FORMULA DRIFT® JAPAN

試練を糧に未来へと羽ばたく──
YOKOHAMA / ADVAN勢の
ファイナルランが示す未曾有の可能性。

2025.10.29

2025年のFORMULA DRIFT® JAPAN(FDJ)は、瞬く間に最終戦(第6戦)岡山国際サーキットへとなだれ込んだ。YOKOHAMA / ADVANアスリートたちは、各々に固有の課題を抱えながらも、しっかりと目標を設定し、それを現実に手繰り寄せようとしていた。一瞬たりとも目を離せなかったチャンピオン争い──。そこに追いつき、いつかは自分の手で追い越そうと奮闘するアスリートたち。そんな、情熱がほとばしる彼らのファイナルランを追う。

Words:中三川大地 / Daichi Nakamigawa

Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui(Weekend.)

プロフェッショナルの精神を持った
16歳のトップドライバーが挑む。

箕輪大也(#771 CUSCO RACING / GRカローラ)の成長を痛感するシーズンとなった。16歳なのだから、あらゆる意味で成長が早いのは当然だ。しかし、それにしても彼の場合は挑戦する内容が人並み外れている、日々、高校生として勉学に励みながら、アメリカのFORMULA DRIFT®、日本のFORMULA DRIFT® JAPAN(FDJ)ともにフル参戦をやり遂げようとしている。しかも双方ともに優勝を経験し、シリーズチャンピオン争いにまで食い込む。秀でた才能と並々ならぬ努力のなせる所業なのは間違いない。もうひとつあるとすれば、レーシングドライバーにとっては欠かせない資質である「負けず嫌いの精神」だろうか。

「日米で揉まれて、技術はおろか精神が強くなった面はあると思います。元来、あまり表立って感情を出したり、弱音を吐いたりするタイプではないんです。でも、負けたときはすごく悔しいんでしょうね。家に帰ったら、黙ったままずっとシミュレーターで練習をしています」

母として日常の生活を支えながら、日米での挑戦にずっと帯同してきた箕輪昌世が、大きくなった彼の背中を見ながらそうつぶやく。いままで何度も“悔しさ”を経験してきたのは間違いない。それでも「もがき、苦しむ姿を公にはしない」プロフェッショナルとしての精神が、すでに備わっているのが印象的だ。そもそも生活自体が前人未到のチャレンジであり、時差ボケも日常茶飯事という毎日。泣き言をいいたくなる気持ちをグッと堪えながら、究極的に集中する時間と、思いっきり抜くところと、メリハリをつけていた。たとえ公式練習やレース進行中であっても、わずかな時間を見つけては休息し、積極的に寝るようにもしているという。

そんな箕輪が最終戦(第6戦)岡山国際サーキットに挑む。本戦が始まる前の段階でのシリーズランキングは総合2位(313pt)。トップを走る高橋和己(#36 / TMS RACING TEAM / BMW E92)との差は72ptにまで開いたが、最終戦における双方の戦績次第ではシリーズチャンピオンは射程圏内にあった。少なくとも箕輪が表彰台にのぼることは必須である。

箕輪大也(#771 / CUSCO RACING / GRカローラ)

いま、もっとも大切なのは
目の前の勝負に勝つこと──。

期待を裏切らず、見るものの鳥肌を立てるほどに鮮やかな走りを披露してくれたのが、10月11日(土)に開催された予選・単走となった。1本目から針の穴をつつくような緻密なマシンコントロールを持って、各ゾーンにすうっとマシンを放り込む。スピード、アングル──そして切り返しの速さも抜群だ。結果として得たのは91pt。全体のレベルが向上したFDJの場であっても90pt台を記録したのは箕輪のみであり、見事、予選・単走での優勝となった。

続く10月12日(日)の決勝・追走トーナメント。箕輪は表彰台の頂点を一歩づつ手繰り寄せるように、順調に駒を進めていく。先行の場面では、まるで何度も予選・単走では優勝レベルの、鮮やかかつ精度の高い走りを繰り返す。追走となれば、マシン特性やドライバーの個性が異なるライバルたちに対して、その癖を一瞬で見抜いてぴたりと追随していく。基礎体力をシミュレーターで頭と身体に叩き込み、そのうえで日米ともにフル参戦という実践経験を積んで応用力を身につけてきた男である。その両輪で体得した“強さ”を感じさせた。

FINAL(決勝戦)をかけたFINAL4(準決勝戦)では、箕輪に先駆けて日米のFORMULA DRIFT®シリーズへの挑戦を続け、FDJではYOKOHAMA / ADVANアスリート同士でもあるケングシ(#21 / Team KAZAMA / レクサスIS500 F SPORT Performance / Drift)との対決となった。彼らの直接対決はこれで5回目。ケングシが過去に3勝しており、今年の初戦・富士スピードウェイでも決勝でケングシが勝って優勝しているだけに、箕輪にとっては何がなんでも負けられない強敵だ。

ケングシ(#21 / Team KAZAMA / レクサスIS500 F SPORT Performance / Drift)

ところが気合いが入りすぎたのはケングシだったか。ゾーン1からタッチ・アンド・ゴーで振り返す際に、2台は接触をしてしまう。これに対して「ケングシによる先行者への妨害」という判定がくだされ、結果、箕輪が決勝へと駒を進めることになった。ケングシのミスによって箕輪が助けられたとはいえ、彼の乗るGRカローラも傷を負ったことは間違いない。「接触の影響でリアアームが歪んで、アライメントが大きく狂ったと思う。ひとまず応急処置を施しただけ。でも──ヒロなら絶対に100%のチカラで走れると思う」とチームメイトが述べる。名門クスコ・レーシングの全員が一丸となって勝利を目指す姿勢はとても印象的だった。

決勝の相手は、箕輪と同じく運命を手繰り寄せるかのように勝ち進んできた高橋和己である。第2戦・鈴鹿ツインサーキット、第4戦・スポーツランドSUGOに続き、決勝戦での彼らの直接対決は今シーズンだけでも3度目という名マッチだ。名実ともにシーズンを牽引したふたりである。なお、決勝に高橋が姿を現したということは、2025年シーズンにおけるシリーズチャンピオンは彼の手に渡ったということを意味する。そこには誰もが悔しい気持ちを抱きながらも、もっとも大切なのは「目の前の勝負に勝つことだ」と、箕輪はあらためて襷を締め直す。

箕輪の先行は、予選・単走を含めた他のどの闘いと同じく、ともすればそれ以上にパーフェクトといえるものだった。もうもうと白煙を放出しながら、持ちうる限界値の速度を引き出して、そのうえでどこまでもきめ細かく一部の狂いもなく、各ゾーンをなぞっていく。

続く追走も圧巻だった。イニシエーションゾーンから的確にマシンを動かし、鮮やかな所作をもってADVAN NEOVA AD09にトラクションを伝えて高橋にピタリとつく。すべてのゾーンで懐に食い込み、過激なまでに威嚇し、それでいてひとつのショーを演じるかのような不思議な一体感をもって駆け抜けた。結果として、勝利の女神は箕輪に微笑んだ。

悔しい2位と、嬉しい1位を携え
すぐさま次のステージへ──。

「有終の美を飾る」という言葉は、こういうときのためにこそ存在するのだろう。2025年のシリーズランキングこそ2位にとどまったが、最終戦の場で、予選・単走に次いで決勝・追走トーナメントともに優勝するパーフェクト・ウィンである。箕輪が敬意を払うカッレ・ロバンペラが2023年に達成したこの偉業を、彼も成し遂げてみせた。それはまるでドリフトの神が宿ったかのようでいて、見ているコチラとしては身震いがした。

「悔しい2位で、嬉しい1位で。とっても複雑な気持ちなんですけれど、でもこの結果は喜ぶべきものだし、間違いなく嬉しい! いつも完璧な状態で送り出していただくクスコ・レーシングの皆さま、無茶な挑戦に付き合ってくれる両親に対しても本当に感謝しています」

こうして箕輪のFDJは幕を下ろした。彼はひとまずの安堵を覚えながらも、すぐにスイッチを切り替えていたのが印象的だった。FORMULA DRIFT®の最終戦・カリフォルニア・ロングビーチが数日後に迫っていたからだ。その切り替えの速さには、すでにトップドライバーとしての矜持が身についているようだ。こうして彼は、究極的に集中する時間と思いっきり抜くところのメリハリをつけ、時差ボケと闘いながら、さらなる高みを目指していく。

あらゆる人間の琴線に触れた
何がなんでも諦めない闘志。

箕輪大也とFINAL4(準決勝)で闘ったケングシは、先に触れたアクシデントを、自分のミスだと素直に受け入れた。そのうえで「ファンの皆さま、チームの皆さまに申し訳ない」と詫びる。スポーツマンシップあふれる清々しい態度には、大勢のオーディエンスが拍手を送った。

ミスこそ詫びたものの、それは負けを認めたことと同義ではない。ケングシをはじめ誰もが、瞬時に前を向いた。接触によりフロントの足まわりは大きく損傷し、規定された5分の修理時間(5分間ルール)では、誰の目にもふたたび走り出すことはできないと映った。しかし、ケングシをはじめTeam KAZAMA(風間オートサービス)は誰ひとりとして諦めなかった。実際、その身体は満身創痍で、足まわりも万全の状態とはいえずとも、少なくともドリフトバトルができる状態にまで応急処置してみせたのだ。会場全体が諦めかけていたころ、IS500がテープだらけでコースへと舞い戻ったときには、そこかしこが感嘆の声に包まれた。

しかも復活した後の先行走行でケングシは、箕輪に対して先輩としての想いを──諦めない心を伝播するかのごとく、誰がみても完璧に走り切った。1本目の追走結果からすると、勝負としては明らかに不利な状況ながら、最後の望みをかけたのだ。結局、決勝への切符は箕輪に譲ることになるものの、そのファイティング・スピリッツには最大の賛辞を送りたい。

「悔しい──。ただ、ただ悔しい」と、闘いを終えたケングシはつぶやいた。それは嘘偽りならざる本音だろう。予選・単走では、ケングシ節ともいえる安定した走りで86ptを記録して4位へつけていた。決勝・追走トーナメントでもその安定感は際立った。2022年のシリーズチャンピオンである松山北斗(#774 / CUSCO RACING / A90スープラ)、第5戦・グランスノー奥伊吹の決勝・追走トーナメントで優勝した小橋正典(#4 / Team ORANGE / A90スープラ)などの強豪に次々と勝っていくたびに、優勝が現実味を帯びてきていた。そのうえでの箕輪との勝負であっただけに、忸怩たる想いを抱くのも仕方がない。

しかし、ケングシはやはり酸いも甘いも嚙み分けたベテラントップドライバーである。箕輪と同じくすぐに未来を見た。彼もまた決勝・追走トーナメントの翌日には、FORMULA DRIFT®の最終戦へと挑むためカルフォルニア・ロングビーチへと飛び立った。「来年に期待していてください!」と、翌日に出会った空港で言い残した彼は、とても清々しい顔をしていた。

あまりにも狂気で甘美な
カリスマドライバーの闘い。

齋藤太吾(#87 / ファットファイブレーシング / A90スープラ)の2025年シーズンは、エンジンブローを筆頭とするマシントラブルに悩まされてきたシーズンとなった。彼の駆るA90スープラこそ、その基本骨格は昨年に完成していたが、度重なるトラブルによって、本格的に闘いの場に打って出たのは今シーズンから。A90スープラにNASCARのV8エンジンを積むことで、ほかの参戦車両とはまるで違う、一瞬で齋藤太吾の走りだとわかるような雄叫びをあげるマシンへと仕立てていた。回転数は5桁を常用し、あっさりと1000psを超える。それをプライベーターとして成立させているのだから、そこには幾多もの障壁があったに違いない。

予選・単走では85ptを記録して、6位という位置から決勝・追走トーナメントの開始となった。いつもの齋藤太吾節を感じさせる、狂気ともいえる走りは健在だ。猛獣が力ずくで勝利への道を切り拓くかのごとく、問答無用の迫力を持って勝ち進む。GREAT8はRYUMA(#131 / Team ORANGE Jr / JZX100チェイサー)とのバトル。先行は鬼気迫るものを感じさせたし、追走もまた然り。オーディエンスを魅了させるエンジンサウンドとともに、エッジィな切り込みをみせるものの、RYUMAの安定感には一歩届かず。ここで敗退となった。

齋藤太吾(#87 / ファットファイブレーシング / A90スープラ)

箕輪やケングシとは違い、すべて手弁当でマシンと闘う体制を用意する。エンジニアとしての役割をこなし、何かあれば即座にメカニックとして油まみれでマシンに潜るのが、彼自身の人生を投影したかのようなファットファイブレーシングである。今回、悔しくもGREAT8で散り、本戦では総合6位というリザルトで終えた。しかし、勝負に望む姿勢とそれがもたらす狂気な走りは、あらゆるプライベーターを勇気づけた。「齋藤太吾のような走りをしたい」といってFDJシリーズを目指す挑戦者が絶えないのが証拠だ。彼はやはり「記録より記憶」を大勢の人びとへと植え付けた。いよいよ来年は記録へと転化するのか。次なる闘いに期待したい。

トラブルこそが己を鍛える、
そう信じた2025年シーズン。

予選・単走を30位(74pt)でくぐり抜けたものの、決勝・追走トーナメントは初戦で敗退してしまったのが金田義健(#770 / CUSCO RACING / GRヤリス)だった。昨シーズンからマシンの仕上げに四苦八苦してきたが、ようやくあと一歩といえるところまで来ていただけに、最終戦・岡山国際サーキットを含めた今年の戦績には悔しさが残る結果となった。

金田義健(#770 / CUSCO RACING / GRヤリス)

「追走の際に、角度をしっかり合わせ込むことができなかったのが正直なところ。自分がマシンの動きを完璧に掌握するところまで、あと一歩届かなかったのだと思います。挙動に不安があって、安心を捕まえるためにひとつずつセットアップを積み重ねていくのですが、ときに不安のまま闘いに出ていかざるを得ないこともある。その際の走らせかたに、自分のメンタルキープに、難しさを感じたのは事実です。それでも自分とGRヤリスは、最前線に居続けるポテンシャルを持ちうる存在なのは間違いない。その感触こそ未来への希望となりました」

いまやGRヤリスは、FDJでは唯一の存在となっていた。かつて、箕輪が乗って大活躍をしていた2年前よりも、FDJ自体のレベルはさらに上がっている。ピュアスポーツカー勢に比べて重心が高いなどディメンジョンに不利な面があるGRヤリスは、いかに強力なパワートレインを持ち込もうとも不利だという意見がある。それでも金田は、そのなかで最適解を見出し、何がなんでも勝ちを掴もうとするファイティングスピリッツがあった。それが実を結ぶことをきわめて現実的な課題と捉えて、彼はこれからも自己研鑽に励み、マシンを仕上げていく。

JDMカルチャーへの想いを
証明するために勝ちにいく。

「ADVAN NEOVA AD09が愛車を支える姿を見て、初めてそれを履いて走ってグリップ感を確かめたときには、もう、鳥肌がたちましたよ」いう言葉に象徴されるように、JDMという言葉で括られる日本のカーカルチャーに魅了され、その潜在能力を最大限に活かすかたちで勝ちを目指してきたのがユキオ・ファウスト(#555 / MINI GT WITH LBWK / S15シルビア)だった。今シーズンからYOKOHAMA / ADVANアスリートになったことに加えて、リバティーウォークによるLBワークスボディキットを纏うのが何よりの象徴だ。

ユキオ・ファウスト(#555 / MINI GT WITH LBWK / S15シルビア)

「予選の前日に実施された風間オートサービス(Team KAZAMA)の走行会で練習しまくって、ばっちりセッティングができたと思っています。今シーズン、パワーユニットを大幅に強化したので、それに見合うセッティングとタイヤマネジメントを模索してきました。いまではタイヤの使いかたを含めたレース運びに自信が持てる段階にいます」

と、述べるユキオ・ファウストは、予選・単走を20位(79pt)で通過して、決勝・追走トーナメントに挑んだ。結果としては先述した松山北斗に勝利を明け渡すことになったが、それでもユキオ・ファウストらしい大胆な走りは健在で、来シーズンへの期待を感じさせた。

困難を乗り越え、さらなる高みを目指す
YOKOHAMA / ADVANアスリートたち。

ユキオ・ファウストと同じく今シーズンからYOKOHAMA / ADVANアスリートとなり、なおかつFDJ2からステップアップした杏仁さん(#20 / Team academic with watanabe / S15)は、レベルアップの著しいFDJの場で、今回、決勝・追走トーナメントの場に残ることは叶わなかった。いつも1周、1ゾーン、すべての体験を己の財産と捉えるかのごとく、規定された練習時間、本数のすべてをこなし、額に汗を浮かべながら嬉しそうに感想を述べる。それを前にしたら、そう遠くない未来にサクセスストーリーを具現してくれそうな予感を抱く。

「FDJは生半可な気持ちで点数を追い求めても勝てない。それを痛感した1年となりました。でも、確実に階段を一歩ずつ上がっている実感があります。成長ドラマは僕だけではない。チームメンバーも、マシンの仕上がりも然り。YouTubeを通して多数のファンの方々から応援していただけることも本当に糧になっていて、だからこそ僕はずっと走り続けたいと思う」

杏仁さん(#20 / Team academic with watanabe / S15)

杏仁さんと同じくYouTubeを軸として、国際派インフルエンサーとして活動するサム・ルーカス(#11 / Team SAMMIT with Be Forward / S15シルビア)もまた、予選・単走での敗退を喫した。今回からパワーユニットをアップデートし、チームメンバーも凄腕を揃えた。そのうえで数えきれないほどの練習走行を重ねて挑んだだけに、結果には悔いが残ったに違いない。

サム・ルーカス(#11 / Team SAMMIT with Be Forward / S15シルビア)

FDJ、2025年シーズンにおけるYOKOHAMA / ADVANアスリートたちの闘いは、こうして幕を下ろした。誰もがもがき苦しみ、そのなかでわずかな希望をつかんで、全身全霊をかけて勝ちを掴みにいった。結果を残すことは至難の技だ。運命がどう味方をするのか、ときに敵になるのか。いや、運命とは決して敵や味方なのではなく、いかなる結果であってもそれは当事者にとっての試練であり、未来への糧なのだろう。一寸先の未来は誰にもわからない。それでも己を信じて、チームメンバーとともに闘う彼らの姿には、素直に魅了されるものがあった。YOKOHAMA / ADVANは、これからも偉大なるアスリートたちの「不屈の精神」に寄り添っていく。

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