ADVAN Sport V107
800psのモンスターSUVが見せた、
ADVAN Sport V107の懐の深さ。
BRABUS G800 WIDESTAR
2026.10.2
圧倒的な存在感。そして、最高出力800psという途方もないパフォーマンス。Mercedes-AMG G 63をベースに、BRABUSの思想と技術を注ぎ込んだBRABUS G800 WIDESTARは、あらゆる意味で規格外の1台である。今回、そのステアリングを握るのはレーシングドライバー・谷口信輝。そして、このモンスターの足元を支えるのがADVAN Sport V107だ。800psというパワーだけではない。3tに迫る車重、24インチという大径サイズ、そしてハイエンドSUVに求められる快適性。そのすべてを受け止めるタイヤには何が必要なのか。G800 WIDESTARという究極の1台だからこそ見えてきた、ADVAN Sport V107の「幅」を探る。
Words:髙田興平 / Ko-hey Takada
Photography:真壁敦史 / Atsushi Makabe
Cooperation:株式会社ホソカワコーポレーション / bond Group
“BRABUS風”ではない。
本物で仕立てるということ。
まず、このクルマについて知っておきたいことがある。これは“BRABUS風”に仕立てられたGクラスではない。今回の1台を製作したbond GroupはドイツのBRABUS本社から認証を受け、正規のBRABUSパーツを使ってエクステリアからインテリアまでを仕立てている。

BRABUS G800 WIDESTARの足元には24インチサイズのMONOBLOCK ZM24 FORGED PLATINUM EDITIONのホイールが装着されている。組み合わされるタイヤはADVAN SPORT V107(Front:295/35R24 110Y、Rear:335/30R24 112Y)。BRABUSはYOKOHAMA/ADVANの製品を長らく新車装着タイヤとして採用してきた歴史がある(今回はbond Groupの手により国内で履き替え装着)。
BRABUSとは、単にエアロパーツやチューニングパーツを作るブランドではない。エンジンから足回り、エクステリア、インテリアに至るまでを丁寧に開発し、1台のクルマとして独自の世界を完成させるドイツのラグジュアリーモビリティブランドだ。その哲学は現在も一貫しており、最新世代のMercedes-AMG G 63をベースとするBRABUS 800も、最高出力800ps、最大トルク1,000Nmというパフォーマンスに加え、WIDESTARボディ、24インチホイール、そしてMasterpieceと呼ばれるインテリア・パッケージ(今回の仕様はSignature)まで含めたフル・コンプリートカーとして作り上げられている。
片側30mm拡張となるワイドボディが迫力を醸すG800 WIDESTAR。織り目の美しいカーボンファイバー素材を存分に使用したエアロデバイスが各所に惜しみなく投入されている。エアダクト形状のボンネットフードやリヤスポイラーなど、かなり戦闘的な装いではあるけれど、そこに不思議な気品まで漂わせるあたりにBRABUSというブランドの美学が見て取れる。
今回、bond Groupが手がけたG800 WIDESTARも、片側30mm拡幅されたワイドボディをはじめ、24インチホイール、ルーフスポイラーなどによって、ひと目でそれとわかる存在感を放つ。しかし、BRABUSの本当の凄さは外から眺めているだけではわからない。


BRABUSコンプリートの真骨頂とも言えるのがこの特別なインテリアの設え。ルーフライナーまで張り替える、最高峰のMasterpieceと呼ばれる独自の世界観を筆頭に、いくつかのカスタムプログラムが用意され、この個体にはSignature(前後シート、ドアセンター、ニーパッド、メーターフード、フロアマット、ラゲッジマット)を採用。キャビン全体がBRABUS Fine Latherを軸とした上質な仕立てで覆われている。「Shell Design」と呼ばれる特別なシェル型のキルティングは、思わず目を奪われる美しく繊細な仕上がりだ。もちろん、熟練の職人による手縫いである。bond Groupではエクステリアだけではなく、こうしたインテリアのセットアップにも近年力を入れている。
ドアを開ければ、その世界観はインテリアにも貫かれている。この個体が採用するSignatureでは、前後シート、ドアセンター、ニーパッド、メーターフード、フロアマット、ラゲッジマットに至るまで、キャビン全体がBRABUSの素材(BRABUS Fine Leather)と意匠によって仕立てられている。何より目を奪われるのが特別なシェル型のキルティングだ。BRABUS本国でも「Shell Design」と呼ばれる特徴的な意匠であり、縫製は職人による手仕事。表面的にレザーを張り替えるだけではなく、シート内部にまで丁寧な仕事が施されている。
目に触れるところだけを華やかにするのではなく、見えない部分まで手を入れる。エクステリアからインテリアまで徹底して作り込まれたG800を前にすると、BRABUSが考える「コンプリートカー」の意味が見えてくる。

一方で、この個体ならではの仕立ても興味深い。深く沈み込むようなネイビーのボディは、フィルムメーカーのINOZETEK、アパレルブランドのSEQUEL、そしてbond Groupによる3社のコラボレーションから生まれた「DPPF SQ102 Navy」。単なるカラーラッピングではなく、太陽光の力で色味を補正しながら飛び石や洗車傷から塗装そのものを守るカラープロテクションフィルムで、純正にもBRABUSにも存在しない日本国内限定のカラーだ。
さらに、本来はドイツのBRABUS本社で仕上げられた車両にしか装着が許されないイルミネーションマフラーを備えるのも、日本ではこの1台だけ。ただ正規パーツを組み上げるのではなく、1台のクルマとしてどう美しく、どれほど特別に仕立てるのか。そこにもbond Groupのこだわりが表れている。
Mercedes-AMG製の4.0ℓV8ツインターボは、本国BRABUSに送り返された上で施工されるタービンの大型化を軸に、ECUやハーネス類のアップグレードが施され、最高出力800ps、最大トルク1,000Nmという驚異的なスペックを実現する。
そして今回、テスターの谷口信輝とともにもうひとり重要な人物がいる。bond Groupの飯村洋平氏だ。日本のハイエンドカスタムシーンを長く見続けてきた第一人者のひとりで、その守備範囲は実に広い。GクラスをはじめとするハイエンドSUVはもちろん、スーパースポーツ、BEV、そして国産モデルまで。彼の手にかかれば、プリウスでさえ奇をてらうことなく、上質でクールな1台へと姿を変える。
飯村氏の仕事を見ていると、カスタムとは単純にパーツを足していく作業ではないことがわかる。そのクルマが本来持つキャラクターを読み取り、何を足し、何を引くのか。ホイール径、車高、ボディカラー、素材、そしてタイヤ。全体のバランスを整えながら個性を引き出していく。その感覚を知り尽くした人物だからこそ、彼のタイヤ選びにも説得力がある。

bond Groupが独自で開発したドア・ソフトクロージャーや、フィルムメーカーのINOZETEK、アパレルブランドのSEQUEL、そしてbond Groupによる3社のコラボレーションから生まれた「DPPF SQ102 Navy」の仕上がりを谷口信輝に説明する、bond Groupの飯村洋平氏(写真左側)。自身、Gクラスのカスタムを長年楽しみながら実践してきた第一人者である。
「社内がざわついた」
24インチのADVAN Sport。
そんな飯村氏が、ADVAN Sport V107に24インチサイズが登場したときのことをこう振り返る。
「社内がざわつきました」
このひと言が面白い。ハイエンドSUVのカスタムの世界では、23インチ、24インチという大径ホイールは、もはやショーカーだけのものではない。実際、BRABUS本国のGクラス用コンプリートカーにも24インチホイールが設定(Gクラス・カスタムの世界では、V105の時代から、23インチサイズが支持を集めてきた歴史もある)されている。しかし、ホイールを選べることと、そこに組み合わせたいタイヤが存在することは別の話だ。

今回のG800 WIDESTARが履くのは、フロント295/35R24、リヤ335/30R24。飯村氏によれば、こうしたサイズは、海外ブランド製のものはあっても、国内では容易に手に入れられるものではなかった。それが日本で、しかもADVAN Sportとして選べるようになったことは「かなりの吉報だった」という。
つまり彼らが待っていたのは、単に24インチというサイズではない。ハイエンドカーに求められる性能を備えたADVAN Sportを、このサイズで選択できることに意味があった。
カスタムカーやチューンドカーにとって、タイヤは最後にサイズさえ合わせればいい部品ではない。とりわけ800ps級のハイパフォーマンスSUVとなれば、強大なパワーを路面へ伝え、3t級の車重を支えながら、安定性や乗り心地、静粛性まで求められる。見た目の迫力だけで選ぶわけにはいかない。


ADVAN Sport V107の24インチサイズは、相当に目の肥えたハイエンドSUVのユーザーからも、「待望」との声で好意的に受け入れられ、すでに多くの支持を得ているという。
ひとつのサイズが追加されることで、これまで選択肢のなかったクルマに新しい可能性が生まれる。「社内がざわついた」という飯村氏の言葉からは、ハイエンドカスタムの現場がこの24インチを待っていたことが伝わってくる。
フロント295、リヤ335。
しかも24インチ。
しかし、タイヤ作りは単純に既存のタイヤを大きくすれば成立するものではない。谷口信輝は「タイヤ作りはたい焼きのように、素材を型に流し込んで“はい、出来上がり!”というわけにはいきません」と冗談交じりに話す。サイズが変われば、荷重条件も剛性のバランスも変わる。大径化によってエアボリュームが減れば、快適性を成立させる難易度も高くなる。


しかもG800 WIDESTARは最高出力800ps、車重3t級。アクセルを踏めば強大なパワーを路面へ伝え、ブレーキングやコーナリングでは大きな質量を受け止める。一方で、BRABUSというクルマのキャラクターを考えれば、力強く路面を捉えるだけでは十分ではない。日常域では静かに、快適に走れることも重要になる。
相反する要求を、ひとつのタイヤの中でどう成立させるのか。ここからはスペックではなく、実際に走らせて確かめてみたい。
24インチであることを、
意識させない。
ステアリングを握るのは谷口信輝。レーシングカーからチューニングカー、最新のストリートカー、そして旧車まで、数え切れないほどのクルマを走らせてきた彼が注目したのは、やはり24インチという大径タイヤのフィーリングだった。
一般的にホイールを大径化すればタイヤのエアボリュームは減少し、乗り心地には厳しい方向へ働く。ましてや24インチである。ところが、G800 WIDESTARを走らせた谷口が感じたのは、そのサイズから想像する印象とは少し違っていた。路面の荒れた場所を通過しても、不快な硬さや重さによるバタつきを感じさせない。谷口自身、「言われなければ気づかないレベル」と評するほど自然なのだ。
ここにADVAN Sport V107の面白さがある。タイヤはグリップや高速性能といったひとつの尺度だけで評価できるものではない。800psを受け止めることも、3t級の車体を支えることも、24インチで快適に走れることも、このクルマにとってはすべて必要な性能である。
谷口が評価したのは、そのバランスだった。強烈なスペックを持つクルマに装着されていながら、タイヤだけが過剰に存在を主張しない。G800 WIDESTARというクルマそのものを、自然に走らせてくれる。
BRABUSが規格外だからこそ、
V107の本質が見えてくる。
ADVANと聞けば、スポーツを思い浮かべる人は多い。しかしADVAN Sport V107が興味深いのは、その「Sport」がカバーする領域の広さにある。スポーツカー、ハイパフォーマンスセダン、そして今回のようなハイエンドSUV。クルマの性格も重量もタイヤサイズも異なるなかで、それぞれが持つパフォーマンスを支えながら、日常域で必要な快適性も成立させる。


考えてみれば、それはBRABUSというブランドの考え方にも少し似ている。800psという圧倒的なパワーがあり、WIDESTARのエクステリアがあり、24インチのホイールがある。一方で、キャビンに目を移せば素材や縫製まで徹底的に作り込まれた特別なインテリアが広がる。パフォーマンスだけでも、ラグジュアリーだけでもない。それらを高い次元でひとつにまとめることによってBRABUSというクルマが完成する。だからこそ、G800 WIDESTARはADVAN Sport V107のキャラクターを知るには格好の1台だったのかもしれない。
飯村氏が待っていた24インチを、谷口信輝が実際に走らせる。ハイエンドカスタムの現場から見たタイヤと、レーシングドライバーがステアリングを通して感じたタイヤ。ふたつの視点が重なったとき、このタイヤの輪郭が見えてくる。
強大なパワーを受け止める。大きな車体を支える。そして、24インチというサイズを必要以上に意識させることなく、日常を快適に走らせる。
G800 WIDESTARという究極の1台だからこそ、改めて見えてきたもの。
それは、ADVAN Sport V107が持つ「懐の深さ」だった。





























