想以上にグリップするのに驚きましたね。ドリフトって角度をつけるだけで自然とブレーキがかかるんですが、最初は予想以上に速度を殺しちゃったので、空気圧や自分の走り方を調整しました。そうした意味では、太吾選手のあの大胆な走り方の理由が少しだけわかりました」

ドリフトを次世代へとつなぐために
多くは語らず、自分の背中で魅せる男。

そう、多くは語らずとも、己の走りと背中で魅せるのが齋藤太吾(さいとう・だいご/#87 TRAIL MOTOR APEX RACING -TMAR-)の流儀なのだった。トップ32の前、これから追走に挑もうとする彼の言葉は、ごく控え目だった。

「まだ他の選手とは一緒に走っていないので、絶対的なトラクションなどは判断しにくい。けれどもNEOVA AD09はコントロールしやすいタイヤだと思っています。これなら存分に振り回していけます」

1300psを超えるようなパワーマシンを派手に振り回す豪快なイメージを持つ齋藤だが、それを可能とする本当の持ち味は、安定的かつ丁寧なマシンコントロールにある。それに対してタイヤには、彼が欲するだけの絶対的なグリップ性能はもちろん必要だが、そこにピーキーな特性が垣間見えたら、安心してマシンを真横に向けて飛び込んでいくことなどできない。思いっきり振り回して滑らせるためにこそ、手に取るようにわかる自然なグリップ感が欠かせない。

実際、予選から本選まで齋藤の走りは際立っていた。準決勝に相当するベスト4同士の闘いで、わずかに飛び込みすぎたがために、結果として表彰台の頂点に立つことは叶わなかったが、圧巻の走りを前にして今後の可能性には期待せずにはいられなかった。

「YOKOHAMA/ADVANは、いつも性能が安定しているのがいい。過去、他のタイヤブランドを使ったときに、個体ごとに性能のバラつきを感じたことがあって。でもYOKOHAMA/ADVANには一切それがない。だからタイヤ固有の性格さえ掴んでしまえば、絶対的な信頼感があるので、最初からいきなり100%でいけます」

と、長年にわたってドリフトと向き合い続けてきた齋藤はそう付け加えた。タイヤ代に苦しみながら腕を磨いてきたプライベーター時代を含めて得た、彼なりの実感なのだろう。それは、トップ32が始まる直前、箕輪との闘いを前にした言葉だった。急成長を遂げる箕輪を見守り、アドバイスをする意味でも、スキルを上げるのにふさわしいNEOVA AD09ならではの「素直なフィーリング」と「安定したクオリティ」の魅力を訴えたのかもしれない。

言葉こそ少ない齋藤太吾だが、YOKOHAMA / ADVANに対する信頼の高さは「最初から100%いける」というそのシンプルな一言にすべて集約されていた。「性能にバラつきがない」という評価こそが、“最強のストリート・スポーツタイヤ”NEOVA AD09の真価を明確に指し示しているのだ。

実際、齋藤の言葉を体現するかのごとく、箕輪はもうすでに圧巻のドリフトスキルだけでなく、セッティング力やタイヤパフォーマンスの良し悪しを見極める能力を身につけていた。 「晴れと雨とでセッティングを変えるなどして、自分なりに両方を乗りやすくすることは、勝つためには必要なこと。セッティングが決まれば、コンディションがどうだろうと僕にとっては関係ありません。ADVAN AD09は、どんな状況下でも乗りやすいことがわかったので、緊張することはあっても、不安はまったくありません」と、大人顔負けの明瞭なコメントを残してくれたのが、とても印象的だった。

TOP32で実現した齋藤太吾と箕輪大也の追走対決。“YOKOHAMAドライバー”としてのプライドを互いにうちに秘めながら、一切の手抜きのない熱い闘いでファンを魅せてくれた。常にゼンカイで前に進む――それがYOKOHAMA / ADVANのスピリットなのだ。

さらに齋藤は、箕輪との闘いを前にしてこうも付け加えていた。

「ヒロヤ(箕輪大也)のことは、彼が生まれたときから知っていて、リアルタイムで成長する姿を見てきている以上、こうしてFDJトップ32の場で闘えるってことは本当に感慨深い。だけど、決して手抜きなんてするつもりはないし、最初から決勝のつもりでガンガン攻めていく」

それは、箕輪のような次世代のスーパースターにだけではなく、ドリフト競技を含めてモータースポーツが好きで、なによりも走ることが大好きな次世代の若者たち全員に向けた、最高にクールな言葉だと思った。そんな彼らの挑戦を含めて、モータースポーツやカーカルチャーそのものを常にゼンカイで支え続けていくことが、YOKOHAMA/ADVANの熱い想いであり使命なのである。

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