SUPER GT

SUPER GT 2023
Rd.2 / FSW
確実に進化を見せた450km Race。

2023.5.9

雨の開幕戦から約2週間半後の開催となったSUPER GT 2023の第2戦・富士ラウンド。2日間共に快晴に恵まれる中で450kmという今季最初の長丁場のレースとなった。YOKOHAMA / ADVAN 勢は、GT500クラスでは残念ながら結果は残せなかったが、確実に表彰台目前までバトルを繰り広げ、GT300クラスではKONDO Racingリアライズ日産メカニックチャレンジGT-R が見事ポール・トゥ・ウィンを達成した。

Words:菅 正次 / Masatsugu Suga
Photography:田村 翔 / Sho Tamura

決勝に向けて
ベストポジションを獲得

久方ぶりに行動制限のないゴールデンウィークの只中となった5月2日、3日の2日間、静岡県の富士スピードウェイ(FSW)を舞台にSUPER GT 2023シーズン・第2戦が開催された。

開幕戦・岡山はほぼウェット路面だったためドライコンディションでのレースは今季初となり、さらに3月に行われた公式テスト富士でも終始雨だったことから、どのチーム/メーカーもドライでのテストが行えていない状況のままレース本番を迎えた。加えてこの第2戦からは4戦連続での450kmレースと長丁場が続く。2度のピットストップが必須となるが、給油/タイヤ交換はそれぞれが判断できるため、レーススピードだけではなくチームの戦略も決勝の結果に大きく左右することが予測される。

YOKOHAMA / ADVAN 勢は昨シーズン、ここ富士ラウンドを皮切りに #19 WedsSport ADVAN GR Supraが3大会連続でのポールポジションを達成している。今回もポールポジションを獲得することは重要だが、それ以上に長いレースを制し優勝することを見据えてこのラウンドを迎えていることは言うまでもない。チームや監督、ドライバーだけではなく、ファンもそこに期待している。それだけにヨコハマタイヤ陣営も優勝に向け万全の体制でFSW入りした。

快晴で迎えた5月2日予選日。15時15分からQ1、Q2のノックダウン方式で行われる。今回の予選は開始時間が15時を過ぎていることもあり路面温度も徐々に下がってくる。特にQ2ではアタック開始から早いタイミングでタイムを出せるかが鍵となりそうだ。最初のGT300 Q1はA、B二つのグループに分かれ、YOKOHAMA / ADVAN 勢では、16台進出中8台がQ2への進出を果たす。

一方、GT500 Q1は #24 リアライズコーポレーションADVAN Zが佐々木大樹選手のアタックで1分26秒892で3番手通過。19号車は国本雄資選手が1分27秒240で7番手のタイムとなり、GT500クラスのYOKOHAMA / ADVAN 勢が2台揃ってQ1突破となった。

続いて16時8分から行われたGT300 Q2。J.P.デ・オリベイラ選手がアタックする #56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rが1分半の時間を残すところで1分35秒114のトップタイムをマーク。チェッカー後、各車タイムを更新し2番手との差が約0.06秒差、さらに35秒台が13台という僅差の中、見事ポールポジションを獲得することができた。さらに3番手には #4 グッドスマイル初音ミクAMG、6番手に #88 JLOCランボルギーニGT3が入っている。

【GT300クラス予選結果】

1.  #56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R (1’35.114 / YH)
2.  #31 apr LC500h GT (1’35.176)
3.  #4  グッドスマイル初音ミクAMG (1’35.277 / YH)
4.  #52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT (1’35.279)
5.  #2  muta Racing GR86 GT (1’35.286)
6.  #88 JLOC ランボルギーニ GT3 (1’35.339 / YH)

GT500クラスのQ2は16時26分にスタート。平手晃平選手がアタックする24号車が、1分26秒779をマークし暫定トップとなる。しかし完璧なタイムとは言えず早々に #100 STANLEY NSX-GTにトップを譲るが、平手選手は再度アタックをせず早々にピットに戻った。

一方、阪口晴南選手がアタックする19号車はチェッカー後に1分26秒496をマークするが惜しくもトップに約0.07秒届かず2番手で予選終了となった。

【GT500クラス予選結果】

1. #100 STANLEY NSX-GT (1’26.420)
2. #19 WedsSport ADVAN GR Supra (1’26.496 / YH)
3. #16 ARTA MUGEN NSX-GT (1’26.609)
4. #14 ENEOS X PRIME GR Supra (1’26.743)
5. #24 リアライズコーポレーションADVAN Z (1’26.779 / YH)

GT300クラスでは56号車が完璧とも言える走りでポールポジションを獲得し、GT500クラスでも19号車が2番手フロントローを獲得したことで、翌日の決勝はYOKOHAMA / ADVAN勢に大きく注目が集まる上々の結果となった。

完璧とも言える450kmレース
56号車がポール・トゥ・ウィンを達成!

前日に引き続き晴天で迎えた4日決勝日。13時30分に450km / 100周レースのスタートが切られ、GT300クラスでは56号車のオリベイラ選手が2番手との差をつけトップを順調に走る。3番手スタートの片岡龍也選手がドライブする4号車も早々に1台を交わし2番手となり、YOKOHAMA / ADVAN勢の2台が順調な走りを見せるが、42周で4号車がコーナー縁石にエンジン下部を当ててしまいオイル漏れが発生。ピットに戻るも無念のリタイヤとなってしまった。

GT500クラスでは、国本選手がドライブする19号車が序盤は安定した走りを見せるが、他車を抑えることができず徐々に順位を落としてしまう。5番手スタートの佐々木選手がドライブする24号車は3番手にポジションを上げるも #36 au TOM’S GR Supraとバトルとなり4番手となってしまう。後半、平手選手にバトンタッチした24号車はタイヤのポテンシャルを落とすことなく表彰台圏内を走行し2番手との差を確実に詰めていく。しかし残り5周で前方を走るGT300クラスの2台のマシンの接触による減速に止まりきれず左フロントが接触しエンジンのウォーターラインを破損。一気に水蒸気が吹き上がり24号車は緊急ピットインしてそのまま戦線離脱となってしまった。一方、阪口選手がドライブする19号車は順位を上げることができず、12位でチェッカーを迎えている。

GT300クラスの後半では、名取鉄平選手にバトンを渡した56号車はピット作戦で #2 muta Racing GR86GTに前を譲るが87周でトップを取り返す。その後もバトルが続きファイナルラップの最終コーナーで一瞬2台が並ぶ場面もあったが、名取選手が抑え切り56号車が見事ポール・トゥ・ウィンを達成した。

安定した強さを見せた56号車。名取選手は初のSUPER GT / GT300クラス優勝となった。また24号車も表彰台圏内をラスト5周まで走行し、KONDO RACINGのW表彰台が目の前だっただけに悔しい想いは隠せない。

しかし、その力強い走りで450kmという長丁場のレースでYOKOHAMA / ADVANの実力を証明してくれたことは確かだ。GT300クラスでは開幕戦からYOKOHAMA / ADVAN勢の2連続優勝となりこの勢いで次戦鈴鹿でも優勝を目指したい。

【GT500クラス決勝結果】
1. #36 au TOM’S GR Supra
2. #100 STANLEY NSX-GT
3. #17 Astemo NSX-GT

13. #19 WedsSport ADVAN GR Supra (YH)
リタイア. #24 リアライズコーポレーションADVAN Z (YH)

【GT300クラス決勝結果】
1. #56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R (YH)
2.  #2  muta Racing GR86 GT
3. #52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT

GT300クラスで見事ポール・トゥ・ウィンを達成したKONDO RACINGの両ドライバーの喜びの声を聞いた。

KONDO RACING
J.P.デ・オリベイラ選手

私たちにとってパーフェクトな週末となり満点の21ポイントを獲得することが出来ました。このレースをトップで終えることができて本当に嬉しいです。チームの力強い仕事、ヨコハマタイヤ、そして日産の素晴らしいパフォーマンス。この第2戦で勢いを取り戻せたと思う。チームメイトの名取選手とはまだ2度目のレースですが、この勝利を得ることができたのはとても幸せなことだと思います。表彰台では他の2台がタイヤ銘柄の違うマシンでしたが我々は彼らに勝ち、トップに立つことができた。今日のヨコハマタイヤのパフォーマンスにはとても満足しています。是非この調子で続けていきましょう!

KONDO RACING
名取鉄平選手

無事ポール・トゥ・ウィンを果たすことができました。ヨコハマタイヤ、そしてNISMOをはじめKONDO RACING、そしてメンテナンスをしてくれたMORAの皆さんのおかげで最高の形で自分の初優勝も飾ることができました。本当にありがとうございます。そして日産応援団、KONDO RACINGファンの皆さんも本当にいつも熱い応援ありがとうございます。次戦に向けてはウエイトを積むので結構苦しい戦いになると思いますがGT-Rも得意としている鈴鹿なので、ヨコハマタイヤと一緒に頑張りたいと思います。

KONDO RACING
近藤真彦監督

おかげさまで56号車が優勝することができました。ありがとうございました。タイヤも素晴らしくドライバーたちもすごくいい仕事をしてくれて、前回の岡山ではチームがドライバーに対していい仕事をしてあげられなかったので、なんとか今回はこの二人に表彰台の一番上に立ってもらいたいとチームも頑張りました。GT500の方もタイヤがすごく良くなりいいレースができたんですけれども、最後にアクシデントに巻き込まれ残念な結果になりました。しかし、いつもあのポジションにいることができればダブル優勝も夢ではないので皆さん是非応援してください!また次戦頑張ります!!

YOKOHAMA / ADVAN勢GT500クラスの各ドライバーからもレース後の手応えを聞いた。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
国本雄資選手

スタート後、レース前半のタイヤのウォームアップを心配していましたが、そこに関してはあまり他車と比べても劣っている部分はなくて最初の1周目から同じようなペースで走れていました。ただ、そこからタイヤが温まっていく中のピークのグリップレベルがまだ足りなくて、そこから抜かれてしまったので改善が必要だと思います。でも、一方で24号車はすごくいいペースで最後まで戦っていたので、これはタイヤだけの問題ではなくボクらの見直しが必要で、この先にマシン(19号車)に合ったタイヤ選択をしていかなければならないと思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
阪口晴南選手

国本さんのスティントからペースが厳しいのは分かっていたし、自分が担当した最後のスティントもペースが厳しくさらに気温も下がり、悔しいレースになってしまいました。昨年の問題点を踏まえて今回の第2戦に挑みましたが、まだまだ改善しなければならない点がある。24号車は残念な結果で終わりましたが終始ペースは良かったので、ここからまた19号車の性能を引き出せるクルマ作りも一緒に考えながらレベルアップしていきたいと思います。

坂東正敬監督
予選2番手からスタートして決勝12位でゴールしました。反省点しかないレースでした。予選の1発の速さはあったけれども、フリー走行の時点で24号車とのタイム差、特にロングでのタイム差を感じていました。24号車と違うタイヤを選択したのでボクらがそのタイヤを活かしきれなかったと思っています。24号車のタイムはトラブルがなければ2番手まで追いつけるものだったので、その点はしっかりヨコハマタイヤとも話し合って改善したいです。

KONDO RACING
佐々木大樹選手

最初のスティントは少し温度が高くて自分たちが選んだタイヤでは厳しいところもありましたが、路面温度が下がってくるにつれ合ってきたので第1スティントも最後はタイムが復活してきました。2位争いまで行けたので、36号車は正直速かったから負けていたけど、それ以外はペースでも上回っていた。最後は残念な結果でしたが、全体を通して表彰台争いができていたのでポジティブな要素が多いレースになったと思っています。

KONDO RACING
平手晃平選手

今回持ち込んだタイヤは当初、温度レンジから外れているだろうと予測していましたが、意外とそれが頑張ってくれた。低温側で持ってきたタイヤでしたがこの高温でもうまく機能して、むしろ耐えてくれた。ウォームアップが速く、一発のピークのグリップ感は硬い方がちょっとあるけれど、タイヤ自体がグリップする感じが高く、かつロングでもタレなくてピックアップも付きづらい。これはすごい武器だなと思いました。
予選ではセット数的に十分ではなかったのでAを硬い方、Bを柔らかい方でアタックし、「スタートタイヤのくじ引きがBになったらいいね」なんて話していましたが、なんとBが選ばれ、いい方向でレーススタートが切れた。今までスタート直後がどうしても苦しかったけれど最初のスティントから力強く前に出られて、その後のレースラップを見ていても遜色なかったですね。
今回は戦略が上手くいってガソリンも軽い状態でしかもニュータイヤだったから、プッシュして100ラップを追い上げ続けた。後ろも結構離れていたのであの段階でポジション死守という作戦もありましたが、前のクルマとみるみる差が詰まってくるので残りのラップも追い上げました。前方のGT300の2台が競っていたので様子を見ていたのですが、2台が接触して失速したところに自分の左前が当たってしまい避けきれず。運がなかったですね。2戦連続ノーポイントで悔しいし、チームにもヨコハマタイヤにも申し訳ないけれど、気持ち切り替えて次戦鈴鹿はしっかり表彰台を獲得できるように備えていきたいです。

最後に横浜ゴムのMST開発部 / 白石貴之からもコメントを聞いた。

横浜ゴム株式会社 MST開発部
技術開発1グループ グループリーダー
白石貴之

GT500クラスの24号車は終盤まで非常に力強い戦いをしていただけに残念な結果ですが、これまで課題にしていたウォームアップ性能という部分については確実に良くなっていることを示せたと感じています。19号車はペースが苦しかったですが、これはタイヤ選択が24号車と違っていたというのもありますが、タイヤをどのように使っていくかという部分では24号車の方が現時点では合っている状態だと考えています。
GT300クラスの56号車は安定していい成績を出してくれています。またレース中のベストラップを記録した88号車には、構造やゴムを含め新しい取り組みをしているタイヤを試してもらいました。本来は開幕前の公式テストで確認しようと考えていたのですが、その時は終日雨というコンディションになってしまったので、実際のレースでいきなりのトライということになりました。フリー走行の時点でチームからのフィードバックとしてもかなり良いということだったので、レースもいい結果になれば…と思っていたのですが、実際にいいパフォーマンスを引き出すことができました。
450kmという長い距離のレースは今シーズン5戦が予定されており、この富士からは4戦続いて長距離レースとなります。今日は比較的気温も高く、夏場のレースを予想させるようなコンディションでもあったので、今回の結果をこの先のレースで活かしていければと思っています。

GT500クラスとGT300クラスで悲喜交々となる結果ではあったが、YOKOHAMA / ADVAN勢の確実な進化を存分に感じ取ることのできた第2戦・富士ラウンド。次戦の鈴鹿ラウンドではさらに進化を果たしたYOKOHAMA / ADVAN勢の活躍を、両クラス共に見られることに期待したい。

(了)

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