ADVAN Sport
トータルバランスがもたらす幅と奥行き。
ADVAN Sportの真価を再考する。
2025.1.31
YOKOHAMAのグローバルフラッグシップタイヤであるADVAN Sport。その幅と奥行きある製品としての真価を再考する。“妥協なきプレミアム”という思想が生み出したタイヤ製品としての優れたトータルバランスこそが、ADVAN Sportの真の魅力となり得ているのか? それを改めて確認してみたい。
Words:髙田興平 / Ko-hey Takada
Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui
満遍なく優れているからこそ
幅広い層からの支持が得られる
「より多くのユーザーに向けた工業製品としてのクルマ(市販車)を作り上げていく過程で大切なこと。それは何よりクルマとしてのトータルバランスをいかに高い次元でまとめ上げられるかに尽きる」
これは以前に筆者が某国産自動車メーカーの製品企画部・製品開発責任者にインタビューした際に発せられた言葉で、その人がとても真摯な目をしてその言葉を口にしていたことが強く印象に残っている。ちなみに彼が手がけていたのはスポーツカーのカテゴリーであり、そこに誰もが楽しめる幅と奥行きをもった走りのバランスをトータルに落とし込んでいく作業は、「途方もない労苦を伴うものだった」のだという。
ポルシェ社の創設70周年を記念して1948台のみが限定で販売された911スピードスター(Type. 991.2)。レンシュポルトモデルとなるスパルタンなGT3のエンジンをさらにチューンアップした510psの4ℓフラット6を積む2シーターのオープンモデルには、標準ではよりサーキット志向の強いタイヤが装着されるが、今回は日常領域までをバランスよくカバーしてくれるプレミアムスポーツタイヤのADVAN Sport V107 (装着サイズ F: 245/35ZR20(95Y)/R: 305/30ZR20(103Y)/ホイールはADVAN Racing GT for Porsche/F: 20×9.0J CL inset49/R: 20×12.0J CL inset44)を装着してそのマッチングのほどを探った。
改めて、クルマづくりにおける“トータルバランス”とはいかなる意味をもつのだろうか?
例えば、レーシングカーはあくまで極限域での速さを追求することが開発の主眼であって、クルマとしての快適性や工業製品としての耐久性などは二の次(誤解のないように言えばさらに先鋭的に研ぎ澄まされている)とされることも多い。しかし、市販車ではそうはいかない。快適性や耐久性は当然ながら、その先の幅も奥行きもある領域でのクルマ(製品)としてのバランスの良さが求められる。そう、何かに特化させ突出した性能を生み出すよりも、可能な限りクルマの全域において満遍なく優れていることこそが、現代の市販車(のスポーツカー)に求められるトータルバランスの真意なのだと、そのときの開発者の言葉を通して理解したものだった。

撮影のためにポルシェ911スピードスター(Type. 991.2)にADVAN Sport V107(装着サイズ F: 245/35ZR20(95Y)/R: 305/30ZR20(103Y))を履かせてクローズドのワインディングコース走らせながら、ふとそんなことを思い出した。
911スピードスターはトータルバランスに優れた世界有数のGTスポーツとしてクルマ好きなら誰もが認めるポルシェ911シリーズの中でも、特に尖った部類に属するモデルである。エンジンはレンシュポルトモデル(レーシングカーの直系)たるGT3用をさらにチューンアップしたもの(991のNAモデル最強となる510psを誇る4ℓフラット6)が搭載され、シャシー回りや空力デバイスも基本的にGT3に準じる。ポルシェ社の創設70周年を記念した限定モデル(世界限定1948台)であり、創設年の1948年にデビューした356“No.1”ロードスターを祖とする往年の356スピードスターをオマージュした2シーターのオープンボディが与えられ、6速MTを駆使して機敏かつ爽快に走らせるピュアスポーツとして仕立てられている。そう、これは文字通りスピードの本質を真っ直ぐに見つめることのできる、純粋に走るためのモデルなのである。
そんな911スピードスターに標準で装着されるポルシェの認証タイヤは本格的なサーキット走行も見据えた欧州ブランド製の“公道も走れるサーキットタイヤ”(表現はポルシェのカタログより抜粋)だが、より幅広い性能領域を見据えたプレミアムな性格のADVAN Sport V107との相性もよく、スパルタンなイメージが強いスピードスターであっても、その内側にはプレミアムスポーツとしての快適さまでがしっかりと備わっていることが体感できたのだから、ポルシェのスポーツカー作りに対する懐の深さに改めて感心させられる。
スピードスターの幌は手動開閉が基本(ロックのみ電動)となるので急な雨降りなどは考慮されていないとはいえ、前述した通りクルマそのものとしての快適さまでを備えるとなればロングドライブにだって出かけたくなる。そうしたシチュエーションで長雨に見舞われたとしても、優れたウェット性能をもつADVAN Sport V107ならより安心してドライブができるし、こうした希少価値の高い限定モデルを街中でスタイリッシュに乗りこなしたいという層にとっても、サーキット寄りのタイヤよりも、むしろ日常領域までをバランスよくカバーしてくれるプレミアムスポーツタイヤの存在が魅力的に映る場面は多いはずだ。
実際、ADVAN Sport V107を履いた911スピードスターをワインディングで走らせていると、オープンエアで堪能できるダイレクトなフラット6サウンドに酔いしれながら迫り来るコーナーを一つひとつ正確にトレースしつつ、コーナーの出口ではRR(リヤエンジン/リヤ駆動)モデル特有の強大なトラクションを生かした迫力ある立ち上がりのダッシュまでが何より快適に安心感をもって楽しめる。なるほど、サーキットでタイムアタックやレースにでも興じない限りはその芯にある尖った性能を敢えて隠すかのような、それは至極バランスの取れた高性能までを911スピードスターは秘めていたのである。
能ある鷹は爪を隠す──そんな格言が思わず頭に浮かぶほど変に突出したところのない、すべてにおいてまとまり感のある、しかもそれがとても高い次元で組み合わされた上質なドライブフィールを、ADVAN Sport V107を履いた911スピードスターを通して味わうことができた。
一方で、今回は現行モデルのスポーツカーとしてはエントリーゾーンにあるGR86(6速MT)にもADVAN Sport V107(装着サイズ F&R:245/35ZR18(92Y))を履かせて数日間走行させる機会を得た。これまでADVAN NEOVA AD09やADVAN APEX V601を履いたGR86を試したことがあるが、エントリースポーツという立ち位置のモデルに相応しいファンで軽快な乗り味を双方のタイヤからは得られたものだった。特にハイスピードかつテクニカルなパークトレーニングなどではNEOVA AD09との相性が良かったことが印象的で、何周でもしたくなるような“クルマを操る喜び”があったことが印象に残る

エントリースポーツとして若い世代や女性からの人気も高いGR86にもADVAN Sport V107(装着サイズ 245/35ZR18(92Y)/ホイールはADVAN Racing GT Beyond/18X9.5J 100-5 45)を装着してその相性を確認してみた。
そうした印象をもって臨んだ、よりプレミアムな領域にあるADVAN Sport V107とGR86との走りの相性は如何なるものだったのかと言うと、特に高速道路でのクルマの走り味の変化に驚きを覚えた。NEOVA AD09でも直進安定性は高かったが、ADVAN Sport V107のそれはGR86の車格そのものを二段ほど押し上げている? と思わせるほどだったのである。タイヤの転がり具合、ケースの剛性感としなやかさの両立、ステアリングとシートから伝わってくる路面のインフォメーション性、そして静粛性に至るまで、そのどれもが上質であり、何より乗り手に確かな安心感を与えてくれる。その印象は街中でもワインディングでも変わることなく、日常の中でスポーツカーを操るという行為をより豊かなものへと変換させてくれるのだから、これには良い意味で驚かされたのである。
ハイエンドスポーツからエントリースポーツまで、まさに幅と奥行きのあるトータルバランスの高さで足元からしっかりと支えてくれるADVAN Sport V107のそうした世界観は、ぜひともより幅広い層のスポーツカーユーザーに試してほしいと思えた。
“すべてを掴む”上質な性能
目指すところはそこにある
前回のレポートでは東京オートサロン2025(TAS 2025)における“ADVAN Sport 一色”となったYOKOHAMAブースの狙いと成果を取り上げているが、今回はTAS2025全体で注目を集めたADVAN Sportを装着した出展車両たちの姿にも触れてみたい。

マンソリーのレンジローバースポーツやロールスロイス・ファントム、カリナンなど、ウルトラハイエンドな層からの支持が高いこともADVAN Sportのトータルでの性能の高さを証明している。その一方でアルファード・ヴェルファイア、レクサスLMなどのミニバン系やレクサスLBXやハリアーといったファミリー層にも人気の高いSUV系からの支持も高く、ADVAN Sportがタイヤ製品として対応できる幅と奥行きの豊富さを示す結果となった。サイズラインナップに関してもV107は18インチから24インチ(V105は17インチから23インチ)までとかなり豊富であることも、そうした流れを後押しする要因となっている。
広大な幕張メッセの会場を見て回って実感したのは、ADVAN Sportがとても幅広いカテゴリーから支持を得ているタイヤであるという事実だった。車両価格で数千万級のハイエンド系からファミリー層にも人気の高いコンパクト系までSUVモデルからの支持は特に高く、さらにはミニバン系にネオクラシック、そしてもちろん、スポーツ系モデルにも国産・輸入を問わず広く支持を集めていたことが印象的である。
加えて次世代モビリティの象徴であるBEVに対するアプローチも万全としている辺りにADVAN Sportの“すべてを掴む”という、まさに全方位的な製品展開への姿勢がしかと見て取れた。欧州基準を謳い、世界最高峰の舞台(例えばアウトバーンやニュルブルクリンクなど)でも通用する高性能を備え、さらにはその性能を多様化する昨今の市販車カテゴリーへと幅広く対応させていく。これまでハイエンドなイメージが先行していたADVAN Sportではあるが、ここに来て前述したGR86などのエントリースポーツ層や、ファミリー層からの支持が多いコンパクトSUVやミニバンへの需要も増してきている。

スポーツカーやGTカーへの対応幅も実に幅広い。国産モデルから輸入車まで多くの層にADVAN Sportが支持を得ていることが理解できる。さらにはネオクラシック(旧車系)からBEVまで、その幅と奥行きは尽きることがない。
“トータルバランス”という幅と奥行きのある概念をタイヤ製品として落とし込み、全方位的に優れた性能を目指したADVAN Sport。今後もより多くのカテゴリーからの支持が高まっていくことに期待したい。
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