RALLY

Rally2で掴んだ価値ある勝利。
YOKOHAMA/ADVANと
共に目指すさらなる高み。

2025.8.22

全日本ラリー選手権/JN-1クラスに参戦する奴田原文雄/東 駿吾組(NUTAHARA Rally Team)が、第5戦「2025 ARKラリー・カムイ」で優勝を飾った。マシンはGRヤリス Rally2。ラリーの本場で鍛え上げられた本気のレースマシンと真正面から対峙し、全日本の舞台でようやく勝ち取った価値ある1勝。日本ラリー界のレジェンドが挑み続けるさらなる高み──その想いを訊く。

Words:髙田興平 / Ko-hey Takada

Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui

ラリーは予測不可能な世界
だからこそワクワクする

「GRヤリスのFIA Rally2規定車両で全日本ラリー/JN-1クラスに参戦して2年目。シーズンの後半に入ってようやく優勝を果たせたことは素直に嬉しいですね。これまで長年戦ってきたプロダクションカー(市販車改造クラス)とは違ってRally2は純然たる競技専用車両として仕立てられているからセッティングは非常にシビア。クルマ側にほとんど遊びがない分だけ、挙動を含めてすべてがダイレクトでそれがセッティングの難しさにつながる。我々はプライベーターなのでメーカーから細かなテストデータが共有されるわけではなく、ここまで手探りで1つひとつセッティングを試して都度トライ&エラーも繰り返してデータを積み重ねながら、まずはグラベル(未舗装路)での結果を残すことができました」

全日本ラリー選手権(JRC)第5戦「2025 ARKラリー・カムイ」(北海道ニセコ町/7月4日〜6日開催)において奴田原文雄/東 駿吾組(NUTAHARA Rally Team)がJN-1クラスで優勝を飾った。2024年シーズンよりマシンをGRヤリス Rally2に切り替えてから13戦目、価値ある初勝利である。

間もなくラリードライバー歴40年に達するという大ベテランの奴田原文雄。全日本ラリー選手権では11度の総合チャンピオンに輝き、プロダクションカー世界ラリー選手権(P-WRC)では「ラリー・モンテカルロ」を制すなど世界の舞台でも数多くの実績を残す。1994年に「ADVAN ラリーチーム」に加入して以来、YOKOHAMA/ADVANとは30年を越える歳月を通して共にラリー競技のさらなる高みを目指し続けている。

8月初旬、次戦となる「RALLY HOKKAIDO」(北海道帯広市/9月5日〜7日開催/2戦連続のグラベルラリー)に向けた走行テストの準備が進む札幌市郊外の「NUTAHARA Rally Team」の臨時ガレージを訪れると、まだどこかに勝利の余韻を感じさせる誇らしげな表情で、奴田原は赤と黒のADVANカラーに塗られた愛機と共に取材チームを出迎えてくれた。

「全日本ラリーにはシーズン中にターマック(舗装路)が6戦、グラベル(未舗装路)が2戦設定されていますが、いずれも事前にテストできる回数は限られています。実戦前に1回だけというのが実情ですね。Rally2の車両は例えばLSDの組み換えもドライブシャフトの横からデフケースを降さずにできてしまう。マシン設計の段階から実戦での作業効率が考え抜かれているわけですけれど、その分だけチームとしてやれることも多い。だからそのすべてを試してセッティングの最適解を導き出すには、やはり相応の時間が必要となります。そこは正直、悩ましい部分でもある」

全日本ラリー選手権第5戦「2025 ARKラリー・カムイ」(グラベルラリー)のJN-1クラスで奴田原文雄/東 駿吾組(NUTAHARA Rally Team)が優勝。2024年にマシンをGRヤリス Rally2に切り替えてから13戦目となるRally2マシンでの初勝利となった。(Photo : NUTAHARA Rally Team)

奴田原が現在JRC/JN-1クラスを戦うGRヤリスRally2は、国際自動車連盟(FIA)による規定に準拠したラリー競技車両であり、世界ラリー選手権(WRC)を頂点に世界中の国際大会に参戦するチームやカスタマーに向けて供給・販売されている。車体はスペースフレームを用いた最高峰のRally1とは異なり市販モデルがベース(同一プラットフォームで25,000台、ベース車両で少なくとも2,500台製造されたクルマでGroup Aホモロゲーションを取得することが条件)となるが、奴田原による説明の通りその中身は徹底して競技車両としてブラッシュアップされ、開発・製造はWRCきっての強豪たるトヨタガズーレーシング・ワールドラリーチーム(TGR-WRT)が本拠とするフィンランドを中心に行われる。

「Rally2はラリー競技の本場であるヨーロッパの理念や環境に基づいて開発されています。要は国土面積の限られた日本の環境下では実現し得ないハイアベレージな走行ステージにもしっかりと対応できるように各部が仕立てられている。そして、そうした高い次元で突き詰められたRally2のマシンセッティングを日本の走行ステージに合わせ込むことは想像以上に難しくもある。もちろん、セットアップさえ決まればとてつもないパフォーマンスを導き出せるけれど、そこまでの道のりは実際、長く険しくもある」

ラリードライバー歴40年目(ラリー初参戦は1986年)という大台を目前とし、JRCでは通算11度もの総合チャンピオン獲得数を誇る。海外でもアジアパシフィックラリー選手権(APRC)やWRC、2004年からはプロダクションカー世界ラリー選手権(P-WRC)に参戦し、2006年には開幕戦の「ラリー・モンテカルロ」(ラリードライバーの誰もが憧れるステージ)でP-WRC初優勝(日本人として初の快挙)を遂げ、その後も2勝を挙げてシリーズ2位という成績を収めている。

しかし、それほど輝かしい経歴を誇る日本ラリー界のリビングレジェンドをもってしても、Rally2マシンの真のパフォーマンスを攻略することは難しいというのだから、ラリーの世界も実に奥が深い。奴田原のオフィシャルサイト「NUTAHARA.com」のプロフィールに記されていた言葉がともあれ印象深かったので以下に引用する。

「ラリーの魅力とは、コーナーの先が見えない、予測不可能という世界に挑戦していくワクワク感にある」

60歳という年齢を越えてなお、“その先”に向かって挑み続ける。Rally2という新たな高みと真っ向から対峙し、ときに労苦を伴いながらも愚直に頂点を目指して走り続ける。そう、“未知なる何かを超え行く”ことに対して常にワクワクと胸を躍らせながら──この言葉の中にこそ、奴田原文雄というラリードライバーの本質が見てとれると思う。

ラリー競技の可能性を
次の世代にもつなげていきたい

「YOKOHAMA/ADVANとの繋がり合いもすでに30年(1994年に当時のADVAN ラリーチームに加入)を越えました。ボクにとって“赤と黒”のマシンで戦う意味にはやはり特別なものがある。Rally2に挑戦して“イチ”からまた経験を積み上げて行くという過程においても、YOKOHAMA/ADVANはタイヤでもホイールでも、文字通り我々の挑戦を足元から支え続けてくれている。象徴的な赤と黒のADVANカラーのRally2マシンで勝てたことは、だから本当に嬉しくって、何より誇らしくもありましたよね」

そう言ってグラベル仕様にセットアップされたADVANカラーのGRヤリスRally2を見やる奴田原の眼差しには、苦楽を長年共にしてきた掛け替えのない相棒に対するがごとく、確たる信頼と敬愛の念までが込められていたように感じた。

「ここ最近のクルマの進化スピードは本当に速い。ボクらの想像を遥かに超えるところがあって驚かされる。それが、Rally2を通して改めて思い知らされた現実です。Rally2はタイヤが路面に接している時間が圧倒的に長いんです。ボディが強くそれだけ脚がしっかりと正確に動いていて、だからこそ路面からの入力を確実に受け止める能力を含めてタイヤに対しての要求度も自ずと増す。グラベルではADVAN A053(装着サイズ:180/650R15/FIA Rally2既定に準拠)を履いていますが、長年に亘って互いの間で培ってきた信頼関係は絶大です。ただ、やはりRally2のようなクルマ側の進化スピードの速さに対しては、タイヤ側でも、この先に向けたさらなる進化を見据えていく必要性があると感じています」

グラベルラリーではADVAN A053(装着サイズ:180/650R15/FIA Rally2既定に準拠)を履く。ホイールはADVAN Racing RC-4(装着サイズ:7.0J×15インチ)が組み合わされる。

ある程度タイヤを滑らせた走り方もするグラベルラリーでは、“路面を食わせる(グリップ)”以外に耐久性やドライビングスキルそのものでカバーできる側面もあるが、それがターマック用(ADVAN A051T/装着サイズ:180/650R15/FIA Rally2既定に準拠)となれば、タイヤのグリップ性能こそが速さ=勝利に直結してくると奴田原は言う。

言うまでもなくモータースポーツにおけるタイヤ開発には多くの労力と時間、そして当然ながら相応のコストも要する。SUPER GTやSUPER FORMUAのようなサーキットを舞台としたトップカテゴリーはもちろんのこと、国内ラリーのように未だ“マイナー”と称される競技人口の少ないカテゴリーともなればなおさらだろう。クルマ側の進化スピードを追いかけながらタイヤの性能を日々進化させることは、決して容易なことではない。

Photo : NUTAHARA Rally Team

「YOKOHAMA/ADVANに対して我々がもっとも信頼を寄せていること。それは、このカテゴリーを長年ずっと支え続けてくれている──その事実に他なりません。現場の声に対して可能な限りのアップデートにも対応してくれる。もちろん、ラリー競技だけではなくYOKOHAMA/ADVANは本当に多くのモータースポーツのカテゴリーを今も変わらず支え続けている。ただ、企業の視点で捉えれば競技人口の少ないカテゴリーに向けたタイヤの新規開発に挑むことが、そう簡単な話ではないのも理解できる。だからこそ、我々は少しでも自分たちのカテゴリーの実力や可能性を世の中に示して、着実に勝利を重ねて、周囲に対してよりよい走りを見せて、競技そのものとしての魅力をもっともっと広めていく必要がある。そうした意味でも、今回のRally2での初勝利には大きな価値があったと思っています」

自治体主導で開催されるWRCの「Rally Japan」や、より多くの層がラリー競技に参加しやすい登竜門的な環境を整えた「TGRラリーチャレンジ」などを通じて、日本国内でのラリー人気は近年着実な高まりを見せている。さらにはWRC/Rally1での日本人ドライバーの躍進、才能ある若手ドライバーの発掘・育成など、ラリー業界全体にとってのこの先への明るい兆しだってしっかりと見えはじめてもいる。

「ボク自身、若手の育成には以前から力を入れて取り組んでいます。コ・ドライバーを務める東 駿吾もウチのスクール(NUTAHARA RALLY SCHOOL)の出身です。チームをサポートしてくれているKTMSでは若手メカニックの育成(KTMSの母体となる自動車ディーラーのメカニックなどで構成)の場としてラリー競技を有効に活用してもいます。そう、ラリー競技はいま改めて次世代とのつながりを強め、その先へと広がりを見せているのです」

次戦となる「RALLY HOKKAIDO」に向けたテスト走行の準備作業をする「NUTAHARA Rally Team」のクルーの面々。チーフエンジニアの山田淳一(写真左から2人目)を軸に、チームをサポートするKTMSからも若手のメカニックが参加する。奴田原のラリースクール出身のコ・ドライバー、東 駿吾も含め、若手育成にも力を入れるチームである。

設計者とのダイレクトな関係性
それが確かな信頼感につながる

「YOKOHAMA/ADVANと我々とのつながりはタイヤだけではなくホイールにおいても強固です。ADVAN Racingのラリー用ホイールはADVANラリーチームに加入したときから履き続けていて、もちろんP-WRCで勝利を収めたときも含めて、長らく我々の走りを支え続けてきてくれました」

奴田原のGRヤリスRally2にはADVAN Racing RC-4が装着されている。RC-4はラリーホイールとして高い実績と人気を誇るADVAN Racing RCⅢの進化版という位置付けだが、Rally2用には専用P.C.D.やセンターボアの拡大など新規での設計開発が惜しみなく投入されている。サイズはFIAの規定によりターマック用が8.0J×18インチ、グラベル用が7.0J×15インチ。車高が上げられたグラベル仕様に15インチの組み合わせは、実際にその佇まいを目の当たりにすると「これぞラリーカー!」といった独特の風情まで感じさせてくれるから面白い。

Rally2用に各所の設計が見直されたADVAN Racing RC-4(装着サイズ:7.0J×15インチ)。ターマック用の18インチとはまた異なる凝縮感ある表情を見せる。フィンタイプのスポークは、砂利はもとより大きめの石でも弾き返せるよう実戦的な設計が施されている。グラベルラリーでは走行時にはホイールセンターに砂利や泥などの侵入を防ぐカバーが装着される。

「ラリー用のホイールに求められる要素は剛性、耐久性(強度)、そして軽さ(規定重量との攻めのバランス)の3点に集約できます。中でも耐久性(強度)は重要な要素。ビード落ちや横方向からの衝撃にも十分に耐えられる(万が一エアが抜けてもゴールまで走り切れる)ことが求められる。さらにグラベルの場合、砂利はもちろん大きな石までを弾いてくれるスポークデザインなども設計の時点から考慮されている。YOKOHAMA WHEELの統括責任者(横浜ゴム ホイール企画CMP)である萩原 修さんとの距離感の近さも、チームの求めるさまざまな要件を余計なバイアスを掛けずに性能として具現化できることにつながっていると思います。ウチのチーフエンジニアの山田淳一がドライバーであるボクの意見や要望をホイールの設計者である萩原さんに直接伝えることができる。この関係性であれば複数の伝言による齟齬を生まずに済むので、開発のスピード感、さらにはその先にある製品としての確実性にも自ずとつながっていく」

こうしたダイレクト感こそが、そのまま乗り手と作り手の揺るぎない信頼関係に直結するのだと奴田原は強調する。実際、Rally2用ホイールの設計開発もごく限られた時間ではあったものの、そこにこのダイレクトな信頼関係があったからこそ、妥協のない形へと仕上がったのだ、と。

「ここにきてRally2マシンの特性もだいぶ掴めてきたので、それがこの先のさらに良い結果へとつながっていくはずです。次戦のRALLY HOKKAIDOでのグラベルはもちろん、終盤戦のターマックでの2戦(久万高原ラリー/M.C.S.C. ラリーハイランドマスターズ2025)でもYOKOHAMA/ADVANと共にさらなる高みを目指していきますよ!」

ADVANカラーを纏ったGRヤリスRally2の、今後のさらなる躍進に期待したい。

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