2017 SUPER GT Round 1 Report

【SUPER GT 第1戦/岡山国際】

グッドスマイル初音ミクAMGが予選2番手から逆転優勝!!
WedsSport ADVAN LC500が連続入賞記録を19に伸ばした!!

SUPER GT Round 1

開催日 2017年4月8日-9日
開催場所 岡山国際サーキット
(岡山県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 81周
(1周=3,703km)
参加台数 45台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第1戦

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2017年最初のSUPER GTシリーズは、例年どおり岡山国際サーキットで開催された。今シーズンの話題のひとつとして、武藤英紀選手と中嶋大佑選手が駆る、「MOTUL MUGEN NSX-GT」が新たにヨコハマタイヤユーザーに加わったことが挙げられる。これにより、GT500におけるヨコハマタイヤユーザーは、「WedsSport ADVAN LC500」の関口雄飛選手と国本雄資選手、「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」の佐々木大樹選手、7年ぶりのチーム復帰となった、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手と合わせ、3台となった。

また、そのGT500では車両規則が改められるとともに、全車がニューマシンにスイッチ。規則変更の最大のポイントはダウンフォースの25%削減で、フロントスプリッターやリヤのディフューザーの面積が縮小されている。しかし、そのままタイムも25%落ちるかというと決してそんなことはなく、メーカーごと他の部分で新たにダウンフォースを稼ぐとともに、ヨコハマタイヤもハイパフォーマンスのタイヤを供給してバックアップする。

だが、特に今回は極端にタイムが落ちない可能性もあった。というのは、岡山国際サーキットはこのシーズンオフ中に路面を全面改修しているからだ。実際にサポートレースでは、久々にレコードタイムが更新されていた。しかし、それもコンディションに恵まれてのこと……。予選が行われた土曜日の天候は不安定で、時おり雨が降ってくるという。

GT300はQ1こそ小雨に見舞われたものの、Q2では完全にドライコンディションが保たれた。Q1でトップは「グッドスマイル初音ミクAMG」を駆る片岡龍也選手。「AMGが岡山を得意としているのもありますが、久々に僕らに流れがきているのを感じます」と片岡選手。これに続いたのが「新ティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手と「TOYOTA PRIUS apr GT」の佐々木孝太選手で、ヨコハマタイヤユーザーは7台がQ1突破に成功。

続くQ2では「赤旗でタイヤのいちばん美味しいところを使えなかった」と語るも、「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口信輝選手が、トップに0.1秒の僅差で2番手に。そして、「VivaC 86 MC」の松井孝允選手が、レギュラーに昇格した山下健太選手の5番手から、ふたつポジションを上げて3番手につけることとなった。

GT500では「WedsSport ADVAN LC500」の関口選手が4番手で、「MOTUL MUGEN NSX-GT」の武藤選手が7番手でQ1突破に成功。だが、続くQ2では「MOTUL MUGEN NSX-GT」が、タイヤのウォームアップ中に電気系のトラブルによってアトウッドコーナーの出口で突然ストップ、それまで中嶋選手が3番手相当のタイムを出していたが、赤旗中断の原因を作ってしまったためタイムは抹消に。7番手から決勝に挑むこととなった。

また、Q2では合計2度も赤旗が出て、最初の中断は「WedsSport ADVAN LC500」の国本選手が、今まさにアタックを開始しようというタイミング。納得の走りができぬまま8番手に終わったが、2台のタイム抹消によって6番手に繰り上がることとなった。「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」はオリベイラ選手が最後までアタックし続けたものの、Q2進出には届かず、11番手に甘んじていた。

決勝の行われる日曜日は一転して晴天に恵まれたものの、レースは序盤から赤旗中断やセーフティカーが導入される波乱の展開となってしまう。ライバルの脱落で4番手からレースを開始した「WedsSport ADVAN LC500」の関口選手だったが、同じレクサス勢と比べ、なかなか思うようにペースが上がっていかず。16周目のヘアピンで僅かながらも膨らんだところを攻め込まれ、5番手にポジションダウン。さらに27周目にもバックストレートエンドでサイド・バイ・サイドのバトルを展開するも、ブレーキングで軽い接触があって6番手に。そこで予定を早めて33周目にピットにマシンを戻し、国本選手と交代することとなった。

前半とは異なるスペックのタイヤをチョイスしたこともあり、国本選手は安定したペースで周回を重ねるように。途中、再びセーフティカーが入り、前のマシンと感覚が縮まって上位進出のチャンスを得るも、結局順位は上げられずじまい。6位でのフィニッシュに甘んじたものの、足掛け4年で続ける入賞が、ゼッケンと同じ「19」にまで伸ばすこととなり、絶対の安定感としぶとさを改めてアピールすることとなった。

決勝でホンダ勢が相次いでトラブルに見舞われたものの、「MOTUL MUGEN NSX-GT」だけはトラブルなく、順調に武藤選手が序盤に5番手を走行。しかし、総崩れだけは避けたいこともあって、抑えた走りを余儀なくされたことから、徐々に順位を落として9位でチェッカーを受けることに。とはいえ、ヨコハマタイヤユーザーとしての初戦で、貴重な2ポイントを獲得した。最後まで走りきれたことで、レースタイヤについてさまざまなデータが収集でき、「課題は山積みだが、得られたものも大きかった」と手塚長孝監督。

そして「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は、オリベイラ選手がスタートを担当。レース開始早々に相次いだライバルの脱落により、9番手に浮上してレースを進めていたが、途中からニッサン勢同士のバトルで先行を許す展開に。29周目に佐々木選手に交代、最後まで力走を見せたが、ポジションは変わらず10位でレースを終えた。

GT300では「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡選手がレース開始と同時に、トップに食らいついて離れず。しきりにプレッシャーをかけ続け、19周目のダブルヘアピン進入でようやく前に出る。視界が広がった後は一気にペースアップ、後続に対してリードをさらに広げたばかりか、29周目の谷口選手への交代と併せ、タイヤは左側の2本のみ交換してロスを最小限に。全車がドライバー交代を済ませると、大差をつけてトップに返り咲く。セーフティカーランでマージンを失っても、谷口選手は何事もなかったかのように再び差を広げ、終盤にはペースを抑える余裕さえ見せて逃げ切りを果たす。

谷口選手と片岡選手にとって優勝は、開幕2連勝を決めてチャンピオンを獲得した2014年以来。王座返り咲きに向けて、まずは上々のスタートを切ることになった。その「グッドスマイル初音ミクAMG」が逃げ続けたおかげで、より注目されたのが「VivaC 86 MC」が繰り広げた2番手争いだった。序盤は山下選手が追いかける立場だったが、タイヤを左側2本の交換に留め、やはりロスを最小限に。コース復帰から1周後の29周目に、松井選手が前に出ることとなった。なおもバトルは激しく続き、松井選手は必死にガードを固め続けていたが、70周目のダブルヘアピンでGT500のトップ争いと遭遇。不運も接触があり、4番手に順位を落としてしまう。

代わって3番手に浮上したのが、「GULF NAC PORSCHE 911」だった。予選は17番手だったが、序盤をジョノ・レスター選手の、終盤を峰尾恭輔選手の、それぞれ激しい追い上げと巧みなリスタートで順位を上げてきたのが功を奏す。7位は「B-MAX NDDP GT-R」を駆る、星野一樹選手と高星明誠選手が獲得。こちらも予選16番手から激しく追い上げてきていた。

DRIVER VOICE

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
前半のタイヤは少し僕らには合っていない印象があったのですが、後半に僕が違うタイヤを履いてコンスタントに走ることができました。ただ、他のレクサス勢と比べると、混走があったから着いていけましたが、単独で走ると少し離される感じでした。正直、ここは僕らがあまり得意としていないサーキットだったので、昨年のことを考えるとすごく進歩はしていると思います。僕らにあっているサーキットに行けば、ヨコハマタイヤとのコンビネーションでメリットもたくさん生まれてくると思うので、そこでしっかりと結果を残したいです。

武藤英紀 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
予選ではトラブルが出てしまいましたが、決勝では問題なく走ることができました。ただ、このタイヤでレース距離を走ったのが初めてで、そこで見せていないものも多くありました。その中で、最後まで走りきれたのは、非常に良かったと思います。これからもヨコハマタイヤでのレースを経験していって、少しでも良くしていきたいです。

ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ 選手 [フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
今週末は非常に苦戦しました。マシンバランスの部分での問題もそうですし、課題はたくさんあります。レースではタイヤ選択の部分で少しうまくいかず、やや難しいスティントになってしまいました。セーフティカーのおかげでうまくタイヤをセーブすることができて、佐々木選手にバトンをつなぐことができたのは良かったんですが……。次の富士ではテストの結果が良くなかったんですが、少しでも上位に入れるよう全力を尽くします。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル 初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
僕らは公式テストから勝つための準備を、いろいろ整えて乗り込んできたのですが、天候、気温全て読みどおり!! ハード目のタイヤで予選、決勝に挑みました。ポールを獲るだけなら、違った選択だったのでしょうが、レースで勝つにはこれがベストだろうと。チームとヨコハマタイヤがいい準備をしてくれました。セーフティカーが何度も入って、その度に貯金を失ったり、僕ら向きの流れでは決してなかったのですが、なんとか勝てて良かった。今回はヨコハマのタイヤが我々のクルマにベストマッチ!! 感謝しています。僕らは2011年と’14年にチャンピオンになっているので、それで行くと’17年にはまた獲れることになるので(笑)。チャンピオンを獲りたい!!

片岡龍也選手 [グッドスマイル 初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
今回はテストから手応えを少々感じていまして、かなりの確率で優勝争いができるのではないかと。予選でポールが獲れなかったのは悔しかったですけど、その分、決勝レースで65号車を苦しめてきました。同じクルマなんですけど、タイヤが違うから特性も違うのですね。前に出ちゃえば、大丈夫だと思っていました。普段は文句ばっかり言っていますが、今回のタイヤは非常に手応えのある、いいタイヤでした。おかげで僕は楽しく走ることができました。今まで何回か勝っていますが、今日ほどドライバーとして楽なレースは今までなかったです。

峰尾恭輔 選手 [GULF NAC PORSCHE 911]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
チームを移籍して最初のレースから表彰台に上がれたので、みんなに感謝ですし、僕を応援してくれている人たちに、僕を信じてくれた人たちに、結果で恩返しできたので、ここからまたチャンピオン争いした年みたいに、チームや自分を強くしていきたいです。メルセデス2台は速過ぎたので、僕も最後プッシュしてみたのですが、ガソリンも足りなさそうだったので、とりあえず3位で良しとしました。タイヤはもう、最高のパフォーマンスをずっと発揮してくれたので、本当にヨコハマタイヤさんにも感謝しています。4本換えました、そこが良かったですね。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

やっと「グッドスマイル 初音ミクAMG」が本調子というか、らしい結果を残したかなと。非常に良かったですね。他のGT3勢も「GULF NAC PORSCHE 911」が3位で、2台のポルシェもかなりいい感じで走れていますし、今回表彰台の独占はできなかったのですが、そのポテンシャルはあると確信しました。ただ、他社さんの追い上げもきっと激しいと思うので、楽をさせてはくれないでしょうね。「VivaC 86 MC」に関しては、ちょっと残念でした。第1戦をいい形で終えることができたと思います。オフのテストがうまくできた成果なのではないかと。

GT500は予選のQ2で、何とも言えない不運はありましたが、それ以前に温度の違いに敏感なところが少しあって、トータルパフォーマンスでは反省点もあるんです。ただ、岡山は従来、苦手としているコースなんですよ。そこで全車、入賞できたことは少なからずタイヤとしてステップアップできている感じがあります。

この後も厳しい戦いになるかもしれませんが、しぶとく他社さんに食らいついていきたいと思います。新しくユーザーに加わった「MOTUL MUGEN NSX-GT」は、ヨコハマとしてミッドシップに合わせたタイヤの感触としては、まだ劣っていると言わざるを得ません。まだまだやることはあります。ただ、シーズンオフのテストと今回で、方向性は見えてきたので、大丈夫だと思っていますし、そんなには悲観していません。