2020 SUPER FORMULA Round 3 Report

【SUPER FORMULA 第3戦 / SUGO】

セルジオ・セッテ・カマラ選手がポールポジション獲得も、
ニック・キャシディ選手が実力を見せつけて今季初勝利!!

SUPER FORMULA Round 3

開催日 2020年10月17日-18日
開催場所 スポーツランドSUGO
(宮城県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 53周
(1周=3,586m)
参加台数 19台
SUPER FORMULA 第3戦

SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)第3戦の舞台は、宮城県のスポーツランドSUGO。コース長が約3.5kmと短く、昨年はコースレコードが破られ1分3秒台で周回されるサーキットだ。昨年、一昨年は梅雨から初夏の時期に開催されていたが、今回は10月下旬の開催。気温も下がり、秋晴れの空が広がれば2年連続でコースレコードが更新されることも期待された。

ただ、今シーズンは新型コロナウイルスの影響でイレギュラーな1Day開催となっている。大会前日の土曜日には午前と午後に計2時間の練習走行が設けられるが、当日は朝一番に予選が行われるため、この練習走行でいかにセッティングを煮詰められるかが非常に重要となる。土曜日は天候に恵まれず、午前中はウェットコンディション。午後は徐々に路面が乾いていくような状況で、どのチームも速いマシンを作り上げるのには苦労していた。さらに、通常予選シミュレーションをかけるセッション終盤が赤旗提示により終了してしまったため、予選に向けた最終確認ができないまま、翌日を迎えることとなった。

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一夜明けたスポーツランドSUGOは、朝から秋晴れの空が広がった。空気は冷たく、タイムの出やすいコンディションだ。ただ、前日のシミュレーション不足が響いたのか、残念ながら1分3秒台のコースレコード更新はならなかった。2組に分けて実施された予選Q1は、B組で大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)がクラッシュ。Q2進出圏内のタイムは出していたものの、赤旗提示原因車両となったために降格し、8番手にいたセルジオ・セッテ・カマラ選手(Buzz Racing with B-Max)が繰り上げでQ2進出を決めた。

セッテ・カマラ選手は今シーズンルーキードライバーとして開幕戦から出場する予定だったが、新型コロナウイルス感染防止策の影響で入国が許されず、第1・2戦を欠場していた。この第3戦からようやく出場がかなったばかりで、スポーツランドSUGOの走行も土曜日が初めて。この時、このルーキードライバーがポールポジションを獲得することになろうとは、いったい誰が予想しただろう。

Q2ではレコードホルダーの山本尚貴選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が敗退。Q3には2戦連続ポールシッターの平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が残っており、連続獲得記録を伸ばすかと思われた。実際、各車がアタックした計測3周目のタイムでは平川選手がトップを奪い、これで順位確定かと思われた矢先、計測4周目にアタックを行ったセッテ・カマラ選手がチェッカーラップに1分4秒235を記録して逆転。走行経験の少ないSUGOでポールポジションを獲得するという、衝撃のSUPER FORMULAデビューレースとなった。

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わずか2時間半のインターバルを挟み、53周の決勝レースがスタートした。セッテ・カマラ選手はまずまずのスタートを切ったが、平川選手が1コーナーまでで逆転。2台の後方にはニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、山本選手がつけた。予選3位のサッシャ・フェネストラズ選手(KONDO RACING)は加速が鈍りキャシディ選手、山本選手にかわされ、さらに1コーナーへの侵入でブレーキロックさせてしまった中嶋一貴選手(VANTELIN TEAM TOM’S)にマシンをヒットされてしまう。なんとかピットに戻っては来たものの、ここでリタイア。ここまで速さを見せて期待されているルーキードライバーだが、これで2戦連続リタイアとなってしまった。

レースは序盤、平川選手が隊列をリード。4周目には山本選手がキャシディ選手をかわして平川選手、セッテ・カマラ選手、山本選手というトップ3が形成される。そこからはしばらく膠着状態が続いたが、18周目の最終コーナーでセッテ・カマラ選手に急接近した山本選手が、オーバーテイクシステム(OTS)も使い1コーナーでアウト側から豪快なオーバーテイクを見せて2番手に浮上。かわされたセッテ・カマラ選手は馬の背コーナーでキャシディ選手の先行も許し、さらにその後方にいた野尻智紀選手(TEAM MUGEN)にも迫られる。

セッテ・カマラ選手はたまらずピットイン。ここでタイヤ交換を済ませコースへと向かった。しかし、交換したばかりのコールドタイヤをコントロールしきれず、コース復帰直後の4コーナーでブレーキをロックさせ、まっすぐコースアウト。タイヤバリアにヒットしてしまった。ボールポジション獲得でデビューレースを飾ったセッテ・カマラ選手だったが、決勝レースはここで戦列を離れることになった。

セッテ・カマラ選手のアクシデントによりセーフティカー(SC)が導入されたが、このタイミングで上位陣は一気にピットになだれ込んでくる。結果、上位6台は順位変動なく、平川選手、山本選手、キャシディ選手、野尻選手、国本雄資選手(carrozzeria Team KCMG)、山下健太選手(KONDO RACING)の順。そして28周目にレースが再開すると、キャシディ選手が一気にペースアップしてくる。

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リ・スタート直後のコントロールライン上では、2位の山本選手と約0.2秒の差。山本選手は残り少ないOTSを使ってキャシディ選手の猛攻をブロックするが、なかなか引き離せず。逆に最終コーナーに向けてOTSを使って一気に加速したキャシディ選手がホームストレートで逆転し2位に浮上する。キャシディ選手の勢いは止まらず、平川選手にも急接近。山本選手を仕留めた時と同じように最終コーナーでOTSを使いその差を縮めると、ファステストラップを塗り替えながら平川選手をかわしてトップに躍り出た。

その後もキャシディ選手は3周連続で自身の出したファステストラップを塗り替えるなど、速いペースを安定して保ち周回。平川選手との差を一時5秒近くまで広げると今季初のトップチェッカーを受けた。開幕戦は6位入賞とあまり振るわなかったが、第2戦で表彰台に上がり今大会でシーズン初勝利を挙げたキャシディ選手は大量ポイント獲得でランキング2位に浮上。

2位の平川選手は予選・決勝合わせて今大会で17ポイントを獲得してポイントリーダーをキープ。今季初表彰台となる3位を獲得した山本選手は11ポイントを加算してランキングを6位に上げている。

DRIVER VOICE

ニック・キャシディ 選手 [VANTELIN TEAM TOM’S]

【今回の成績 : 優勝】
コールドタイヤでも上手く走れる自信があり、レースの序盤からいいペースで走ることができました。途中でタイヤ交換したあとはウォームアップに少し時間がかかりましたが、自信があったのでOTSを使って勝負に出ました。“いける”と信じて頑張った結果、トップに上がることができ優勝できました。最高のレースができて、とてもいい気持ちです。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

この寒い時期にスポーツランドSUGOで、このマシン、このタイヤで走ったデータはあまりなかったでしょうから、どのチームも土曜日に精力的に走行してデータを蓄積したかっただろうと思います。最後に予選シミュレーションができなかったことは、コースレコードを更新できなかったことの原因の一つではないかなと思います。決勝では、キャシディ選手は高いレベルで安定していましたね。

ここから先はどんどんと気温が下がり、天気に恵まれればレコード更新も期待できると考えています。ただ、タイヤのウォームアップは難しくなります。コースインするときなどタイヤが冷えているときは非常に慎重にならなければいけないと思いますが、そのあたりはどのドライバーもすでに理解してくれていて、今回もコースインラップやウォームアップでじっくり慎重に走行していたと思います。どのようにウォームアップさせるか、またタイヤの熱を落とさないようにするということがここから先のレースでは重要になってくるでしょう。

冬場のレースは皆さんデータを持っていない範囲での戦いになるので、難しいレースになることが予想されます。そういった意味では展開の予測がつかない、面白いレースが続くかもしれませんね。OTSも上手く作用しているように見えるので、どのドライバーも主役になる見どころの多い戦いが生まれることを期待します。