Life with NEOVA

Grip the Soul―
“魂”を掴みとるタイヤ。
NEOVA AD09開発の舞台裏 / 後編

2022.1.7

2021年12月9日に発表された「ADVAN NEOVA AD09」。ADVANが誇る高性能ストリートスポーツタイヤの代名詞「NEOVA」の最新作である。世の“走り好き”たちが長らく心待ちにしてきた“新時代のNEOVA”として、2022年2月より順次発売が開始される「AD09」――その開発最終評価テストの裏側を前編に続きレポートする。

Words:高田興平 / Ko-hey Takada(Takapro Inc.)
Photography:ディノ・ダッレ・カルボナーレ / Dino Dalle Carbonale 小林邦寿 / Kunihisa Kobayashi

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NEOVA AD09開発の舞台裏 / 後編

ウェットコンディションでも
AD09は高評価を連発させていく。

「ADVAN NEOVA AD09」の最終評価テスト2日目は、朝から雨降り模様となった。予定されていたドライを想定した評価テストのメニューはすべて見直され、ウェット性能の評価テストに全体のメニューが切り替えられた。

「ウェット性能のテストはYOKOHAMAの総合タイヤテストコース(D-PARC)でもこれまで十分に実施しているので、ここで特段評価する必要はないのですが、それでも、エビスサーキットの東コースのような実際のワインディング(ストリート)に近いシチュエーションでテストドライバーによる評価ができることは非常によい機会です。昨日、ドライでの評価は一定以上の水準で良い評価が得られているので、今日はウェットでも同様に良い評価が得られるか、とても興味深いところですね」

横浜ゴムでAD09の製品企画を担当する佐々木浩長は、前編でお伝えした通りドライでの評価が高かったこともあり、この日はどこかリラックスした表情を見せる。

2日目は朝からの雨でウェットコンディション(一時ダンプコンディション)となったが、前日ドライでの評価が高かったことで、ウェットでの評価にも期待が高まった。トータルでのバランスを評価するにはある意味で“恵みの雨”とも言えるテストとなった。

ウェットとなった2日目も、チーフ開発ドライバーの織戸 学、谷口信輝、柴田優作による、3台のテスト車両(SUBARU WRX STi、SUBARU BRZ、GRスープラ)を用いての評価が昼過ぎから行われることになった。

まずはWRXに従来製品のAD08Rを装着しての評価となったが、「WRXがAWD(全輪駆動)という部分も手伝って何の問題も感じません。温まるとグリップが上がっていくイメージ」(柴田)「悪くない。楽しさもある。ウェットの中でも頑張っている」(谷口)「ブレーキング時のインフォメーションがいい。正直、AD08Rは昨日のドライよりもウェットのほうが印象はいいくらい」(織戸)と、3人共に従来のAD08Rの時点ですでに高い評価を下していく。

続くWRXでのAD09の評価の時間になると雨があがり、路面が一部で乾きはじめるダンプコンディションとなった。

AWD(全輪駆動)ということもあり、SUBARU WRX STiでのAD09の評価は3人のドライバー共に高いものとなった。

「アウトラップは少し滑る印象もありますけれど、AD08Rと同様に温まるといいですね。特にブレーキからのターンインではメリハリの良さが際立ってきます」と柴田。

そしてBRZにテスト車が変わり、AD08Rの評価を終えてAD09での評価に入る頃になると再び雨は降り出したものの、依然としてダンプコンディションが続く。

「一言、すげぇイイ! これはいいよ、乗っていて気持ちいい。AD08Rも悪くないんだけれど、それ以上に不安なく攻められるし、きちんとタイヤがねじれてくれるからグリップにメリハリが生まれてコントロールがしやすい。ドライと同じくウェットでもしなやかさを感じさせてくれる。これは、文句なくイイね!」と谷口。その表情は本当にどこまでも満足げだ。

そして続く織戸も同じく、とても満足げにこうコメントする。

「レーシングウェットを履いているような感覚。AD08Rには硬さを感じる部分は正直あって、ウェットでは滑り出しが唐突なところもあったけれど、AD09ではそうしたものが綺麗に払拭されている。ビード周りの剛性の高さが特に効いている印象。アウト側とイン側のトレッドの仕事の分担がはっきりしているから、とてもメリハリのあるインフォーメションが得られる。あと、想像よりも遥かにゴムと水の相性がいいね」

前日のドライ同様、ウェット(一部ダンプ)コンディションにおいても、NEOVA AD09はここまでの2台の時点で、予想を遥かに上回る高評価を得たのである。

ウェットでの評価も高く、テスト現場の雰囲気も終始和やかなものとなった。長い時間をかけて育て上げてきたAD09の、その理想的な仕上がりに触れ、開発に携わってきたチームの皆の表情からは自然と笑みがこぼれるのであった。

これは長く愛されるタイヤになる。
織戸がそう確信した理由とは?

山の天気は本当に気まぐれなもので、真打ちとも言えるGRスープラでの評価の時間になると次第に雨脚は強まり、気づけば濃い霧まで立ち込めはじめている。

完全なウェットコンディションへと戻った状態での従来のAD08Rについては、3人のドライバーが口を揃えて、「現代のこのクラスのスポーツカーになると、正直厳しい部分がある」と、登場から9年を経たAD08Rのひとつの限界を示唆するような評価で一致した。

「AD08RとGRスープラの組み合わせだと、特にリヤのケース剛性の足りなさが露呈してしまうところはある。80スープラとかFDくらいだととても相性のいいタイヤだけれど、現代のこのクラスのクルマの基準で捉えると、物足りないというのが正しい評価になるね」と織戸は言う。

雨脚がさらに強まり完全なヘヴィウェットの路面コンディションとなる中、GRスープラとAD09の組み合わせによる評価がはじまっていく。悪条件だからこそ真の性能が見えてくる――と、強まる一方のその雨脚は、まるで、AD09に最後の試練を与えているかのようにさえ映った。

「このコンディションの中でもしっとりしなやか、ハイグリップ。ウェットを走っても、ここまで気持ちよさが変わらないことは驚きでもありました。さすがに雨量が多いのでハイドロが起きる予測もしながらの走行でしたけれど、それでも抵抗感なくよく曲がってくれたことが印象的です」

AD09の評価テストをすべて終えた柴田の顔は本当に明るいものだった。そして、それに続く谷口と織戸も、「ウェットでもフィーリングは非常に良い」との評価で一致した。

どこか峠にも似た、エビスサーキット東コースでの2日間の最終評価テストを終えて、その最後に、織戸の口から出てきた言葉がとても印象的だった。

「前回のテストまでは“足りない”と思っていたものを、今回の最終テストでやっと手に入れることができたと思う。足りなかったもの――それは“個性”なんだ。NEOVA AD09の個性ってなんだろう? って考えたときに、どこかで突出したものがなければならないって、その部分にばかり囚われがちだけれど、今回のAD09はね、“誰もが気持ちよく楽しめる”という、あくまで尖った何かが欲しくなるこの手のストリートスポーツラジアルではどこか体現しづらい、真に“幅のある性能”を、タイヤの明確な個性としてやっと手に入れることができた。
スポーツカーのひとつの理想形であるポルシェ911で例えると、GT3やGT2ではなくて、NEOVAはあくまでカレラなんだよ。そう、それは日常の中でも優れた性能が満喫できて、望めばその先にサーキットもしっかり見えてくるという、GT3やGT2のような突出した存在ではないけれど、だからこそ総合的な、まさに根本の強さがある。このAD09は、この先に長く愛されるタイヤになってくれると思うよ。それくらい、乗り手の魂の部分までをグッと包みこんでくれるような、それは実に懐の深い気持ちよさがあるタイヤだからね。走ることを愛する人にこそ、是非履いてほしいね」

根本の強さ――それはすなわち、芯の強さ。

走ることが大好きな者たちの魂を真っ直ぐに掴みとってくれる――まさに芯のあるグリップを備えたタイヤ。ADVAN NEOVA AD09は実にADVANらしい、何より熱い“Soul”をうちに秘めた最強のストリートスポーツタイヤである。

今年2月からの発売を、是非心待ちにしていただきたい。

(了)

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NEOVA AD09

「ADVAN NEOVA AD09」は従来品の「ADVAN NEOVA AD08R」の後継モデルとして9年ぶりとなる新商品。部材から見直し再設計した新構造や強さとしなやかさを追求した新プロファイルにより、YOKOHAMA史上最高レベルのケーシング剛性を実現。また、緻密に最適化した専用の非対称トレッドパターンと粘弾性のバランスを追求した新コンパウンドを採用することで、ラップタイムの短縮が期待できるドライグリップに加え、アマチュアドライバーを助ける優れたコントロール性、サーキット走行でも長く使用できる耐摩耗性能が実現されている。さらに、カスタムチューニングにおける外観も妥協なく追求し斬新かつ洗練された独自性の高いパターンデザインに加え、コントラストを鮮明にしたブランドロゴなどがカスタムチューニングカーに見合う“カッコよさ”をも提供する。発売は2022年2月より日本を皮切りにアジア、北米地域で順次スタート。発売サイズは世界的なプレステージカーまで対応する275/30R20 97W XL〜165/55R15 75Vの20サイズで、2022年末までに21インチまでを含む計60サイズを追加する予定だ。なお価格はオープンプライスとなる。

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