【SUPER GT 第6戦 / スポーツランドSUGO】
ヘビーウェットコンディションでウェットタイヤを機能させたWedsSport ADVAN GR Supraが上位グリッドを獲得、決勝ではGT300クラスで2台のランボルギーニがトップ10フィニッシュ!!
SUPER GT Round 6
開催日 | 2024年9月21日-9月22日 |
---|---|
開催場所 | スポーツランドSUGO (宮城県) |
天候 | 決勝 : 雨 のち 曇り、公式練習 : 雨 |
路面 | 決勝 : ウェット~ドライ、公式練習 : ウェット |
決勝時間 | 84周 (1周=3,586m) |
参加台数 | 42台 (ヨコハマタイヤ装着車17台) |
2024年のSUPER GTは、鈴鹿サーキットで開催予定だった第5戦が台風接近に伴い12月に延期され、前戦から約1か月半のインターバルを挟み宮城県のスポーツランドSUGOでシーズン5大会目となる第6戦が開催された。この週末も悪天候に見舞われ、21日(土)の予選セッションがキャンセルされるなどイレギュラーなスケジュールとなったが、GT500クラス、GT300クラス合わせて17台のヨコハマタイヤユーザーが力強い走りを披露した。
週末に向けて各チームが車両搬入やピット設営を行う20日(金)から、スポーツランドSUGOは天候が不安定だった。翌日の午後は大雨が予想されていたことから、レース前に行われるドライバーやチーム監督を対象としたミーティングでは、天候悪化の場合は予選セッションがキャンセルとなる可能性もあること、その場合は午前中に行われる公式練習の結果を採用して決勝レースのスターティンググリッドを決定することなどがアナウンスされた。
そのため、21日(土)午前中の公式練習は、序盤から各車がタイムアタックを敢行。GT500クラスは目まぐるしくトップタイムが変わっていく場面などもあった。
2022年のSUGO大会で圧倒的な速さを見せてポールポジションを獲得した「WedsSport ADVAN GR Supra (国本雄資選手/阪口晴南選手)」は、その再現を目指して阪口選手が走行を担当。40台以上のGTマシンが走り続けることで走行ライン上の水量が少なくなってきたタイミングを見計らいアタックした結果、見事3番手タイムを記録した。阪口選手がタイムを出し終わったころから雨脚が強まり、これ以降はどのチームもタイム更新が見込めないコンディションになってしまったことを考えると、まさにベストタイミングでのアタックとなった。
「リアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生選手/名取鉄平選手)」は松田選手が7位タイムを記録し、第4戦の富士大会と同じ今季ベストタイグリッドを獲得した。GT300クラスは「apr GR86 GT(永井宏明選手/小林利徠斗選手)」の10位が、ヨコハマタイヤ勢では最上位となった。
一夜明けても空模様は変わらず、むしろ午前中はさらに雨脚が強くなった。2つのサポートレースは何とか走り出すものの、いずれも赤旗終了を迎え、SUPER GTの決勝レースもスタート進行の開始は1時間遅れとアナウンスされた。
午後に向けては天候が回復するとの予報が出ており、実際にウォームアップ走行の時点ではほとんど雨も止んでいた。ウォームアップ走行を終えて再び車両がコースインする頃には、雲の切れ間から温かい日差しが差し込むほどに天気が回復。すぐに雲の量が増えて日差しはさえぎられてしまったが、この天気の回復状況にグリッドではスタートタイヤの選択が様々に分かれることになった。
「UPGARAGE NSX GT3(小林崇志選手/小出峻選手)」、「グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝選手/片岡龍也選手)」の2台はスリックタイヤを選択。グリッド位置が後方で、逆転をかけた選択だったが、結果的にはコース上に大きな水たまりが残ってしまっていたためにレース序盤で大きく差をつけられてしまうこととなった。
そのほかの車両たちは、戦略によってタイヤのコンパウンドは違うものの全車がウェットタイヤを装着。セーフティカー(SC)先導で84周の決勝レースがスタートし、5周目からはレーシングスピードに戻って実質のレースが幕を開けた。
「WedsSport ADVAN GR Supra」は国本選手がスタートを担当するが、想定以上に路面に水が残り苦しい状況に。リスタート直後の1コーナーでは1台をかわして2番手に浮上するが、翌5周目には先にタイヤのウォームアップが整ったライバルたちに先行を許してしまう。徐々に順位を下げ、21周目には14番手にまで後退してしまった。>
しかし、コンパクトなレイアウトのSUGOでGT300クラスをかわしながらの戦いとなるGT500クラスは、一瞬の判断で大きく順位を変得ることも可能。同じく7番グリッドスタートから苦しいペースとなっていた「リアライズコーポレーション ADVAN Z」の松田選手とともに、少しずつ順位を取り戻していった。
23周目に入ったところでGT300クラスの車両同士による接触アクシデントが発生し、レースはSCが導入される。レース全体の3分の1が終了する32周目にリスタートが切られると、数台がタイヤ交換に向かうが、2台はともにステイアウト。42周目に再びSCが入ると、「WedsSport ADVAN GR Supra」はこのタイミングで阪口選手にバトンタッチした。12番手でのコース復帰だったが、このタイミングでタイヤ交換に入らなかったチームや、もう一度ピットに入らなければならないチームがいくつかあったため、ライバルたちがピットに向かうたびに1つずつ順位を取り戻していく。
62周目には8番手に浮上し、そのままチェッカーを受けた。3番手スタートから表彰台争い、優勝を目指していただけに悔しい結果となったが、シーズン5戦目で3回目のポイント獲得、今季ベストリザルトを手にすることとなった。
「リアライズコーポレーション ADVAN Z」は前半スティントを長めに引っ張り、51周を終えたところで名取選手に交代。十分に路面状況も回復しスリックタイヤで挽回を目指したが、大きな追い上げはかなわず13位フィニッシュとなった。
GT300クラスでは、ウォームアップ走行中に「apr GR86 GT」がコースサイドのタイヤバリアにヒットするアクシデント。メカニックたちの驚異的な作業でグリッドに車両を並べたが、決勝でのペースはあまり上がらず、代わって12番グリッドからスタートした「リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(佐々木大樹選手/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手)」が10番手に浮上した。
中盤、GT300クラスの車両がレインボーコーナーの先でスピンしコースサイドにストップすると、この車両を回収するためにフルコースイエロー(FCY)が出される。このタイミングをチャンスとばかりに続々と各車がピットに入ってきた。ここではすぐにFCYからSC導入へと変わったため、ピットロードもすぐにクローズされてしまった。
FCYが提示されていた短い時間にピットへと飛び込まなければいけないタイミングだったが、これをしっかりとつかんだのが「METALIVE S Lamborghini GT3 (松浦孝亮選手/坂口夏月選手)」で、リスタート後には7位を手にしていた。
後半スティントを託された松浦選手もスリックタイヤでペース良く周回。39周を走り切って7位入賞を飾った。同じランボルギーニを使うチームメイトの「VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史選手/元嶋佑弥選手)」も18番手スタートから10位フィニッシュでポイント獲得。シリーズランキングではヨコハマ勢最上位の4位となっている。
Drivers’ Voices
国本雄資 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績 : GT500クラス 8位】
天気予報を見ながら、どんどん路面状況が変わっていくだろうということを見越して、雨が少なくなっても対応できるようなタイヤ選択をしましたが、濡れている路面でのグリップが低く、あまりいいスティントにはできませんでした。ただ高速コーナーや高負荷のところではライバルに対してポジティブな部分もあったので、改善点もいい部分も見つかったレースにはなったと思います。次戦のオートポリスはタイヤに厳しいサーキットですし、天気も読みづらいところだと思うので、うまく対応できるようにしっかりとミーティングして、精一杯できることをやっていきたいと思います。
阪口晴南 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績 : GT500クラス 8位】
路面が十分にドライアップしてから自分のスティントになりましたが、ここ最近の中でも一番苦しかったと思うぐらいペースが上がらなかったです。最終ラップでも、GT300の車両をうまくかわし切れず、少し引っかかってしまったことで1つポジションを下げてしまい、非常に悔しいレースになりました。次戦は10月に入り、季節も温度も今回とまた少し変わってくると思いますが、そこでもしっかりと自分たちにとっていい選択をして、レースに向けていい準備をして、オートポリスを戦っていきたいです。
松田次生 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績 : GT500クラス 13位】
僕のスティントの間にドライアップしていくだろうと予想したうえで選んだタイヤでしたが、序盤はすごく苦しかったです。その後は周りに追いつき始めて何台かオーバーテイクすることはできたので、ドライアップしていったところでのパフォーマンスを見ると、タイヤ選択は間違っていなかったのかなと思います。レースに関してはSCが自分たちにとってはあまり良くないタイミングだったなというところが残念でした。僕自身ヨコハマタイヤを履いて1年目ですし、今年はパターンも変わっているので、まだまだ分からない部分はありますが、今回のようにしっかりと走り切れたことで、今後に向けてもいい材料を得られたのではないかと思います。
名取鉄平 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績 : GT500クラス 13位】
週末を通して、スケジュールが変わったりセッションがなくなったり、決勝レースでもFCYやSCが出たりなど、いろいろと難しい場面はありましたが、表彰台争いができるような位置で走ることもできず、非常に残念な、悔しい結果となりました。優勝争いができるところでレースをしたいので、ライバルたちも進化しているので、タイヤも僕たちももっと頑張って、速さと強さを上げていきたいです。
坂口夏月 選手 (METALIVE S Lamborghini GT3)
【今回の成績 : GT300クラス 7位】
決勝スタート時には、ドライアップしていくには時間がかかるだろうと判断し、持ち込んだタイヤの中で一番硬いタイヤを選択しました。その分ウォームアップは厳しかったですが、熱が入ってからはペースが上がり、周りと遜色ないか、少し速いくらいのラップが刻めました。だんだんと路面状況が変わり、ピットインのタイミングをいろいろと考えていたタイミングで、目の前の車両がスピンしていたので、ここがチャンスだと思ってピットに入りました。自分たちが持っていたカードと、与えられたチャンスは最大限に活用できました。選んだタイヤも、狙っていたダンプコンディションでのペースもすごく良かったと思います。チームメイトの88号車が選んだタイヤも良さそうだったので、ウェットタイヤのレベル向上をすごく感じたレースになりました。
Engineer’s Voice
白石貴之 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ・リーダー]
ウェットタイヤではウォームアップ性能と合わせて、ドライアップしていく中でのタイヤの持ちという部分も課題に挙げていましたが、今回のレースでは新しいものを投入していたのでその効果を確認できたのは良かったです。ただ、グリップという点では他社にまだ追いついていない部分があり、ここは引き続き改善していかなければいけない点だと感じています。
次戦のオートポリス大会は、サーキットとしてタイヤへの負荷がいろいろかかるうえに、このサーキットとしては初めてとなる3時間レースのフォーマットになります。天気や気温に関しても、今回のSUGO同様、あるいはそれ以上に読みづらい部分もあり、難しいレースになることが予想されます。
今回のレースで見つかった良かった部分をしっかりと生かして、次戦に向けて練り直していきたいと思います。
Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)