2025年2月1日
ショップブログ
自動車メーカーに濡れ衣着せられかけた話
それは12月のある昼下がり、1本の電話が鳴りました。
電話の相手は当店の常連様でした。
その内容と言うのが
・車を洗車していたら、ホイールに見覚えのない傷が有った。
・4本とも全てのホイールに同じような傷が有る。
・何処かにぶつけたような傷では無く、何か同じ形の機械が当たったような傷である。
・この車は新車で買ってから、先日そちらでタイヤ交換をしたのが初めて。
・こんな事は言いたくは無いが、貴店のタイヤ交換作業でミスがあったのではないか?
という当店の作業ミスを疑うクレームのお電話でした。
『そんなバカな!?』
僕は心の中で叫びましたが、お客様にそう言うわけにはいきません。
努めて冷静に、お客様にいくつか質問をして情報を得ることにします。
お電話があった時点で、こちらのお客様の作業履歴を開いて確認していたため、その履歴の中に今年交換したタイヤが複数あり、今回のクレームのタイヤ作業が、いつの日の事なのかを確認し、そして傷の内容もヒアリングで聞き取ります。
そして、まずはご来店頂き見せてほしい旨を伝えて、電話をきりました。
お客様は、今からこちらにご来店される事になりました。
電話を切った後、僕はすぐさまPITカメラ映像のチェックを開始しました。
当店のPITには、あらゆる角度でHDカメラが備付あり、そのうちの1台はタイヤチェンジャーの上空にあります。
365日24時間 全てのタイヤ交換作業の様子を、鮮明な高解像度映像で記録しています。
そして、その環境を最大限有効活用した当店独自のタイヤ交換作業手順として
ホイールに目視でわかる傷があれば、タイヤチェンジャーのアームをかける前に必ず指差し確認を行い、
カメラ映像にその様子を記録として残す事をスタッフに厳命しています。
そのため、もし今回のタイヤ交換作業時にホイールに傷が有った場合、
必ず作業員がその傷を指差し確認をしている様子が映っているはずです。
それがどうかを確認するために、販売履歴から交換作業日を特定し、過去のカメラ映像を確認しようとしました。
しかし…
「うわぁ… 三日前に消えてる(;´Д`)」
正直、嫌な予感はしていました。
タイヤの交換日は初秋。 そして電話のあったこの日は12月。
既に2か月以上の時間が過ぎ去っています。
さしものテラバイト容量があっても、365日24H記録し続ける大容量のハイビジョン映像は、そんな何カ月も残っていないのです。
(4面のHD映像が1か月以上残ってるだけでもすごいんですけど)
しかし、それにしたって三日前です。
もし、このお電話があと三日早ければ、そこには最も公正な客観的記録が残っていたのに…
たった三日です。
神様って意地悪ですね。
これで、もう後は現物確認のみでの話合いしか残されなくなりました。
あらゆる予想と想像をして、ひたすらにご来店を待ちます。
この待ち時間は1時間にも満たないわずか時間でしたが、僕にはまるで永遠にも感じられました。
そして…

無事、当店への疑いは晴れたのでした。
ご来店から5秒。
スピード解決でした。
そういうことでした(笑)
上記の画像は今回の出来事を教訓に、今月になってから僕が制作した案内ペーパーであり、ここに掲載されているホイール画像は今回のお客様のものではありません。今回の一件があった後に、当店にタイヤ交換にきたお車が「今回のトラブルと同様の要因」があったため、これ幸いと資料用に画像を撮らせて頂きました。
つまり、お客様の車のタイヤは、ポリッシュされたアルミホイールだったのですが、新車状態から表面の打ち込みのバランスウェイトが打ち付けられていました。
そして、当店でバランス調整をした時に、元の打込みウェイトは取り外されるため、その部分に打痕が残っていたという事です。
4本のアルミホイール全てに同様の傷があるという、今回のお話の中で僕が最も解せなかった部分も、これなら納得できました。 バランスウェイトは全てのホイールについてますからね。
よかったよかった 誤解はとけた。 これで万事解決….
そう思うほど、僕は楽観的でも間抜けでもありません。
今回の一連の出来事のなかで、これで問題は何もないと思うようでは
幾千幾万の不特定多数を相手にする店長はやっていけません。
今回の出来事には、いくつかの課題が残されました。
まず、今回スピード解決できたのは
たまたま運が良かっただけ
です。
①傷の種類が明らかなウェイト打痕だったこと。
②お客様が話の通じる賢明な方であったこと。
この2つの要素に救われただけで、我々のタイヤ屋商売は隙だらけでした。
□今回の問題点
今回の問題点は大きく分けると2つに分類されます。
①本当のお客様目線に立てていない
今回の直接的な原因は、我々タイヤ屋が
純正ウェイト打痕をホイール傷だという認識が店側に無かった事
です。
あって当たり前のものなので、それを事前に説明するという発想も出て来なったでしょう。
当店では前述したカメラ映像のインフラの元、
作業ミスでホイールに傷をつけてしまった場合は、絶対に報告する事を厳命しています。
そして、ただちに状況を精査し、お客様にお伝えしてご納得して頂ける対応方法を協議し、問題を解決してきました。

【上記はある作業ミス発生時のご連絡例】
ハイビジョンカメラの映像記録という動かぬ証拠が常にある以上、隠す事も言い逃れもできません。 嘘ついてもばれます。
僕もかれこれ18年タイヤ屋してますが『自分がミスって傷つけたのを気づかない』なんて、現実的にありえません。
タイヤサービスマンは自分で傷をつけた瞬間は絶対にわかります。もし本気で分からなかったのなら、この仕事向いてないので転職した方がいいです。
人間がミスをするのは仕方ありません。
タイヤ交換作業時に、作業ミスの可能性を0%にするなんて不可能です。
タイヤ交換作業というのは、常にリスクが付きまといます。
だからこそ、リスクとリターンを天秤にかけて、各種料金を決めています。
なので、作業ミスそのものは、そうなった原因をしっかり探求して、次の対策に活かせば良いだけ。
それが出来ていればミスをした者を叱ったりはしません。お客様に叱られるのは店長の仕事です。
しかし、ミスを隠すのは言語道断です。それは許しません。
これまでも何度かホイール傷をつけてしまったミスがありましたが、うちのスタッフは正直に報告してくれました。
そしてそのミスの原因をカメラ映像を使って解明し、対策のノウハウを積み上げてきたのです。
だららこそ、前述の中で『そんなバカな!?』と心の中で叫んでいたのです。
当然、スタッフからそんな報告は受けてなかったのですから。
でも、今回はそもそもの前提が違ったという事です。
我々タイヤ屋にとって、
打込みウェイトの打痕なんてのは、あって当たり前のものなので
傷がついているという認識が無かったんです。
しかし、それはタイヤ屋側の常識であって、お客様の常識では無いのです。
お客様目線…はっきり言えば素人目線です。
我々接客業の人間が決して忘れてはならないのが、この素人目線に立つという意識です。
職人気質の者ほど、この素人目線が出来なかったり、言われても馬鹿にするような人もいますが
我々は職人業である前に接客業である事を自覚しなければなりません。
僕がブログなどでたまにする自分語りで、免許とるまでは車が大嫌いだったという話があります。
昔から三半規管がめちゃ弱くて、すぐに酔ってしまい、車移動は大の苦手でした。
そのため車になんてまったく興味が無く、高校生の頃は「BMWというのはトヨタかなんかの高級車の名前だと思ってた」ってくらい
車の事を知らなかったのですが、大学入って免許とったら車酔い体質が改善して乗れるようになり、途端に「あらゆる趣味のジャンルを内包したクルマという概念」に興味が一気に出て、どっぷりハマりました。
(なので、モータースポーツも2003年以降しかリアルには知らない。地元なので鈴鹿サーキットには子供の頃から何度も行ったけどモータースポーツ観戦に興味は無かった)
それでも基本的には一人で遊んでたので、車業界のあらゆる事象を先人から「これはこういうものだ」という風に最初から正解を教えられることは無く、まず素人目線で「なんだこれ?」と見て読んで学んできました。
(入社した頃は、先輩の指導にいちいち「何故何故何故?」と聞いてたので、かなり煙たがられてました)
今も自分は永遠の素人だと思って、車のアレコレを素人目線で考えるようにしています。
そして、他人の「素人目線」を決して馬鹿にしないように努めています。
ということで、今後同様のトラブルを防ぐ為に対策を講じました。
この純正打ち込みウェイト打痕の注意喚起ペーパーを、然るべき時にお客様に配布します。
然るべき時というのは色々な場面が考えられるので、その判断はスタッフの裁量に任せますが
OEタイヤから初めてタイヤ交換する時に、純正で打ち込みウェイトが打ち込まれていた時はマストなのは言うまでも有りません。
また、今回の問題はスタッフ側の意識改革が必要でもあるので
打込みウェイト打痕はホイール傷である
という認識を持たせるため、バランサーにもこの注意喚起文を張り付けて、スタッフが忘れないようにもしました。
特に、ここ最近のタイヤ屋事情として、環境問題により
バランスウェイトが鉛から鉄に変わっている
という事情があります。
これはスチールホイールなんかで顕著に違いがでていて、鉛ウェイトならホイール金属より柔らかいので打痕が残らなかったのが鉄ウェイトでは打痕が残るようになったりしています。
今後のタイヤ交換作業時に、この事例が該当するような場合は、ただちに前述した案内文を作業指示書のバインダーに挟んでおくことによって、お客様に必ず伝わるようにします。(お会計時に作業指示書に必ずサインをもらう行程があるので)
②作業後クレーム期間を明確に決めてこなかった問題
僕の主観でいえば、今回痛感した最大の問題点がこれです。
正直、この問題はずっと昔から認識していながら放置してきた問題でもあります。
今回、お客様がお店に連絡したのが作業日から2カ月以上経った後です。
業界によって、この辺りの常識は色々あると思いますが、
2カ月以上前に行った作業にミスがあったかどうかを審議するというのは
相当難しいと考えます。
ですが、これは我々タイヤ屋側の責任でもあります。
何故なら、
今までそういったデリケートな話題に対して、真正面から言及してこなかった
のですから。
その結果、せっかく高解像度の作業記録映像があるという環境を作っているのに、
その状況が生かせるかどうかは運任せという状況を招いてしまいました。
(この問題には過去にハード面で対策をしようとした事があるのですが上手くいきませんでした)
ですので

今後は、作業後クレームを受け付ける期間を明確に定め、
タイヤ交換作業時に全お客様に対してご案内いたします。
また、このような確立されたフォーマットを準備して、こちらからお客様にご案内することで
これまで言いたくても言い出せずにいたかもしれないお客様が、お店に言い易い状況にしました。
ただし期間を明確に1か月と決めます。これはPIT記録映像という公正な判断基準でちゃんと審議できるようにするために絶対に必要な条件です。
1か月もあれば、その間に明るいうちに洗車もできて、落ち着いてゆっくりできる自分のホームラウンドでホイール状態を確認できる猶予は十分あるはずです。
これが、
【不特定多数のお客様】と【当店】が末永くwinwinの関係であり続ける為
の2025年現在の当店で最大限実施可能な方法です。
このようなデジタル設備が無かった時代は、
作業完了後にその場で立会確認
というアナクロな手法をとるしかありませんでしたが、
それが、いついかなる時も不特定多数のお客様全てをカバーできる完全な方法では無いことは
実際の現場でタイヤ交換業を従事している者であればお分かり頂ける事でしょう。
(だいたい、今回の傷にしたってお客様が年末にゆっくり洗車をして、その時に初めて気づくような傷です)
昔は出来なかったことが今なら出来る
接客業という仕事には、そんな要素が沢山あります。
時代遅れの男で良いのは河島英五だけ。
ナウいヤングな店長K(40歳)は常に未来型アイド…いや未来型サービスを目指していきます。
最後に一言
拝啓
お自動車メーカー様
ポリッシュホイールの表にウェイト打込んでんじゃねぇええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(゚Д゚)ゴルァ!!
おしまい








