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The Check Shop
PORSCHE 718CAYMAN GT4RS/CS
ポルシェとYOKOHAMA / ADVAN―
その“幸福な可能性”を探る

2023.1.12

日本に上陸したばかりのポルシェ718ケイマンGT4RSクラブスポーツ。The Check ShopとのコラボレーションでADVAN NEOVA AD09(ホイールはADVAN Racing GT for PORSCHE)を履いたショーモデルがTOKYO AUTO SALON 2023の横浜タイヤブースに展示される。YOKOHAMA/ADVANとポルシェ――新時代に向けたその幸福な可能性を探る。

Words:髙田興平 / Ko-hey Takada(Takapro Inc.)
Photography:安井宏充 / Yasui Hiromitsu

YOKOHAMA/ADVANとポルシェ。
その親和性は想像以上に高い。

クラブマンレース、すなわちアマチュアのクラブマンレーサー(海外ではジェントルマンレーサーと呼ばれることも多い)を対象としたレースシリーズが世界各地で昨今大きな盛り上がりを見せている。その先駆者的存在として知られるのがポルシェの“カレラカップ”であり、1990年初頭にワンメイクカテゴリーとしてスタートし、2000年以降は世界各国を舞台に独自の発展を遂げてきた。日本でも“ポルシェ・カレラカップ・ジャパン / PCCJ”が長らく開催され、クラブマンレースの最高峰として腕に覚えのあるクラブマン/ジェントルマンレーサーたちのひとつの明確な目標としてそのポジションを今日まで確立してきた。

使用されるマシンは“カップカー”と呼ばれるポルシェ911GT3をベースとした専用車両。歴代の911市販モデルをベースに時代ごとのレースレギュレーションに合わせたモディファイが施されたポルシェ純正のワンメイクレーサーである。

今回、横浜のThe Check ShopがTOKYO AUTO SALON 2023の横浜タイヤブースへの出展のために用意してくれた718ケイマンGT4RSクラブスポーツ(以下、718ケイマンGT4RS / CS)はこの“カップカー”の弟分とも言える存在。現代のツーリングカーレースの世界基準である“GT3カテゴリー”を創設したSRO(ステファン・ラテル・オーガニゼーション)が、より多くのプライベーターやジェントルマン(クラブマン)レーサーがモータースポーツに参戦しやすいようにと新設した、“GT4カテゴリー” のレギュレーションに則して仕立てられたレース専用車両である。ミッドシップのケイマン・シリーズをベースとしたGT4モデルとしては981ケイマンGT4クラブスポーツ(生産台数421台)、781ケイマンGT4クラブスポーツ(生産台数500台)に次ぐ3世代目となる。

「2021年のLAオートショーで発表され、2022年に発売がスタートした718ケイマンGT4RS / CSは、日本には今のところウチのクルマを含めて5台が上陸しています。ここ最近のコロナ渦や荒れ模様の世界情勢の影響もあって生産が大幅に遅れていて、世界中に多くのバックオーダーを抱えているかなり希少なモデルですね」

そう語るのはThe Check Shopの大塚直彦代表。10年以上に渡って市販車のポルシェを素材にサーキット仕様のマシンを多数手掛け、自らのドライブでクラブマンレースにも積極的に参戦してきた自他共に認める国内トップクラスの“ポルシェ・マイスター”である。991.1(前期モデル)のGT3RSに独自の経験と理論で裏づけされたモディファイを施し、あくまで市販モデルをベースとしながらカップカーのベストに迫る1分45秒2というタイムを富士スピードウェイで叩き出すなど、その実力は折り紙付きだ。

「ウチはストリートを主体した“改造屋”として長年勝負をしてきたので、あくまでベースもストリートカー(市販車)でこだわってきました。でも、991前期のGT3RSでストリートカーの極限はある程度達成できたという思いもあって、いよいよ本格的にレースカーの世界に足を踏み入れようと考えたんです。まずは991前期のカップカーを購入してセットアップをイチからしっかりと研究しています。2023年はポルシェのスプリント・チャレンジ・カップ(PSCJ)に参戦する予定です。クルマのスピードと真っ直ぐに向き合うにはもはやストリートでは限界がある。ポルシェのような奥の深いハイパフォーマンスカーであればなおさら。真剣にポルシェの速さと向き合いたいならサーキットに行くしかない。
718ケイマンGT4RS / CSを手に入れたのも同じ理由です。ストリートカーをベースにお客さんに向けたサーキットスペシャルを仕立てる上でも、ポルシェが手掛けた生粋のレースマシンの意味をきちんと理解しておくことは大きく役立つ。クルマの速さってセットアップ次第なんです。特に足回りは重要。トーにしたってキャンバーにしたって、あるいはバネレートやショックの減衰にしたって、すべてに理由がある。その一つひとつをきちんと作り手とドライバーが理解してはじめて、速いクルマを仕立てることができる」

718ケイマンGT4RS / CSのエンジンは兄貴分の992GT3カップと同じ4.0ℓの水平対向6気筒NAをミッドに搭載。最高出力500hp/最大トルク465Nmと、先代の718ケイマンGT4クラブスポーツから75hp/40Nmものスペックアップを果たしている。トランスミッションは7速PDKだが、こちらも先代の6速から進化。ギヤレシオもショート化された。ダンパーやアンチロールバー、ショックアブソーバーも専用のセットを採用し、前後アクスルで3つの異なるスプリングレートが調整可能で、ポルシェ・スタビリティ・マネジメントシステム(PSM)はモータースポーツ用に設計され、トラクションコントロール、ABSなど最新のスタビリティコントロールシステムも備わる。

空力と軽量化へのアプローチも本格的だ。フロントのダイブプレーンと延長されたリップスポイラーはフロントアクスルのダウンフォースを増加させ、GT3マシンの911 GT3 Rからインスパイアされたホイールアーチベントやエアカーテン、さらにはアンダーボディもフルフラット化してディフューザーへのエアフローを最適化する。スワンネックのリヤウイングには20mmのガーニーフラップを加え、調整範囲も2段階設定できる。

リヤウイングを含め、718ケイマンGT4 RSクラブスポーツでは、先代モデルと同様再生可能な天然繊維の複合素材(NFC)が採用されている。使用部分はさらに広げられ、ドア、リヤウイングに加え、ボンネット、ウイング、フロントエンド、ステアリングホイールにNFC素材が採用されより効果的な軽量化が図られているのだ。

さらには溶接されたロールケージやレカロ製のレーシングバケットシート、消化システムにエアジャッキとレースカーに必要とされる装備がすべて備わっており、新車の状態ですぐにレースに出走できるのがポイントだ。

TOKYO AUTO SALON 2023の出展に際して、タイヤはストリートスポーツラジアルのADVAN NEOVA AD09(Front:245/35R20 95W XL/Rear:275/30R20 97W XL)を履くが、例えばSRO主催の「GT ワールドチャレンジ」などに参戦する場合はレーシングスリックの装着が義務付けられている。

TAS2023のショーモデルとしてThe Check Shopのポルシェ718ケイマンGT4RSクラブスポーツにストリートスポーツラジアルのADVAN NEOVA AD09(Front:245/35R20 95W XL/Rear:275/30R20 97W XL)を装着。ホイールはYOKOHAMA WHEELのADVAN Racing GT for PORSCHE(Front:20×9.0J 5H/130 inset 55/Rear:20×11.0J 5H/130 inset 50/Color:RACING BRASS GOLD METALLIC)を履く。

「2023年はGTワールドチャレンジ・アジアの日本ラウンドに参戦します。その前に、2月に開催されるAttack筑波にも挑戦します。新しくスリックタイヤのクラスが出来たのでYOKOHAMA/ADVANのレーシングスリックを履いて参戦することにします。タイムアタックのカテゴリーでYOKOHAMAは積極的な展開をしているし、アメリカではスプリント・チャレンジ・カップへのワンメイク供給もしているからレーシングポルシェとの親和性も高い。YOKOHAMA/ADVANのタイヤを履いたポルシェでどれだけの結果が残せるか、今からとても楽しみですね」

アメリカの伝統的なヒルクライムレース、パイクスピーク(PPIHC)でも718ケイマンGT4 / 718ケイマンGT4 RSクラブスポーツを用いたワンメイククラス“ポルシェ・パイクスピーク・トロフィー by YOKOHAMA”にADVAN A052が5年供給されるなど、ポルシェで戦うクラブマンやプライベーターに向けての幅広いサポートをしているYOKOHAMA/ADVAN。往年のADVANカラーを纏ったレーシングポルシェの伝説を再び現代にも蘇らせるかのごとく、ここ日本においてもポルシェ・ユーザーへの積極的なアプローチの熱度が、日増しに高まっているのである。

(了)

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