ADVAN FLEVA V701
9年の歳月を経ても色褪せない魅力。
ADVAN FLEVA V701を推し続ける
街のクルマ屋さんの本音。
2024.12.25
デビューから9年の歳月を経てなお、多くのファンからの支持を得ているADVAN FLEVA V701。“ADVANのエントリーモデル”という立ち位置にある製品だが、「その魅力はとても奥深い」と熱く語るユーザーがいる。栃木県足利市でカーショップを営む森下勝文に、デビュー以来好んで履き続けているというFLEVA V701の魅力を聞いた。
Words:加茂 新 / Arata Kamo
Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui
限界が掴みやすいからこそ
“これから”の人に使ってほしい
「ADVAN FLEVA V701(以下、FLEVA V701)は僕にとっては昔から変わらず特別な存在です。いや、もうほんとに大好きで、このタイヤがデビューしてから9年ですけれど、ずっと履いてます。お客様にも積極的にお勧めしていて履いている人が多いです。店の代車のアクアにまで履かせちゃったんだから、どんだけFLEVA好きなんだよ、って話です(笑)」
栃木県足利市でM’sオートサービスを営む森下勝文。頼れる街のクルマ屋さんとしての活動はもとより、地元を中心とした走り好きの若者たちへの親身なサポートも行う。ADVAN FLEVA V701をデビュー以来、好んで履き続けている。
そう語るのは栃木県足利市でM’sオートサービスを営む森下勝文。FLEVA V701の性能に魅せられ、9年以上も愛用している。お店は車検整備を行う認証工場。普段は主に近隣のユーザーカーを整備している街のクルマ屋さんである。現在43歳の走り好きな森下のもとには同じく走り好きな若者が集まり、チューニングやカスタムも行う。足利は周囲にワインディングロードが多くあり、日光サーキットにも近く、隣町の群馬県太田市はスバルの本拠地である。クルマ好きが自然と多い場所であり、だから走りを楽しみたい若者も多い。そんな若い人たちにこそ「FLEVA V701を勧めたい」と森下は言う。
「サーキットを走りはじめた若い世代のお客さんはやっぱりタイムも出したいし、ハイグリップタイヤを欲しがります。でも、そこでまずは1回FLEVA V701を履いてみようよと。それで練習して、1セット履いてからハイグリップなNEOVA AD09やA052に行こうよ、と話をしています」
走行4.3万kmの4型FD3Sを5年ほど前に購入(FDは通算3台目)。エンジンはTD07 25Gタービンをセットするサイドポートの一般的な仕様で450psを発揮する。サーキット走行やドリフト走行でも壊さず、そして普段乗りも楽しめる仕様。タイヤはフロントに235/35R19 91W、リヤに265/30R19 93WのFLEVA V701を履く。こういった特殊なサイズから小さなサイズまで幅広く揃うのもFLEVA V701の魅力。
それこそが森下の親心、言わば経験豊富な“走りの先輩”としてのアドバイスなのだ。グリップのあるタイヤは限界が高く、意のままにクルマが動いてくれるようになる。それこそが魅力でサーキットでのタイムアップにもつながるが、それゆえに無理だって利いてしまう。
「初心者がいきなりハイグリップタイヤを履くと、ちゃんと減速しなくてもウリャッ!とハンドルを切れば曲がれてしまう。そこで、『なんだこれでいいじゃん』って思ってしまう人はとても多い。でも、それって違いますよね。きちんとした運転でその高いグリップを使い切るからこそ速く走れるわけで、高いグリップをドライバーが無理をするために使ってはいけません。そうするとやっぱりコントロールしきれず事故やクラッシュということにもつながってしまう。これまでそういう若い子を多く見てきて、そうなって欲しくないなと。そこで、FLEVA V701の性能がピッタリだと僕は思うのです」
森下自身、RX-7(FD3S)をこよなく愛するチューニングカーフリーク。現在のRX-7は450ps仕様のライトチューンでサーキット走行からドリフト走行までを楽しみ、さらには普段乗りもできるように仕上げている。そんな、RX-7を3台乗り継いできた“走りを楽しむ玄人”だからこそ、森下はFLEVA V701を推す。
「FLEVAだけではなく歴代のNEOVAも履いてきましたけど、個人的にADVANのタイヤが全般的に肌に合うんです。一番の理由はコーナリング時の限界が掴みやすいから。もう滑るか? 滑るか? おっ、ジワジワと滑りはじめた! という感じに限界が掴みやすくて、突然グリップが破綻(スリップ)しない。そのフィーリングが好きで信頼も出来るのでADVANのタイヤをずっと選んでいます。他のタイヤメーカーも国内外、数多く試していますが、ADVANのタイヤはグリップの限界が掴みやすいというキャラクターが一貫している。だからこそコーナーが攻められる。そう、コーナリングが楽しいんです。これは僕の好みですけど、ドカーンと止めてグルっと向きを変えてドカーンと立ち上がるよりも、コーナーを攻めたい。だって、同じタイムならそっちのほうが楽しいじゃないですか」
スキルアップ向きのタイヤが
日本タイヤマーケットには少ない
「若者のクルマ離れ」というワードがひとり歩きしている現在の日本。確かにそういった時期もあったのかもしれない。そして、90年代のような誰もかれもがクルマを買って、マフラーを交換し、こぞってチューニングしていたのだってもはや過去の話なのかもしれない。しかし、それでも今の時代を生きる若者たちのクルマに対する情熱は熱い。
聞けば漫画の「頭文字D」や「湾岸ミッドナイト」を幼少期から読み、両親がクルマ好きな家庭に育ったという若者は多い。「僕が生まれて父はシルビアからミニバンに乗り換えました。だから、自分が18歳になったときに父とお金を出し合って一緒に再びシルビアを買ったんです」なんて若者もいる。そんな現在の10代、20代はクルマに対する基礎体温が高い。となると自然と走りを楽しみたくもなる。そこで問題となるのが、タイヤ選びである。
1年ほど前に走行19万kmのトヨタ86(A型)の中古車を購入。それにスーパーチャージャーを付けてドリフト走行もサーキット走行も楽しめるように仕上げている。「いわば現代版シルビアのような存在」と森下は評す。それでも車体価格は上がっていてグレードはGながら約110万円もする。HKSスーパーチャージャーはポン付けで260psほど。17インチ/8.0J (45)の ADVAN Racing TC-4にフロント215/40R17 91W、リヤ235/40R17 90WのFLEVA V701を履く。
現在の国内タイヤマーケットはスポーツ系においてはハイグリップラジアルタイヤが全盛。サーキットで最大のグリップを楽しむことがメインのADVAN A050のようなモータースポーツ志向のハイグリップタイヤユーザーよりも、ADVAN NEOVA AD09のようなストリート志向のハイグリップラジアルタイヤを求めるユーザーが多い。雨の日も問題なく、乗り心地だって悪くない。ロードノイズもそれなり、というキャラクターで普段から履きっぱなしにできることから大きな支持を得ている。だが、そうしたストリート・ハイグリップラジアルを選ぶ際の指標となると、やはりサーキットでのタイムになってしまうのも事実。「あのタイヤよりもこっちの方がタイムが出る」と評される製品をマーケットが望んだ結果、サーキットでも高いグリップ性能を発揮するストリート・ハイグリップラジアルタイヤが多数登場した。
もちろん、そうした製品が生まれる背景には技術革新も伴うので喜ぶべきことだが、森下の言うようにグリップの高さゆえに無理な運転をしてしまう人も出てきた。ならば、練習用に違うタイヤを選びたい──となるわけだが、そのポジションを担うタイヤは少なかった。ひと昔前は、エコタイヤやコンフォートタイヤ、ときにはスタッドレスタイヤなどグリップの低いタイヤでの練習が走り好きの間では推奨されていた。実際、グリップが高すぎるタイヤではグリップの限界になかなか到達せず、練習にならなかったのだが、ハッキリ言ってこういった純街乗りタイヤでの練習はお勧めできない。その理由はスライド時にグリップが回復しにくいことと、タイヤがダメージを受けやすいから。確かに限界が低いのでタイヤは滑りやすい。サーキットで練習するにはすぐにスライドして良さそうだが、そこからグリップが戻ってこないと滑ったままコースアウトし、時にはクラッシュするまで滑りっぱなしということもある。また、製品自体がそういった使い方を考えて設計されていないので、トレッドのブロックが飛び、あっという間にタイヤが終わってしまうこともある。結果、コストパフォーマンスが良いとは言えないこともある。
そこである程度高いグリップはありつつも高い耐摩耗性、そしてブロック飛びなどが起きにくいスポーツ対応力、そういった性能を持ったタイヤが望まれてきた。森下曰く、「そのコンセプトにバッチリ合致した」のがFLEVA V701というわけだ。決して純スポーツタイヤではないが、スポーツ走行をしてもダメージは最小限。それでいて、きちんとしたドライビングでグリップを引き出せば、タイムも出せる。FLEVA V701はそういったスキルに応えてくれる存在のタイヤなのである。
減ってきてもしっかり使える
だからこそユーザーに推せる
「タイヤが減ってきたときにもしっかり使えるのがFLEVA V701の良さ。もちろん、新品時のようなグリップの粘り感は徐々に薄くなっていきますが、それでもコントロール性の良さは長続きします。これは本当に良いところです。僕の使い方としては、ある程度タイヤが減ってきたら、コースインしていきなり全開にするのではなくまずしっかりとタイヤを温めてあげる。少しずつペースを上げてしっかりとタイヤに熱を入れてあげれば、新品時と同等の高いグリップを発揮してくれます。滑り出しもジワジワと来て、滑ってからもコントロールがしやすい。グリップ走行でもドリフト走行でもアクセルを踏む量でスライドをコントロールできる。タイヤが減ってからでもそういった走り方をさせられるのが魅力です」
日常域での使い勝手に関するバランスの良さもFLEVA V701の魅力だと森下は言う。特に雨の日の安心感と静粛性の高さは長年履き続けてきたからこそ、身をもってその恩恵がよく理解できるのだとか。
「とはいえ、FLEVA V701の良さはサーキットばかりではない」と森下は続ける。
「普段乗りでこそFLEVA V701の良さは光ります。ワインディングロードでのオン・ザ・レール感とか、高速道路でのゆるやかな走行ラインのトレース性の高さとか、日常で向き合ってもFLEVA V701の性能はとても気持ちがいいんです。それでいて、雨でのグリップも安心感が高くて、さらに静粛性も高い。僕の印象としてはプレミアムなタイヤに負けないくらい静かです。なのに、サーキットでの走りも楽しめる。タイムだけならもちろんNEOVAには敵いません。でも、丁寧にドライビングしていくと結構いいタイムが出せる。それだけドライビング自体の純度の高さが求められるわけです。だから、FLEVA V701で走ると運転が上手くなっていく。それでいて普段乗りは気持ちいい。これで、僕がこのタイヤをお勧めする理由もわかってもらえますよね。あと、サイズバリエーションが豊富なことも良いところです。軽自動車から20インチまで揃う。215/40R17なんてありそうでなかなかないレアなサイズもあります」
ドライビングパレット那須で時折お客さんや仲間とドリフトを楽しむ。「やっぱりFLEVA V701でドリフトも良いですね。熱ダレしてきてもコントロール性が安定している。フロントタイヤは転がりが良くてグリップもあるのでクルマのコントロールがしやすい」
「僕は年に数回ドリフト走行会を開催してユーザーと走りに行くことがあります。そんなときもFLEVA V701はフロントタイヤに最適です。グリップが高すぎるとそれはそれでスピンしやすくなります。でも、アンダーグリップだとコントロールができない。FLEVA V701はグリップがしっかりありつつ気持ちよく転がってくれるのでコントロールがしやすくなります。リヤに関してはFLEVA V701を履けば大会に出られるレベルの角度やコントロールが可能になります。でも、練習ではもったいないのでリヤだけはより安価なタイヤを履いて1日に何セットか履き潰すことも多いです。そんなときもフロントはFLEVA V701を履けば1セットで十分に楽しむことができます」
ホビータイヤとしてサーキットでのグリップの高さを売りにしている輸入タイヤなども増えている。単にグリップ性能だけならFLEVA V701はそれらに譲るが、普段乗りからの性能のバランスの高さが評価され、それが9年間も人気タイヤであり続けている証拠でもある。そのバランスの良さを評価するユーザーやショップがあるからこそ、FLEVA V701は今日も走り続けている。
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