Tire impression

持続する上質な癒し──
ADVAN dB V553が示す
プレミアムの新価。

2024.5.22

「上質な静粛性が持続するプレミアムコンフォートタイヤ」という開発コンセプトを掲げて世に送り出されたADVAN dB(デシベル)V553。現代のプレミアムカテゴリーで求められる真にコンフォートな性能をADVAN dB V553はどう体現し、それを長く持続させることに成功したのか? その中身に迫る。

Words:髙田興平 / Ko-hey Takada(Takapro Inc.)

Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui(Weekend.)

Model:沢すみれ / Sumire Sawa

CG:Akio Watanabe

可能な限り長く
“上質さ”を持続させる。

工業製品における「プレミアム」とは、当然ながらその中身や機能が“上質”であることが価値へとつながる。しかしながら、グローバル化に伴い幅も奥行きもあるマーケットに向けて高度に進化した基本設計やオートメーション(AI)化による製造技術/生産管理体制の向上、さらにはブランディング(またはマーケティング)までもが包括的な成熟の域にまで達した現代社会においての「プレミアム」の在り方は、これまで以上に“より明確な上質さ”を製品として示さない限り、その価値がマーケットで受け入れられることが年々難しくなってきているように感じる。

そう、いまの世の中には「プレミアムな価値」が当たり前のように溢れているのだ。

そうした中、YOKOHAMAが「プレミアムコンフォートタイヤ」と謳うADVAN dB(デシベル) V553は、果たしていかなる“上質”を追求したタイヤ製品として仕上がっているのか? ここではその中身と実際の感触に迫ってみる。

ADVAN dB V553の開発コンセプトは「上質な静粛性が持続するプレミアムコンフォートタイヤ」である。前作ADVAN dB V552で掲げた「YOKOHAMA史上最高の静粛性」に対し、走行時の上質な静けさと乗り心地を提供するという基本コンセプトはそのままに、耐摩耗性能の向上、および摩耗時の静粛性とウェット性能の低下を抑制する策を施したことが大きな特長となる。新品装着からしばらくの間は優れた静粛性やウェット性能を保っていても、走行距離が伸び摩耗が進むにつれそれらの性能も下がってしまうというのは、多くのタイヤ製品にとって避けては通れない命題でもあった。もちろん、永続的に上質な性能を保ち続けることは難しくとも、それでも可能な限り長く“上質さ”を持続させることにスポットを当て開発されたのが、このADVAN dB V553というわけだ。

人間が耳障りに感じる100~160Hz周波数帯のロードノイズを低減するために、ADVAN dB V553向けのサイレントベースゴムはキャップコンパウンドのベースとなるゴムの厚みをサイズごとに最適化したことに加え、一般的なタイヤベルトよりも幅広のベルト(サイレントカバーによりベルト部の剛性を高次元でコントロール)を採用してノイズの原因となるショルダー部の振動を抑制する。耳障りな音を極力排除することで、大切な同乗者にも真に上質な乗り味を提供することを目指した。

スポーツタイヤのようにどこか能動的な大胆さではなく、よりきめ細やかで緻密な印象を与えるADVAN dB V553のトレッドパターンは、センターを軸にIN側は優れた排水性を担う溝を多くし、一方のOUT側では優れたコーナリング性能を保つべく接地面を増やす左右非対称デザインを採用。これ自体はADVAN dB V552から基本を踏襲しているが、トレッドパターンそのものは完全に新デザインとなる。4本のストレートリブ(主溝)は溝壁を立たせ気味にすることで摩耗時の溝体積の変化を低減。V字形状の溝壁が採用されていたADVAN dB V552では摩耗すると溝体積が減る──すなわちフェイスが崩れる傾向があったが、ADVAN dB V553では摩耗が進行してもできる限りフェイスの形状を保つように設計されている。

ストレートリブはサイプ+面取りの形状で排水性を確保しつつ、同時にパターンノイズも抑制。IN側中央のリブは千鳥配置することでブロック剛性の最適化とノイズの周波数の分散化を図り、一方のOUT側ではIN側に比べ溝の量を少なくしてここでもブロック剛性を向上させている。加えてショルダー部のラグ溝にはブロックの倒れ込みを防ぐ「3Dサイプ」を採用し、さらなるブロック剛性を確保すると同時に操縦安定性の向上、そして車外騒音の抑制にも効果を発揮する。

トレッドパターンがタイヤサイズごとに最適化されているのもADVAN dB V553の特長で、これにより新品時の騒音エネルギーをADVAN dB V552比で15%低減。さらに摩耗時の騒音エネルギーも22%低減させることに成功した。コンパウンドは低燃費性能、ウェット性能、耐摩耗性能のバランスに優れた「ADVAN dB」向けのコンパウンドを採用し、国内タイヤラベリング制度における転がり抵抗性能を「AA~A」、ウェットグリップ性能は全サイズで最高グレードとなる「a」を獲得し、「プレミアム」の名に恥じない優れた低燃費性能とウェット性能を誇る。

耳障りな音のない世界は
人の心を癒す。

実際にADVAN dB V553で走行してみて先ず感心させられるのは、高い静粛性はもとよりそのナチュラルなドライブフィールである。癖がないと表現したくなるスムーズなタイヤの転がり感が印象的で、比較的車重のあるクラウン・クロスオーバー(装着サイズ:前後225/45R21)で富士山麓にある湖畔のワインディングを駆け巡ってみても、とても素直で軽快な走り味が楽しめたのは嬉しくもあった。コンフォートを追求し何より静粛性を追い求めたタイヤであれば、その分だけ“ファン”な走り味はトレードオフされやすいものだが、ADVAN dB V553では優れた静粛性とファンなドライブフィールとが高い次元で融合しているのが好印象だったのである。

肝心の静粛性の面ではとにかくロードノイズが低く抑えられていることが印象に残る。特に中周波や高周波ノイズが上手に抑えられていて、ロードノイズは遠くのほうで低く鳴っていると感じられる程度。要は耳障りな音がそこにはないのだ。人間が耳障りに感じる100~160Hz周波数帯のロードノイズやパターンノイズを低減するために、サイレントベースゴムはキャップコンパウンドのベースとなるゴムの厚みをサイズごとに最適化したことに加え、一般的なYOKOHAMA製品のタイヤベルトよりも幅広のベルト(サイレントカバーによりベルト部の剛性を高次元でコントロール)を採用してノイズの原因となるショルダー部の振動を抑制するなど、より本質的かつ手の込んだ静粛性への対策が活きていると感じた。

タイヤサイドには、雨と静けさをイメージした模様と鮮明でスタイリッシュなロゴデザインを採用してプレミアムコンフォートタイヤにふさわしい洗練されたイメージを表現。なお、ADVAN dB V553は全サイズにてJATMAにて定める低車外音タイヤのラベリング制度において「低車外音タイヤ」の条件を満たしている。

現代のプレミアムカテゴリーに属するクルマはその多くが遮音性に優れ、さらにはハイブリッドやEVなどクルマそのものを“無音化”するトレンドも加速している。今回のドライブに供されたクラウン・クロスオーバーもハイブリッドモデルとなるが、モーターだけで走行するようなシチュエーションにおいても高周波の「シャー」というパターンノイズが抑えられていることでその快適性はさらに高まり、そこにある種の“癒し”まで感じるほどだった。そう、耳障りな音のない世界は人の心を癒す。ドライバー自身はもちろん、大切な家族やパートナーを乗せても、この癒しの効果がこれまで以上に上質なドライブ時間を演出してくれることだろう。

実は今回、筆者がデイリーユースするVWゴルフGTIにもADVAN dB V553(装着サイズ:前後225/40R18)を履かせてみた。スポーツ志向の強いホットハッチなので本来はADVAN Sportなどがマッチしやすく、実際にこれまでは旧モデルのV105を履かせていた。欧州基準のスポーツタイヤからプレミアムとはいえコンフォート志向のタイヤに履き替えることには一抹の不安もあったが、実際に履いてみるとそれが杞憂だったことにすぐ気付かされた。クラウン・クロスオーバーのような車重のある現代的なプレミアムモデルでも感心させられたあのある種軽快かつその先の安定感までも伴った走り味は、欧州のホットハッチに履かせてみても変わることがなく、敢えてエンジン音が強調された性格のスポーツモデルであっても、タイヤの転がりの良さに加えてロードノイズから雑味が消えたことで非常に心地よいドライブフィールを得ることができた。ADVAN dB V553は走り込むほどにタイヤの感触が体に馴染むところがあり、新品から1000kmほどを走行しても、走らせるたびにタイヤそのものの上質さが感じられて思わず頬が緩む。

ADVAN dB V553にはYOKOHAMAが展開する電動車対応商品であることを表す独自マーク「E+(イー・プラス)」が打刻されており、「低電費」「静粛性」など電動車(EV)に特徴的なニーズに対応する技術を搭載したタイヤとしても仕立てられている。ADVANらしい“ファン”なドライブフィールをスポイルすることなく、この先の時代性にもしっかりと対応できる上質な走り味を体現したADVAN dB V553。真にプレミアムなコンフォートタイヤとして、その価値はマーケットでも広く受け入れられることだろう。

※試験条件の詳細はカタログ、ウェブページをご確認ください。

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