ニュースリリース

世界初、分子配列変化に着目した天然ゴム熱劣化理論確立

高品質トラック・バス用タイヤ開発に活用

2003年06月05日

  • タイヤ関連
  • 技術関連

横浜ゴム(株)(社長:冨永靖雄)は、NMR(核磁気共鳴)分析手法を用い、自動車タイヤに使用される天然ゴムの加工及び走行時の熱劣化に関する新理論を確立した。従来の理論では熱劣化の原因は、硫黄架橋の密度変化と酸化反応によるとされていた。これに対し新理論は、加熱によって、「シス」型からより壊れやすい「トランス」型の分子配列が増加するためとしている。分子配列の変化に着目した熱老化理論は世界で初めて。新理論の確立により、とくに加硫工程での硫黄配合、加熱温度/時間の理論化が進み、耐久性を中心により高品質なトラック・バス用タイヤ開発が可能になる。

 自動車用タイヤの原材料として使用される天然ゴムは、加工及び走行時において様々な熱にさらされる。加工時には工業用ゴム製品としてのゴム弾性を確保するため、硫黄を混入し加熱することでゴムと硫黄を結合させる加硫と呼ばれる熱処理が欠かせない。また製品となった後も走行による転動によって発熱する。天然ゴムの劣化要因には紫外線、化学薬品、放射線などがあるが、熱によるものが最も大きいとされており、これまで様々にその原因の解明がなされてきた。
   *天然ゴムは加工時に100℃を大きく超える温度で加熱処理されるほか、天然ゴムの使用量の多いトラック・バス用タイヤなどは夏期の走行中にタイヤ内部温度が80℃以上に達するケースが多い。

 今日、一般的な天然ゴムの熱劣化理論では、熱劣化は温度環境の変化によって架橋密度が変化するため、あるいはゴム中に浸透した酸素が反応して酸化が起こるためとされている。とくにタイヤの内部部材における走行中の熱劣化は、一定の温度、加熱時間を越えた場合、架橋が不必要に進行し、ゴムが十分に変形できなくなるため発生すると考えられている。これに対し加硫による熱劣化では、熱処理時間が長すぎたり温度が高すぎると、架橋密度が一定であっても引っ張り伸び率が悪化するなど、必ずしも架橋密度と劣化との関連性が見られない現象が現れる。新理論はこの点に着目し、架橋密度以外の劣化原因を求めた。

 新理論はNMR分析手法を利用することによって初めて検証できた。従来の物理試験では物性に寄与する結合(架橋)しか測定できなかったのに対し、NMRを使用すると物性への寄与に関係なく全ての硫黄結合とその分子配列が測定できる。各種測定試験を繰り返した結果、加硫後に硫黄が結合した部分の分子配列は、結合が架橋になっていても物性に寄与しない構造になっていても全て「シス」型から「トランス」型に異性化していることが判明した。「トランス」型の分子配列は柔軟性に欠け切れやすい。このため物性に寄与する架橋が一定量確保されていても、物性に寄与しない結合が数多く含まれている場合は、全体として「トランス」型の分子配列が増加したことによって劣化が起きると結論づけた。

 新理論を用いることによって、加硫工程での適正硫黄配合量、加熱温度/時間の理論化が進み、耐久性などタイヤの高品質化が大きく進む。横浜ゴムでは、とくに天然ゴムの使用量が多いトラック・バス用タイヤの開発を中心として新理論を活用していく考え。

※写真をクリックすると印刷用高解像度画像がダウンロードできます。

シス→トランス異性化による熱老化

シス→トランス異性化による熱老化