サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルに貢献するバイオマス由来の合成ゴムの開発

横浜ゴムの技術

横浜ゴム独自のAI利活用フレームワーク「HAICoLab」“人とAIとの協奏”でデジタル革新を目指す

基盤技術

近年、膨大なデータを処理できるAI(人工知能)がさまざま産業で欠かせない存在になっている一方、AIが不得意とするこれまでにデータのない未踏領域でのイノベーションには“人”ならではのひらめきや発想力が不可欠だと横浜ゴムは考えています。そこで当社は2020年に“人とAIとの協奏”によって、製品やサービス、プロセスの革新を目指す独自のAI利活用フレームワーク「HAICoLab (ハイコラボ)」を発表。現在、さまざまな技術開発に活用しています。

「HAICoLab」の概念図
「Humans and AI collaborate for digital innovation」をもとにした造語で、人とAIとの共同研究所という意味合いも込められています。

「HAICoLab」の概要

「HAICoLab」では、まず“人”が設定した仮説に基づいてデータを準備し、そのデータとAIによって予測・分析・探索・生成することで有益な情報(=特徴量)を取得します。ここで言う特徴量とは現在地から目的地を目指す場合に例えると、進むべき方角(=因子)と距離(=定量値)に相当する課題解決のカギとなる要素。そこに “人”が解釈を加え、思考し、判断するというサイクルによって気づきやひらめきを引き出し、目的地にたどり着くためのアクションを導き出します。また、「HAICoLab」ではAIに関する独自技術だけではなく、行動心理学と行動経済学を取り入れ、AI活用に影響する“人”の先入観やバイアスの軽減にも取り組んでいます。

「HAICoLab」の概念図
「HAICoLab」の概念図

現在横浜ゴムでは「HAICoLab」の考え方を実践してさまざまなタイヤ開発に適用するために、ゴムの物性値やタイヤの特性値を瞬時に予測するAIシステムや指定した物性値を満たすゴムの配合を生成するAIシステムなどを独自に開発しています。2024年5月には、「“人とAIとの協奏”によるデータ活用(HAICoLab)の研究開発」に対し、第36回日本ゴム協会賞が授与されました。

タイヤセンサーによるセンシングイメージ
「HAICoLab」を活用し開発した新車装着用タイヤの「ADVAN V61」

ゴムの混合プロセスにおける活用事例

「HAICoLab」のコンセプトである“人とAIとの協奏”を象徴するのがゴムの混合プロセスにおけるAI活用です。タイヤの製造過程は主原料となるゴムの混合から始まり、ここで混合されたゴムの品質はタイヤの性能を左右します。ゴムの品質に影響する因子は混合時の温度や湿度、機械の回転数や電力、混合時間などさまざま。これら多数の因子から品質安定化のカギとなる重要な要素を見つけ出すため、特徴量をAIが自動的に発見・抽出してくれるツール「dotData」を導入。過去の混合プロセスのデータを「dotData」に学習させ、得られた特徴量に材料技術者やデータサイエンティストが”人“ならではの多角的な解釈を加えることで、品質安定化に繋がる実行性の高い重要な特徴量にたどり着きました。成功のポイントは多角的な解釈に導くファシリテーションでした。この結果に基づき、混合仕様を見直して行った量産試作でも、有効性が実証されています。

新開発のエアコンホース

今後、横浜ゴムでは技術分野に限らず、人とAIの良いところを組み合わせた“人とAIとの協奏”によるイノベーションを目指し、「HAICoLab」の実践領域を拡大していきます。

新開発のエアコンホース
サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルに貢献するバイオマス由来の合成ゴムの開発