鉱山用車両向け超大型タイヤの開発━━背反する耐熱性能と耐摩耗性能を両立する横浜ゴムの新たな開発アプローチ

横浜ゴムの技術

鉱山用車両向け超大型タイヤの開発背反する耐熱性能と耐摩耗性能を両立する横浜ゴムの新たな開発アプローチ

タイヤ

地下資源の採掘により人類の生活を根底で支える鉱山では、一度に多くの鉱物を運べるように建物ほどの大きさもあるダンプトラックが走行しています。その中でも最大クラスのダンプトラックは250トンもの積載物を運び、タイヤ1本あたりにかかる荷重は63トンにも達します。タイヤサイズ57インチ以上となるこれらのタイヤは超大型タイヤと呼ばれ、技術難易度が高く、生産できるメーカーは全世界でも数社しか存在しません。横浜ゴムは2019年、これまでとは全く異なる着眼点から超大型タイヤの開発に成功し、2024年に販売を開始しました。

ダンプトラック

鉱山車両用超大型タイヤで両立が求められる2つの背反性能

鉱山車両用の超大型タイヤに求められる性能は、高荷重に耐える耐久性はもちろん、高速/長距離移動での発熱に耐えうる耐熱性能と運用コストに直結する耐摩耗性能の大きく3つがあります。中でも、耐熱性能はトレッド部のゴム量を増加させるほど悪くなり、耐摩耗性能は増加させるほど良くなるという背反関係にあるため、この2つの性能の両立が技術開発における最重要課題となります。耐摩耗性能はゴム量が決定的な要素となるため、課題はゴム量を増やしながらどうやって耐熱性能を向上するのか。特に超大型タイヤは負荷の大きさから発熱の原因となる変形も非常に大きくなります。この課題を解決するためには、タイヤ性能に関する考え方を根本から変え、内部構造やパターンに至るまで見直す必要がありました。

スチールコードコンベヤベルト
タイヤの内部構造は複雑で、ゴムだけでなくワイヤーや繊維コードなど様々な部材が組み込まれている

背反性能の両立に向けた新しいアプローチ

そこで横浜ゴムが考え出したのが「タイヤに負荷のかかる箇所をコントロールする」こと。これは3.5mにも及ぶ超大型サイズの特徴であるタイヤ自体の大きさに着目した、乗用車用タイヤの開発とは全く異なるアプローチです。例えば耐熱性能の向上では、乗用車用タイヤではタイヤ全体が発熱しますが、鉱山用車両向けの超大型タイヤの大きさならば発熱する箇所をコントロールし、ある程度蓄熱しても問題ない箇所に集中させ、本来熱を溜めたくない場所での発熱を抑えようと考えました。

この新しい考え方の下、まずはトレッドのエリア毎に目標の耐熱性能を設定。発熱はタイヤと地面の接地圧が高ければ増え、低ければ減るため、目標を適えるための接地圧分布を割り出し、タイヤ構造の各要素が接地圧に与える影響を徹底的に分析しました。特に超大型タイヤではタイヤ試作に膨大な費用と期間が必要になるため、構造物を小さな要素に分割し、要素の性質を数値化して計算する有限要素法(Finite Element Method=FEM)によるシミュレーションを活用。カーカス構造の形状やベルト構造のベルトの角度や幅の組み合わせにより、空気充てん時などのトレッド変形をコントロールできることを解明しました。

スチールコードコンベヤベルト

この結果に基づき、目標とした接地圧分布となるよう各構造を設計。また、過去にない接地圧分布に適用する新規パターンを考案し、剛性を最適化するとともに耐熱性能の底上げのため空冷効果を最大限に発揮する溝配置としました。これにより、ゴム量を減らすことなく耐熱性能を向上し、今まででは実現できなかった耐摩耗性能との高次元での両立に成功しました。

横浜ゴムは本開発で得た新たな視点と知見を基に今後も新規技術や新商品の開発を継続し、皆様の生活を根底から支える鉱山での資源開発をサポートしていきます。

鉱山用車両向け超大型タイヤの開発