アニュアルレポート2021

CSRハイライト

原材料の研究開発を通じたカーボンニュートラルへの取り組み

近年、気候変動問題の解決は「持続可能な開発目標(SDGs)」にも掲げられる世界的な急務となっており、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成を目指して世界各国が活動を加速化しています。横浜ゴムはかねてより持続可能な社会への貢献を目指し、原材料、生産、使用、廃棄までタイヤのライフサイクル全体を通じたCO2削減に取り組んでいます。ここではタイヤの主原料のひとつである合成ゴムの生成に関する取り組みをご紹介します。

■バイオマスを使用した合成ゴムの研究開発を推進

産学連携で研究開発に取り組む

合成ゴムはタイヤの原材料構成比のうち2割以上を占めており、合成ゴムのもととなるブタジエンやイソプレンは現在、ナフサ熱分解の副生成物として工業的に生産されています。当社は石油への依存度を低減し、CO2削減に貢献するため、国立大学法人東京工業大学、国立研究開発法人理化学研究所(理研)、日本ゼオン(株)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)と協働でバイオマスを使った合成ゴム生成の研究を進めています。2015年に発表した新技術を皮切りに、バイオマスからブタジエン、イソプレンを生成する様々な手法を確立しており、さらなる技術の進化・発展に向けた研究開発を続けています。

※乗用車用タイヤ(195/65R15, 8.2kg)の場合

最新の研究成果:効率的にブタジエンを生成できる世界初の新技術を開発

2021年4月、理研、日本ゼオンと共同で設置している「バイオモノマー生産研究チーム」の共同研究により、新しい人工経路と酵素で優れたブタジエン生成能を持つ細胞の創製に成功しました。これにより、これまでの代謝経路に比べ、より安価な中間体を経ることが可能になったほか、ブタジエンの発酵生産でのコストを大幅に削減することが期待できます。「バイオモノマー生産研究チーム」はイソプレンについても、2018年に世界初となる新しい人工経路の構築と高活性酵素の作成により優れたイソプレン生成能を持つ細胞を創製。この細胞内で出発原料であるバイオマス(糖)からイソプレン生成までを一貫して行うことに成功しています。

<横浜ゴムがこれまでに発表したバイオマス由来の合成ゴムの研究開発>

横浜ゴムがこれまでに発表したバイオマス由来の合成ゴムの研究開発

国際社会から高い評価を獲得

■気候変動対策において権威あるCDP A リストに2年連続3回目の選定

2020年12月、国際環境非営利団体CDPより、気候変動対策において権威ある「Aリスト」に選定され、コーポレートサスティナビリティにおける先進企業として認定されました。Aリストに選定されるのは2016年、2019年に続き3回目です。排出削減、気候リスク緩和、低炭素経済構築などの取り組みが認められ、今回の選定に至りました。

■世界的な「FTSE4Good Index Series」に 16年連続で選定

当社は「FTSE4Good Index Series」に16年連続、「FTSE Blossom Japan Index」に4年連続で選定されています。「FTSE4Good Index Series」は世界的なESG投資指数であり、ESG投資を行う投資家の重要な投資選択基準として活用されています。「FTSE Blossom Japan Index」は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用したESG投資のための4つの指数のひとつに選定されています。

地域社会に貢献

■持続可能な天然ゴムの調達方針に基づきタイの天然ゴム農家を支援

当社は天然ゴム加工会社であるY.T. Rubber Co., Ltd. が立地するタイ・スラタ二地区において天然ゴム農家の支援活動を行っています。2020年12月には、タイ天然ゴム公社(RAOT)と共同で研修イベントや肥料の無償提供を行ったほか、豪雨に伴う洪水で被災した360世帯に米とペットボトル水を配布しました。同地区では同じくRAOT と共同で2019年より農家の持つ課題を分析するため訪問調査も実施しています。今後も持続可能な天然ゴムのための国際的プラットフォーム(GPSNR)の12原則と当社の「持続可能な天然ゴムの調達方針」に基づき、こうした支援を通じて社会との共存共栄を図り、天然ゴムを持続可能な資源にするための活動を推進していきます。

研修イベントに参加した天然ゴム農家の方々と当社グループスタッフ

研修イベントに参加した天然ゴム農家の方々と当社グループスタッフ

■リトレッドタイヤによるCO2削減が地域から高い評価

2021年3月、ヨコハマタイヤリトレッド(株)の北海道事業所がタイヤメーカーとして初めて「北海道ゼロ・エミ大賞」の「大賞」を受賞しました。リトレッドタイヤにより製造・廃棄時におけるCO2排出量を新品に比べ約60%削減したほか、製造時のタイヤくずなどを全量リサイクルし、廃棄物のゼロエミッションを達成している点が評価されました。

■「YOKOHAMAまごころ基金」の活動

従業員による社会貢献基金「YOKOHAMAまごころ基金」は、2020年は新型コロナウイルス感染症対策への支援に注力し、本社・工場拠点のある8都県のコロナ対策支援活動に合計160万円の寄付を行ったほか、神奈川県に医療用車両向けタイヤ、北海道旭川市に医療用マスクと消毒液を寄贈しました。また、災害義援金や環境保全や人権擁護などに取り組む団体への援助も継続して行っています。