タイヤガーデン松阪

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店が開く前に

これは去年の冬のお話

皆様もご存知の通り、当店の作業受付は


午前10時から午後1時までは先着受付順のみ

午後2時以降は時間指定予約可能


という形式で行っております。

令和元年に予約制を試験的にスタートさせて早4年が経とうとしていますが、トライ&エラーを繰り返しながらようやく定着してきた感があり、お客様へのご案内も臨機応変に行えるようになりました。


 ちなみに、予約を午後のみとしている理由はいくつかありますが、その中でも最大の理由は統計的にタイヤの交換作業は明らかに午前中に偏るので、予約可能時間を午後2時以降とすることで、需要の分散を狙っています。(他にも理由はありますけどね)

 とはいえ、冬シーズンの繁忙期本番を迎えると、そのような狙いも焼け石に水で朝はめちゃくちゃ混みます。それに予約枠自体は1日に6枠しか無く1台で2枠埋まる作業も少なくない為、冬季の土日の予約枠などは1週間前までには満杯になっています。
 となると、前日に突然行こうとなっても全て当日受付順での作業枠でしかなく、そうなると必然的に朝に集中してしまうのです。特に土曜日の朝は駐車場が少ない諸事情もあり、停める所の無い駐車場に、後続の車が次々と入りあわやパニック寸前という場面が多発します。

 実際、去年完全にパニックになり収集が付かなくなった土曜の朝が一度だけあり、その朝にご来店されたお客様に大変ご迷惑をおかけすることになりました。この事例についてはこの1年ずっと対策を検討していて、この秋に今後の冬シーズンの作業受付方法について、今までのやり方を抜本的に変更する新しい受付方法を発表する予定です。

これはその日の一週間前の土曜に起きた出来事です

 その日の朝、当店の駐車場に開店前から並ぶ1台の軽自動車がいました。どうやら、朝の9時には到着されていたようです。当店の開店時刻は朝10時ですので、開店1時間前から並んでおられる事になり、いったい何処の人気ラーメン屋店ですかってところなのですが、お客様(ここでは仮にA様としましょう)がそんなに早く来られていたのには訳があります。

 話はその日の前日にかかってきた1本のお問合せコールまで遡ります。

『明日、スタッドレスへの履き替えをしてほしいのだけど、いつ行けばいいのでしょうか?』

そんな ひと冬に100回は聞くようなお決まりのお問合せを受け、僕もお決まりのフレーズを答えます。

「当店では午後2時から予約できる枠があるのですが、残念ながらこの枠は全て埋まっております。ですので、後は当日の受付順で順番に行っていく枠での作業となり、こちらは予約ができませんので『何時が良い』とは言えません。ただ、大変に混みあうという事だけは間違いないと思います」

もう何百回と繰り返した事で淀みなく答える僕に、A様から次も質問が返ってきます

『朝は何時からやっていますか?』

これも想定通りですので、僕の答えは決まっています。

「朝は10時から営業しております。10時になった時に、1番に並んでいた方からの作業となっております。当店の駐車場の入り口は朝から開けておりますので、朝一番での作業をご希望でしたら、開店前からお並びください。ご参考までに、先週の土曜日は開店前の段階で3台待ちとなっており、一番目に作業を行った方は、9時15分にはご来場されておりました」

 このような状況下で開店時間を聞かれて、単純にその時刻だけ答えているようでは配慮が足りないと言わざるを得ません。
 A様が知りたいのはただの開店時刻なのでありません。A様が真に知りたい事は「私は何時に行けばいいのだろうか?」という最初の質問への答えなのであり、我々が提供しなければいけないのは、その答えを見つけるのに少しでもヒントとなりえる情報材料なのです。

「駐車場の門は朝から空いている」「他のお客様も開店前から来て並んでいる」このような我々店側しか分かりえない情報を伝えられるかどうかで、A様自身が導く”答え”は大きく変わってしまうでしょう。

『えっ!?? そんなに早くから並んでいるのですか?!』

おそらく、A様にとってその情報は想定の範囲外だったのでしょう。電話越しの声は明らかに驚きにより1トーン高くなっていました。

「はい。あくまでも、“先週はそうだった”という話ではありますが、明日が同じようになる可能性は十分ありますし、同じく朝からご来店予定の作業を鑑みれば一層混みあってもおかしくはありません」

『わかりました。考えます』

そういって、この電話は終わりました。

AM9時45分

いつもどおり、15分前に出勤した僕が目にしたのは
(電話で聞いている情報から)

おそらくA様の車であろう1台だけが待ってる開店前の駐車場でした。

アチャーーーーーー(;´Д`)

先週なら既に埋まっていた3枠の駐車場も、ぽっかり空いた2枠を空しく北風が吹いております。

まだこの時点では確かめる事は出来ていなかったのですが、ほぼ間違いなくA様はこの店の誰よりも早くこの場所に居たのでしょう。


“ご参考までに、先週の土曜日は開店前の段階で3台待ちとなっており、一番目に作業を行った方は、9時15分にはご来場されておりました!(`・ω・´)シャキーン”

“えっ!?? そんなに早くから並んでいるのですか?!”


A様との電話でのやり取りが、まるで昨日の事のようにハッキリと思い出されます。

いや、実際に昨日の事なのですからハッキリ思い出せるのは当たり前なんですけど!

言わなきゃよかった! あんな事言わなきゃよかった!! 聞かれた事だけ答えていればよかった!!! ( ;∀;)

店舗に入る為にA様の車の横を通り過ぎる時、僕はバツが悪すぎてA様の方を見れず、俯いて気持ち早足となってしまいました。

気まず過ぎる開店準備

店に入って事務所でWEB勤怠管理システムの出勤ボタンを押し、開店準備を始める為に外に出ても、やはり駐車場に居るのはA様の車だけ・・・

まさか今日はサイレントモーニングなのか?

基本的に大繁忙となる冬季シーズンの土曜の朝なのですが、極々稀にあるのです。開店時に誰も来ず、静かに始まる土曜日が・・・

そんな日が、よりによって今日だなんて・・・

このまま、何事も無くA様がオンリーロンリーで朝一の作業が一瞬で終わっちゃったら、もはやA様から僕への・・・引いてはタイヤガーデン松阪店への信頼度は地に堕ちるでしょう…

築き上げるにはコツコツ時間をかけて積み重ねるしかない信頼も、失うのは一瞬です。

今日という日は僕にとって今年一番の厄日だったのかもしれません。

そんな暗澹たる心持ちで店のレジを立ち上げている僕の気も知らずに、

他のスタッフたちは、

予想外のスロースタートとなりそうな土曜の朝に、

その開店作業の雰囲気には余裕が感じられ、

どこかのほほんとした空気が漂っていました。

・・・その直後でした!

 本日、オールシーズンタイヤの交換を予定されていたお客様のエスティマがご来場したと思ったら、後続の車も続々と雪崩れ込んで、わずか5分で駐車場が満杯となったのです!
この時、朝の一団の最後尾となったお客様の作業終わりはお昼前でした!!

 まだ開店作業が完了していないのに、さっきまでの牧歌的な風景が一転 冬の戦場に様変わりしたことで、それまでどこか余裕の面持ちだったスタッフたちの顔にも緊張が走り、今日もまた冬の激務を戦うタイヤサービスマンに共通した ある種諦観を漂わせた武士の顔となっていました。

一方、その時の僕は

予想通りのハードスタートとなりそうな土曜の朝に、

その開店作業の雰囲気には余裕が感じられ、

どこかのほほんとした空気が漂っていました。

今日という日は僕にとって今年一番の吉日でした!

その後、朝一番の混雑の中、朝一番に作業が終わり、朝一番のお会計を行うA様を前にいたのは

ね!? 言った通りでしょう?(・∀・)

と顔に書いてある、この日一番のオリジナル笑顔で駆け抜けた僕でした。




後から振り返った時、僕はこの日の事をこんな風に語るかもしれません。

この日、タイヤガーデン松阪の信頼は今年一番の最高値を記録したのだと。

それはまるで、蠟燭の灯が消える前に最も煌くように・・・


to be continued