CULTURE

競い合う才能。認め合う才能。
2026 FORMULA DRIFT JAPAN 2。
10代の挑戦者たちが刻んだ成長の軌跡。

2026.10.30

ライバルの栄冠を祝福する。だが、負けるつもりなど微塵もない。2026年、FORMULA DRIFT JAPAN 2(FDJ2)の最終戦。岡山国際サーキットの決勝に進んだのは、中村龍輝と茂木真那斗。ともに中学生という若さながら、シーズンを通じて激しい優勝争いを繰り広げてきたふたりだった。勝利の歓喜と敗北の悔しさを糧に、驚くべき速さで進化する10代の才能。日本とアメリカのトップドライバーたちでさえ驚きを隠せない彼らの現在地と、その挑戦を支えるYOKOHAMA / ADVANの存在に迫る。

Words:髙田興平 / Ko-hey Takada

Photography:望月勇輝 / Yuki Mochizuki(Weekend.)

勝利への執念と、ライバルへの敬意。
岡山で迎えた最後の真剣勝負。

2026年10月、岡山国際サーキット。FORMULA DRIFT JAPAN2(FDJ2)の最終戦。シリーズランキング首位に立つ中村龍輝に対して、茂木真那斗は第5戦・奥伊吹で初優勝を飾り、ポイント差を50点にまで縮めていた。ともに中学生である。年間王者の座を争う最後の週末。シーズンを通じて互いの背中を追いかけてきたふたりが、再び同じ舞台に立った。

中村は積み重ねてきたリードを守り抜きたい。一方の茂木には、逆転への望みが残されていた。何よりも、目の前のライバルに勝ちたいという強い想いがある。互いの走りを知り尽くし、その実力を認めているからこそ、勝負に対する気持ちはいっそう強くなる。ともに練習を重ねてきた仲間であっても、コースに立てば譲ることなどできない。

94点という高得点で単走予選のトップに立った中村龍輝。決勝を待たずして、2026 FORMULA DRIFT JAPAN 2のシリーズチャンピオンの座を獲得した。

単走予選では、中村が94点という高得点を記録してトップ通過。同じく10代の徳山昇英も94点で2位につけた。徳山はFDJ3からステップアップした今シーズン、第4戦・SUGOで中村を破って初優勝。年間ランキングでも4位となり、若い世代の層の厚さを印象づけたドライバーだ。一方、茂木は予選7位。決して満足できる結果ではなかったものの、翌日の追走トーナメントでは持ち前の勝負強さを発揮し、中村とともに決勝へと駒を進めた。

FDJ3からのステップアップを果たし、見事にシーズン4位の成績を残した徳山昇英もまた、10代のドライバーである。単走予選では中村と同点の94点をマークして2位に付けた。

その決勝を前に、中村のシリーズチャンピオン獲得が決定していた。茂木は中村のもとへ歩み寄り、その栄冠を祝福した。長いシーズンを戦い抜き、互いに刺激を与え合ってきたライバルだからこそ、相手の成功を喜ぶことができる。だが、最後の決勝はまた別の話だ。年間タイトルの行方が決まったからといって、勝利への執念が薄れるわけではない。むしろ、最後くらいは勝って終わりたい。そんな想いが、ふたりの対決をいっそう熱いものにしていた。

決勝を制したのは中村龍輝。その友にして最大のライバルである茂木真那斗は悔しい敗戦となったが、見事にシリーズ年間ランキング2位を獲得。互いに10代、まだ中学生。この事実にこそ、いまの10代の末恐ろしい可能性が現れている。

先行と後追いを入れ替えながら、互いの走りをぶつけ合う。ギリギリの領域でマシンを操り、相手の動きを読み、ほんの一瞬の判断にすべてを懸ける。最後の勝負を制したのは中村だった。シリーズチャンピオンにして最終戦優勝。これ以上ない形で2026年を締めくくった中村に対して、茂木は準優勝、年間ランキングでも2位となった。

勝者と敗者。結果だけを見れば、それで話は終わる。しかし、互いの成功を称え合いながら、勝負では一歩も譲らない。岡山で見せたふたりの姿には、競技ドライバーとしての成長だけでなく、人間としての逞しささえ感じられた。

勝ったり、負けたり。
その繰り返しが、才能を磨く。

2026年のFDJ2において、中村はシーズンを通じて抜群の強さを発揮した。しかし、その背中を追う茂木もまた、戦うたびに速さと精度を高めていった。6月の第3戦・エビスサーキットでは、激しい雨に見舞われた決勝でふたりが激突。勝負はワン・モア・タイムにまでもつれ込み、最後は中村が勝利したものの、審査員の今村陽一が「すごい、感動しか出てこないですね」と語ったほどの熱戦だった。

その後、奥伊吹でついに茂木が初優勝。中村がTOP16で敗退したこともあり、タイトル争いは最終戦まで持ち越された。中村にとって茂木は、決して気を抜くことのできないライバルであり、茂木にとって中村は、超えるべき明確な目標でもあった。勝利によって自信を深める一方、敗北からは自分に足りないものを学ぶ。そんな経験を重ねながら、彼らはシーズン開幕時とは比べものにならないほどの成長を遂げていった。

まだ中学生である──その事実を忘れてしまいそうになるほど、彼らの走りは完成度を高めている。もちろん、同じフィールドで戦う大人たちが決して手を抜いているわけではない。むしろ、あらゆる経験を積み重ねてきたドライバーたちを相手に、真正面から勝負を挑み、結果を残している。その現実が、いまのFDJ2の面白さを象徴している。

トップドライバーとして、これまで数々の修羅場を経験してきた谷口信輝でさえ、その成長には驚きを隠さない。

「正直、ここまで10代が成長していることに驚き。FDJ2においては大人でも敵わないところに来ている。FDJ(J1)はタイヤコンペもあるし、技術も経験もあるドライバー揃いだから、FDJ2のようにはいかないだろうけど、それでも、10代、しかも中学生でこのレベルにいるのは事実だから、末恐ろしいというのが本音だね。技術は確実に進化してるから、ここに経験に裏付けられた勝負勘が備わったら本当に怖いし、でもかなり楽しみだね」

谷口が指摘するのは、ドライビングの速さと勝負の強さは必ずしも同じではないということだ。トップカテゴリーのFDJ1では、経験豊富なドライバーたちがそれぞれのマシンとタイヤを武器に、極限の駆け引きを繰り広げている。そこでは一瞬の判断が勝敗を左右し、速さだけでは補えない経験値が問われる。それでも、まだ10代前半の若者たちがこの領域まで辿り着いているという事実は、彼らが持つ可能性を雄弁に物語っている。

「もはや(FDJ2では)大人が敵わないレベルにまで達している。シリーズチャンピオンと2位が10代。それも、中学生がだよ!」と、その進化の速さに驚きを隠そうとしない谷口信輝。これまでも、箕輪大也など“超中学生級の10代”は存在したが、それがもはや“常識”となりつつある現実は、確かに驚きである。

恐怖心を疑うほどの攻め。
底知れぬ10代の可能性。

アメリカを拠点に世界のドリフトシーンを知るケン・グシもまた、そんな若者たちの走りに驚きを覚えたひとりだ。とりわけ印象に残ったのは、彼らが見せる迷いのない攻めの姿勢だった。

「正直、彼らには『恐怖心がないのか?』と思うくらい攻めていってる。SIM(シミュレーター)世代はボクらの世代と違って練習量が段違い。SIMの存在がすべてを変えているのは事実ですよ。でも、FDJや本国のFDはまた一段と違う勝負の世界ですからね。10代の子たちがそこで今後どれだけ台頭するかは、純粋に興味深くもある」

シミュレーターを通じて膨大な練習量を積み重ね、実車でも臆することなく限界へと踏み込んでいく。従来のドライバーたちとは異なる環境で育った彼らは、走りに対する感覚さえ違っているのかもしれない。限界領域に挑むことへの躊躇のなさ、失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返す姿勢。それらが実戦での経験と結びついたとき、さらに大きな飛躍が待っているのだろう。

もちろん、シミュレーターで磨いた技術だけで世界の頂点に辿り着けるほど、勝負の世界は甘くない。ケン・グシが語るように、FDJ1や本国アメリカのFormula Driftは、さらに高度な技術と経験が求められる舞台だ。そこには世界のトップドライバーたちが集い、長年にわたって磨き上げてきた技術と勝負勘をぶつけ合っている。彼らがその舞台でどこまで通用するのか。いまから結論を出す必要などない。

中村にとっての目標は、現役FDJドライバーである父親の直樹を超え、海外へ羽ばたくこと。茂木もまた、FDJ1への進出、さらにはアメリカやヨーロッパでの挑戦を見据えている。その目標を語る姿は実に頼もしいが、ヘルメットを脱げば年相応のあどけなさも残る。無邪気な少年たちが、ステアリングを握った途端に凄みを帯びる。その鮮やかな対比に、なんともいえない魅力がある。

若き才能が競い合う舞台をつくる。
YOKOHAMAが支える次世代への挑戦。

才能があるだけでは、モータースポーツの世界で成功を収めることはできない。マシンを用意し、メンテナンスを重ね、練習や遠征を続けるためには、多くの人々の協力が欠かせない。中村や茂木のように、まだ義務教育の途中にいる若者たちであれば、家族やチームの理解と支援はなおさら重要になる。そんな彼らが大人たちと同じ舞台で真剣勝負を繰り広げ、次のステージを目指すことができる。その競技環境を足元から支えているのがYOKOHAMA / ADVANだ。

FDJ2ではADVAN NEOVA AD09がワンメイクタイヤとして採用されている。“タイヤの使い方”をより高いレベルで習得できるハイグリップタイヤとして、若きチャレンジャーたちの足下を、YOKOHAMA/ADVANは支え続けている。

FDJ2ではADVAN NEOVA AD09、FDJ3ではADVAN APEX V601がワンメイクタイヤとして採用されている。タイヤの銘柄を統一することで選択に伴う負担を軽減し、ドライバー自身の技術と感性を競い合う舞台を整えている。

同じタイヤを履いていても、走りは決して同じにはならない。空気圧やセッティング、路面状況への対応、そしてタイヤの性能をいかに引き出すか。その違いが結果となって表れるからこそ、選手たちは試行錯誤を重ねていく。中村と茂木が見せた進化も、そうした日々の積み重ねによるものだ。タイヤを使いこなすことは、マシンを操る技術を磨くことでもある。

若い世代が同じ条件のもとで競い合い、勝利や敗北を通じて経験を積んでいく。そこから次のカテゴリーへ進み、やがて世界の舞台を目指していく。YOKOHAMAが支えているのは、一度きりの勝利ではなく、そんな挑戦を続けるための環境そのものだ。

モータースポーツにおけるタイヤの役割は、速く走るためだけのものではない。ドライバーが限界を探り、自らの可能性を広げるための大切な存在でもある。若き才能の成長を支えるということは、次の時代のモータースポーツ文化を育むことでもあるのだ。

まだ見ぬ世界へと続く道。
少年たちが手にしたもの、そして未来。

2026年のFDJ2。シリーズチャンピオンに輝いた中村龍輝と、最後までタイトルを争った茂木真那斗。ともに中学生という若さで頂点を目指し、互いを高め合いながら戦い抜いた一年だった。岡山の決勝を前に、茂木は中村の栄冠を祝福した。それでも、最後の勝負では一歩も譲らなかった。その姿には、ドライバーとしての強さと同時に、人としての成長も感じられた。

勝つことの難しさを知り、負けることの悔しさを知る。そして、相手の強さを認めることを覚える。そんな経験のすべてが、これからの彼らを形づくっていくのだろう。谷口信輝が「末恐ろしい」と語り、ケン・グシが「恐怖心がないのか?」と驚いた少年たち。その才能が、この先どこまで伸びていくのか。

誰にもわからない。だからこそ、面白い。今日のライバルが、明日のヒーローになる。その未来を、楽しみにしていたい。

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