2014 JRC Round 5 Report

【全日本ラリー選手権 第5戦/群馬県嬬恋村】

初の嬬恋村開催となったモントレー in 群馬は天候に翻弄された展開、
ヨコハマタイヤ勢はJN5で鎌田選手組が連勝、JN2は田中選手組が今季3勝目!!

JRC Round 5

開催日 2014年7月25日-27日
開催場所 群馬県・嬬恋村 近郊
天候/路面Day1) 晴れ/ドライ
Day2) 晴れ 一時 雨/ドライ&ウェット
ターマック(舗装路面)
総走行距離 329.385km
SS総距離 65.015km (17SS)
得点係数 1.0 (舗装路SS 50km~100km)
参加台数 60台 (イノベーションクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 24台)
全日本ラリー選手権 第5戦

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全9戦のカレンダーが組まれている2014年の全日本ラリー選手権は、折り返しとなる第5戦「モントレー2014 in 群馬」が開催された。伝統の名称を冠する一戦は2012年に復活したが、今年は昨年までの渋川市から嬬恋村に舞台を移し、ウィンターラリーでもお馴染みのパルコール嬬恋スキーリゾートを拠点とするSS(スペシャルステージ)合計距離65.015kmで競われる。

全17本が設けられたSSはバラエティに富んだ道が用意された。
サービスパーク隣接のショートステージ「パルコール(0.511km)」は二日間で4回走行する。もうひとつのショートステージ「アサマ(0.605km)」は日本初のサーキットである浅間サーキットが舞台だが、ここは全面グラベル(非舗装路)である。
林道ステージは、トップスピードが200km/hを超えるハイスピードな「パノラマ(6.830km)」や、上りと下りの両方向を使う「大前須坂(上り5.759km/下り5.566km)」が道幅の広いコースである一方、「三原門貝(5.778km)」と「今井門貝(2.377km)」は道幅が狭くテクニカル要素も強いという特徴がある。

朝から青空に恵まれた土曜日、標高およそ1,500mという高地のパルコール嬬恋スキーリゾートでも、日中には気温が30℃を超える暑さとなった。
オープニングは「大前須坂UP Ⅰ」、このステージを制したのはシリーズリーダーである奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(三菱・ランサー)、これに僅か0.1秒差の2番手で続いたのは新井敏弘選手/竹下紀子選手組(スバル・WRX)で、ヨコハマタイヤ勢のワン・ツーで今年のモントレーは幕を開けた。

しかし、その後は両クルーともになかなかタイムを伸ばせず、我慢の走りが続く。SS6「パルコールⅡ」で奴田原選手組がこの日2回目のステージベストをマーク、続くSS7「大前須坂DownⅠ」、さらに「大前須坂Down」のリピートとなるSS10でもベストを刻んだが、初日を終えて奴田原選手組はトップと8.2秒差の2位、新井選手組はその2.0秒後ろとなる3番手という結果に。

一夜明けた日曜日は、気温が下がり冷たい風が吹く朝となった。上空の雲は流れが速く、雨の可能性が高い中で各車はオープニングの「アサマ」へと向かう。
グラベル路面をターマックタイヤで走る「アサマ」は2回連続走行というアイテナリーだが、1走目は奴田原選手組、2走目は炭山裕矢選手/保井隆宏選手組(スバル・WRX)がベストを奪う。続くステージは3回目の走行となる「大前須坂UP」だが、このスタートに先頭集団が到着した頃には上空を雨雲が覆い、強い雨が降り始めていた。

路面は完全なヘビーウェット、フロントガラスに容赦なく叩きつける雨は、ワイパーが追いつかないほどの勢い。そんな中、逆転を期してスタートした奴田原選手組はADVAN A050の卓越したウェットグリップを武器に先行したライバルを圧倒するハイペースでステージを駆け上がっていく。
ここまでの差を一気に逆転出来るかという勢いでコーナーをクリアしていった奴田原選手組だったが、スタートから4.8kmのタイトコーナーに入り、脱出でアクセルを開けたところに水深のある川が出来ていた。ここに足元をすくわれてしまった奴田原選手組のマシンはコースオフ、無念のリタイアを喫してしまった。
さらに新井選手組もハイペースで続いてきたが、マシンをガードレールなどにヒットして足回りを壊してしまい、フィニッシュには届いたものの走行を断念せざるを得ない結果に。

波乱の展開となったJN6クラスだが、そんな中で粘り強い走りを見せたのが吉澤哲也選手/井手上達也選手組(三菱・ランサー)。ヘビーウェットとなったSS14で2番手を3.1秒引き離すベストを刻み、3位でフィニッシュして表彰台を飾った。

JN5クラスは前戦の洞爺でスバル・BRZでの初優勝を飾った鎌田卓麻選手/市野諮選手組が今回も快走。Day1の11SS中、8本のSSでベストを刻んで、初日を終えて2番手に22秒の大差をつけて主導権をガッチリと握った。
その勢いはDay2に入っても留まることなく、オープニングの「アサマⅠ」でベストを刻むと、大量マージンを背景にウェットに転じてからも後続に付け入る隙を与えることなくマシンをフィニッシュまで運び、Day1とDay2ともに満点ディポイントを獲得する2連勝でグラベルに続いてターマック(舗装路)ラリーも制した。

JN4クラスは開幕戦で優勝を飾っている竹内源樹選手/加勢直毅選手組がスバル・BRZで2勝目を期してトップ争いを演じた。オープニングのSS1、続くSS2も制して好調なスタートを切ったが、SS3で平塚忠博選手組に逆転されて2番手にドロップ。SS5は平塚選手組と同秒のベスト、SS8では単独ベストを奪って食らいつき、初日を終えてその差は13.4秒の2番手。
Day2に入ってからはオープニングの「アサマⅠ」を制し、SS14とSS16の「大前須坂UP」でもベストを奪って差を詰めるなどしたが、惜しくもあと一歩及ばず。それでも路面変化も大きかった一戦でしっかり2位フィニッシュを飾り、速さに加えて安定感も見せつけた。

JN2クラスは、前戦の洞爺でマシントラブルに見舞われながらも執念の2位を獲得している田中伸幸選手/藤田めぐみ選手(スズキ・スイフト)が、借りを返す快走を見せた。同じくヨコハマタイヤを装着したプロトン・サトリアネオの濱岡卓也選手/美細津正選手組との一騎討ちとなったが、経験値に勝る田中選手が貫祿の走りで、全SSでベストを刻むパーフェクトウィンを飾った。

このほか、JN3クラスでは地元群馬の内藤学武選手/小藤桂一選手組(トヨタ・ヴィッツ)が、JN1クラスは中西昌人選手/美野友紀選手組(スズキ・スイフト)が、それぞれ3位表彰台を獲得した。

DRIVER VOICE

吉澤哲也 選手 [加勢eレーシング ADVAN EVOⅩ]

【今回の成績 : JN6クラス 3位】
Day2の雨は折り込み済みでしたが、思っていたよりも早いタイミングで降り始めましたね。競技中は降らないんじゃないかと思っていましたから。しかし、ヨコハマタイヤのウェット路面に対する高いパフォーマンスを信じていたので、普通に濡れている程度であればどんどんアクセルを踏んでいけました。ハイドロプレーニングにだけ注意して、あとは自信を持って走れました。
走っているときはコ・ドライバーの井手上達也選手に“マインドコントロール”されているんですよ(笑)。前後のタイム差などはあまり教えられずに、ただ自分のベストを尽くしていくという感じです。次はさらにタイムを出していけるように頑張ります。

鎌田卓麻 選手 [TEIN ADVAN スバル BRZ]

【今回の成績 :JN5クラス 優勝】
Day2は後ろとの差もあったので、満点デイポイントを取れるところを狙ってコントロールしたのですが、結果的に2秒差でとれたので全体的に上手くいきましたね。ウェトのステージでは自分の経験上、ここはやばいというところは抑えて、行けるところはアクセルを踏んでいってというメリハリのある走りを心がけました。危ない箇所には先行車が既にいたので、それも僕たちにとっては参考になる部分がありました。下手をすると滑ったら何も出来ないような箇所もありましたが、そこを何とかすれば曲がれるというギリギリを狙っていきました。
マシンも唐津で問題になった箇所について、舗装の根本的なセオリーを見直して仕様変更してきました。唐津があったからこそ、今回のセッティングが上手く行ったと思います。

竹内源樹 選手 [CUSCO ADVAN BRZ]

【今回の成績 :JN4クラス 2位】
悔しいですね!! Day1を終えて、RPN車両で出来ることの全てをやったという感じの大がかりなセットアップ変更を施してDay2に臨みました。車は全く別物になったという感じです。
とにかくDay2は全てプッシュしていくという意気込みで。その結果としてDay2のトップを獲れましたし、合計タイムでもキャリアのあるベテラン勢を上回れたことは大きな自信になりました。
ウェットに転じてからも勝負するしかないとプッシュしていきましたが、タイヤについては僕自身ウェットになった瞬間に「なんてツイているんだろう」と思いました。川になっている箇所は別にして、全く不安なく攻めて行けるんです。本数は途中で念のために2本新品を入れたので合計6本を使いましたが、4本だけで走りきれたレベルの摩耗でしたね。

田中伸幸 選手 [加勢eレーシング YH クスコ WM スイフト]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
コースとしてはパノラマに代表されるハイスピードなステージが、とっても楽しかったですね。ただ、あんなにハイスピードでずっと走るシチュエーションも滅多に無いので、車への負担からトラブルにつながらないようにと心配もありましたね(笑)。
前戦の洞爺でドライブシャフトが壊れた一件もあるので、どうしても左コーナーがナーバスになりがちで。とりあえず一本走ってみて、あとは様子を見ていこうという組み立てでした。 ウェットは開幕戦の佐賀で走って良いフィーリングだったので、雨が降ってもあまり気になりませんでした。

TOPICS

26歳の地元ドライバーが全日本初参戦で表彰台獲得!!

ラリーが盛んな土地柄の群馬県では、地元のコースに精通して際立った速さを見せる「郡スペ(群馬スペシャリスト)」と呼ばれるドライバーが存在してきた。
今回も地元勢が多く参戦したモントレーだが、そんな中で全日本選手権に初参戦した26歳の内藤学武選手がJN3クラスで3位表彰台を獲得した。

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内藤選手は2010年にJMRC群馬ラリーシリーズの「あさま隠山岳ラリー2010」でラリー活動を本格的にスタート。これまでの経歴をまずはお聞きした。

「22歳の中頃に群馬戦に出場して、それから今まで群馬シリーズを追っています。そして今回、一気にステップアップして全日本選手権に初めて出場しました。去年と一昨年はシリーズ3位という結果を残しています。
このヴィッツは去年から使っています。最初はNCP91型のヴィッツを使っていたのですが、それはひっくり返してしまって(笑)」

初めての全日本参戦は緊張もつきもの。しかし、地元での一戦ということで、平常心で戦えたという内藤選手。

「運良く群馬シリーズで使っているのと全く同じステージがあったりもして、いつも通りのペースで走れました。これを基準にして、走ったことの無いステージも同じペースで行こうという判断を出来ましたね。
後ろのゼッケンの伊藤隆晃選手とはいつも群馬戦で競い合っているのですが、今回も一緒に出場してタイムを比較したり出来たので、初めての全日本選手権ではありましたが平常心を保って戦えました」

そんな内藤選手は、地元の利を活かしてDay2の雨対策も万全だった。

「タイヤはずっとヨコハマタイヤを使っています。ADVAN A050は限界が分かりやすく、そこを超えてもリカバリーしやすいので、とても扱いやすいですね。
Day2は大雨で川が出来ても突っ込んで行けるように、朝からフロントにADVAN A036、リアにはADVAN A050を装着しました。浅間サーキットを走ってから晴れていればフロントはADVAN A050に戻そうと考えていましたが、雨になったのでそのまま舗装ステージに向かいました。過去の経験も踏まえて総合判断での戦略です」

最後に今後の参戦予定と、今回の全日本の感想を一言で語ってもらった。

「ハイランドか新城に出たいな、という思いはあります。あとは予算との相談ですね(笑)
今回の参戦で、自分が全日本レベルでどの位置にいるのか分かって良かったです。3位でフィニッシュできて、自信にもつながりました」

AREA GUIDE

キャベツで全国に知られる嬬恋村!!

2014年4月現在で日本全国に183ある村の中で、最もその名を知られているひとつが群馬県の嬬恋村だ。小学校の教科書で高原野菜の産地として紹介されているので、誰もが一度はその名を目にしていることだろう。

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特に生産が盛んなのはキャベツ。夏の嬬恋村の気候がキャベツの生産に最適であり、ラリーが開催された7月下旬は出荷が最盛期を迎えていた。村内の畑ではキャベツ収穫の風景があちこちで見られ、東京をはじめとした全国に向けて出荷されるキャベツを運ぶトラックも頻繁に往来していた。

「モントレー2014 in 群馬」の会場でも、土曜と日曜の両日ともに2,000個のキャベツが来場者に配布された。その一部は参加したチームにも配られ、各選手やチームスタッフは採れたての瑞々しいキャベツの甘みに舌鼓を打っていた。

TECHNICAL INFORMATION

初の嬬恋開催となったモントレー in 群馬。レポートにもあるように特徴的なステージが用意され、Day2にはコンディションが急変する展開となった。そんな中でヨコハマタイヤ勢は2つのクラスを制したほか、上位に多くの選手が名を連ねてポテンシャルを発揮した。
JN6クラスの上位陣のリタイアは残念な結果だったが、新井選手が「ヘビーウェットでADVAN A050がとてもグリップしたので、どんどん行けました。ただ、ハイドロプレーニングはどんなタイヤでも同じ結果になったというレベルの水深がありました。そのギリギリを攻めていけるグリップがありましたね」と語ったように、トップドライバー達のプッシュに応える走りを出来たことは、ADVAN A050に支えられた部分も大きかったと言えるだろう。