2022年7月30日
ショップブログ
冗長性を冗長に語る 前編
■僕と冗長性 プロローグ
皆さんは「冗長性(じょうちょうせい)」という言葉を聞いた事がありますか?
https://mypage.otsuka-shokai.co.jp/contents/business-oyakudachi/words/redundancy.html(IT用語辞典 大塚商会)
主にIT業界で使われる事の多い言葉で、端的に言えば「もしもの時のスペアを用意しておく」というような類の意味で使われるのですが、冗長性という言葉そのものは英語では「redundancy(リダンダンシー)」というらしく、その言葉には「もしもの時のための余分」と「カットすべき余分にあるもの」との相反するニュアンスを内包した意味をもつようです。
僕が人生で最初にこの言葉を覚えたのは、今みたいに車趣味ではなく自作PCが趣味だった高校生の頃で、その頃の自作PC業界の一部ではお安く構築できるソフトウェアRAID(レイド)というものが流行っていました。
https://www.hitachi.co.jp/products/it/storage-solutions/techsupport/basicknowledge/raid.html
RAIDというのは複数台のHDDを用いてシステムの冗長性とパフォーマンスを向上させる技術で、データ消失を防ぐ事が重要なサーバーで用いられている技術です。(当時自作PC業界で流行っていたのはRAID0のストライピングと言われる技術で、これは単純に読み書きのパフォーマンスは上がるが、データ消失の危険性はむしろ倍増するという本来のRAIDの目的からかけ離れたものであるのですが…)
このRAIDの中で、もっとも手軽に出来て予期せぬHDDクラッシュからデータを守る能力がとても高くなるのがRAID 1(ミラーリング)と呼ばれる技術です。
これは同じ容量のHDDを2台用意し、常に二つのHDDに全く同じデータを書き込む事でリアルタイムにバックアップを作成し、万が一に片方のHDDがクラッシュしても、ペアとなるHDDに同じデータがあるのでデータが失われずに済むという仕組みです。2つのHDDが同時に壊れるという事は本当に稀なので(天災による物理的なダメージは別)、個人が一般家庭で使用するには十分なデータ消失対策といえます。

ただしデメリットとして、HDDのランニングコストが単純に倍になります。
なにしろ、本来一つのHDDでも出来る事に2つのHDDを同時に使って、見かけ上は一つのHDDとしか使えないのですから。(1TBのHDDを2個使って1TBしか使えない)
「冗長性」は「高コスト」と切っても切れない宿命にあります。
このミラーリングが役に立つのは、HDDがクラッシュしてしまった時だけです。(厳密にいえばリード性能上がったりもしますけど)
そのため、そんな事故が起きない間は、この冗長性が「無駄なもの」に見えてしまいます。
そして近年、色々な世の中から様々な「無駄」が削られて、世界はとても洗練されて、そして脆くなったように思えます。
■自動車とタイヤの冗長性
昔は、ほとんどの乗用車にはタイヤは5つ付いていましたといったら驚きますか? ウソではありません。昔の殆どの車は、床の下に5つ目のタイヤが付いていました。そうですスペアタイヤです。
いつの頃からか、あれらスペアタイヤは「無駄なもの」として、大衆車のトランクの中から消えてしまいました。
それによって自動車メーカーのコストと地球環境の負荷は軽減したかもしれませんが、運の悪い哀れなユーザーを昔には存在しなかった困難が襲うようになりました。
ご存知ですか? コンプライアンスが叫ばれる昨今、スペアタイヤの無い車が路上でパンクすると車はレッカーで運ばれ、ユーザーはタクシーでお店まで来ないといけなくなっているんですよ?
今の車は自動運転の性能は凄いし、燃費も良いし、ワゴン車は室内は広いし、知らない道も高性能なカーナビで誰でも楽々目的地にたどり着けます。
でも、パンクに対する余裕はありません。
■業界の冗長性を無くした先に起きた半導体不足
今、自動車業界で最大級の問題である半導体不足。
もはや走るコンピュータとなった現代の自動車にとって、必要不可欠な半導体の深刻な供給不足は、新車納期の凄まじい遅延となって我々末端の生活にも響いてきています。
そもそも、この半導体不足ってどうして起きてしまっているのでしょうか?
もちろん、どんな社会現象も非常に様々な要因が複雑に折り重なって起きているので、たった一つの事象をとって「これが原因」と言えるものでは無いのですが、それでもバタフライ効果の蝶の羽ばたきよりは、よほど現象に近い所で影響を起こしたと言われている、ある一つの事故があります。
2020年宮崎県延岡市で起きた、旭化成エレクトロニクス半導体工場火災です
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2109/27/news046.html
これが四半世紀も昔であれば、世界に数多ある企業のうちのたった1社の、そのうちのたった1つの工場の生産能力が焼失しただけで、世界で半導体不足が起きるなんて言ったら一笑に付されるところであったのでしょうが、今はもう笑う者は誰もいません。
それほど、現代の超高度なテクノロジーの産物である半導体を製造するには、天文学的に莫大な投資が必要となってしまっていて、もはや業界全体で生産キャパに無駄を持たせられるような余裕は残っていなかったのでしょう。
旭化成ともう一つ、半導体不足に影響を与えたといわれている事故に、2021年3月19日に発生したルネサスエレクトロニクス那珂工場の火災がありますが(厳密にはルネサスの生産子会社のルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング那珂工場)、このルネサスエレクトロニクスの成り立ちが、三菱と日立とNECのそれぞれの半導体部門が、なんかもう色々あって統合された企業だったりするわけです。
1990年代前半までの半導体メーカーが群雄割拠した半導体戦国時代と、2020年台の統合されつくした現代と、業界全体での生産キャパの冗長性があるのはどちらかといえば明白ですよね。
まぁ、こればっかりはしょうがない事ですけども。

■au通信障害から見る個人がとれるインフラの冗長性
先日、日本中を震撼させ、世界中に報道されたauの通信障害。
実は高校三年生の時に初めて携帯を手に入れた時から、20年以上ずっと使い続けている生粋のauユーザーである僕も渦中の人でした。
ちなみに、その時代に高3で初ケータイって遅くない? 高2まではどうしてたの? って思う同世代の方もいらっしゃるかもしれませんので回答しておくと、高校入学して初めて親に携帯買ってもらえるって時に選んだのが携帯ではなくPHSだったからです。DDIのH“っていうんですけど。
目的は当時唯一の64KppsというISDN並の通信速度を誇ったデータ通信能力で、当時の一般家庭のネットサーフィンと同レベルなパフォーマンスを実現できていました。
その代わり、PHSなのでド田舎である松阪ではしょっちゅう圏外になってましたが、そこは特に問題ありませんでした。電話する相手いませんでしたし。
それで、このH“を当時シャープが発売していたザウルスというモバイル端末につないで、ギリギリ電波の届いた教室の片隅でネットサーフィンしてました。
多分、あの高校史上で授業中に教室でネットサーフィンした生徒の第一号かもしれません。周りiモード全盛期でしたからね。
まだ黎明期だった小説投稿サイトもよく読んでましたね。どんな作品だったかは覚えていませんが、後々考えたらあれがアルカディアだったので、後に人気作家となっていったラノベ作家の作品とかも読んでたのかもしれません。
閑話休題








