【NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ) 第2戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

決勝ラップレコードを更新する速さを見せたクログネス選手/トロゲン選手組、不運なトラブルに見舞われるも3位表彰台で一年の戦いを締めくくった!!

NLS Round 2

開催日 2022年11月04日-05日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 曇り
路面 ドライ (ところにより序盤ウェット)
決勝時間 4時間
(1周=25,378m)

2022年のNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)は、4月上旬に予定されていた第2戦が猛烈な寒波の影響で順延となり、11月に延期されて事実上の最終戦として開催された。この最終戦にヨコハマタイヤを装着して戦うヴァルケンホルスト・モータースポーツは3台のBMW・M4 GT3で参戦、SP9 Proの34号車はクリスチャン・クログネス選手/サミ-マティ・トロゲン選手、SP9 Pro-Amクラスに35号車がヨルグ・ミューラー選手/マリオ・フォン・ボーレン選手/アンダース・ブッチャート選手、SP9 Amクラスにヘンリー・ヴァルケンホルスト選手/フリードリヒ・フォン・ボーレン選手/アレクサンダー・プリンス選手という布陣で臨んだ。

11月5日(土)の午前中に行われた公式予選は、路面がウェットからドライへと転じつつあるコンディション。気温6~7℃、路面温度は5~8℃と低い中でカットスリックタイヤも使いながら走行したが、コース上の混雑に引っ掛かることも多かったため34号車は思ったようにタイムを伸ばすことが叶わず、クラス5番手のポジションに留まった。

正午にスタートする4時間の決勝レース、上空の多くは灰色の雲に覆われていたがところどころ青空も顔を見せている。路面はライン上のほとんどが乾いたが、それでもまだ部分的に黒い箇所も多く残っており油断出来ない状況だ。そんな中、スタートを務めたクログネス選手はソフトコンパウンドのタイヤを装着して素晴らしい追い上げを見せてくれた。

オープニングラップ、スタート直後の1コーナーでは接触からのスピンも発生して波瀾含みの幕開けとなるが、クログネス選手はこれに巻き込まれることも無くチャージ。セクター2でクラスベストタイムを刻むと、ニュルブルクリンクの名物コーナーであるカルッセルに差しかかる頃には2番手にポジションをアップ。前を行く5号車のアウディと6.723秒差でオープニングラップを終え、なおも追撃の手を緩めず2周目に入った。

2周目でさらに差を詰めたクログネス選手は、ストレートに戻った5号車の真後ろにつけて0.289秒差と完全なテール・トゥ・ノーズ状態に持ち込んだ。ソフトコンパウンドタイヤが発揮する絶大なグリップ力も味方につけたクログネス選手は、3周目の1コーナーで仕掛けてノーズを5号車に並べていく。前に出るには至らなかったものの、その後もプレッシャーをかけ続けて、“その時”が来る機会を伺い続けた。一方で3番手を走る16号車のアウディがじわじわ近づいてきて、トップ争いは三つ巴の展開となっていく。

2番手キープで5周を走行して34号車はピットイン。ここでタイヤをミディアムコンパウンドに交換し、トロゲン選手がステアリングを握って2スティント目に突入する。2周後の7周を終えて16号車と5号車がピットイン、8周目にはトロゲン選手がセクター1でクラスベストを刻み、暫定トップで周回を重ねて行った。

13周を終えて34号車は2回目のピットイン、コクピットには再びクログネス選手がおさまった。この時は燃料補給やタイヤ交換に加えて、フロントグリルに装着されていた網が外された。これは前戦で舞い散る枯れ葉の影響で走行風の取り込み量が不足し、冷却性能の低下という症状が起きたことへの対策として装着されていたもので、この時期のレースらしいものだ。装着することでビジュアル的にいつもと顔つきが若干変わっていたが、枯れ葉がそれほど舞っていなかったことから取り外されたのだ。

ピットのエンジニアが計算したシミュレーションでは、トップでチェッカー受けるためには30秒程度のビハインドということだった。これに対してクログネス選手はファーストスティント以上の猛プッシュで応え、16周目には7分54秒339で本大会のファステストラップを更新。さらに19周目には7分49秒578のタイムを刻み、決勝ラップタイムレコードを更新する速さを見せた。

レースが残り1時間というタイミングで3回目のピットイン、しかしここでまさかの事態が。ニュルブルクリンクはピットガレージに備えつけられた装置で燃料給油を行うが、上手く車両に燃料が入らないトラブルが発生。チームは装置を変えて給油を行ったがタイムロスは免れず、約4分ほどのストップとなってしまった。

引き続きステアリングを握るクログネス選手、25周を終えてポジションは約35秒差の2番手を走行。しかし先程の給油のトラブルによりライバル勢よりも1回多くなるピットインをこの後に強いられてしまい、ポジションを3番手に落としてしまった。それでも表彰台の一角を守り抜いた34号車は3位でフィニッシュ、決勝ラップレコードを更新し、本大会のセクタータイムは5つのセクター全てでベストラップを刻むという、ライバル勢を圧倒する速さを記録に残して一年の戦いを締めくくった。

チームメイトの35号車と36号車は、ともにそれぞれのクラスでしっかりとチェッカーまで走りきってクラス優勝を飾ることに成功。2022年のNLS、シーズン最後の戦いをヴァルケンホルストは全車完走、かつ全車表彰台という結果で終えた。

Engineer’s Voice

三好雅章 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ]

ニュルブルクリンクでは広い温度域をカバーする必要もあり、私たちは特に低温域での作動性向上を目標のひとつとしてタイヤ開発を行ってきました。3月に開催された開幕戦は思っていたよりも温度が高く、その開幕戦より5℃以上温度が低くなった今回は、結果的にシーズンを通じて最も気温の低い決勝になりました。そんな中で各ドライバーともに素晴らしいペースで走行出来て、特にクログネス選手は決勝ラップレコードを更新してくれたことを、私たちも誇りに思っています。

昨年までのM6 GT3から、新たにM4 GT3へと車両が変更になった2022年ですが、これに伴ってフロントタイヤのサイズが変わり、一からの開発となったことで苦労した部分もありました。ニュルブルクリンクでは仕様の登録が必要で一度登録すると変更できません。そこでオフシーズン中に、特に高速域でのパフォーマンスを向上させつつ低速域を犠牲にしない点などに取り組みながら、しっかりテストを行った結果を反映させました。

こうしてチームと一緒に開発してきたタイヤはパフォーマンスの向上を確認出来て、24時間レースの予選レースも含めてポールポジションを3回、表彰台を4回獲得出来ました。ヴァルケンホルストのチームのみなさん、そしてドライバーのみなさんに感謝しています。

ニュルブルクリンクという舞台で活躍することは決して簡単なことではありませんが、今年得られたデータから課題を整理して、来年は24時間レースの舞台でヨコハマタイヤ装着車が最高の結果を出せるように開発を進めていきます。応援してくれている多くのみなさんにも感謝しておりますので、引き続きご声援をよろしくお願いいたします。

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2022 NLS(Nürburgring Langstrecken-Serie) Round 2

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