2016 JRC Round 8 Report

【全日本ラリー選手権 第8戦/岐阜県高山市】

JN5で柳澤宏至選手が最終戦を待たずしてチャンピオンを獲得、
JN2ではヨコハマタイヤ勢が表彰台を独占する強さを見せた!!

JRC Round 8

開催日 2016年10月14日-10月16日
開催場所 岐阜県高山市 近郊
天候/路面Day1) 晴れ/ドライ
Day2) 晴れ/ドライ
総走行距離 375.81km
SS総距離 88.14km (12SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 48台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 18台)
全日本ラリー選手権 第8戦

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シリーズで最もタフな一戦と言える「RALLY HOKKAIDO」を終えて、チャンピオン争いもますます白熱している2016年の全日本ラリー選手権。第8戦は2戦ぶりに舞台をターマック(舗装路)に戻し、岐阜県高山市をホストタウンとする歴史ある一戦「第44回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ」が開催された。

グラベル(非舗装路)ラリーの時代から幾多の名勝負を生んできた大会、今年は2日間で12本のSS(スペシャルステージ)合計88.14km、移動区間を含めた総走行距離は375.81kmで競われる。Day1は「青屋 上り (8.84km)」「駄吉 下り (6.24km)」「アルコピア-無数河 (6.16km)」という3つのステージを、30分サービスをはさんで2ループする。道そのものは昨年も使われているが、走行方向が逆となって青屋が上り、駄吉は下りとなる。そしてDay2は「あたがす (9.68km)」「牛牧 (7.05km)」「無数河-アルコピア (6.10km)」の3ステージを、やはりサービスをはさんで2ループ走行する

ここでステージの標高差に注目してみると、駄吉は1,300mほどのスタートから940mのフィニッシュまで360mを6.24kmで駆け下りる。しかし下り主体のステージは駄吉のみとも言え、名称に“上り”を冠する青屋はもちろん、あたがすもスタートとフィニッシュ手前の最高地点との標高差は650mほどもある。同じ道を両方向に使うアルコピア-無数河は、Day1が上り主体、Day2は下り主体となる。但し標高差は150mほどで、他のステージに比べれば平坦な部類となる。

標高差に加えて、回り込むようなコーナーが連続するのか、緩いコーナーやストレートが多いハイスピードなのか、それぞれのステージが持つ特徴を如何に攻略していくかは勝負を分ける鍵にもなる本大会。そんな一戦でヨコハマタイヤ勢からは、JN5クラスで最終戦を待たずしてシリーズチャンピオンが誕生した。

今シーズン、これまで4勝を挙げている柳澤宏至選手/中原祥雅選手組(プジョー・208 R2)。ランキングリーダーとして臨んだが、序盤は思わぬ苦戦を強いられてしまう。SS1からSS3のセクション1、シリーズを争うライバルの先行を許してSS3を終えて10.7秒という決して小さくないビハインドを背負ってしまう。しかし、セクション2に入って巻き返しを図り、ポジションこそ変わらないもののライバルとの差を2.4秒にまで縮めてDay2での逆転を期する。

週末を通じて秋晴れに恵まれた飛騨高山、Day2のオープニングとなるSS7「あたがす 1」は何とライバルと同秒で王座を賭けた戦いはますますヒートアップ。続くSS8はライバルに0.7秒遅れたものの、SS9「無数河-アルコピア 1」で2.2秒取り返して、ライバルとの差は僅か0.1秒に。そしてリピートとなるSS10「あたがす 2」でライバルを5.9秒上回り一気にポジションを入れ替えると、SS11「牛牧 上り 2」でもライバルとの差を拡大。流れをしっかり引き寄せてマシンをフィニッシュまで運び、柳澤選手は自身初となる全日本選手権チャンピオンの称号を手中におさめた(チャンピオンはJAFモータースポーツ表彰式で最終決定)。

また、ヨコハマタイヤ勢同士がチャンピオン争いの一騎討ちを演じているJN2クラスは、「RALLY HOKKAIDO」を終えてランキング2番手にドロップした小濱勇希選手/馬場雄一選手組(スバル・BRZ)が序盤から猛プッシュ。JN4のトップをも凌駕するスーパーベストを刻み、セカンドベストの明治慎太郎選手/北田稔選手組(トヨタ・86)をオープニングステージで10.1秒引き離す。そのまま4連続ステージベスト、SS5は明治選手組に譲るもSS6で再びベストを刻み、初日は6本中5本のステージベストで明治選手に23.0秒差をつけて折り返した。

チャンピオン獲得に向けてデイポイントも含めた満点優勝のみを狙う小濱選手組、大量リードを構築してはいるがDay2に入ってもマシンを駆る手綱を緩めることは無い。なんとこの日に設けられた6本のSS全てをベストタイムであがり、終わってみれば全12SS中、SS5を除く11本のステージベストをマークする文句無しの満点優勝。この結果、コ・ドライバーの馬場選手は一足先にチャンピオンを獲得。小濱選手は準優勝となった明治選手と、最終戦・新城での一騎討ちでチャンピオンを競う展開となった。また3位には加納武彦選手/横手聡志選手(BRZ)が入り、嬉しい全日本初表彰台で笑顔を見せた。

三つ巴のタイトルとなっていたJN6クラス、ランキング3番手の新井敏弘選手/田中直哉選手組(スバル・WRX STI)はオープニングステージからマシンのパフォーマンスが完調ではなく、タイムが伸び悩む。Day1最終サービスでターボチャージャー交換などを行ったが、初日の出遅れが大きく響いて4位フィニッシュ、残念ながらタイトル争いからは姿を消してしまった。一方、ランキングトップでゼッケン1をつけて臨んだ奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(三菱・ランサーエボリューションⅩ)は3位でフィニッシュ。こちらもライバルと最終戦でチャンピオンを決することとなった。

このほか、JN4クラスはリタイアも多いなかで最後までしっかりマシンを運んだ山口清司選手/島津雅彦選手組(86)が、最終ステージではベストも刻んで3位表彰台を獲得。JN3でも唐釜真一郎選手/松浦俊朗選手組(マツダ・デミオ)が今シーズン2回目の表彰台となる3位でフィニッシュ。そしてJN1クラスでは須藤浩志選手/新井正和選手組(スズキ・スイフト)が準優勝、チャンピオンはチームメイトと争う形でこちらも最終戦に持ち越しとなった。また、伊藤隆晃選手/大高徹也選手組(日産・マーチ)がDay1の「駄吉 下り」で2本ともにベストを奪うなど好走、3位でフィニッシュして現行のK13型マーチで初の全日本表彰台を獲得した。

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DRIVER VOICE

柳澤宏至 選手 [YH クスコ ラリープラス 208 R2]

【今回の成績 : JN5クラス 2位 (シリーズチャンピオン)】
正直なところ、もっと楽に行けるかと思っていたのですが、予想外に苦戦する展開になりました。セクション1は多少様子を見ていた部分もありますが、タイム差を見て「あれっ?」となってしまって。車もセッティングを多少見直してセクション2に臨み、自分の“ネジ”も巻いてほぼ100%のアタックを行いました。追う立場でスタートしたDay2ですが、リピートの「あたがす」が勝負だと思って全開で攻めたら勝てたので、そこで流れを取り戻した感じで逆転してフィニッシュ出来ました。全日本のタイトルは初めてなのですが、車もタイヤも全て上手く行った結果のチャンピオンだと思います。初めての車で1回だけトラブルでノーポイントがありましたが、それ以外は毎戦しっかり結果を残せて来られたのはチームのおかげだと感謝しています。コドライバーの中原選手のタイトルは持ち越しているので、次の新城も気を抜かずに頑張ります。

小濱勇希 選手 [YH フェイスクラフト BRZ]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
デイポイントも含めた満点優勝が至上命題だったので、リスクは承知の上でSS1からフルアタックで行きました。初日をトップで終えられましたが、両日ともに満点デイポイントがチャンピオン獲得の大前提なので、気を抜くことなく日曜日を迎えました。Day2のオープニングステージではスタートで緊張もしましたが、深呼吸して気持ちを整えてスタートしました。Day1とDay2では道の感じも変わるので分からない部分もあったのですが、走り出して少ししたら前日と同じペースで走っているという好感触を掴めて、フィニッシュまでマシンを運ぶ事が出来ました。満点優勝を出来ましたが、タイトル争いについては決着が最終戦まで伸びただけ。ただ、上り調子で最終戦に臨めるので、自分の心理としては良い状態で迎えられると思います。みなさんの応援のおかげでここまで来ているので、恩返しをしたいですね。

山口清司 選手 [jms ADVAN エナペタル 久與 86]

【今回の成績 :JN4クラス 3位】
JN4クラスは3台のみが完走、生き残った結果の表彰台でした。走りは思い切ってコーナーに入ることが出来ず、どうしても車速を落とさざるを得ませんでした。タイヤサイズやスプリングを変えてみたりしましたが、最後はこの車で走るしか無いんだとペースを上げて行ったら、最後の方ではステージベストも奪って次に繋がる結果を残せました。とはいえ、ここまで頑張ってこのタイムというのは辛いのも事実。次の新城までに車について一旦整理をして、やれるだけのことをやって最終戦に臨んでいきます。

唐釜真一郎 選手 [エムスポーツ I.T.O デミオ]

【今回の成績 :JN3クラス 3位】
今回はタイヤのおかげという部分が大きかったですね。実はSS1で初めて「ADVAN A052」を装着して走ったのですが、それでもスンナリとコントロール出来たのが良かったです。Day2ではギャップで飛ばされてコースオフしかけてリズムをちょっと乱してしまったのですが、最後まで車を運んだ結果として今シーズン2回目の表彰台につながりました。「ADVAN A052」は絶対的なグリップ性能が高いですし、フロントが逃げてしまうような場面でもコントロール性に優れているので、攻めて行っても楽ですね。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG コマツ YH スイフト]

【今回の成績 :JN1クラス 2位】
とうとう連勝をストップさせられたのが、我が弟子というかチームメイトの鈴木(尚)選手で、シリーズポイントもほぼ同じに並んで最終戦での決戦という展開になりました。同じチームですが、いつもオーダーは全く無い“ガチ”勝負で、走っている間だけではなくてTC待ちも宿で過ごす時間も“口撃”の応酬もシビアです(笑)。Day2オープニングの「あたがす」で一気に詰められて、あとは同じようなタイムでついていけば最後は逆転できるだろうという計算もあったのですが、オープニングステージを終えたら鈴木選手がマジになって。自分が鈴木選手の闘争心に火をつけてしまいましたね(笑)。既に今日の時点で、新城での最終決戦に向けた心理戦は始まっていますが、もちろん最後は自分が勝ちますよ!!

TECHNICAL INFORMATION

今年も週末を通じて好天に恵まれ、ドライコンディションで熱戦が繰り広げられた「M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ」。日中は20℃近くまで気温が上がって暖かさも感じられたが、朝晩の冷え込みは厳しく気温も5~6℃ほどと秋の深まりを感じさせた。

このように温度変化も大きな一戦であったが、JN5クラスでのチャンピオン獲得にはじまり、JN2クラスでは表彰台を独占するなど、各クラスでユーザーが表彰台を飾った走りを「ADVAN A052」がしっかりと支えた。