EVENT REPORT
価値あるサーキット体験を
多くのADVANファンと共に。
ADVAN Circuit Experience FSW
2025.3.14
富士スピードウェイで4回目の開催となり、すでに定番のイベント感さえ出てきたのがこのイベント。今回も豪華なゲストドライバーと走りやすい区分けで大人気の走行会はもちろんのこと、さまざまなイベントが用意された。その多くが新しい内容で、進化し続けるイベントとして新たな一面が見えた。
Words:加茂 新 / Arata Kamo
Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui
充実したコンテンツを用意
FSWをADVANが1日笑顔で包む
YOKOHAMAのスポーツタイヤを軸としたグローバルフラッグシップブランド「ADVAN」。ADVANは国内レース黎明期から活躍し、現在もモータースポーツ活動を継続させている。F1に次ぐ世界で2番目に速くレベルが高いとされるフォーミュラカーレース「SUPER FORMULA」ではコントロールタイヤとして1社供給。世界トップクラスの速さを誇るツーリングカーレース「SUPER GT」でも数々のタイトルを獲得。ほかにもラリーやドリフト競技などを幅広くサポートする。そしてもちろん、サーキット走行を愛するカスタマーからの信頼も厚い。0.01秒を競うタイムアタッカーが使うタイヤから、普段乗りからサーキット走行までを同じタイヤでこなすユーザー、そして普段乗りこそ楽しみたいユーザーまで「ADVAN」の持つまさにアドバンテージに期待し、ADVANはその期待に応え続けてきた。
そんなADVANを愛好するユーザーに、そしてこれからADVANとともにクルマを楽しんでいく人たちに向けて企画されたのが「ADVAN Circuit Experience / ADVANサーキット走行会」である。サーキット走行会とはマイカーでサーキットを走るイベントのこと。A級ライセンスなどの競技ライセンスも、走りたいサーキットの会員になることも基本的には不要。申し込んでエントリーフィを払えば誰もがサーキット走行を楽しめる、もっともサーキットを走りやすい機会である。そんなサーキット走行会とは集まり、走って、休憩して、また走って、帰る、というのが一般的。しかし、ADVANが「サーキットエクスペリエンス」と名付けるこのイベントは、その名の通りただ「走る」だけではなく、さまざまな「経験」や「体験」までができてしまうというもの。富士スピードウェイ(FSW)では4回目の開催となる今回も数多くのエクスペリエンスが用意された。
まずADVANユーザー自らがサーキットを走る「走行会」コンテンツは、スキル別のクラス分けで走りやすさを重視するのがADVAN流。そのうえでトッププロによる各クラスに見合った走行レクチャーが行われる。「マスター」「エキスパート」「ミドル」「エンジョイ」のクラスに分けられて走行するが、エントリー総数は215台と圧巻。クラス別に分けても40数台ごとの走行となる。とはいえ国内屈指のレーシングコースとなるFSWは距離も長く、コース幅も広い。結果、1枠の走行上限(フルグリッド)よりも少ない台数で走りやすい走行状況となった。
走行会以外のコンテンツも実に豊富かつ多彩だ。まず、体験型コンテンツとしてマルチパーパスドライビングコースにてタイヤ乗り比べ試乗会を開催。ピットエリアではSUPER GT /GT500クラスに参戦中のTGR TEAM WedsSport BANDOHのピットをそのまま作り、そこに愛車を入れて撮影できるコンテンツも企画された。パドックエリアではLB Trucksの迫力あるカスタム車両の展示に加えパレードランも。もちろんベンダーエリア(協賛企業によるブース)やステージも用意され、豪華トークショーや豪華景品が当たるジャンケン大会、走行会参加者による抽選会などのコンテンツも盛りだくさん。
さらに女性に向けたコミュニティ「beecar」のミーティング、「HKS×くるまのCHANNEL」による86/BRZミーティング、「Ring’S GT-R meeting」といったコミュニティ&オーナーズミーティングも実施され、それぞれのパレードランも行われるなど、ゲートオープンとなった早朝から夕暮れまで、FSWの各所がADVANユーザーとファンたちの笑顔に埋め尽くされる1日となった。
走りを純粋に楽しむこと
それがADVANの精神
イベントの軸である走行会は「マスター」「エキスパート」「ミドル」「エンジョイA/B」に分けての走行となる。それぞれブリーフィングではコース走行上の諸注意とアドバイスが行われた。サーキット初走行の人も多い「エンジョイA/B」クラスはノーマル車両での参加者がほとんどだ。アドバイザーは織戸学選手と谷口信輝選手。「コース幅が広いので、50km/hくらいかなと思ったら100km/h以上出ていることもある。思ったよりもスピードが出ていて止まれないとか、コースアウトしてしまうこともあります。まずは直線でスピードを出してみて、コーナリングはしっかりと速度落とす意識を持ちましょう」(織戸選手)。「自分のクルマがどれくらい止まれるのかを必ず試してください。特に1コーナーは速度が高いので、だいぶ手前から思い切りブレーキを踏んでコーナーまでどれくらい余裕があったかを確かめる。その感覚を元にして次の周からブレーキを踏み始める場所をアジャストすればバッチリ。ただ、そうなると前のクルマが早めにブレーキを踏んでみるかもしれないので、誰かの真後ろは走らないこと」(谷口選手)。「ブレーキが効かなくなってきたり、変な匂いがしてきたらベンダーエリアにブレーキメーカーのブースがありますからそこで相談してみると良いです。もちろん僕らに聞いてもらってもOKですよ」(織戸選手)といった初心者にも分かりやすく安心感もある具体的なアドバイスがされた。
「ミドル」クラスは松田次生選手と平手晃平選手が担当。「100Rは意外とイン側を小回りの方が速いです。使ってもコースの真ん中まで。出口はイン側のサービスロード先に寄って、そこから膨らむのはミドルまで。しっかりと右側に寄せてからADVANコーナーのインの縁石を踏めば効率よく加速できます」(平手選手)。「最終コーナーが1番大切です。イン側の縁石を踏むつもりで寄せて、ハンドルを戻しながらアクセルを踏んでいきます。ここでいかに早くたくさん踏めるかがカギですが、向きが変わらない状態で無理にアクセルを入れるとスピンしますので気を付けて」(松田選手)
「マスター」「エキスパート」クラスは片岡龍也選手と松田次生選手がレクチャー。「ADVANの高いグリップをできるだけ縦方向に使う意識を持ちましょう。経験のある皆さんが参加するクラスだからブレーキングでしっかり止めてから曲げることを意識している方も多いと思います。そこでさらに意識してもらいたいのは立ち上がりです。特にセクター3もグリップを加速方向に使って走る。タイヤがずっと鳴いている人、横Gを長く感じている人はまだまだ乗り方を直せばタイムが出ます」(片岡選手)。「1コーナーは路面改修されてコーナリング速度がわずかに上がりましたのでそこを活用してみてください。あとはFSWを速く走るコツはいかに早くアクセルを踏めるかです。クリッピングまでのノーズを出口に向けて、アクセルを速く踏む意識を持ちましょう」(松田選手)とスキルに合わせたアドバイスがされ、参加者が真剣に聞き入っているのが印象的だった。
走行会はヘルメットと長袖長ズボン、グローブを装着して走るが、各クラスの1回目の走行には慣熟走行が行われる。これは先導車について市街地走行のようなスピードでコースを1周するもので、この時は同乗が可能。同乗者のヘルメットは不要で乗車定員まで乗ってOKなので、同伴者や家族、友人などを乗せてコースをまわることができる。国内屈指のレーシングコースを実際に見て楽しむことができる貴重な機会は、パレードランよりもちょっとだけ速度が高め。同伴者も非日常なサーキットを体感できるコンテンツなのだ。
愛車でサーキット走行を存分に楽しめる「走行会」。参加車両は国産スポーツカーから輸入車、本格的なチューニングカーからライトチューンの車両まで実に幅広い。いずれのユーザーでも走りを楽しめるタイヤがADVANには揃っている。
お昼休みには「オンボードバトル」を開催。こちらは平手晃平選手のフェアレディZと松田次生選手のスカイラインクーペにそれぞれが乗り、そのオンボード(車載)映像と会話をオーディエンスがステージモニターで観戦しながら1周のガチンコバトルをするというもの。どちらも本当にマイカーで乗っている車両。それぞれライトチューンが施されるが、実はエンジン自体はともに同じVQ35DE。拮抗したバトルが予想されるがチューニングの度合いによりスタート時に平手選手はやや前からスタートできるため、アドバンテージがあるハンデバトルとなった。ちなみにタイヤはどちらもADVAN A052で平手選手は新品。松田選手は「結構走っちゃった(笑)」というコンディション。1周のみのバトルとなったが、松田選手が「SUPER GTでまたスタンディングスタートがあったら(過去にJAF GPでスタンディングスタート開催例がある)絶対負けない自信がある」というだけあって見事なロケットスタートに成功。1コーナーまでに平手選手の背後に迫る。1周通じてテールトゥノーズのSUPER GTさながらのバトルになるが平手選手が抑えきり勝利。メインステージは熱い盛り上がりを見せた。
メインコースから離れたマルチパーパスドライビングコースでは「タイヤ比較試乗会」を開催。ADVAN dB V553/ADVAN Sport V107/BluEarth-Es ES32を3台用意されたクラウンに装着して自分の運転でそれぞれに順番に乗って体感できる。コース内はパイロンによってラインが設定されていてクルマの動きをしっかりと感じられる。さらに波状路も用意され、ギャップに乗る際、降りる際の乗り心地もチェックすることができた。
さらにピットビル2FのクリスタルルームではADVAN club会員限定のトークショーも開催。こちらは織戸学選手/谷口信輝選手とTGR TEAM WedsSport BANDOHの坂東正敬監督、リバティーウォーク加藤渉代表が登場。織戸選手の坂東商会(現GTアソシエーション代表で坂東監督の父親である坂東正明氏が創業)勤務時代の秘話など30分の予定時間を大幅に超過した大爆笑のトークが繰り広げられた。
ADVAN club会員限定トークショーはリバティーウォーク加藤渉代表、谷口信輝選手、織戸学選手、坂東正敬監督が登場。スーパーGTの監督とドライバーに、カスタム業界の新たな潮流を作り出したキーパーソンが加わるという斬新な組み合わせで、会場は大いに盛り上がりを見せた。
2028年のADVAN 50周年に向けて
さらに充実したイベントへ進化させたい
パドックエリアに大迫力で並ぶ14台の大型トラックとトラクターヘッド。そのいずれもカスタムされていて、スタイリッシュかつレーシーな装いのボディパーツが装着されている。中には巨大なGTウイングが装着されているものもある。これらを持ち込んだのはリバティーウォーク(LBWK)の加藤渉代表。「前回の開催から声をかけてもらって、自分たちはこのスタイルだけどサーキットを走るわけじゃない。でも、じゃあトラックはどうかな? と。YOKOHAMAのトラック用タイヤもあるし、だいたい僕らのスタイル(街道レーサー)はもともとサーキット生まれなわけで、そこで融合できるんじゃないかと思った」と加藤代表は語る。
14台が集結したLBWKスタイルのトラック&ヘッド。その圧倒的な存在感は多くの来場者の注目を集めた。トラクターヘッドに乗車できる体験イベントでは、大人から目を輝かせた子どもまで多くの人が体験。トラックとADVANという新たな非日常の組み合わせが、不思議なほどの一体感を生み出していた。
車高短にエアロパーツ、それにビス留めワイドフェンダーのスタイルはリバティーウォークから世界に広まったスタイル。「僕らのスタイルは単にヤンチャだけと思われることもあるけどそれは違う。80年代にあったシルエットフォーミュラなどから生まれたレースマシンのスタイルをストリートに落とし込んで楽しみたいと思って始まった。だから今でもレーシングカーの公道バージョンを合法的に楽しみたいと思ってカスタムをしています。トラックも同じ。少しでもカッコよくして子供たちにも憧れを抱いてもらおうという試みで始めました。全国にこのスタイルがすでに30台以上はいますよ。なら、みんなで集まってレーシングコースでデモランしようよと」(加藤代表)。カスタムされたトラックは大きな注目を集め、そのパレードランはまさにその名にふさわしくコースをパレードしたのだ。
そんな大成功に至るイベントには企画から運営までを取り仕切った横浜ゴム株式会社の担当者の熱い思いがあったからにほかならない。「富士スピードウェイでは4回目となる開催です。前回よりもさらにベンダーエリアの出展者様も増え、コンテンツも増やすことができました。もっと若い世代を呼び込んでYOKOHAMA/ADVANを知ってもらおうと今回から『U-30』割引も行いました。走行会ではYOKOHAMA/ADVANタイヤを4輪装着で5000円キャッシュバックとしていますが、さらに30歳以下の方には5000円キャッシュバック(合計1万円のキャッシュバック)も実施しています。結果として今回、若い世代の参加者が増えたのは嬉しかったですね。そして、そういった方の友人や家族の方も楽しんでいただけるようにコンテンツを増やしましたし、休憩室も充実させました。SNSとのコラボも増えましたし、タイヤ比較試乗会はヘルメットなしでより身近に体験していただけるようにリニューアルもしました。だんだんとこのイベントが浸透してきて、走行会のエンジョイクラスは申込開始から数日でいっぱいになってしまったほどで本当に嬉しく思います」
そして、2028年に控えるADVAN50周年に向けて、さらなる充実した企画を打ち立てていきたいと担当者は言う。
「ADVANのサーキットイベントは毎年この時期だよね、とより多くの皆様に認識していただけるイベントに育てていきたいと思います。自分も1回目、2回目に愛車の180SXで走行会に参加してサーキット走行の楽しさに目覚めた経験があるからこそ、モータースポーツの入口としてこのイベントを今後もさらに充実させていきたいと思います。参加された方々に『あー楽しかった』と思ってもらえるイベントになり、結果としてYOKOHAMA/ADVANファンが増えて、タイヤを選ぶ時にやっぱり好きだからYOKOHAMA/ADVANにしようと思ってもらえたら最高ですね」
次回の「ADVAN Circuit Experience」は5月に岡山国際サーキットで開催予定。FSWとはまた一味違ったコンテンツを用意して西日本エリアを中心としたADVANファンを迎える予定だという。
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