2018 SUPER FORMULA Round 1 Report

【SUPER FORMULA 第1戦/鈴鹿】

2018シーズン初戦を制したのは山本尚貴選手、
2スペックのタイヤがレースを盛り上げた!!

SUPER FORMULA Round 1

開催日 2018年4月20日-22日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 51周
(1周=5,807m)
参加台数 19台
SUPER FORMULA 第1戦

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SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の2018年シーズン開幕戦が鈴鹿サーキットで開催。全戦2スペックタイヤ採用、バラエティ豊かなルーキードライバー参戦など多くの話題が集まる今シーズンの初戦を、山本尚貴選手(TEAM MUGEN)が制した。

昨年までサーキットを限定して採用されていたタイヤの2スペック制が、今シーズンはすべての大会に導入される。ミディアムタイヤは昨年と同じ仕様を引き続き使うことになるが、ソフトタイヤは昨年の結果を踏まえ改良。「さらなるタイムアップ」「摩耗限界を早める」という2つを目標に開発した新たなソフトタイヤを投入した。3月に行われた公式テストでは、コースレコードに迫るタイムも記録されており、レコード更新にも期待がかかっていたが、この週末は一気に季節が進んだかのような暑さに見舞われ、残念ながら記録更新はならなかった。

21日(土)に行われた公式予選では、Q1は全車ミディアムタイヤの装着が義務付けられた。このQ1でトップタイムをマークしたのは、今シーズンルーキーの松下信治選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。同じくルーキードライバーの福住仁嶺選手(TEAM MUGEN)も3番手でQ1をクリアするなど、SUPER FORMULAで百戦錬磨のドライバーたちに引けを取らない速さを示した。

ソフトタイヤを使用できるQ2では、各車アタックラップ中に1台の車両がコースアウトしたことで赤旗中断。何台かのマシンは、Q3でポールポジションを争うために温存していた新品ソフトタイヤを投入してQ2突破を目指し、最終的に野尻智紀選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムをマークし、以下ホンダエンジンユーザーが5台、トヨタエンジンユーザーが3台の計8台でポールポジション争いが行われた。

すでにQ2進出のために新品タイヤを投入したドライバーには苦しいQ3となり、実質的にはタイヤ温存が可能だった山本選手、野尻選手、福住選手、そして伊沢拓也選手(TCS NAKAJIMA RACING)の4台にポールポジション争いが絞られた。

全車一発勝負の息をのむようなアタックの中で、ポールポジションを獲得したのは山本選手。2016年の開幕鈴鹿大会以来、2年ぶりのポールポジション獲得となった。2番手にはチームメイトの福住選手が並び、以下5番手までをホンダエンジンユーザーが独占。トヨタエンジンユーザーとしては、ディフェンディングチャンピオンの石浦宏明選手(P.MU/CERUMO・INGING)の6位が最上位となった。

翌22日(日)はさらに陽射しが強まり、決勝レースが始まる時点で気温は26℃、路面温度は40℃を記録。3万人を超えるファンが見守るなか、300kmのレースがスタートした。

スタート時点でのタイヤチョイスは、上位陣がミディアムタイヤ、スタートダッシュを狙う中盤以降の選手がソフトタイヤ。フロントローの山本選手、福住選手が順当なスタートを切る一方で、9位スタートの国本雄資選手(P.MU/CERUMO・INGING)、13位スタートの山下健太選手(KONDO RACING)らはソフトタイヤの蹴りだしの良さを活かし大きなジャンプアップに成功した。また5位からスタートした塚越広大選手(REAL RACING)は、ミディアムタイヤを装着ながら比較的燃料を軽めに抑える2ピット作戦を敢行し、オープニングラップで3位に浮上。勢いそのままに福住選手をかわし、山本選手を追い立てていった。

1秒を切る僅差の中で攻防が続いたが、何とかこれをしのいだ山本選手がレース前半をリードしていく。32周を終えてピット作業を済ませた山本選手は、実質トップでコースに復帰。前にいたのは2ピット作戦の塚越選手のみで、35周目には名実ともにトップに返り咲き、そのまま16周先のトップチェッカーを目指すことになった。

この時点で2番手につけていた山下選手も速めにピット作業を済ませていたことから2度目のピットインに入り順位後退。代わって2番手に上がったのは、14位スタートの関口選手だった。ソフトタイヤでスタートした関口選手は、全ドライバーの中でも一番長い24周を走りピットイン。チームの素早いピット作業も後押しし、2番手まで順位を押し上げていた。

ソフトタイヤで逃げる山本選手と、それをミディアムタイヤで追いかける関口選手。両者の間には当初10秒以上の差があったが、終盤になって山本選手のペースがダウンし、一方の関口選手はペースを上げ、一気にギャップを削っていった。時に1周で1秒以上差を詰める勢いで追い上げた関口選手だったが、それまで築いたマージンが山本選手を助け、ファイナルラップに入る時点で2.6秒差を保っていた。

最後の力を振り絞り、関口選手は山本選手を追いかけるが、わずかに届かず。1.7秒の差を残し、山本選手が今シーズン初戦のトップチェッカーを受けた。山本選手は2016年の開幕戦鈴鹿大会以来、2年ぶりの勝利。関口選手にも、気迫あふれる追い上げの走りに大きな拍手が送られた。

3位に入ったのは、スタートで順位を落としたものの、その後は着実なペースで走り続けた野尻選手。ディフェンディングチャンピオンらしい堅実なレース運びを見せた石浦選手が4位に入った。伊沢選手がチーム移籍後初レースでシングルフィニッシュの5位につけ、昨年も2スペックタイヤを採用したレースで多くの見せ場を作った塚越選手が、今回も鮮やかなオーバーテイクを披露し6位入賞となった。

DRIVER VOICE

山本尚貴 選手 [TEAM MUGEN]

【今回の成績 : 優勝】
自分自身とチームができる限りのことをして、ベストを尽くせたレースになりました。最後は追い詰められる展開になりましたが、とにかく勝てて、ただ“嬉しい”の一言です。代わるがわるいろいろな選手が後ろに迫ってきたり、戦略の違いで塚越選手にいったん前に出られていたりと、自分たちの調子のよさには手ごたえを感じていたものの、途中で自信がなくなるぐらい展開が読めないレースでした。でも結果的に優勝できて、チームに感謝しています。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

今季のソフトタイヤは、去年のタイヤに対してレースラップを早め、摩耗限界を早めるという狙いで開発を進めてきました。事前情報では思ったようなタイムが出ないということもありましたが、実際には機能すべきところで機能していたのではないかと見ています。

想定外だったのは、例年以上に気温・路面温度が上がったこと。去年はミディアムタイヤでコースレコードを更新できましたが、今年はソフトタイヤを使ってもレコードタイムに届かなかったのは反省点です。ただ、タイムというのはタイヤとマシン、それにコンディションとすべてが合わさって出るものなので、今回はパッケージとして(タイムが)出にくい状況だったのでしょう。

決勝については、もともと路面温度が上がると、タイヤとしては比較的摩耗は緩やかになるのではと予想していたのですが、決勝日のフリー走行でロングランをしているチームを見ると、ソフトタイヤが思っていたよりも持たないかもしれない、20周ぐらいが限界かと感じました。実際にはレースラップタイムがもう少し遅くなった分、関口選手は24周まで引っ張れたのかと考えています。

ピンポイントでレースを見ると、ミディアムタイヤのマシンをソフトタイヤのマシンが抜いていく場面も多く、またドライバーによるタイヤの使い方の違いなども見られ、まずは初戦、面白いレースを展開するためのサポートはできたのではと思っています。