Race Report

FORMULA DRIFT® JAPAN
ROUND.2
エビスへの挑戦。

2022.6.22

2022年6月18日・19日、エビスサーキット西コースにて、「 FORMULA DRIFT® JAPAN ROUND.2」が開催された。日本で生まれ、アメリカで育ったフォーミュラドリフト。今回はゾーンの規定が見直され、アメリカンスタイルを踏襲した走行ラインで行われた。難易度は高くリスキーなその走行ラインは、よりドライバーのシビアな操作が求められるが、阿吽の呼吸で人馬一体となった時、会場の大興奮が生まれる。ストリート最強の「ADVAN NEOVA AD09」は、今回もアスリートたちの繊細かつパワフルなドライビングを、抜群のコントロール性と安定した性能でサポートした。

Words/ Photography:真壁敦史 Atsushi Makabe

アメリカンスタイル
“アウト - アウト - アウト”の走り

今回は、コースレイアウトは変わらずもゾーンの規定が変更され、ゾーン1-2-3の走行ラインが、前回の“アウト – イン - アウト”から、“アウト - アウト - アウト”になった。

振り出しからゾーン1を経てゾーン2へと続くラインは、長い緩やかなカーブが続き、そして急激にアールが増大するヘアピンコーナーが待ち構えるというコースレイアウトを外周に沿って走行しなければならない。

複合的に変化するアールに従って、必要最小限のブレーキング、できる限り増減の少ないスロットルとステアリング操作で速度と角度を維持しればならない、それでいてアクセルは踏み抜いて外周に配置されたゾーンを通過しなければならない。ドライバーの腕がはっきりと試されるコースだ。

そして外周に沿って大回りすることでアクセルオンの時間は増え、白煙は大量に撒き散らされる。さらに追走では後追いドライバーがタイミングを図りやすく、より大迫力の接近戦を観ることができるという。日本の峠のような鋭く狭いコーナーを最短距離で如何に速く抜け出すか、先人たちの攻略の結果、文化となったといわれるドリフトが、エンターテインメントの盛んな米国、Formula Driftで磨かれ、アメリカンスタイルで帰ってきた。

予選の好調も束の間
マシントラブルが襲う

春の爽やかな空気はどこへ行ったのか、ジリジリとした初夏の強い日差しがアスファルトを容赦なく照らし付ける。

鈴鹿ツインで行われたRd.1に続き、今回もYOKOHAMA/ADVANは「ADVAN NEOVA AD09」で4名のドライバーをサポートした。

トップバッターはチームクスコレーシングから中学生ドライバー、箕輪大也。

練習走行では長年の疲労が溜まったマシン(今年箕輪に与えられたGRスープラは歴戦を戦った)が限界を迎えてしまった。急遽スペアエンジンに載せ替えて予選出場を果たした。

それでもアクセルオンオフの巧みなコントロールでマシンを操り、同郷の兄貴分、齋藤太吾に影響されたであろう、踏む時は限界まで踏み抜くスタイルで走りきった。最後尾にはなったもののトップ32へ進める切符を無事に受けとる事が出来たのである。

迎えたトップ32。前戦は齋藤太吾との師弟対決が奇跡的に叶ったが、驚くべきことに今回も予選通過順位の組み合わせで齋藤との対決が予定されることになった。しかし、予選前に載せ替えることに成功したそのスペアエンジンも不調となり、無情にも箕輪のGRスープラがスタートラインに並ぶことは叶わなかった。

しかし、まだまだ育ち盛りの箕輪。走行が終わるや否や、コースサイドに駆けつけ他の選手の走行を見学し、次戦に向けてプラス思考で気持ちを切り替えている姿が見られた。

同じくチームクスコレーシングから金田義健。

予選1本目は、不調に終わったものの、2本目でベテランの貫禄を見せつける素晴らしい走りで見事予選突破。しかし、長く続くマシンの不調を訴えながらの走りだったと言う。

トップ32では山中 真生選手との対戦。互角の戦いでワンモアタイムへ持ち込まれたが惜しくも敗退となった。この際に苦しんでいた不調の原因が判明、それら一連の問題は、マシンに荷重がかかり、沈み込んだ際に片側のみのリアタイヤがボディと干渉し押さえつけられ、回転が抑制されていたことによるものだったと考えられた。

「今回やっと原因が分かったので、次戦はこのトラブルが克服できるように対策をしたところです。NEOVA AD09は非常に熱の入りがよく、性能が安定しているので、マシンの調子が悪い時も、原因究明に集中できるので助かります」と次戦に向けて意気込んだ。

アメリカのFormula Driftで活躍するケングシ。

練習走行でR35 GT-Rのエンジンのパワーに耐えきれず、プロペラシャフトが折れてしまった。しかしメカニックの懸命の処置によって予選出場を果たした。

プロモーションビデオ撮影のスタントドライバーとして、失敗が許されない一般道やショッピングモールでの走行でも腕をふるうことでも知られるケングシは、その持ち前のテクニカルなコントロールで見事に全てのゾーンを制覇。予選を突破した。しかしトラブルは続いてしまい、本選に挑むことは出来ずに終わった。

「ミスの無い、正確で綺麗なドリフトを目指しています。その上で齋藤太吾さんのような爆発的なドリフトはとても尊敬していますね。前回の鈴鹿ツインサーキットでは風間オートさんのおかげで初めてのコースで難なく操ることができました。NEOVA AD09 のコントロール性の高さも相まって、乗りやすくてわかりやすいマシンです。しかし、まだまだ開発途中なので、トラブルを克服して仕上げていければと思います」と前向きに語った。

練習走行でも容赦はしない
王者の風格

先日のD1GP「OKUIBUKI DRIFT」ではエンジンブローでリタイアという無念極まりない結果に終わった齋藤太吾。今回は練習走行から絶好調と見て取れる完璧な走りで会場を沸かせた。解説の谷口信輝は「本当に強い選手は1発目から決めてくる。お客さんの前でラジオ体操みたいな走りはしない」という。朝一番に練習走行の車列の一番先頭に並び、1本目から決勝戦のような気迫の走りを見せていた。
そして迎えた予選。一切の迷いがない、桁外れの速度と角度、そしてゾーンに置かれた全てのパイロンを見事に掠めて走り切った。結果は96ポイント。驚くべき得点を獲得し、単走優勝を果たした。

表彰式が終わり「1本目は結構上手くいったね、2本目は80点位かな」と明日への希望に満ちた穏やかな表情で語った。

トップ32では箕輪のマシントラブルによるリタイアで不戦勝となり、続いてトップ16では、開幕戦で齋藤のコースアウトによって敗れたKANTA選手との戦い。

前回表彰台に登った者同士の高次元の追走で、齋藤の完璧なリードにKANTA選手は安心してチェイスをし、高度な技術とパッションを持ったドライバー同士の群を抜いた見応えのある走りで会場を沸かせた。結果は齋藤の勝利、トップ8へ勝ち進んだ。

トップ8の相手は、齋藤が所属するTRAIL MOTOR APEX RACING -TMAR- の松山北斗選手。2台の同じカラーリングのGR86がスタートラインに並ぶこととなった。

何度でも見たくなるような白熱の戦いとなったが、1本目は両者同じ程度の落ち度で互角とみられ、リードとチェイスを入れ替え2本目。

勢いよく2台のGR86がゾーン1へと進入していくが、齋藤の様子がおかしい。
そのままゾーン2でも大きく外側に膨らみ、ゾーン4では4輪とも脱輪し、豪快に砂煙を巻き上げた。

木曜日の練習走行の時から絶好調のように見えた齋藤だが、実はステアリング関係の様々な問題と格闘していた。克服した問題もあったものの、松山選手との戦いではステアリングのとてつもない切れ角故の構造上の問題によりカウンターが戻らなくなったという。「他のコースでは絶対出ない、ここのコースだから出てしまった。1人で走る分にはいいんだけど、追走となると人に合わせたいつもと違う動きをしなければいけないから、その分負荷がかかるんだよ。いいところまではいていると思う。次は優勝目指していきたい」とコメント。

エビスサーキット西コース。過酷なレイアウトでドライバーとマシンを苦しめたが、また一つ熱い戦いが繰り広げられた。

次戦Round.3は、2022年7月30日(土)、31日(日)スポーツランドSUGOで行われる。どんな戦いが繰り広げられるだろうか。

(了)

(文中敬称略)

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