横浜ゴムの技術
サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルに
貢献するバイオマス由来の合成ゴムの開発
サステナブル技術
タイヤやそのほかのゴム製品に使⽤されるブタジエンゴムなどの合成ゴムは、現在は⼤部分が⽯油から製造されています。横浜ゴムでは 2050 年までのカーボンニュートラルおよびサステナブル原料使⽤率100%を達成するため、エタノールや糖などの植物由来のバイオマス(⽣物資源)からブタジエンを製造する「再⽣可能資源を使⽤した技術開発」※を進めています。
※本テーマは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「グリーンイノベーション基金事業」での取り組みです。
触媒反応を利用したエタノールからのブタジエン合成
触媒反応を利用してエタノールからブタジエンに変換する反応は古くから知られていますが、エタノールの変換効率が低いことやブタジエンのみを生成することが難しいなど、実用化に向けて多くの課題があります。そこで、横浜ゴムでは日本ゼオン(株)と国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同研究を進め、手作業では困難な膨大な条件の実験が可能なハイスループット触媒調製装置や評価装置などを活用し、高活性な触媒の開発に取り組んでいます。
その成果のひとつとして、開発した高活性触媒によりブタジエンを大量に合成・重合して得られたバイオマス由来のブタジエンゴムを用いてレーシングタイヤを開発。本タイヤの装着車両は米国で開催された「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムレース」に参戦し、2023年にはエキシビジョンクラスで2位を獲得しました。
今後もこうした継続的な実車評価を通じて、資源循環性の向上とタイヤ性能の両立を目指すとともに、エタノールから合成されたバイオマス由来の合成ゴムを2030年に普及させるべく、さらに高効率な触媒開発やプロセス開発を進めています。
バイオ発酵法を利用した糖からのブタジエン合成
自然界でブタジエンを生合成する代謝経路は見つかっておらず、植物や微生物などの生物を用いて物質を生産するバイオ生産はブタジエンでは達成されていませんでした。横浜ゴムは日本ゼオンと国立研究開発法人理化学研究所との共同研究で、遺伝子的性質を改変しブタジエン生産能を高めた酵素を新たに開発し、微生物の代謝経路中に新しいブタジエン合成経路を構築しました。コンピューターシミュレーションを用いた酵素デザインの最適化により、酵素の活性を2000倍以上まで引き上げることに成功しています。
発酵法によるブタジエンの生産は世界初であり、本手法により得られたブタジエンを重合し、ブタジエンゴムを得られる段階まで進んでいます。現在はバイオ発酵法の生産性のさらなる向上と、微生物培養のスケールアップに取り組み、技術の完成度を高めています。