Life with ADVAN

旧車とADVAN―其の壱
レストモッドZとA052の素敵な関係。

2022.4.8

近年、クルマ趣味の世界ではクラシック世代、より日本的に表すと“旧車”の価値が急激に高まっている。オリジナル重視もあればチューニングやカスタムを施したものまで、その楽しみ方もさまざま。そんな旧⾞とのライフスタイルにマッチするYOKOHAMA / ADVANの選択肢を今⽉はシリーズでご紹介したいと思う。「其の壱」として登場するのは“レストモッド”に仕立てられた240ZとADVAN A052の組み合わせ。その素敵な関係性に迫る。

Words:髙田興平 / Kohey Takada(Takapro inc.)
Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui(Weekend)

旧車とADVAN―其の壱

“レストモッド”とは
クルマ趣味のひとつの究極形である。

「Restomod / レストモッド」という言葉をご存知だろうか?

レストア(Restored)とモディファイ(Modified)を掛け合わせた自動車カスタムの造語であり、その発祥はカスタム大国のアメリカだとされている。

“レストア”が前に立つだけあってクラシックな世代のモデル(主にスポーツカーが多い)の骨格や表皮までを入念に再生(レストレーション)した上で、そこにより現代的な機能や性能を追求したモディファイを施すカスタムスタイルを指す。

その頂点に位置するものは、例えばポルシェ911(空冷世代)を素材とし、世界中で垂涎の的となったシンガー・ヴィークルデザインのスタンダードタイプ(リイマジンド by シンガー)で6000万円ほど、F1コンストラクターでもあるウィリアムズとシンガーが共同開発した最先端のカーボンファイバー製ボディに4ℓ / 500psの空冷フラット6 NAエンジンを搭載する“DLS”に至っては2億円(!)を超えるプライスタグが掲げられるのだから、これはもはや単にカスタム(改造)の域に留まらない、確立されたひとつのハイエンドな自動車カテゴリーとして分類してよいだろう。

1970年製のダットサン240Z(S30型)を現代一級レベルのマシンとして仕立て直した和製レストモッド。その足元にはADVAN A052を履く。

そして、その勢いはアメリカだけのものではなく、ヨーロッパにおいても往年の名車を素材とした魅力的(かつ高価)なレストモッドが次々と発表されている。

そう、真のレストモッドとは現代の最新鋭のマシンにスペックや性能で一歩も引けを取らないどころか、クラシックモデル特有の芳醇な滋味までもそこに内包した唯一無二の存在として、世の裕福かつ欲張りな好事家(マニア)たちからの熱い眼差しを一身に集める、それはクルマ趣味におけるひとつの“究極”と位置付けされるものなのだ。

クラシックなのに新しい――
不思議なギャップが魅力の世界。

横浜市都筑区にあるマシンショップ「Supermachine / スーパーマシーン」が手がけた1970年製のダットサン240Z(S30型)もまた、各部で徹底してこだわり抜いた高いレベルの完成度を誇るレストモッドである。

スーパーマシーンの渡辺智也代表は日本でのアメリカン・カスタム&チューニング・シーンにおける第一人者として知られる人物。かつては全日本GT選手権に参戦するシボレー・カマロのレースカー(IMSAマシンをベースにGT500に参戦、タイヤはADVANだった)のメカニックとして活躍した経歴をもち、その後はレーシングカー・コンストラクターとしてル・マン24時間レースなどでも活躍したサリーン社の製造するコンプリートカーの日本総輸入元のチーフメカニックとしても、その手腕を発揮してきた本格派だ。新旧のアメリカ車、さらには空冷世代のポルシェ(エンジンはアメリカンV8のシボレーLSシリーズに換装)なども含めた意欲的なカスタムマシンもこれまで数多く手がけてきている。

アメリカン・カスタム&チューニングの世界に精通する渡辺智也代表が主宰する横浜の「Supermachine / スーパーマシーン」。“Z-car / ズィカー”の愛称でアメリカでも大成功を収めた240Zは、日本人として以前からレストモッド化したかったモデルだという。

「クラシックな世代のモデルを素材にして、速さや快適性といった要素を現代的な視点で落とし込むというアイデアやテクニックに関しては、日本のカスタムの常識なんて足下にも及ばないほどの幅と奥行きが、アメリカのカスタムの世界にはある。ハイテックやプロツーリングといったカテゴリーがこれまでも確立されてきましたけれど、それらの象徴であり究極の進化形と言えるのが、今日のレストモッドの存在だと思います」

シャープな輝きが地肌から浮き立つような、独特のメタリック処理が施された美しいレーシンググリーンを纏う240Zの姿は確かにクラシックではあるが、その佇まいはともあれ現代的に映る。そこには古臭さ、いわば妙なノスタルジーを感じさせることがない。クラシックなのに新しい――このある種不思議なギャップを伴う新鮮味こそが、レストモッドの魅力であり奥深さなのだろう。

ストリートを疾走する240Zレストモッド。その姿はクラシックではあるものの、そこに古臭さを感じさせることがない。実際の走りも含めて、その世界観はあくまで現代的なのだ。

速さだけではなく
快適性も現代的である。

「速くて刺激的なのは当たり前。あとは快適であることも当たり前。その点で現代車に負けることは許されない。でも、だからといってベースとなる昔のエンジンを無闇にいじめる気もない。そこはあくまで、L型エンジンのセオリーに沿ったチューニングを施しています」

そのメニューをざっと紹介すると、L28をベースにボアアップとストローカーで3.1ℓ化。腰下はLDクランクにカメアリ製の軽量コンロッド&レースピストンを奢る。ヘッドまわりもきっちり面研してビッグバルブ化にポート研磨を施してコンプレッションは11.4に高めている。キャブレター⾵のスロットルが付いた英国JENVEY 製のインジェクションを⽤い、ハルテックのECUで全体を制御して扱いやすさも現代的なものにしたほか、排気に関してはカメアリ製のタコ足にワンオフのステンパイプで出口は日常域でのマナーも考慮してバルブ開閉式のもの(バルブトロニック製)を装着するといった具合である。

L28をベースに3.1ℓ化。その中身はL型チューンのセオリーを崩さず構築されるが、耐熱性に優れるセラミックコートが施されたヘッドカバーを軸に挿し色でさりげなく明るいグリーンをいれるなど、各部の細かな仕上げ方にまでこだわるのがスーパーマシーン流である。とても50年以上前のエンジンには見えない、良い意味での“今っぽさ”を感じる。

「そもそも1トンを切る車重ですからリッター100馬力ちょっとあれば十分刺激的な速さが得られる。クルマ本来のキャラクターをいたずらに崩すことなく、現代のレベルでも十分通用する速さと快適性の両立を追求しています。
リングブラザーズ製のスマートキー・システムを投入しているからエンジンもリングをタッチするだけで一発始動させられる。それでいてサウンドとかフィーリングはL型エンジンらしい、あのどこか生きものみたいな感触も損なわれていない。そういう絶妙なバランスを意識したチューニングとモディファイが、この240Zレストモッドの基本軸にはきちんと落とし込んであります」

こだわりの足回り。
組み合わせたのはA052だった。

その足回りにも徹底したモディファイが施されている。スペシャルオーダーで製作されたZF SACHS製の2WAYタイプのサスペンションシステムを軸に、アーム類もアメリカのT3(Techno Toy Tuning)製のものでアップデート。リフトアップして下回りを覗くと、その美しい仕上げも相まって、まさしく現代車の足回りとして映るところはさすがレストモッドである。

ZF SACHSの2WAYタイプのサスペンションシステムを軸にT3製のアーム類や強化パーツを用いて、ハイグリップなA052の性能を存分に生かすことのできる現代的な足回りに仕立て上げられている。

新車発売当時はバイアスタイヤが標準装着だった240Z(S30)だが、マニアたちの間でもよほどのオリジナル信奉者でもない限りは、スポーツラジアルタイヤに履き替えているのが常識だ。一級のパフォーマンンスを標榜するスーパーマシンの240Zは、YOKOHAMA / ADVANが誇るハイグリップラジアルの雄、A052をその足元に選んでいる。

A052の大きな魅力は
フォルムとサイズのバランス。

「何よりこだわったのはショルダーの丸み。あとは225/45という扁平率も譲れない要素でした。ホイールはオリジナルから3インチアップとなる17インチのコブラ・スタイル(伝説のアメリカン・レーサー、デイトナ・コブラ・クーペをオマージュ)のものを選んだのですが、まずハイグリップラジアルには17インチで45扁平の設定がほとんどない。欧州ブランドも探したけれど僕の求める225/45R17の設定はありませんでした。でも、ADVANのA052にはしっかりラインナップがあった。
もう一点のショルダーの丸み、そしてサイドウォールの厚みに関してもA052は理想的でした。アジア系タイヤブランドのハイグリップラジアルもこれまで幾度か試してきましたけれど、ショルダーがスパッと立ちすぎていてどうにもクルマ全体のフォルムがまとまらない印象が強かったのです」と渡辺代表。

前後共に225/45R17サイズを装着。オリジナルの14インチから3インチアップとなる17インチのホイールを装着するが、オーバーフェンダーを装着することなく実にまとまりのある理想的なスタンスが生み出されている

「クラシックな世代のクルマには、いかに性能を現代的にアップデートさせたとしても、見た目においてはハイトのあるクラシカルなタイヤの雰囲気がいちばん似合う。要はサイドのボリュームがあって、ムチっとした丸みのあるフォルムがいい。
国産旧車となるとシャコタンでオーバーフェンダーに引っ張りタイヤ、というのが定番でもあるけれど、それはあくまでカスタム(改造)であってより高い完成度が求められるレストモッドのイメージではない。オーバーフェンダーを着けることなく、オリジナルの美しいナローなボディラインを生かしたまま225サイズの17インチを履きこなせるという点でも、ADVAN A052のフォルムとサイズのバランスはベストな選択肢となりました」

“レストモッド”である以上、快適性も徹底的に突き詰められている。パワステやエアコンはもちろん、メーター類などもアナログの雰囲気を崩すことなくデジタル化。スマートキー&タッチスタート機能まで備える。シートはレカロLX-Fにヴィンテージな風合いのレザーとマテリアルで雰囲気を高める。極上のクルージング性能が約束された世界である。

無論、レーシングタイヤ直系の飛び抜けたグリップ性能も、現代車として強化されたレストモッドとしての性能を受け止めるには必要不可欠なものではあるが、それ以上に印象的なのがそのバランスのよい快適性だというから興味深い。

「サスペンション関連のアップデートと相まって足元のしっかりとした安心感がある。ケース剛性が高くなおかつ車外通過騒音の国際基準規制値までクリアしたA052のフィーリングは圧倒的な安定感があるのはもちろん、タイヤを転がした時点で気持ちいいと感じさせてくれる上質さまでが備わっている」

サーキットでのタイムアップを主眼としたSタイヤに近いというハードなイメージが先行しがちなA052ではあるが、その実、より日常的なスポーツドライビングに供しても上質な心地よさを乗り手に感じさせてくれることに、改めて驚かされたと渡辺代表は言う。

「この240Zレストモッドはまだ仕上げたばかりで限界域での走行は試せていませんけれど、例えばレーストラックに持ち込んでも存分にファンで現代的な速さを示してくれるはず。 パワステやエアコンも装着して快適に走ることができて、その先の攻めた領域でも破綻することなくバランスのよい刺激をドライバーに与えてくれる。そうしたオールマイティな性能を秘めたレストモッドにとって、A052というトータルバランスに優れた上質なハイグリップラジアルの存在はまさに不可⽋なものだと感じています」

クルマ趣味の世界はかくも奥深く、マニア心をくすぐる魅力に満ちている。時空すら超越したレストモッドという究極のスタイルにおいて、熱い魂を秘めたADVANブランドのハイグリップラジアルがその足元をより魅力的に彩るという事実が、何より素敵だと思えた。

(了)

旧車とADVAN―其の壱

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アメリカ車のカスタム&チューニングを軸とした腕利きのマシンショップとして知る人ぞ知る存在。クラシックなスポーツカーへの造詣も深く、空冷世代のポルシェや国産旧車など幅広く対応する。オレンジ色の240Zは記事で取り上げたレーシンググリーンのレストモッドよりオリジナル志向で仕上げた1台。タイヤは15インチのADVAN HF Type Dを履く。

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