【SUPER FORMULA 第9戦 / 鈴鹿サーキット】

太田格之進選手がSUPER FORMULA初優勝で4人目のウィナー誕生、最終戦に持ち越されたタイトル争いは宮田莉朋選手がチャンピオンに輝いた!!

SUPER FORMULA Round 9

開催日 2023年10月29日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝周回数 31周
(1周=5,807m)
参加台数 20台
※タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク

2023年の「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」第9戦が、10月29日(日)に三重県の鈴鹿サーキットで開催された。泣いても笑っても、これがシーズン最終戦。タイトル争いに残る宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、野尻智紀選手(TEAM MUGEN)、リアム・ローソン選手(TEAM MUGEN)の3名はもちろん、参戦する全ドライバーが良い形で2023年を締めくくれるよう、全力を尽くす一戦だ。

なお、前日の第8戦でクラッシュしてしまった大津弘樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)、笹原右京選手(VANTELIN TEAM TOM’S)は、車両のダメージが大きく、この第9戦は欠場に。全20台で争われることとなった。

第8戦終了時点で、ランキングトップは宮田選手で103.5ポイント。2位の野尻選手が97ポイントで、その差は6.5ポイント。3位のローソン選手は88.5ポイントとやや離されており、逆転王座に向けてまずは予選ポイントの獲得が必須となる。

注目の公式予選、まずはQ1のA組に登場した野尻選手が鮮やかにトップタイムを奪いQ2進出を決定すると、B組には宮田選手とローソン選手が出走。先にコントロールラインを通過した宮田選手が1分37秒014をマークして暫定トップにつけていたが、ローソン選手は唯一の1分36秒台となる1分36秒881をマークして逆転、トップに立った。

3人が顔をそろえたQ2は、それぞれの組でトップタイムを奪ったTEAM MUGENの2台がポール争いを繰り広げるかに思えたが、これに割って入ったのが昨日も目覚ましい活躍を見せた太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。

まずは野尻選手が1分36秒704で暫定トップに立つが、これをローソン選手が1分36秒442で逆転、そして太田選手も1分36秒613で野尻選手を上回り2番手に上がった。最後にアタックに入った宮田選手はスプーンカーブでわずかにミスが響き、1分36秒817で4番手という結果に。これにより、ローソン選手の今季初ポールポジションが決定。予選で獲得できる最多ポイントの3点を手に入れ、逆転タイトルにむけて望みをつなげることとなった。

この週末の鈴鹿サーキットはこれ以上ない晴天に恵まれ、また併催イベントもあったことから28日(土)には17,500人、第9戦が行われた29日(日)は25,500人の観客が詰めかけた。グランドスタンドも賑わいを見せる中、いよいよ第9戦の決勝レースがスタートした。

前日同様に、抜群のスタートダッシュを切ったのは太田選手。ポールシッターのローソン選手は野尻選手を警戒しブロックラインを採っていたことから、太田選手の先行を許してしまう。ローソン選手に蓋をされてしまった野尻選手は、宮田選手にかわされ、オープニングラップは太田選手、ローソン選手、宮田選手、野尻選手の順となった。

上位陣の争いは、序盤は膠着状態。太田選手はローソン選手とのギャップを1秒前後でキープしたまま周回を重ねていった。タイヤ交換が可能となる10周を超えて、真っ先に動きを見せたのは宮田選手だった。12周を終えたところでピットインすると、チームは6.2秒という作業時間で宮田選手をコースへと送り出す。これを見てローソン選手は翌13周終了のところでピットイン。こちらの作業時間は6.5秒とわずかに宮田選手よりもかかったが、ローソン選手は宮田選手の前でコース復帰に成功する。ただし、すでにタイヤに熱が入っている宮田選手はローソン選手に急接近。このレース、前半戦の大きな見どころを迎えることとなる。

両者のギャップはホームストレート1本分あったが、S字コーナーから逆バンクと、コーナーを1つ進むごとに宮田選手がじりじりとローソン選手の背後に迫っていく。デグナーカーブではテール・トゥ・ノーズにまで近づき、ヘアピンコーナーで勝負に出た宮田選手は、アウト側からローソン選手の車両に襲い掛かった。ここはなんとかローソン選手が守り切り、宮田選手はスプーンカーブでも隙を伺うが、ここまでくるとタイヤが温まったローソン選手が優位になり、宮田選手の逆転はならなかった。

2台の激しいバトルを尻目に、トップ快走の太田選手は14周を終えてピットイン。チームは5.2秒と、ライバルたちを凌ぐタイムで太田選手をコースに送り出した。太田選手はローソン選手の前でコースに戻ったが、まだピットに入っていない同一周回の車両で目の前が混雑しており、後ろからはタイトル獲得に向けて優勝しかないローソン選手が迫りくる中、太田選手は眼前に現れる車両を1台ずつ丁寧にクリアしていった。

太田選手らがピットに入ったことで、暫定トップに立ったのは野尻選手。残り8周までピットインを遅らせると、4番手でコース復帰した。一旦は後方の松下信治選手(B-Max Racing Team)にかわされ5番手にドロップするが、新品タイヤで猛プッシュし、25周目のシケインでオーバーテイク。4番手を取り戻した。ただ、トップ3は野尻選手のはるか前方、15秒先だった。

太田選手はローソン選手との差を1秒前後でキープし終盤を走行。残り2周で0.7秒差に詰め寄られたが、最後に踏ん張りを見せてウィニングチェッカーを受けた。太田選手は今シーズンがSUPER FORMULAデビューイヤー。開幕直前のテストを怪我で欠場してしまい、シーズン前半は苦しいレースが続いたものの、後半にめきめきと頭角を現し、シーズン最終戦で嬉しい初優勝を飾った。

太田選手に続いてチェッカーを受けたローソン選手は106.5ポイントを獲得し、シリーズ2位に復帰。そして、3位でチェッカーを受けた宮田選手が114.5ポイントでシリーズチャンピオンに輝いた。野尻選手は4位フィニッシュで106ポイント。3連覇はかなわなかったが、病気による欠場やリタイアもあった中、最後の最後まで実力者にふさわしい戦いを披露して見せた。また、シリーズ2位のローソン選手がルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。

Drivers’ Voice

太田格之進 選手 (DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

【今回の成績 : 優勝】

1周目からペースが良く、マシンも良かったので、1年間やってきたことの集大成を出すことができました。最後の10周ぐらいは、ローソン選手にどれぐらい余裕があるのか分からず、本当に苦しかったです。コントロールラインを超えた瞬間に涙があふれてきました。つらい前半戦を乗り越えて、後半は右肩上がりに調子が良くなってきたシーズンで、最後を優勝で締めくくれて良かったです。来年はこの勢いでチャンピオン争いができるように頑張ります。

宮田莉朋 選手 (VANTELIN TEAM TOM’S)

【2023年 ドライバー部門 シリーズチャンピオン(確定)】

チャンピオンを獲るまでの道のりは決して楽ではなかったですし、正直に言えば今年獲れるとは思っていませんでした。デビューしてから優勝もポールポジションも獲れていなかったので、それを獲るためには何をするべきなのか、チームと一緒に考えてきましたが、その結果まずは第3戦で優勝することができ、そこからは自信がつきました。僕は世界に行きたいという思いでレースを始めて、それが原動力として結果にもつながりました。応援してくれた皆さん、サポートしてくれた皆さんに本当に感謝しています。

Engineer’s Voice

坂入将太 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ]

今回の最終戦は、本当に盛り上がりました。三つ巴のチャンピオン争い、3連覇の偉業への挑戦、最終戦でのルーキードライバーの優勝、そして新チャンピオンの誕生と盛りだくさんのレースでした。

今シーズンは開幕戦から最終戦まで天候に恵まれ、全くと言って良いほど雨が降りませんでした。この天候の助けもあり、車両とタイヤが同時に変更となった状況下でも各チームがドライのセットアップを詰めることができ、僅差のチャンピオン争いを生んだと思います。

当社は今シーズンから、サステナブル原料を33%使用したタイヤを投入しました。無事シーズンが終了したことにより、レーシングタイヤにこのような原料を使用してもこれまでと変わらぬパフォーマンスを発揮できるということが証明できたのではないかと思います。当社としてはここで満足をすることなく、更なる比率向上に向けて現在も開発に取り組んでいます。具体的な新仕様の投入時期は未定ですが、引き続きサステナブルなモータースポーツへの貢献を目指していきます。

Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)

TOP