【SUPER FORMULA 第7戦 / モビリティリゾートもてぎ】

3連覇を目指す野尻智紀選手が地元サーキットでポール・トゥ・ウィン、大量ポイント獲得でランキングトップとの差を一気に縮めて最終戦へ臨む!!

SUPER FORMULA Round 7

開催日 2023年8月19日-20日
開催場所 モビリティリゾートもてぎ
(栃木県)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 曇り
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝周回数 37周
(1周=4,801m)
参加台数 22台
※タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク

2023年の「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」第7戦が栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催され、野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が今季2勝目を飾った。ポイントランキングトップの宮田選手が4位入賞で8ポイントを加算したが、ポール・トゥ・ウィンを果たした野尻選手が23ポイントを獲得して、一気に10ポイント差まで接近した。

例年8月に開催されるもてぎは、シーズンを通して最も暑い時期に開催される大会。今回も例にもれず、予選日は34度、決勝日は35度の最高気温を記録した。午後に行われた公式予選は、気温33度、路面温度46度というコンディションでスタート。Q1のA組では、午前中から好ペースを披露した牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムをマークした。1000分の89秒差で関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が2番手に入り、久々のQ2進出を果たしたほか、リアム・ローソン選手(TEAM MUGEN)、阪口晴南選手(P.MU/CERUMO・INGING)、山本尚貴選手(TCS NAKAJIMA RACING)、小林可夢偉選手(Kids com Team KCMG)の6名がQ1を突破した。

続いて行われたQ1B組は、ケガからの復帰戦となる大湯都史樹選手(TGM Grand Prix)が、2位の宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM’S)に0.2秒以上の大きな差をつけてトップタイム。野尻選手は3番手で通過し、太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)の6名がQ2に駒を進めた。

Q2では、野尻選手が唯一の1分31秒台となる1分31秒955をマークして堂々のポールポジションを獲得。自身16回目、今シーズンでは開幕大会の富士2連戦に続き、3度目のポールポジションとなる。2番手には太田選手が入り、自己ベストグリッドを獲得。3番手にローソン選手、4番手に大湯選手が続き、ホンダのホームコースとなるもてぎでホンダエンジンユーザーがトップ4を独占した。ランキングトップの宮田選手は8番手とやや後方のグリッド。それでも、昨年はQ2進出も難しいほど苦戦していたもてぎラウンドでは上々のグリッド位置だとポジティブにとらえていた。

決勝日も朝のフリー走行から30度超えの暑さとなったが、ウォームアップ走行を終えたあたりから急激に雲が広がり、日差しもさえぎられるように。それでも気温33度、路面温度は46度とこのレースウィークで一番の高温を記録して37周の決勝レースがスタートした。

ポールポジションの野尻選手が抜群の蹴り出しで1コーナーへと向かっていくが、フロントローの太田選手がスタートできずに最後尾まで後退。代わって2番手に上がったローソン選手がアウト側から野尻選手に並びかけていく。2台は並走状態で2コーナーへと入っていったが、ローソン選手は2コーナーの立ち上がりで縁石の外まではみ出してしまい、コースを横断するようにスピンしてしまった。スタート直後でほぼ全車が集団でコーナーへ飛び込んで行く中、ローソン選手のスピンで2番手以降は大混乱に。

避けきれなかった関口選手と牧野選手のマシンが、ローソン選手のマシンに乗り上げて宙を舞う大クラッシュが発生してしまった。アクシデントを回避しようとコース外の芝生に飛び出した松下信治選手(B-Max Racing Team)もガードレールにヒットしてしまいストップ。レースは即座に赤旗中断となり、クラッシュを回避したマシンがホームストレートに並んで停車。幸い3名のドライバーはすぐに無事が確認され、レースは車両回収を終えるとセーフティカー(SC)先導で再開となった。

多重アクシデントの発端となってしまった形のローソン選手だが、自身のマシンもリアウイングを大きく破損。赤旗が出てからホームストレートに戻ることなくピットへと向かい、チームの迅速な作業でピットスタートを迎えることができた。ただし、赤旗時にピットインしたことによりレース再開後にドライブスルーペナルティが科された。

SC先導のもとで2周を終え、4周目にリスタート。オーバーテイクが難しいもてぎらしく、序盤はポジションの変動があまりなく周回数が進んで行った。義務付けられているタイヤ交換が可能な10周を終えるところに来ると、真っ先に動いたのは2番手を走行していた大湯選手。タイヤを交換して暫定11位でコースに復帰し、野尻選手との差を削るべくプッシュしていく。

同じく10周終了のところで佐藤蓮選手(TCS NAKAJIMA RACING)、太田選手もピットインしていたが、佐藤選手がピットアウトする際に、隣り合ったピットに入ってきた太田選手と接触。佐藤選手のタイヤは太田選手のノーズに接触しカットされてしまったためにパンクチャーを起こし、残念ながら戦線離脱となってしまった。太田選手もタイヤとノーズを交換していったんは走行を再開したものの、マシンにダメージを負ってしまったようで再びピットイン。ここでレースを終えることになった。レース後、佐藤選手にはアンセーフリリースのペナルティが科されている

トップ争いは、早めのタイヤ交換を行った大湯選手と、タイヤ交換を引っ張る作戦の野尻選手による一騎討ちの様相を呈していたが、野尻選手の後方につけた平川選手も虎視眈々とトップを狙っていた。前戦富士大会でも終盤までピットインを引っ張り、燃料が軽い状態でのフレッシュタイヤの利を生かした猛追劇を披露していた平川選手は、25周を終えピットへ向かった野尻選手に反応するように、翌26周終了のところでピットイン。ただ、ピット作業でわずかにミスがあり時間がかかってしまったことで、野尻選手の前でコース復帰することはかなわず、大湯選手の後方、暫定4番手に下がってしまった。

まだタイヤが冷えているアウトラップは、後ろから山本選手が猛烈な勢いで追い上げ、2台は90度コーナーで最接近。山本選手はオーバーテイクのチャンスとイン側に切り込んできたが、十分なスペースがなく2台は接触。山本選手は左フロントの足回りにダメージを負い、翌周の1コーナーでコースアウトしリタイアに。平川選手もこの接触でスピンを喫したものの、マシンにダメージはなく走行再開。ただしこの影響で野尻選手と大湯選手からは離されてしまうこととなった。

最後までタイヤ交換タイミングを引っ張っていた宮田選手が28周を終えたところでピットに向かい、これで野尻選手が見た目上でもトップに返り咲く。残り9周は後方とのギャップも大きく、ペースをコントロールしながら周回するとトップチェッカーを受け、今シーズン2勝目を飾った。2位には、32周目にS字コーナーで大湯選手をとらえた平川選手が入り第3戦鈴鹿大会以来の表彰台を獲得。終盤フレッシュなタイヤで猛追してきた宮田選手を0.4秒差でおさえきった大湯選手が3位となった。

ランキングトップの宮田選手は4位入賞で8ポイントを獲得し、最終戦を前に94ポイントでシリーズトップをキープ。ローソン選手はペナルティの影響もありノーポイントに終わり、両者の差は8ポイントに広がった。一方ポール・トゥ・ウィンを飾った野尻選手は23ポイントを加算して84ポイントとなり、宮田選手との差を10ポイントまで縮めて最終鈴鹿大会に挑むこととなる。

Driver’s Voice

野尻智紀 選手 (TEAM MUGEN)

【今回の成績 : 優勝】

開幕戦では手ごたえもあり結果も良かったので今年もタイトル争いができると考えていましたが、それ以降は鈴鹿でクラッシュを引き起こしてしまったり、第4戦は欠場したりと、苦しいシーズン中盤戦になってしまいました。そんな中で迎えた今週はチームも非常にいいクルマを用意してくれて、僕自身も『ミスをしてもいいから攻め切ろう』という強い気持ちで予選から臨むことができました。決勝も後続を引き離すことができましたし、チームの頑張りにも何とか応えられたかなと感じています。

Engineer’s Voice

坂入将太 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ]

今回も気温、路温ともに非常に高く、スタート前には雷が鳴って降雨も心配される等、真夏のもてぎらしいレースウィークとなりました。今年から投入したタイヤは昨年の開発テストでもここまでの高温環境下では走行する機会が無かったので、私としてはいつも以上に緊張感を持ってレースを見ていました。どうしても通年使用するタイヤとしては真夏は耐久性が厳しくなってしまいますが、これがタイヤマネジメント争いを生み、もてぎは夏ならではの面白いレースになっていると思っています。

今回は序盤に大きなクラッシュがあった影響でデブリを踏んでしまいタイヤに傷を付けてしまったチームも多く、サイドバイサイドからの接触でもタイヤにダメージを負ってしまった車両が複数ありましたが、タイヤにとってはこれ以上無いと言えるくらい厳しい環境下において、タイヤの耐久性に起因するアクシデントは無くレースを終えられたことにひと安心しています。

今回、ポイントランキングの差が縮まったことで、最終戦鈴鹿は大いに盛り上がると思います。これまでの大会で各チームが蓄積してきた新車両と新タイヤのノウハウが活かされたハイレベルな戦いが見られることを楽しみにしています。

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