2021 SUPER FORMULA Round 1 Report

【SUPER FORMULA 第1戦 / 富士】

スタートでトップを大湯選手が奪うもP.P.の野尻選手がオーバーテイク、
猛追する大湯選手を寄せつけず野尻選手がポール・トゥ・ウィン!!

SUPER FORMULA Round 1

開催日 2021年4月3日~4日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 曇り のち 雨
路面 ドライ ~ ウェット
決勝周回数 41周
(1周=4,563m)
参加台数 18台
SUPER FORMULA 第1戦

様々な困難を乗り越え、イレギュラーなスケジュールの中12月に閉幕した2020シーズンから4か月。普段よりも短いシーズンオフを挟み、2021シーズンの「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」が富士スピードウェイで開幕を迎えた。例年ならば鈴鹿サーキットで開幕するSUPER FORMULAだが、オリンピックの影響もあり今シーズンは富士スピードウェイが初戦。18台のSF19が桜の舞い散るサーキットに集まった。

シーズンオフの大きな話題は、やはり王者の移籍。昨年3度目のシリーズチャンピオンに輝いた山本尚貴選手は、2010年にSUPER FORMULA(当時はフォーミュラ・ニッポン)にデビューしたときのチームであるTCS NAKAJIMA RACINGに移籍となった。また、ルーキードライバーも豊富な年となり、大津弘樹選手(Red Bull MUGEN Team Goh)、宮田莉朋選手(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、阪口晴南選手(P.MU/CERUMO・INGING)の3名がフル参戦でルーキー・オブ・ザ・イヤーを争うことに。今大会では諸事情により欠場を余儀なくされたドライバーもおり、この3人の他に小高一斗選手(KCMG)、笹原右京選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、中山雄一選手(KONDO RACING)らがエントリーリストに名を連ねた。

今シーズンは2デー開催が復活。予選日、決勝日のそれぞれ午前中に練習走行の時間も設けられた。昨年はコンディションに合わせこむ時間も非常に短く、あわただしい中で結果を求められる厳しいシチュエーションだったが、予選に向けてより速く、決勝に向けてより強いマシンを作り上げる時間がチームとドライバーに与えられるようになった形だ。

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予選日に1時間30分与えられた練習走行からトップタイムを刻んだのが野尻智紀選手(TEAM MUGEN)。1000分の一秒で順位が変わる近年のSUPER FORMULAで、2番手の福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に0.1秒差をつけた。3番手にはルーキーイヤーではあるものの、昨年スポット参戦でいきなり予選フロントロウにつけた宮田選手がトヨタ勢トップに。悲願のタイトル獲得に向けてスタートダッシュを決めたい平川亮選手(carenex TEAM IMPUL)が4番手となった。

迎えた予選は、ディフェンディングチャンピオンの山本選手がまさかのQ1敗退で波乱の幕開けに。富士を得意とする山下健太選手(KONDO RACING)や坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)などがQ3進出を逃していく中、走行したすべてのセッションでトップタイムを奪った野尻選手がシーズン初戦のポールシッターに輝いた。フロントロウには0.2秒差で大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)が、体調不良で欠場となった牧野任祐選手の代役で参戦する笹原選手が3番手につけた。

一夜明けた決勝日は、午後の決勝レースが行われる時間帯で雨の予報。各チームはその天気の行方も見据えて30分間のフリー走行でチェックを進めていった。予選でまさかのQ1敗退を喫し、決勝レースを16番グリッドからスタートすることになった山本選手がこのセッションでトップタイムを記録。決勝レースに向けてどれほどの追い上げが見られるのか期待が高まった。

徐々に上空の雲が分厚くなってきたものの、雨粒を確認することなく41周の決勝レースがスタートした。ホールショットを奪ったのは大湯選手。「クラッチに少しだけ不安感を持っていたので、いまいち感覚にフィットせず……」という野尻選手はスタートで出遅れ、2列目グリッドに並んでいた笹原選手、福住選手に詰め寄られる形に。それでも2番手ポジションは守り切り、大湯選手、野尻選手、福住選手、笹原選手というトップ4の並びでオープニングラップが終了した。

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その後方では、さらに好スタートを切った大津選手、関口雄飛選手(carenex TEAM IMPUL)などがポジションアップしたが、この2台は接触しマシンにダメージを負ってしまう。このアクシデントに巻き込まれるように中団は混乱が生じたが、その隙をついた山本選手が10番手までポジションアップしていた。

山本選手は義務付けされているタイヤ交換作業ができるタイミングになるといち早くピットイン。周りと違う作戦を採ることでさらなるポジションアップを狙ったが、左リヤタイヤの交換に手間取ってしまい大きくタイムを失ってしまう。同じタイミングでピットに入っていた大嶋和也選手(NTT Communications ROOKIE)にもかわされ、見た目上では17位まで後退し後半スティントに入っていった。

今シーズンはオーバーテイクシステム(OTS)が合計で200秒間使えることになり、中団以降では宮田選手と阪口選手、平川選手と坪井選手など、随所でバトルが勃発。またトップ争いも、いったんはトップに立った大湯選手のペースが鈍ってきたところに野尻選手が急接近。10周目にOTSを駆使して豪快にオーバーテイクして見せると再びトップに返り咲き、大湯選手を突き放していった。

2番手に戻ってしまった大湯選手は、レース後半に入った24周目に福住選手にかわされ3番手に後退。さらに笹原選手にも迫られたところでピットに向かいタイヤ交換を行うと、前後にマシンのいないクリアスペースでコースに復帰。1分以上先を走る野尻選手との差を縮めるべくプッシュを重ねていった。

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その野尻選手は周回遅れのマシンをかわす際にやや時間を取られる場面もあったものの、大湯選手に対して十分なマージンを保ったままで終盤まで周回。29周目に入る頃には霧のような小雨も確認されてレースは30周目でWET宣言が出され、コース上は少しずつ滑りやすい難しい路面状況へと変化していったが、そんな中でも安定した速いペースを崩さずにレースをリードしていった。

そして、レースが残り2周となったところでようやくピットイン。チームは素早い作業でタイヤ交換を済ませると野尻選手をコースへと送り出した。ピットイン前の時点で大湯選手との差は50秒以上開いていたため、野尻選手は大湯選手よりも前でコースへと復帰。12秒ほどのタイム差で2台は1コーナーへと入っていった。

履き替えたばかりの冷えたタイヤを慎重にウォームアップさせていく野尻選手に対し、OTSを使って一気に詰め寄っていく大湯選手。ファイナルラップを前に2台の差は一気に3.8秒まで縮まり、野尻選手の背後に大湯選手が迫っていった。

しかし、最後まで慌てることなく冷静にマシンをコントロールした野尻選手が1.5秒差でトップチェッカー。シーズン初戦を制して最高のスタートを切った。大湯選手は悔しい2位ながら、昨シーズンから3戦連続での表彰台獲得。3位には福住選手が入った。

DRIVER VOICE

野尻智紀 選手 [TEAM MUGEN]

【今回の成績 : 優勝】
この週末は走り出しからクルマの調子が非常によく、手ごたえを感じながらレースウィークを進めてきました。決勝レースは“いつ雨が降るんだろう?”というコンディションで難しい局面もいくつかありましたが、そういう中でも落ち着いて走っていられました。それは素晴らしいパッケージを用意してもらえたおかげで、僕は最後まで集中力を切らさずにやれることをやりました。タイトル獲得に向けてこれ以上ないと言えるぐらい良いスタートが切れたと思います。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

今シーズンSUPER FORMULAの全車に供給するタイヤは、昨年からの変更なく、ドライタイヤ、ウェットタイヤともに1種類ずつです。今回は途中でWET宣言が出されましたが、ピット回りで確認できる雨は終盤までほとんどありませんでしたね。コース中盤では滑りやすい状況に見えましたが、最終的には実際走っているドライバーが、どちらのタイヤで走った方がいいかを判断すること。滑りやすい路面に苦戦している場面もありましたが、最後までドライタイヤで走った方が速いと判断できるコンディションだったのでしょう。

ほとんどのマシンが、それぞれの決めた安定したペースで走っているように見受けられました。作戦通りにプッシュしなければいけないところでプッシュしていたと思いますし、タイヤの摩耗でペースに苦しんでいるようなところはほとんどなかったように感じます。これは、シーズンオフ中のテストから十分に走りこむ機会があって、チームもドライバーの皆さんもタイヤの理解が進んで使いこなしているのだろうという印象です。

レース全体でいえば、オーバーテイクシーンもありお客様にとっては見どころのある展開だったのではと思います。次戦の鈴鹿でも面白いレースを期待しています。