ADVAN FLEVA V701
“楽しさ”を突き詰めたKカーレース。
N-ONE OWNER’S CUPで
ADVAN FLEVA V701が支持される理由。
2024.12.13
全国から選りすぐられた50台のN-ONEがシリーズチャンピオンの座をかけて鎬を削り合ったN-ONE OWNER’S CUPの最終戦、鈴鹿。“楽しさ”を突き詰めた大人気のKカーレースでその6割以上の参加者が選んだADVAN FLEVA V701。その人気の理由を探る。
Words:加茂 新 / Arata Kamo
Photography:望月勇輝 / Yuki Mochizuki
日本でもっとも遅い公式レース
そこで高い支持を得る理由
鈴鹿サーキットを駆け抜ける予選タイムは3分4秒台──36年前のF1日本GPでアイルトン・セナが1分41秒8で走り、2024年のF1ではマックス・フェルスタッペンが1分28秒1で駆け抜けた鈴鹿サーキットをその約2倍の時間を掛けて走るレース、それがN-ONE OWNER’S CUP。だが、そこは一歩足を踏み入れれば間違いなくモータースポーツ。0.01秒を巡る争いが行われ、真剣勝負が繰り広げられる。そして、そのN-ONE OWNER’S CUPで現在最大シェアを誇るのがADVAN FLEVA V701(以下、FLEVA V701)である。
「安定感が高いのがFLEVA V701の特徴です。まず熱ダレをしにくい。予選で数周して少し熱が入り過ぎても、ピットに入るクーリング走行ですぐにヒートは収まる。ピットで空気圧を調整して再びコースに出ていけば、再度ベストタイムが狙える。そういったタフさや安定感がFLEVA V701の魅力です。だからこそ、予選で何度もアタックできるチャンスがある。最後までタイムが出る安心感はドライバーにとっては本当に嬉しく、何より心強いです。20分の予選でも2回のアタック、ピットイン、さらにもう2回のアタックが可能。その最後のアタックでもベストタイムを狙えます」
予選で2位を獲得。決勝レースでも2位に入り、見事N-ONE OWNER’S CUP 4度目のシリーズチャンピオンを獲得した岩間浩一選手(#38 HCM☆SUPER☆N-ONE)は言う。彼は鈴鹿サーキットから10分ほどの「HCM Sports Garage」で店長を務めながらN-ONE OWNER’S CUPに参戦。2015、2020、2022に続いて4度目のシリーズチャンピオンを獲得した。同店はホンダディーラーであるホンダカーズ三重が運営する車両チューニングやレストア、カスタマイズからレースサポートまでを行うプロショップである。
N-ONE OWNER’S CUP参戦11年目にしてシリーズチャンピオンを4回獲得した岩間浩一選手。2024シーズンはスーパー耐久にも#36 HCM内野製作所FL5でAドライバーとして参戦。普段はHCM Sports Garageで店長を務め、レースサポートからホンダ車の整備やカスタマイズ、レストアなどを行っている。
「FLEVA V701の良いところは優れたグリップはもちろん、持ちも良いし、ウェット路面のグリップも高い。その中でも特に良いと感じるのが縦のトラクション。いわゆる加速していくときのグリップです。鈴鹿サーキットだとヘアピンからの立ち上がりで少しでも早くアクセルを踏みたい。このシリーズではLSDの装着が禁止されています。だから大きくロールしている最中にアクセルを踏むと、荷重の少ないイン側タイヤがスリップして、そちらに駆動力が取られてしまう。空転するばかりで加速しなくなってしまいます。ヘアピンから先はスプーンコーナーまで長い加速区間。軽規格のN-ONEならほぼストレートと同じ感覚です。だからこそ少しでも速く加速したい。そこでタイヤのグリップが助けてくれます」
N-ONE OWNER’S CUPのルールブックには、【一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA)の定める「低燃費タイヤ等の普及促進に関する表示ガイドライン(以下、ラベリング制度)」で定義されるグレーディングに於いて、転がり抵抗性能の等級がA以上、ウェットグリップ性能の等級がa~dの範囲内にある「低燃費タイヤ」のみ使用が認められる】という記載があり、これに合致したタイヤしか使うことができない。
エコタイヤでしか走れない
それもこのレースの魅力
N-ONE OWNER’S CUPはタイヤについて明確なルールがある。それはエコタイヤのみが使えるということ。そして、主催者側の認証を得ていればメーカーは問わないということ。そのため使うタイヤはそれぞれ参加者によって異なる。国内外のタイヤが使用され、最終戦では5社のタイヤメーカーが使われていた。
このシリーズは今シーズンこれまで10戦が行われ、のべ約250台がエントリーしてきた。その中から、上位50台にのみ出走権が与えられるのがこの最終戦の鈴鹿である。選ばれしものだけが出られる最終戦。その現場に揃った50台のうちFLEVA V701の装着車両は32台。実に64%のシェアを獲得している。
初代JG1と2代目JG3のどちらの世代のN-ONEでも参加できる。軽さと電子制御が無いことによるオーバーステアなハンドリングにもできるのがJG1の魅力。JG3はボディ剛性の高さがあるが、電子制御が残るので走り方は制限される。どちらでもタイム的には同等で勝負権は変わらない。
車両規定で車体にはロールバーこそ入っているがほぼノーマル。エンジンもノーマルのまま。マニュアル車は参戦不可で全車CVT。そしてLSDも装着不可。サスペンションは事前に登録されている主催者認定品であれば参加者が好きなメーカーを選ぶことができる。ブレーキパッドも任意のものが使える。それ以外はほとんど改造ができない。タイヤはエコタイヤのみ。このルールが参戦費用を抑え、多くのエントラントが参加する日本屈指の人気レースとしてN-ONE OWNER’S CUPが育つ大きな要因となった。
「FLEVA V701は安定した性能が魅力。暑い日も寒い日もフラットな性能でタイムを出しやすい。こういう条件じゃないとダメというのがない。特にウェット路面は得意としており安心感が高い」
「グリップが高いだけだとハンドルを切ったときに抵抗が大きいタイヤもある。だからグリップと転がり抵抗のバランスの良いタイヤが理想。アンダーパワーな軽自動車なだけにグリップするだけではダメ。抵抗が少なく転がってくれることが大切な要素になる」
「熱ダレしにくいのでレース後半で特に強い。FLEVA V701ユーザーはレース後半で追い上げてくるので、気が抜けない」
これらがパドックで聞かれた参加者からの声だ。
タイヤを“育てる”楽しみが
FLEVA V701にはある
このレースでは1度でも表彰台に乗ると、そのシーズンは毎レースでフロントタイヤに新品を履かなければならない、という独自ルールがある。一般的にモータースポーツでは新品タイヤが速い。そこから徐々にタイムが落ちていく。しかし、軽量でアンダーパワーなワンメイクレースでは時折逆転現象が起きる。中古タイヤの方がタイムが出るということが起きるのだ。タイヤのグリップは新品時が一番だが、一方でタイヤが減っていくことでゴムが薄くなって軽くなる効果、ブロック剛性が高まってステアリングレスポンスが高まる効果、タイヤが減って小さくなることで最終減速比がショート化され加速性能が良くなる効果──そういった効果によって新品時よりもユーズドの方が速くなることがある。複数の参加者に聞いたところ、いずれも鈴鹿サーキットで新品タイヤ(メーカーは限らず)にすると約1秒はタイムが落ちるという。
一度でも表彰台に乗ると、それ以降のその年のレースはフロントタイヤを毎戦新品にして走らなければならない、というルールがハンディキャップとして課される。ちなみにリヤタイヤは溝が残っている方がスライドさせやすい。そこで前後を入れ替えたりして、摩耗量を調整する。フロントにやや溝少なめ、リヤは多めにする人や、リヤも溝が少ないものを好む人などドライビングスタイルやコースによってそのチョイスは変わる。空気圧は高めにしているという参加者が多い。
FLEVA V701はその中でも特に減ってきたときのタイムの上がり幅が大きいという。そう話す福川佳奈子選手(#4 ホンダカーズ北九州☆N-ONE)は最終戦鈴鹿で予選12位を獲得した実力者だ。
「減ってきたときのグリップ感や剛性感の高さがFLEVA V701を選んでいる理由です。フロントタイヤは上手に減らしていくことでタイムを出しやすいタイヤになっていってくれます。できるだけ熱を入れないように減らすがコツです。そこで街乗りで使って減らすこともあります」
だが、レース用タイヤではないFLEVA V701は高い耐久性がゆえに減りにくい。その特性はユーザーには嬉しいものだが、レースで使うには手間も時間も掛けて減らす必要がある。
N-ONE OWNER’S CUPは今シーズンこれまで10戦が行われ、のべ約250台がエントリー。その内の上位50台にのみ出走権が与えられた最終戦の鈴鹿。その現場に揃った50台のうちFLEVA V701の装着車両は32台。実に64%のシェアを獲得している。
「街乗りで履かせて通勤で減らしたりもしますが、もちろんそんなに減りません。だから、秋のレースに向けて春から履いたり、ときにはもっと早くから履いて減らしたりもします。それこそ1年計画が必要かもしれないくらい。サーキットのドライ路面で減らすのは熱が入ってしまいますから、雨の日は熱が入らずタイヤが減る絶好のチャンスです。雨の練習というよりもタイヤを作るためにコースインします。もっとも理想的なのは雨の日にリヤタイヤに履いて溝を減らしておくことです。そのタイヤをレースのときはフロントタイヤに使う。これがもっとも良いフィーリングを得られます」
信頼できるからこそより安心して走れる
だからモータースポーツをエンジョイできる
4度目のシリーズチャンピオン戴冠をした岩間浩一選手。N-ONE OWNER’S CUP初年度から参戦し、11シーズンで4度のチャンピオンを獲得した。予選では熱ダレに強いFLEVA V701は20分の間に、何度でもタイムアタックできるチャンスがあるが、岩間選手は多くの参加者がコースインしてから十分な時間を見てクリアラップを取ってからタイムアタックをしていく。そのときに彼を追いかけてコースインするクルマが10台近く見られる。トップクラスのタイムを出せる岩間選手をマークして、そのスリップストリームで走れば好タイムを出すことができるだろうという作戦。そんな不動の王者も絶大な信頼を寄せるのがFLEVA V701なのだ。
「楽しいハンドリング」をテーマに作られたFLEVA V701。このタイヤはサーキットでの連続したタイムアタック時のグリップの持続性やレース後半でのグリップの持ちといった、タイヤが減ってきたときのサーキットでのグリップ力までを狙って作られたわけではない。しかし、実際にはその性能がある。その懐の深い性能が多くのユーザーに支持され、楽しいハンドリングの先にある楽しめるレースを構築している。FLEVA V701はそんな“楽しむためのモータースポーツ”の世界で愛されているのだ。
自身4度目となるシリーズチャンピオンを決めた岩間浩一選手。レース後に見せたこの笑顔こそがN-ONE OWNER’S CUPの楽しさの本質を如実に表していた。
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