数値シミュレーションを活用したタイヤのバーチャル開発―タイヤ内部や周辺の物理現象をデジタル上で可視化―

横浜ゴムの技術

数値シミュレーションを活用したタイヤのバーチャル開発タイヤ内部や周辺の物理現象をデジタル上で可視化

基盤技術

タイヤが走行する際、その内部や周囲ではさまざまな物理現象が起きており、横浜ゴムでは数値シミュレーションを用いて、タイヤ内部の変形や周囲の空気の流れなどの現象をデジタル上で可視化しています。複雑な物理現象を理解し、開発プロセスの効率化や新しい性能の実現、そして自動車業界において普及が加速化する「モデルベース開発(MBD:Model Based Development)」への対応に繋げるバーチャル開発の取り組みをご紹介します。

タイヤの性能向上に欠かせない複雑な物理現象の理解

路面との摩擦や荷重の変化など、走行中のタイヤには常にさまざまな力が働いています。あらゆる車両に共通して求められる低燃費・低電費性能や静粛性、安全性を高めるには、これらの性能に関わる物理現象が「なぜ起きるのか」というメカニズムを、タイヤの変形などを含めて詳細に把握することが重要です。しかし、回転するタイヤの動きを実際のテストだけで捉えることには限界があり、試作と評価を繰り返す従来の手法では、開発に多くの時間と資源がかかるという課題がありました。

デジタル上で物理現象を可視化する数値シミュレーション

そこで横浜ゴムが活用しているのが、タイヤを構成するゴムや補強材、タイヤ周辺の空間などを細かな要素に分割し、変形や発熱、空気の流れなどを計算する「数値シミュレーション」です。これにより、タイヤの性能に関わる物理現象をコンピューター上で可視化し、そのメカニズムをより詳細に分析できるようになりました。

性能最適化
〈分析可能な性能の例〉
  • 操縦安定性:コーナリングや制駆動といったタイヤの運動性能をシミュレーションし、自動車のMBDへの適用を推進。さらに回転するタイヤ周辺の空気の乱れが車両に与える影響を解析し、車両全体の走行性能を向上させるエアロダイナミクス技術などの開発に活用。
  • 低燃費・低電費性能: 走行中のタイヤ内部の歪みや発熱の分布を解析。エネルギーロスの要因を特定し、低燃費・低電費性能を高める形状や構造の検討に活用。
  • 静粛性: 路面と接する際の音の周波数や振動の伝わり方をデジタル上で再現。ノイズの発生源を特定し、タイヤからの騒音の低減と車内の快適性を高めるパターン設計に繋げている。
  • 耐摩耗性能: 路面に押し付けられる際の接地圧とすべりなどをシミュレーション。摩耗の要因を減らし、長寿命化に向けた形状設計に応用。
  • ウェット性能:雨天時にタイヤと路面の間にある水がどのように排出されるかをデジタル上で再現。水膜による浮き上がり(ハイドロプレーニング現象)などの要因を分析し、濡れた路面でもしっかりと止まるためのトレッドパターン(溝の形状)設計に役立てている。

中でも、低燃費・低電費性能やドライ・ウェット路面での制動やコーナリング、乗り心地といったタイヤの性能は、互いに両立が難しいケースもあります。しかし、それぞれの現象を数値化して捉えることで、シミュレーション結果をもとに、相反する性能のバランスを調整する「最適化」をよりスムーズに進めることが可能になりました。

バーチャル開発がもたらすさまざまなメリット

シミュレーションによってメカニズムを理解することで、コンピューター上で性能の予測が可能になるため、タイヤの性能向上だけでなく、実際の試作タイヤ数やテストの工数を減らすことができます。結果として、開発期間の短縮や省資源化にも繋がります。今後もバーチャル開発を推進し、次世代モビリティに求められる新しい設計手法や要求性能に柔軟に対応していきます。

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