SHOW REPORT

東京オートサロンに懸ける
YOKOHAMAの“想い”。

2023.1.24

世界最大級のカスタムカーショーとして世界中で認知される東京オートサロン2023(TAS2023)が開催された。大勢の出展者と来場者、それらが生み出す熱狂と興奮を前にして、新型コロナ禍という逆境は乗り越えたかに思える。そんな東京オートサロンにずっと寄り添ってきたのがYOKOHAMAだった。2023年もその伝統を貫き、YOKOHAMAの世界観を存分に詰め込んだブースを設けた。それはVR(ヴァーチャル・リアリティ)技術を通して味わうこともできる(詳細は文末に記載)。そこで本稿では、東京オートサロンに懸けるYOKOHAMAの“想い”を改めて紐解きたい。

Words:中三川大地 / Daichi Nakamigawa
Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui

あらゆるカーカルチャーを
支える一助となれば――

東京オートサロンが戻ってきた。新型コロナ禍となって中止を余儀なくされ、ヴァーチャル開催のみとなった2021年に続き、2022年は開催こそされたが、主催者側の弛まぬ努力による徹底した感染対策によって来場者数を例年の1/3に抑えざるを得なかった。しかし、2023年の来場者数は3日間合計で17万9434人。新型コロナ禍前の33万人以上という数字に比べれば少ないものの、会場のどこもが人であふれ返り、熱狂と興奮に包まれていた。クルマ好きの底力を感じさせるようなこの復活劇は本当に感慨深い。

そんな東京オートサロンにおけるひとつの風物詩であるかのように、YOKOHAMA (YOKOHAMA TIRE ブース)は例年のように西ホールの一角を占め出展。その前身となる東京エキサイティングカーショー時代から連綿と続く「あらゆるカーカルチャーを支える一助となれば」という願いが滲み出るかのように、このカスタムカーの祭典に寄り添ってきた。あらゆるカーカルチャーのなかでも特に、本気で速さを追い求めたチューニングカーや、またはレーシングユースにおけるスポーツタイヤを率先して提案してきたのがいかにもYOKOHAMAらしい。

ブース最前列のカウンターこそ
もっとも重要なプレゼンの場。

ド派手なイベントを催すわけでもないし、奇をてらった飾り物をするのでもない。黒を基調に企業ロゴを配しただけのブースのなかには、YOKOHAMAの一連の製品群を並べ、それらを履かせたクルマを整然と展示する。その奥に巨大なモニターを配置し、ブランドごとに制作した迫力満点のPVを流している。とてもシンプルで質実剛健といった印象だ。しかし、ただ簡素化しているわけではない。そこにはYOKOHAMAの明確な意志が潜んでいた。

その象徴こそが、もっとも会場動線に近いブース最前列に置いたカウンターだ。四方にいくつものタイヤを置いた四角形のカウンターで、その中には解説役を担う横浜ゴムの社員たちの姿がある。彼らは来場者と対面となって一対一で、製品概要とともにタイヤの性能や品質、マッチングなどの説明をしたりと、仔細にわたる相談に乗っている。

会場動線に近いブース最前列に置いた四角形のカウンターには、四方にいくつものタイヤ製品をレイアウトし、その中で横浜ゴムの社員たちが製品の解説をするスタイルが採られた。来場者と対面となって一対一で、YOKOHAMA製品の魅力を直に伝えるのである。

「話題作りだけを狙ったトークショーを催したり、非現実的なショーカーを持ち込んだり、あるいはコンパニオンで彩りを加えることよりも、我々の“製品”をより広く、深く知っていただきたい。とはいえ未来への展望や研究内容、あるいは技術解説に重きを置くというよりは、リアルユーザーの方々へダイレクトに、製品の魅力を知っていただく場であるべきだと考えています。だからこそ一番目立つ場所にタイヤ製品を置き、横浜ゴムの社員が気軽にお客様からの相談に乗り、きっちりとご説明させていただく場を設けました。このカウンターはそんな想いの象徴です」

横浜ゴム株式会社のタイヤ国内リプレイス営業企画部 マーケティンググループ 係長・山崎大介はそう切り出す。カウンターを取り囲み、またはブースの随所に置かれる“製品”にもこだわりがあるという。

TAS2023のYOKOHAMA TIREブースの運営管理責任者を務めた横浜ゴム株式会社タイヤ国内リプレイス営業企画部 マーケティンググループ 係長・山崎大介。「YOKOHAMA製品の魅力がリアルユーザーである来場者の皆様に、よりダイレクトに伝わるようなブースレイアウトを心がけた」と説明する。

「東京オートサロンはカスタムカーの祭典。クルマを趣味と捉え、その上でこだわりを持ってリプレイスタイヤを選ばれている方が大勢いらっしゃいます。だからこそ弊社のグローバルフラッグシップブランドであるADVANと、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランドのGEOLANDARというふたつの柱を置きました。それらの製品群を並べながら、我々がご提案するマッチングの一例として、装着車両を展示しています」

展示車両を見渡すと、どれもがキラリと光る個性に溢れていた。最前線にはADVAN NEOVA AD09を装着したポルシェ・ケイマンGT4RSクラブスポーツと、さらにADVAN APEX V601を装着したGRカローラ・モリゾウエディションが。いずれも登場間もない者同士のコラボレーションで、ADVANブランドのパフォーマンスやスポーツ魂を訴えた。

The Check Shopが導入したケイマンGT4RSクラブスポーツに対して、ADVAN NEOVA AD09(F:245/35R20/R:275/30R20)が投入された。組み合わされたホイールはADVAN Racing GT for PORSCHE(F:9.0J×20/R:11.0J×20)。モデル自体は純レーシングカーながら、サーキットからストリートまで高いドライグリップ力と優れたコントロール性、耐摩耗性を持つADVAN NEOVA AD09に相応しい“象徴的存在”として展示された。

GRカローラRZに純正採用されるのがADVAN APEX V601だ。今回は純正採用されるグレードではないものの、GRカローラをさらに鍛え上げたモリゾウエディションに同銘柄が装着された。サイズは前後ともに235/40R18。ホイールはADVAN Racing RG-4(9.5J×18)を組み合わす。クスコのサスペンションキットで足まわりを固め、HKSのマフラー、エンドレスのブレーキが盛り込まれるなど、全方位的に性能向上を狙ったチューニングカーである。世界一黒い水性塗料として話題の「黒色無双シリーズ」とのコラボレーションによる「ADVAN塗装」も遊び心に溢れている。

さらにランドクルーザー300にはADVAN Sport V107が装着されている。MAX☆ORIDOこと織戸 学選手がプロデュースしたストリート指向のカスタムカーであり、この方向性であればADVAN Sport V107がふさわしいという提案だ。

MAX☆ORIDOこと織戸 学選手がプロデュースしたランドクルーザー300。MAX☆ORIDOオリジナルのエアロキットや、22インチ鍛造ホイールが装着されている。いかにも都会派でスポーティな装いで、なおかつ織戸選手が狙った“オトナのSUV”も巧く表現されている。そうした世界観ならば組み合わせるタイヤは“世界基準”の上質さを備えるADVAN Sport V107が相応しい。今回は295/35R22サイズを投入。幅広いサイズ設定もADVAN Sport V107の魅力であることをアピールした。

一方でGEOLANDARブランドに目を移すと、クロスカントリーラリーで実際に闘うライズと、自由なライフスタイルを訴えるタウンエースのキャンピングカー、それぞれにGEOLANDAR X-ATを装着し、持ち前の高性能と多様性を訴えていた。

国際的ラリーストにしてGEOLANDAR契約ドライバーの塙 郁夫選手が製作したクロスカントリーラリー仕様のライズには、前後とも215/65R16CサイズのGEOLANDAR X-ATが装着された。実際、これはXCRスプリントカップ北海道に参戦予定のマシンで、ジムニーの一強というクロスカントリーラリーの世界に一石を投じるマシンとして期待が募る。エントリーレンジながら本気のラリーレイドへ挑戦できるライズの可能性を示唆するような1台である。

ライズと同じくGEOLANDAR X-ATを装着しながら、こちらは一転してカジュアルなキャンピングカー仕様のタウンエース。その名もGEOLANDARタウンエース・キャンパーという。前後とも175/80R14サイズを装着して、気軽にアウトドアシーンへ連れ出せる仕様となっている。現在のキャンプブームに対する提案で、乗員の安全性と快適性、ロングライフを訴える。程よく肉厚なサイドウォールにホワイトレターが相まってドレスアップ性も抜群だ。

ADVANエアロアバンテが
未来のカーフリークを育てる。

そうしたリアルな提案のなかにあって、唯一、異色だったのがADVANエアロアバンテだ。これはタミヤの1/1ミニ四駆実車化プロジェクトにより生まれたもの。タミヤの心意気により、それがADVANカラーをまとってブースに登場したのだ。それはまるで両者の象徴的存在がタッグを組んだかのような光景だった。それと呼応するかのように、ADVANエアロアバンテのミニ四駆を実際に購入することもできた。

「ミニ四駆が本物のクルマになったら…」という多くのファンの夢を実現するため2015年に立ち上がったミニ四駆実車プロジェクト。1988年の初代モデルのデビュー以来、ミニ四駆を代表するマシンとして人気のアバンテ・シリーズの当時の最新モデル、エアロ アバンテを、クルマづくり・ものづくりのプロフェッショナルの手で“本物のレーシングカー”として作り上げている。動力源にはレシプロエンジンをチョイスしてエキゾーストノートを響かせながら疾走する1/1ミニ四駆の姿を通じて、世界中に“ミニ四駆”と“レーシングカー”の魅力と迫力を改めて伝えたい――タミヤのそんな想いを込めて生み出された、世界にたった一台のマシンだ。

「ミニ四駆で遊ぶ子供たちにADVANブランドを知っていただき、もっとクルマが好きになっていただきたい。そんな願いを込めた施策です。YOKOHAMAやADVANというブランドはカスタマーを始めとした多くの人に認知をされている一方で、よほどモータースポーツファンでない限り、免許を取ってクルマに乗り出すまでYOKOHAMAやADVANブランドに触れる機会が少ない。今の子供たちが大人になってクルマに乗るとき、そういえばADVANエアロアバンテで遊んだなって、頭の片隅で思っていただけるだけで嬉しい」

「1/1のミニ四駆」は夢あるインパクトを子供たちに与えるのと同時に、象徴的な“ADVANカラー”のミニ四駆も販売することで、「クルマ好きの入り口」までを用意した。

そうした山崎の言葉を象徴するかのように、ブースにはお子様連れの家族がたくさん訪れて、ADVANエアロアバンテと記念撮影したり、また、ブースに併設されたスペシャルショップでADVANカラーを纏ったミニ四駆を購入する姿も多数見受けられた。ユニークなコンセプトカーとは言っても、単に奇抜であったり絵に描いた餅ではない。そこには次世代のクルマ好きを育てるという明確な“機能”が潜んでいるように思えた。

ようこそ!
VR YOKOHAMA TIREブースへ。

今年の東京オートサロンは閉幕したが、しかしYOKOHAMA TIREのブースはまだ終わったわけではない。今年のブースをVR(ヴァーチャル・リアリティ)撮影することで仮想空間で再現し、ふたたびブースを体験する取り組みが実施される。これは新型コロナ禍におけるイベント自粛期間の最中で生まれたアイディアだという。山崎は2021年から東京オートサロンの責任者を務め、新型コロナ禍による難しい社会情勢と常に試行錯誤を重ねながら向き合ってきた。

「確かに受難の連続でしたが、そこに立ち止まっていては意味がない。“我々には何ができるのか”という自問自答を続けてVRにたどり着きました」

つまりは困難を乗り越えるために考え抜いた新たなコンテンツだと言える。それは新型コロナ禍如何に限らず、会場に足を運べなかった人、もう一度ブースを体感したい人にとっても、有益なコンテンツとなるに違いない。東京オートサロンにおけるYOKOHAMAの世界観、それは以下のリンクから入ることができる仮想現実の世界で、今も燦々と輝いている。

(了)

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