Get Back ADVAN

“魂”を掴みとるタイヤが
“魅せるドリフト”を支える。/前編

2022.4.29

日本に生まれアメリカで育ち、ふたたび日本へと帰ってきたかのようなドリフトカルチャーを象徴するモータースポーツ「FORMULA DRIFT®️ JAPAN(FDJ)」に、新時代のNEOVAである「ADVAN NEOVA AD09」が投入された。FDJ2022では4名のドライバーがNEOVA AD09を相棒として闘い、エントリーシリーズのFDJ2にはワンメイク供給されている。YOKOHAMA/ADVANが、NEOVAを通してこのドリフト競技を支える意義を、その性能と世界観から探りたい。

Words:中三川大地 / Daichi Nakamigawa
Photography:真壁敦史 / Atsushi Makabe

FORMULA DRIFT® JAPAN

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世界的ドライバーと期待の超新星。
その師弟対決で幕を開けたFDJ2022

「予選はミスなく走り切ることを目標にしていました。1本目で予選を通過できる感触は得たので、2本目ではより攻めていって、結果として80点を取り、無事にトップ32へと進出することができました。トップ32ではいきなり齋藤太吾(さいとう・だいご)選手と追走することになり、今は緊張と楽しみとで半々ですね。小さい頃からドリフトを教えていただいた大先輩ですが、だからといって遠慮することもないし、まったく不安はありません。ゼンカイで観客を沸かせたいと思います」

ドリフトレーサーである両親(箕輪慎治&昌世)の影響が手伝って、7歳から運転を覚えはじめ、そしてドリフトのテクニックを磨いてきた箕輪大也(みのわ・ひろや/#771 Team Cusco Racing)は、鈴鹿ツインサーキットで開催されたFORMULA DRIFT®️ JAPAN(FDJ)のラウンド1、トップ32直前にこう話していた。昨年、小学6年生ながらMSCチャレンジ沖縄大会のエキスパートクラスで優勝、そしてスポット参戦したFDJ2最終戦の日光ラウンドで準優勝を果たし、中学校へ進学する今年は、クスコレーシングのGRスープラを持ってFDJへとステップアップを果たした。まさにドリフト界にとって期待の超新星である。

弱冠12歳、この春に中学生になったばかりの箕輪大也。ドリフト業界のみならず、日本の、いや世界のモータースポーツ関係者からの熱い視線が注がれている“超新星”である。

冒頭で箕輪が口にした対戦相手の齋藤太吾(#87 TRAIL MOTOR APEX RACING -TMAR-)は、箕輪が生まれたときから成長を見続けてきた、まるで伯父(大也の父である箕輪慎治と齋藤太吾は友人であり、互いのファクトリーを徒歩数分の場所に構える間柄)のような存在だった。彼が箕輪のことを話すとき、人として、そしてドライバーとしての成長を心から喜んでいる様子が手に取るように伝わる。しかし、それがモータースポーツである以上、ヘルメットを被れば真剣に闘うべきライバル同士だ。彼は今年、トレイルモーターアペックスレーシングから自身の手で組み上げたGR86で参戦した。両者とも勝負ごとになったら一瞬の馴れ合いもなく、雨模様のなかトップ32の追走勝負をやりきった。

歴史的師弟対決! FDJ2022開幕戦の本選の舞台でいきなりその注目の一戦は実現した。“勝敗”以上の“何か”が、齋藤太吾、箕輪大也の両選手の走りには見て取れた気がする。

最強のストリート・スポーツタイヤ。
「ADVAN NEOVA AD09」の魅せる力。

チームやマシンは違えども、彼らにはひとつだけ共通していることがあった。それはYOKOHAMA/ADVANを履いて闘うということだ。今年のFDJは、ADVAN NEOVA AD09のデビュー戦でもあった。ADVANが誇る伝統の高性能ストリートスポーツタイヤは、NEOVA AD08R時代を含めて、FDJやD1GPといったドリフト競技で支持されてきた歴史がある。今シーズンのFDJでは冒頭の2名を含む合計4名(4台)がNEOVA AD09を履いて闘う。しかもFDJのエントリーカテゴリーであるFDJ2では、国内のドリフト競技としては初となるワンメイク供給を、NEOVA AD08Rの頃から実現させている。

NEOVA AD09が掲げる「最強のストリートスポーツタイヤ」という言葉を前にすると、グリップすることが絶対正義であることは間違いない。なのに、そのグリップ力を強靭なパワーをもって敢えて崩していくドリフト競技に対しても、YOKOHAMA/ADVANは最強のストリートスポーツタイヤを率先して投入してきた。FDJはおろか、日本を代表するドリフト競技であるD1グランプリもまた然りだ。

YOKOHAMA / ADVANは今年2月にローンチしたばかりの“NEOVA AD09”をドリフト競技の世界に投入してきた。“最良のグリップ性能”の先にある極限の走りを、この“最強のストリート・スポーツタイヤ”が支えるのである。

当然、己の技術や製品を鍛える意味があるのだろう。「滑らせるから、タイヤはなんでもいい」という時代はとうに終わっている。1000馬力を超えるのが当たりまえとなったモンスターマシンを真横に向け、もうもうと白煙を撒き上げながらミリ単位でラインやアングルを詰めていく。そうした極限下においては、もはや高性能タイヤでなければ、観客を魅了させる異次元のドリフトはできない。

何よりも“楽しもうとする”姿勢が創り上げた
ドリフトというモータースポーツ。

なかでもFDJは、日本のストリートカルチャーから芽生えてモータースポーツとして認められるようになったドリフト競技が、海を越えたアメリカの地でフォーミュラドリフト(FD)として立派に成長し、あらためて日本へと戻ってきたという経緯を持つ。

だからこそ、日本での代表格に挙げられるD1グランプリとは似て非なる部分がある。象徴的なのは審査基準だ。コースに設けられたゾーンやクリップポイント付近で審査される「走行ライン」「角度」に加え、走り全体を評価される「スタイル」という項目がある。「スタイル」とは、大量の白煙を撒き上げたり、全体として走りに迫力があったり、どれだけ観客を沸かせられるかが重要なポイントとなる。さらにD1で採用されるDOSSのような機械式採点システムは取り入れられておらず、あくまで審査員によるアナログな評価である。

つまりはいかに観客を沸かせて、審査員の感情を揺さぶるかが勝敗を大きく左右する。あまりにも拮抗した追走バトルがあれば審査員は判断に悩み「ワン・モア・タイム(再戦)」というジャッジを下すことも珍しくない。いかにもエンターテイメント性を重視するアメリカンモータースポーツらしい部分だと思う。

アメリカのドリフトカルチャー黎明期から、彼の地で競技に挑戦し、今年はNEOVA AD09を履いて久々にFDJを闘うケングシ(#21 Team Kazama with powervehicles)の言葉を思い出す。彼は今年、35GT-R用のVR38エンジンを搭載したレクサスRCで参戦する。

2014年ぶりのFDJ参戦となったケングシ。本場仕込みの“魅せる技”で観客を沸かせていた。マシンはほぼテストすることなく開幕戦に臨むことになったという。

「2014年にFDJに初参戦したときはいい結果を残せなかったので、今年は絶対に勝ち上がっていきたい。クルマやタイヤは素晴らしいものを用意していただけたので、あと必要なのは自分のパフォーマンスを出し切ること。そのためには心の奥底から“自分が楽しむ”ことが大事なんですよね。それが結果として、オーディエンスを楽しませることにもつながるのだと思います」

プロが競う真剣勝負というと、とりわけ日本では、楽しむことは二の次で「ストイックに取り組む、精神論や根性論」を思い浮かべがちだ。しかし、FDJというドリフト競技に宿るのは「何よりも楽しもう」とする姿勢だった。その雰囲気が会場の隅々にまで行き渡っていて、観客はもちろん、スタッフだって誰一人欠かすことなくその場を楽しんでいるようだった。とはいっても決して、その裏地にはストイックとも取れるひたむきな努力や技術開発が濃密に宿るし、いい加減な気持ちで取り組むような空気感はない。「本気で楽しむ」ためにこそ「本気で挑む姿勢」が感じ取れる。それは不思議と、日本のカーフリークが創り上げたストリートカルチャーに近しいものがあった。

本気で楽しむからこそ、そこには笑顔が生まれ、本気で挑むからこそ、そこには凛とした緊張感も生まれる。ドリフトという競技の“距離感”はともあれ、ストリートのそれに近いものがあることは確かだ。

ドリフトカルチャーを支えながらも
その中で頂点に立つことに意味がある。

だからこそ、YOKOHAMA/ADVANがこの場にNEOVA AD09を供給することには大きな意義があると思えた。FDJという最高峰のモータースポーツに投入するタイヤだからといって、決して特別なレーシングタイヤではない。4人の“YOKOHAMAドライバー”が皆、我々でも手に入る“ストリート用”の市販品と同じ銘柄で闘っている。

FDJ2ではワンメイク供給というかたちで闘いの場を創り上げながら、FDJではみずからが闘いの最前線に打って出てライバルとしのぎを削る。YOKOHAMA/ADVANは、主催者とともにそのドリフトカルチャーを醸成するだけではなく、そのなかにあって「互いに競争をして勝たなければ意味はない」と課しているようだった。

「GRIP THE SOUL(魂を掴みとる)」というYOKOHAMA / ADVANが掲げるひとつの想いが、決してタイヤ単体の性能のこと、あるいはその性能に起因してドライバーの魂を掴みとることだけではないと知った。FDJというモータースポーツを通して、ドリフトファンはおろか、世の中のクルマ好き全員の魂も掴みとろうとしていたのだ。

冒頭で触れた箕輪大也と齋藤太吾の、トップ32での追走は、結果として斎藤が勝ち上がる結果となった。それでも箕輪は、清々しい表情でこう話していた。

「ものすごく楽しかったです! それに初のFDJへの挑戦で、1回目から太吾選手と闘えたのは嬉しかった。以前、撮影やイベントなどで一緒に走ったときは先行(リード)だけだったので、初めて後追い(チェイス)に挑んだことがいい経験になりました」

サイン会での箕輪大也。とても中学1年生とは思えない堂々とした振る舞いがこの少年の末恐ろしさを物語っている。「楽しむこと」「魅せること」の意味を理解し、「ファンの魂を掴みとること」を使命と感じ入るかのような、スターとしての風格が早くも漂っていた。

と、まさにイベントの趣旨を体現するように、箕輪は心から楽しんでいたようだ。そのうえで、これから目の前に立ちはだかるハードルがいかに高くても、決して勝てないとは微塵も思っていない様子も伝わってくる。今回こそ敗退したものの、その原因を突き止め、次に活かそうと学ぶ姿勢も見て取れた。そうした感触と次戦への意気込みを語る彼は、弱冠12歳にして、もはや立派なプロドライバーの顔だった。

YOKOHAMA / ADVAN勢の最高位となる3位表彰台を獲得した齋藤太吾。トップ4の戦いでは限界まで攻め込み惜しくもファイナル進出は逃したが、常にギリギリを攻めるその姿には心動かされるものがあった。

なによりそれは、NEOVA AD09を履いて闘うドライバーの誰もが思っていたことでもあった。ラウンド1でのYOKOHAMA/ADVAN勢を括ると、齋藤太吾が残した3位という成績が最上位に終わった。結果だけを紐解くと悔しさは残るが、誰もがマシンの感触に可能性を感じ、なによりNEOVA AD09に好印象を持っていた。

後編では、ドリフト競技におけるNEOVA AD09の“強さ”を、彼らが得た感触をたどりながら迫りたい。

(後編へ続く)

Special Thanks
FORMULA DRIFT® JAPAN

2022 FORMULA DRIFT JAPAN Round.1SUZUKA TWIN CIRCUIT Point Ranking

RANK Car No. Driver Team Point
3 87 齋藤太吾 TRAIL MOTOR APEX RACING -TMAR- 67
14 21 ケン グシ Team kazama with powervehicles 35
17 770 金田義健 Team Cusco Racing 20
23 771 箕輪大也 Team Cusco Racing 18

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